ありふれた職業で世界最強if優花   作:白San

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今回は長めです( *¯ ꒳¯*)


百十九話 PvN②ー鳴動ー

 

響くは金属同士がぶつかり合い、脳を震えわせるほどの轟音。その轟音が響く中心は、機神兵(デウスソルジャー)の二対の近接武器と、ハジメの〝神喰雷槍(カミグライ)〟が交差し、両者は後退し、距離を取った。

 

「死ねっ」

 

後退しながら神喰雷槍を背中に背負い直してハジメは、義手側に持つ〝オルカン〟のトリガーを引いて、十二発のロケット弾と雷魔法〝雷槍(らいそう)〟を放つ。機神兵も両腕、背中のミサイルポッドから千を超えるミサイル(魔剣)郡を放ちだす。双方から、ロケット弾と紅雷の槍で相殺させるが、残ったミサイル達がハジメへと迫る。

 

しかし、ハジメはオルカンを盾にして、ミサイル郡を防ぎながら、闘技場内を駆け抜けていく。同時に右手で、ドンナーをホルスターから取り出すと、レールガンを連発し、六つの紅の閃光が機神兵へ放たれた。

 

迫りくる紅い閃光を機神兵は、四つの足があるからこそ可能な物理法則を無視したような動きで全てを避けると、アサルトライフルのような銃で魔力弾を連射し、背中から再びのミサイル郡、片方の腕からはガトリング砲から無数の魔法を放つ。そんな地獄のような死の雨がハジメへと迫る。ハジメは〝紅狼〟の出力を上げて更に脚力を上昇させた。その速度はライフルから放たれた弾丸速度に並ぶ。

 

その脚力を駆使してハジメは、死の雨を乗り切ったと同時に、表面が数々の魔法や魔力弾によってボロボロと剥がれ落ちてちるが、直後、〝宝物庫〟が輝いてオルカンを仕舞うと〝シュラーク〟をホルスターから取り出し……

 

直後、無数の紅い流星が空間を蹂躙する。僅かに遅れて聞こえるのは、どこか間延びした炸裂音。それが、一回轟く度に、六条の閃光が乱れ飛ぶ。その様は、まるで紅く輝く光の槍。たった一筋の閃光が、射線上の機神兵の関節部を的確に狙い撃ち、反撃をさせる暇も与えない。

 

ハジメの銃技───〝神速撃ち(クイックドロウ)〟だ。射線速度が速すぎて、銃声が一発分しか聞こえない早撃ち技である。

 

更に、闘技場を走り続けながらも計算され尽くした射角で解き放たれた弾丸は、あろうことが空中で他の弾丸とぶつかり、微妙に角度を変えた上で、より効率的に機神兵の急所を狙い撃ちする。

 

同じくハジメの銃技である〝多角撃ち(バウンドショット)〟だ。

 

見方によれば、まるで銃の方が自ら弾丸に飛び込んでいるようにすら見える。本来六連射ごとに隙が生じるはずのリロードタイムも、空中に転送された弾丸をガンスピンリロードすることで刹那の内に終えてしまう。

 

ドンナー&シュラークを握る両の手は、決して同じ方向を向けることなく、それぞれ別の生き物のように乱れ放った。

 

まさに絶技。機神兵は、確実の急所へと飛ぶ紅の流星を弾き、避けて動く。だが、全てを避けれず外装は、段々と傷付いていく。しかし、この絶技が成り立つには、場所の広さの把握、敵の構造、動き、攻撃の手段、どこが急所であるのかと、沢山の情報が必要であった。

 

それを、ハジメは最初から情報を集めていた。

 

転移された際と、リューティリスと出会った際に、石壁で囲った円形の闘技場であること。闘技場の広さ。

 

機神兵を見た際に、ゴーレムであること。急所であり、狙い易い関節部を見つけたこと。

 

機神兵の戦闘の際に、目眩しは効かないこと。神代魔法を扱えること。攻撃する際、四つの腕をどう動かしてるのか。四つの足の動きと機動性。近接戦闘と遠距離戦闘での攻撃と防御等………

 

普通なら脳が焼ききれそうな程の多くの情報量。その全てをハジメは〝瞬光〟などで補うことで把握して成せた。

 

───最強の銃技を。

 

───神を殺すために編み出した絶技の一つを。

 

空間を支配し、乱れ飛ぶ数々の紅の流星を避けていく機神兵だったが、あることに気が付き、動きを止めた。それを見ていた銃撃を続けるハジメは、ニィッと、不敵な笑みを浮かべて口を開く。

 

「クハッ……やっと、気付いたか」

 

そう、機神兵は気付いた。既に逃げ道はなく、数多の紅の流星が機神兵を囲んでいること。自分は、ハジメに誘導されていたことを……

 

