優花達VSゴキブリ戦決着です( ̄∇ ̄*)ゞ
総数五十体の〝人型〟。それすなわち、五十体の〝神の使徒〟。その全てが、残像を引き連れて飛び出した。
同時に降り注ぐのは圧縮された腐食の黒煙。拳大の黒い砲弾が優花とユエに急迫する。それを何故か回避せず、祈りを捧げるかのような二人はお互いの手と額を合わせ、互いの魔力を共有し合う。すると、二人の背後に白銀の魔力と黄金の魔力が共に巨大な魔法陣を描き、その魔法陣の周りを十の聖剣が円を描きながら飛ぶ。
二人から強大な魔力が奔流し、その魔法の名を同時に口をした。
「「───〝
合体最上級魔法──
直後、
魔法陣が白銀と黄金が交わりながら輝き、ユエが作りだした魔法で形成された龍達──〝五天龍〟が魔法陣から顕現する。そして、ユエは優花との魔力を共有したことにより、新たな五体の龍を生み出した………
聖なる光を照らす黄金の龍
───光・重力複合最上級魔法〝聖龍〟
全てを呑み込む暗黒の龍
───魂魄・重力複合最上級魔法〝魔龍〟
激流がとぐろを巻き荒波の如く荒れる激流の龍
───水・重力複合最上級魔法〝水龍〟
空間さえも切り刻む灰色の龍
───空間・重力複合最上級魔法〝空龍〟
何度も再生を繰り返す白天の龍
───再生・重力複合最上級魔法〝天龍〟
が新たに二人の手から顕現し、五天の龍と並ぶ。
優花の助力によって、苦手とした魔法を扱うことを可能にしたユエ。魔力が共有されたことで可能にした複合最上級魔法──〝十天龍〟。
だが、〝十天龍〟は顕現しただけだ。操作は今のユエには出来ない。しかし、そこで優花が操る聖なる武器へと変化させる杭──〝聖杭〟によって可能にさせた。
周りに飛ぶ聖剣達に十の龍達は一体に一つに纏わりつき、龍の星──龍星を作りだし、優花とユエという母星を中心に、目標の対象を狙って動き出した。
それに対抗するは、圧縮された分、腐食のレベルは上がっている黒煙の砲弾。しかし、龍星達はその絶望を前にしても負けることなく優花とユエを腐食の雨から防ぐ盾となり、腐食を喰らうその顎は全てを焼却し、雷鳴を轟かせ、石化させ、凍らせ、風の刃で切り刻み、聖なる光で浄化させ、全てを吸収させ、激流が流れ、空間ごとズラし、腐食させても何度も再生して喰らい付く。
腐食の黒煙は一瞬にして無に帰していく十の龍の咆哮。それは、凄まじい機動力で、幾重にも残像を発生させる〝人型〟達すらも巻き込み十体の数を塵すら残さずに滅した。
とはいえ、流石の機動力を持っても二人の十の咆哮を掻い潜り、上空へと飛翔してくる者達。が、その中にも、酷くダメージを受けている個体が多くいる。
お返しばかりに、腐食の砲撃が極太の槍太となって下方より上がってくる。が、魔龍が立ち塞がり母星に掠りもさせずにブラックホールかのように腐食の砲撃を呑み込んでいく。
そこへ飛来する〝人型〟が三体。同時に、嵐龍、空龍、石龍が相手取る。嵐龍がギロチンと化した風の刃を放ち、空龍は、空間を断絶させる斬撃のブレスを放ち、石龍は全てを石化させていく。
全方向を守る天龍達に死角はなく、二人の左右と下方から追っていた〝人型〟達を強襲する。燃やし、凍らし、滅して〝人型〟を殲滅せんと天を昇り咆哮を上げる。もう、この空間を支配するのは〝人型〟ではない。母星を守る龍星達だ。
二体は辛うじて避けたが、一体は魔龍に近付きすぎたが故に超重力を帯びた長い胴体に捕まり、動く暇も与えないまま、ブラックホールの餌食となる。
そして、龍星達の猛攻に耐え潜り抜けて追っていた〝人型〟を雷龍が立ち塞がり、凄まじい轟音を奔らせながら大口を開く。避けようとも、その雷の顎門に一瞬の抵抗も許さず滅却され消えていく。
追撃と言わんばかりに〝人型〟の後ろから蒼龍が回り込み、雷龍によって立ち往生の状態になっていた〝人型〟を喰らい尽くさんと燐然と燃え盛る蒼炎がうねり、全てを滅する蒼き灼滅の業火の如し咆哮を轟かせながらその顎門で喰らい灰すら残さず焼却していく。
悲鳴を上げる暇もなく〝人型〟は雷鳴を轟かせる龍と蒼く燃え盛る龍によって殲滅された。同時に、挟撃するつもりだった右側面の〝人型〟も、氷龍によって体の髄まで完全に凍らされ飛行能力を失い地面に直撃し砕け散った。
「
「……平気」
頭上に強襲。しかし、警戒することなく嵐龍と空龍によって、木っ端微塵となる。
「そう。ならもう少し威力上げれそ?」
「……んー。
そう話していく二人は、互いの背後に迫った敵を