直後。

 

それは、獣の群れが獲物を襲いかかるかのように機神兵へと迫る。機神兵は、四つの腕とミサイル郡で迫りくる凶弾を弾き、相殺させていく。が、それもゴーレムにとっても限界はある。二条の流星が機神兵の右肩に直撃し、ガキンッと音が響いた。同時に、機神兵の右肩の外装が破壊され、右の二つの腕の連結部が露出される。

 

自分の銃撃を耐える姿を見て、ハジメは、機神兵に神妙な面持ちで語りかけた。

 

「なあ……一つ思ったことがあるんだ」

 

語りかけるも銃撃の手を緩めず反撃の手を許させないハジメ。

 

「お前の扱う神代魔法。そんなに使えねぇよな?それに、神代魔法の一つを使う間は他は使えないだろ」

 

その言葉に、機神兵は動揺せずにハジメの銃撃を耐えることに優先してるが、玉座で見物していたリューティリスは動揺せずにはいられなかった。

 

リューティリスの表情を見て、確信したハジメは淡々と続ける。

 

「生成魔法はミサイルや銃器や武器。重力は斧槍。魂魄はメイス。空間はゲート。再生は内部機構。お前とヴァンデゥル・シュネーのは詳細が分からないから、なんとも言えないが何かの機能の一つに備わっているんだろう」

 

「………っ」

 

リューティリスは思った。視線の先にいる南雲ハジメという人間は、強大な敵と戦いながら、ここまでの分析をしていたことに驚愕せずにいられなかった。

 

「よく、分かりましたわね」

 

「これくらい戦っていれば分かるさ」

 

平静を取り繕って称賛するリューティリスに、ハジメは、ガンスピンで弾丸をリロードしながら言葉を続ける。

 

「生成、重力、魂魄、空間は分かった。アンタのを含めた二つの魔法は分からないが、再生はゴーレムでは有り得ない機動力。あんな動きは、ゴーレムはすぐに内部から壊れる。だが、なぜ壊れない?簡単だ。壊れそうになった内部の機構を再生魔法で再生させて奴の動きを衰えさせないようにしている」

 

普通なら、再生魔法の使い方に気付く者はいない。だが、ハジメは〝錬成師〟だ。機神兵と言えど神代よりも前に作られたゴーレム。そんなゴーレムが現代でもあそこまでの機動性を維持し続けれるのは無理がある。からこそ、ハジメは気付けたのだ。

 

そんな、ハジメの説明にリューティリスは納得し、機神兵は急所の場所を的確に防ぎながらハジメに向かって突進する。

 

ハジメは、機神兵の思いっきりの出た行動に驚いて声を上げた。

 

「っ……特攻かよ?!」

 

 

機神兵は、ここまで自分の情報を読み取られ、このまま、距離を取られながら戦ってしまうとハジメが有利になるだけだ。

 

なら、すべきことは一つ。近接戦へ持ち込んで、ハジメの優位性を無くすとが最優先だ、と。

 

全ての銃弾を跳ね除け、二対の武器の間合いに入ると機神兵は、左右の方向から武器を振るう。ハジメは、〝紅翼(せきよく)〟を背中に展開し、上へ飛んで回避する。ドンナー&シュラークの代わりに、ハジメが手にしたのは電磁加速式ガトリング砲〝メツェライ〟を二門。

 

毎分一万二千発の怪物が咆哮を上げた。

 

それは、もはや死の雨。上から紅い光を放つ蹂躙の権化が降り注いでいく。機神兵はゲートを発動し盾にして、降り注ぐ銃弾の雨を防いでいくが……

 

「無駄だ。──〝限界突破・覇潰(はつい)〟」

 

ハジメの言う通り、機神兵の行動は無駄になる。

 

紅い魔力が竜巻となって天と地を繋いだ。〝限界突破・覇潰〟により、今この瞬間、全てのスペックが五倍に膨れ上がった。莫大というのもおこがましい圧倒的な魔力の奔流が闘技場に響き渡る。

 

これを使えば、ハジメといえどタイムリミットが課される。効果時間は十分。それ以降は、凄まじい倦怠感に襲われ、一時的に行動不能となる。

 

それは、ハジメの敗け──死となる。

 

だが、ハジメは発動し、勝負に出たのだ。

 

おびただしい数の弾丸が、互いに跳弾までして、ゲートを避けて機神兵を狙う。〝限界突破・覇潰〟と〝瞬光〟によって通常より知覚状態を五倍に跳ね上げた今のハジメは、ガトリングによる精密射撃すら可能な状態である。

 

ならばと、機神兵は背後からとゲートで取り込んだ銃弾を放つが、そこには四機のクロスビットが、これまたゾッとするほど精密な射撃で相殺して全て防ぐ。

 

「おい、これだけか?古代のゴーレム」

 

ハジメを守るのは、前門の精密ガトリング射撃。後門のオールレンジ兵器。

 

まさに絶壁の空中要塞。

 

───これでは、負ける。

 

機神兵がそう判断するのに時間はかからなかった。なら、どうすればいい?

 

簡単だ。

 

機神兵は最後の奥の手を解放した。直後、機神兵の雰囲気が変わりだしていく。

 

 

空気が変わった。それは、上に飛ぶハジメでもすぐに分かり、冷や汗が流れ、頬につたっていた。原因は分かる。機神兵だ。何か奥の手を隠し持っていたのだ。

 

「クソッ」

 

ハジメは、急いで四機のクロスビットと二門のメツェライの砲撃を放った。が、その判断は遅かった。

 

既に、砲撃を放った場所に機神兵の姿が見えない。焦るハジメは、クロスビットで四方結界を張りながら機神兵を辺りを見渡しながら探すも見つからない。

 

だが、それは唐突に現れた。

 

ハジメに強烈な殺気が襲う。すぐにその方向に視線を向ければ────いた。

 

結界の目の前にいる機神兵の姿が。

 

見えなかった。〝紅狼〟と〝瞬光〟を発動し、跳ね上げた知覚状態のハジメでも捉えられないスピードで機神兵は目の前に現れたのだ。

 

「っ!?」

 

すぐにメツェライを放とうとしたハジメ。だが、機神兵の方が早く、結界をメイスで一撃で粉砕すると、勢いよく振りかざした斧槍をハジメへと振り下ろす。咄嗟に、四機のクロスビットと右手で持っていたメツェライで盾にするも、いとも容易くクロスビットの盾とメツェライが破壊され、ハジメは地面に叩き付けられた。

 

「───ガッ!?」

 

地面に強く叩き付けられ、全身が痛むハジメだが、機神兵は既に、ハジメの眼前へと移動しておりメイスを振り下ろしていた。

 

「!!」

 

左足を勢いよく踏み込んで、上手く回避するハジメ。同時に、ドンナー&シュラークをホルスターから手に取り、再び、〝神速撃ち〟と〝多角撃ち〟をするが、全て機神兵に避けられていく。

 

「マジかよっ!?」

 

機神兵は、紅の流星達を全て避け切り、急接近してハジメの背後へと回ると二対の武器が振り下ろす。しかし、ハジメもドンナーの銃口だけを手首の後ろに向け発砲。弾丸が機神兵の腕に直撃し、攻撃の軌道を逸らして回避し、回し蹴りでもう一方の攻撃の軌道を逸らす。そして、少しの隙を利用してシュラークのトリガー引いて、機神兵の頭部にレールガンを放つも首を左に傾けられ、頬の部分に掠れるだけで終わるが、ハジメは機神兵が一定の距離を取る。

 

「──〝雷閃〟! 〝轟雷風爪〟!」

 

たちまち、ハジメは魔法を発動し、雷の斬撃と雷と風が交わった三本の爪の斬撃を放った。乱雑に放たれた斬撃は機神兵へ迫るも、それより早く機神兵は動き回避した。そして、ゲートを使い、直接、ハジメにメイスを振るう。

 

「チィッ!」

 

咄嗟にゲートから現れた自分へと振るわれたメイスを、右足をわざと滑らせ、スライディングして避ける。だが、追撃と言わんばかりに背中のミサイルポッドから放たれるミサイル郡。ハジメは、〝宝物庫〟から大盾を取り出すと、体を仰向けにしながら防ぎ、爆破した衝撃の反動で逆の方向へ移動して背負っていた〝神喰雷槍〟を地面に突き刺し、杭にすることで体勢を建て直す。

 

自分の絶技を全てを避けられ、攻撃の幅が広がり、神代魔法の複数使用、動きが一変していることに苦虫を噛み潰したような表情をするハジメ。しかし、今の機神兵は見る限り〝限界突破〟ではない。まるで、全て機神兵の全てが昇華(・・)されたような動き………

 

「………っ、そうか!!」

 

そんなことを可能する術なら、可能性は一つ。

 

「神代魔法!!」

 

ハジメは叫ぶ。機神兵の奥の手の神代魔法。恐らくステータスや性能(スキル)等を、昇華させるような魔法だとハジメは推測する。だが、正体は分かったとて状況は変わらない。

 

今も、機神兵のゲートからの不意打ちを避けている。ミサイル郡を大盾で防ぐ。ドンナーで、攻撃の軌道を逸らす。防戦一方となりつつある。そんなハジメに、更に悲劇が襲う。

 

「っ!」

 

フッと体が少しふらつき、脳が危険信号を鳴らした。原因は分かる〝限界突破・覇潰〟と〝瞬光〟の使い過ぎと、これまでに傷付いた体のせいだ。そして、ハジメは理解する。自身の体にも限界が近付いていることに……

 

だが、状況が悪い。自分はまだ近付けてもないからだ。それに、このまま戦い続け、〝限界突破・覇潰〟が解けると敗北は確定。

 

──ならやることは一つ。

 

「………やるしかねぇか」

 

ハジメは覚悟を決めたのか、一旦、深呼吸して〝神喰雷槍〟を持つ。そして、大盾を前に突き出しながら機神兵へと突進を開始する。機神兵も、ハジメにミサイルとガトリング砲を放つ。迫りくるミサイル郡を、足から放たれた雷の斬撃で相殺し、走るスピードを緩めずにガトリング弾を大盾で防ぐ。

 

そして、遂に、機神兵の間合いに踏み込んだハジメは、腕の関節部を狙って右手に持つ漆黒の大槍〝神喰雷槍〟で突き刺そうとする。が、機神兵は前足二本に蹴られたことで攻撃が軌道が逸らされ、ハジメの右手から〝神喰雷槍〟が離れてしまう。

 

「くっ……」

 

しかし、ハジメの攻撃は終わらない。神喰雷槍を弾かれるも次の攻撃手段に移っており、〝竜鱗化〟、〝集中強化〟、紅雷を更に集中的に纏い出したことで獣の右足へと変貌させた。

 

「〝紅狼〟──蹴り狼(キックウルフ)

 

雷獣の足へと変貌したハジメの右足。だが、この足は普通なら反動があり過ぎて使えないが、〝限界突破〟をしてるからこそ扱える技である。蹴り狼の蹴りが機神兵の腹部に当たる。その一撃は重い訳でもなくて強力でもない。

 

だが、一拍。

 

ズドンッと轟音が響いた。

 

機神兵は自分のいた逆方向の壁へと激突するぐらい吹き飛ばされたのだ。同時に、内部機構がぐちゃぐちゃになってしまっている。

 

理由は簡単。蹴り狼のスピードが早すぎて、与えたダメージが遅れてやってきたのだ。その強力な一撃に、機神兵の内部機構の再生が遅れてしまう。

 

しかし、そんな時間をハジメは与える暇はない。右足で踏み込んで、壁から壁まで数十メートルある距離を一瞬にして詰め寄った。機神兵へ詰め寄った瞬間、〝天歩〟を駆使して、安定した体勢で再び、右足で蹴りを入れる。しかし、機神兵も負けておらず重力付与した斧槍で防ぐ。数千キログラムまで重力付与された斧槍に対してハジメの右足も負けていない。ぶつかり合い、火花を散らし、拮抗状態が続くも、ハジメがドンナー&シュラークを取り出し、二条の閃光を斧槍に当てて軌道をだいぶズラした。

 

右足が疼く斧槍の邪魔が無くなり、ただ敵を蹴るだけ。敵を屠る右足の一撃を機神兵の胴体を蹴りを入れた。しかし、その蹴りはギリギリでズラされ、横腹を抉るだけに終わる。同時に、ハジメにも背中に衝撃が走ったと同時に勢いよく吹き飛ばされた。

 

「カハッ───」

 

脳が揺らされ、思考が回らなくなる。〝魂魄魔法〟を付与されたメイスで殴られたのだ。痛みと直接、魂魄への衝撃にハジメは、口から少量の血を吐く。〝限界突破・覇潰〟のタイムリミットも近付き、目から、鼻からも血が流れ出ている。

 

しかし、諦めないハジメは、すぐに立て直そうと蹴り狼(キックウルフ)を解除して通常の状態に戻して無理矢理にでも体を動かそうとするが、大きい影がハジメを覆う。それは、〝重力魔法〟を付与された斧槍(ハルバード)が振り上げていた機神兵の姿だった。

 

「───っ」

 

急いで体を方向転換させて回避を取ろうとするハジメだったが、直後、振り下ろした時の衝撃の重力を数千倍にした斧槍を叩きつけるかのように振り下ろされた。その瞬間、振り下ろされた場所の中心に地が割れ、瓦礫と粉塵が舞う。だが、そこにハジメの姿は無い。直後、下から強い衝撃を受ける。

 

ハジメだ。機神兵の周りに舞う粉塵を利用して上手く回り込んで〝竜鱗化〟した義手で顎を殴ったのだ。しかし、遅かった。

 

タイムリミットだ。

 

〝限界突破・覇潰〟を終え、倦怠感で行動不能な体を無理矢理に動かしての殴り。でも、その一撃はダメージは入らず、機神兵はハジメの腕を掴むと乱暴に向こうの壁へと投げ飛ばした。

 

「ガハッ───」

 

壁に激突しハジメは血を吐く。激突された際に大量の粉塵が舞う。

 

粉塵が消え、影が見える。そこには、大量に吐血して、ぐだりと腕を下げたハジメの姿だった。

 

 

「……残念でしたわ」

 

その光景を見たリューティリスは、少し残念そうな表情になりながらそう呟くと玉座から立ち上がる。そして、試練を終了させようと機神兵に命令しようとした時だった。

 

「機神兵。試練は終わ───」

 

「まだだ」

 

声がした。バッと驚いた様子で声のした方向へ振り向くリューティリス。

 

そこには……

 

「かふ………俺は、まだ諦めてねぇぞ」

 

頭から大量の血を流し、白の髪が所々、赤く染まっている。体もボロボロだ。しかし、彼は──南雲ハジメはそこに立っていた。

 

「生きてて何よりですわ。ですが、続けるのですか?その体で?」

 

もう今のハジメは満身創痍だ。機神兵に勝てるはずがない。そんなリューティリスの言葉にハジメは、クハッと笑みを浮かべた。

 

「なあ、リューティリス。確か試練の内容は、アイツの胸の鉱石を奪い取ればいいんだろ?」

 

「ええ、そうですが……何故、今、そんなことを───」

 

「じゃあ、終わりだ」

 

ハジメは、パチンッと指を鳴らす。その瞬間、地面から、石壁から鎖が現れ機神兵の腕を、足を拘束した。同時にハジメの手には黒いワイヤーがあり、ワイヤーに繋がれたその先には、引っ張っても大丈夫のように括り巻いて固定された黒の鉱石。

 

「なっ!?」

 

リューティリスは驚愕して声を上げる。何故、どうやって、ここまでの準備をハジメは、いつ行っていたのか。そんなリューティリスの驚愕の表情を遠目で見たハジメは、クハッと不敵に笑みをこぼしながら言う。

 

「俺は、錬成師だぞ?」

 

「!」

 

ハジメの言葉を聞いて、リューティリスはハッとした表情になる。

 

そう、ずっと、この時の為に……

 

バレずにコツコツと、闘技場内を駆け抜ける際に地面も、壁も、相手も傍観者も自分は戦いだけに意識を集中させてると思わせながら、ずっと行っていたのだ〝錬成(トラップ作成)〟を。

 

だからこそ成せた。

 

「俺の勝ちだ」

 

機神兵は拘束された腕を無理矢理に動かす。そのせいで、鎖が壊れていく。何百を何千を超える鎖で拘束してもたった数秒だけ。

 

でも、ハジメにとって十分な時間だ。

 

「ラァッ!!」

 

ハジメは、勢いよく手に持つワイヤーを両手で引っ張った。すると、機神兵の胸に付けられていたパキッと何かが外れる音とともに黒の鉱石が外れ、そのまま、ハジメは釣り上げ、黒の鉱石をキャッチした。

 

そして、鉱石をリューティリス見せながら言う。

 

「ほら、試練クリアだ」

 

そう言って、不敵に笑うハジメを見て、リューティリスも認めざるを得なかった。南雲ハジメという人間の強さに。

 

リューティリスは、機神兵を動きを止めてからハジメの目の前に移動すると、一礼して試練のクリアを伝えた。

 

「認めますわ、南雲ハジメ様。機神の試練突破ですわ」

 

「おう」

 

それを聞いて、笑って返すハジメだっが……

 

その時だった。

 

「「!」」

 

ハジメの手に持った黒の鉱石が黒く輝きだし、ハジメの手の平の上に浮きだしたのだ。それを見たハジメもリューティリスも突然なことに驚きの余り目を見開く。

 

「お、おいっ、リューティリス。なんだ、この鉱石は変に光って浮いてるぞ?」

 

「し、知りませんわ!わたくしも、仲間も鉱石に触れたことあるのに、こういう変化はありませんでしたわ!!」

 

動揺してリューティリスに問うハジメだったが、ハジメ以上に動揺しているリューティリス。それもそうだ。この鉱石は、リューティリスは勿論、他の解放者の六人も触ったことがあるが、何も起きなかったのだ。

 

リューティリスの言葉に、やはり鉱石の変化の原因は、ハジメ自身ということ。正確には、自分の中にいると言われる〝機神〟が原因だと。

 

そして、鉱石は光り輝きながら菱形(ひしがた)から変形し、鍵へと変化した。

 

「鍵?」

 

ハジメは、鍵へと変化した鉱石を見て、なぜ鍵?と疑問に感じたが、鍵はゆっくりと降下していきハジメの手の平に収まる。

 

「鍵、ですわね」

 

「鍵だな……だが、なんの鍵───っ!!」

 

「!?」

 

ハジメの手に収まった鍵は、次の瞬間、ハジメの中に入るかのように消えていくのだ。急いで止めようとしたハジメだが、既に遅く、鍵はハジメの中に入った。と、同時に神代魔法を手に入れた時のように、ハジメの脳裏に何かが侵入してくる。

 

「ぐぅっ……ガァッ!?」

 

初めて神代魔法を手にした時と同じような、いや、それ以上の激痛と共に、膨大な情報がハジメの脳内へと強制インストールされていく。

 

「ぐっ! うっ、ァガッ」

 

そして、激痛に頭を抑え苦しむハジメに更なる何かが流れ込み、ハジメは驚愕する。

 

───それは、記憶だ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

風が吹き、涼しく心地よい。自分は、外の庭園で寝そべっていると理解し、もう一眠りしようとした時だった。自分の耳に聞き慣れた声が聞こえる。

 

『ああ、ここにいたぁ〜! もうっ、デウス! 今日は大事な日だって伝えたのに!』

 

誰かが、自分を呼んでいる。振り向くと、そこに腰まで伸ばした銀髪に、人形と思えるほどの美しい顔に乙女のような美しい瞳をした天使族の双子の妹であり、自分の恋人(・・)の姿だった。

 

自分は、まだ寝たいが起きないと彼女が怒るため、上半身だけを起こして彼女に話しかけた。

 

『ん? もしかして、今日何かあんの?』

 

『だから、今日は───』

 

自分の問に答えようとした彼女だったが、後ろから七人の姿が自分の元へ歩み寄って来ているのが分かり、そちらに視線を向けた。

 

視線を向けた先には、自分の大切な仲間達(・・・)尊敬する主神(・・・・・・)の姿が見えた。

 

『ガハハッ。おい、デウス。お主を探してたぞ!』

 

豪快に笑いながら、自分の傍に駆け寄ると頭をガシガシと撫でてくる白の着物を着た白髪の竜人族の男神。

 

『アハハ〜、デウス〜。まさか、寝てたのー? ホントに君は呑気だなぁ〜』

 

笑みを浮かべてながら歩み寄るのは、自分の知る吸血鬼の彼女のような綺麗な黄金の髪を靡かせ紅いドレスを着た吸血鬼族の女神。

 

『はぁ、全くだ。ホントにお前は……。今日は〝渡り〟の対策の為の会議だと言うのに』

 

趣味である魔導書を読み、少し呆れながら溜息を吐くのは、灰色の髪で浅黒い肌、僅かに尖った耳を持ち、片眼鏡を右目に付けた魔人族の男神。

 

『まあ、いいじゃねぇか!ワタシだっていつも寝てるんだし、それに〝渡り〟の奴等は、ぶっ殺せば終わりじゃね?』

 

そう荒い口調で話すのは、背中に自分の背丈の二倍ほどの大きさの大剣を背負った見覚えのある淡青白色の髪をしたショートヘアで、額に一本の角が生えている亜人族の女神。

 

『………これだから、馬鹿は嫌いです』

 

その横で、そう呟いたのは、背中に純白の翼が生え、腰まで伸ばした銀髪、妹とは違う何の感情を感じさせない瞳を持つ天使族の双子の姉。

 

『全く、エクストラの言う通りだな。それでも、貴様は亜人族を束ねる創獣神(・・・)か?』

 

そう口にして、亜人族の女に呆れた眼差しを送るのは、司祭の服を着た長髪の今は人族の神をしているため、人の姿になっている男神。

 

『ハハッ、良いじゃないか。俺は、エルネシア(・・・・・)らしくて好きだぞ。それに、宮殿に戻らずとも、ここに八神(・・)は揃っているんだ。今回は、綺麗なこの世界を見ながら会議としよう』

 

そう言って全員を纏めるのは、自分に創造主として、ここにいる者達の親みたいな存在である神。白と金を合わせた色合いの服を着た主神ラーゼン。

 

敬愛する主神の言葉に、竜人族の男神は『それは、いいですなぁ!』と笑い、『じゃあ〜、お菓子とかも持ってこよ』と提案する吸血鬼族の女神。『まぁ、外で魔導書を読むのも悪くないな』と呟く魔神などは、ラーゼンの提案に賛成でしている。一方は、『ワタシを馬鹿、馬鹿言うな!殺すぞ!』『へぇ〜、やれるものなら殺ってみてください』と睨み合いながら主神そっちのけで言い合いをする二柱の女神。それを見て頭を抑える男神で、話を聞いてない者達で別れてる。

 

そんな平和な光景に少し笑みをこぼす自分に、そこへ彼女が自分の前に立つて手を差し出した。

 

『デウスも行こ!』

 

『……ああ、そうだな』

 

彼女の言葉に、笑って応える自分は、彼女共に家族とも呼べる仲間達の元に向かうのだった……。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「っ!……ぐぅっ」

 

そんな記憶が脳内に埋め込まれ頭痛の激しさが増し、立つことも出来なくなり地面にのたうち回るハジメ。

 

「ガアァァァァァァァァア゛ア゛!!!」

 

痛みに耐えきれずハジメは、莫大な魔力の余波を放ちながら咆哮……いや、機神の復活の産声を上げた。

 

「っっ!……これほどの魔力」

 

ハジメの近くにいたリューティリスは、莫大の魔力の余波をまともに受けて、ギリギリ正気を保てるかどうかだ。

 

膨大な紅の魔力の奔流は、ハジメを中心に(うず)を巻き天と地を繋ぎ、紅の柱を形成させ、巨大な大樹を鳴動させた。

 

大樹が揺れる。驚きのあまりリューティリスも開いた口が閉まらず、この異常事態を傍観するだけでしかない。

 

 

その膨大な魔力の余波は大樹全体を震わせ、上で最終試練の最中の優花達も影響させた。

 

「っ!?」

 

「なにっ!? この膨大な魔力っ!」

 

「ヤバい奴でも来んのかよ!!」

 

「落ち着きなさい!……って、この魔力の感じ」

 

「うむ。この魔力は……」

 

「……ハジメさん、ですよね」

 

「ですが、これほど膨大な魔力の余波。下からですね」

 

〝半人型〟達と戦闘していた六人は、光輝は言葉を失い、鈴は尋常じゃない膨大な魔力にパニックになり、龍太郎は何かヤバい敵が来るのかと警戒し、雫は三人を落ち着かせながらも、魔力が誰のものかと分かり、ティオ、シア、アレスはハジメのものと理解し心配になる。

 

「早く片付けましょう。ハジメさんが心配です」

 

「うむ。そうじゃな」

 

「ですね。ここで時間を割かれてはいけませんね」

 

そう三人は頷き合うと〝半人型〟達を殲滅を再開する。

 

魔力の余波は〝人型〟と戦う優花とユエにも感じ取っていた。ユエと優花は顔を見合わせる。

 

「……優花」

 

「ええ、分かってる」

 

「……ハジメ。苦しそう」

 

「分かってる。私も早く傍に行きたい。でも、今は──」

 

優花は、〝人型〟に視線を向ける。ユエも優花の言うことは分かっており頷く。

 

「……ん、知ってる。こいつ等が先」

 

ユエも優花も一瞬で分かったハジメが苦しんでることを。早く傍で寄り添いたい。抱き締めたい。

 

だけど、今は壁があって出来ない。

 

なら、二人のすべき事は一つ。

 

「早く片付けるわよ」

 

「……んっ!」

 

二人は〝人型〟という壁を踏破して、すぐにハジメの傍に寄り添うと闘志を燃やすのだった。

 

 

しかし、そんな膨大な魔力の余波は、大樹だけでは留まらなかった。

 

「ボス!?」

 

「なんなのだ……この魔力は」

 

大樹を囲む亜人達が住む樹海にも……

 

 

「おいおいおい、化け物過ぎるだろ。南雲ハジメ」

 

ヘルシャー帝国にも……

 

 

「これは、ハジメさん?」

 

「ハジメ、どうしたんだよ」

 

「ハジメ」

 

「ハジメっち……」

 

大事な友や親友、幼なじみ達がいるハイリヒ王国にも……

 

 

「この、魔力は……ハジメンかな。凄い成長してる、けど無理はいけないよ」

 

ライセン大迷宮にも……

 

 

「パパ?」

 

「あら、どうしたのミュウ?」

 

「パパが頑張ってるの……」

 

「あら、なら応援しましょ?旦那様を」

 

「わかったなの!」

 

大事な娘がいるエリセンでも………

 

 

「!……この魔力。ハジメだぁ♡」

 

愛しの彼を捜して、火山の中の大迷宮を彷徨う黒の獣にも……

 

 

「これはっ───」

 

「ヤバ……何この魔力」

 

「………ハジメクゥン♡」

 

フリードや香織達がいるガーランドにも………

 

トータス全体にハジメの魔力の余波が伝播した。大地を揺らし、魔物達は恐怖で声を上げる。人々は混乱し、ハジメの事を知る人達は彼を心配する。

 

そして、それは天にある神の住処にも……

 

「「「「「?!」」」」」

 

五柱の神達は、覚えのある膨大な魔力の余波を感じ取り目を見開いた。

 

「この魔力っ、完全に復活しおったかデウスゥ!!」

 

拳を握り締め創龍神オルステッドは瞑想を止め、立ち上がりその名を大声で叫ぶ。

 

「嘘……。マジで復活したの……」

 

死んだ者の膨大な魔力を感じ取ったスカーレットは驚きの余り、手に持っていたお気に入りのワイングラスを落として割ってしまう。

 

「ヒィィィィイ!!」

 

魔神アルヴは恐怖で腰を抜かしてしまった。それもそうだ復活したのだあの神が。主神とまともに戦える力を持つ神が……。

 

「…………まさか、愚妹に続いて混ざり者のガラクタまでもですか」

 

エクストラは、平常を保とうとするも隠せず、額にタラリと冷や汗を流す。

 

「デウス、デウス、デウスゥゥゥウ!! 殺す、殺す、殺す、殺すぅ!!!」

 

器を手に入れた破壊の権化は、最も憎い敵の名前を連呼し、殺意がマックスになって狂ってるほどに叫ぶ。

 

そして、最高神ラーゼンも機神の復活に驚くも、ある感情が勝ってしまって、口角を吊り上げている。

 

「……そうか。どのような方法で蘇ったか知らんがデウス。貴様がまた望むなら受けてやろう!我との殺し合いを!」

 

ラーゼンは声高らかに笑いながら両手を広げて叫ぶのであった。

 

 

ハジメの膨大な魔力の余波は、痛みが収まると同時に消えさる。ハジメはゆっくりと立ち上がりながら息を吐いた。

 

「……大丈夫ですの?」

 

「ああ、心配をかけた。俺は平気だ」

 

肩を回したり、手の平をグー、パー繰り返しなど体を動かし、異常は無いと分かる。むしろ、軽くなった気がする。

 

「なあ、リューティリス。頼みがある」

 

「頼み、ですか?」

 

リューティリスは首を傾げてハジメの頼みとはなんだと疑問符を浮かべる。

 

「もう一度、機神兵と戦わせろ」

 

「え?」

 

ハジメの頼みの内容にリューティリスは、一瞬、呆けるがすぐにハッと意識を取り戻して待ったをかける。

 

「駄目ですわ! そんな怪我で、死にますわ!それに貴方様は試練をクリアしてます!」

 

「それは、知ってる。だが、試したいんだ新たな力……いや、取り戻した力を」

 

そう言いながら、ハジメはギュッと自分の右手を握りこぶしをつくる。

 

「ですが、危険ですわ!だから───」

 

リューティリスの言葉を遮るかのように、後方から機械が動く音が聞こえた。対面のハジメは何が起こったのか分かっており、笑みを浮かべる。リューティリスは「え?」と後ろを振り返った。

 

そこには、体に巻き付いて拘束している鎖を壊している機神兵の姿だった。

 

「なんでっ?! 停止させたはずっ」

 

そう、機神兵の制御権限を持つリューティリスは確かに機神兵を動きを止めた。だが、機神兵は動き出した。自分の創造主の力を受け継ぐ者が現れたからだ。

 

「リューティリス。離れとけ」

 

「え?」

 

ハジメはゆっくりと機神兵へ歩み寄る。機神兵も拘束の鎖を全て壊してハジメの方へ動き出す。

 

ハジメは両太腿に取り付けられたホルスターからドンナー&シュラークを手に取る

 

機神兵は、内部機構の修復を行いながらゆっくり動く。

 

そして、両者の距離が三メートル内になって足を止めた。両者相手をジッと見つめ合う。

 

そんな中、ハジメはフッと笑みを浮かべた。

 

「ありがとよ。俺の我儘に付き合って貰って」

 

ハジメの言葉に、機神兵は「問題ない」と言ってるのかゆっくり首を左右に振る。

 

「クハッ……んじゃ、殺り合おうぜ、機神兵……いや、全てを守護する者(ゲートキーパー)

 

その言葉を聞いて、昔に創造主に名付けられた名を言われて機神兵は嬉しそうに頷くように見えた。それを見たハジメは苦笑を漏らす。

 

他愛のない話は終わり、両者は、互いの武器を構えた。

 

一拍。

 

ガキィィィン!!

 

双方が駆け出したと同時に、両者の武器がぶつかり合う。その瞬間、ハジメのハルツィナ大迷宮─本当に最後の試練が始まるのだった……。

 






次回は、優花達の決着の場面です( ̄∇ ̄*)ゞ

後、アンケートお願いします。締め切りは明日ですm(*_ _)m
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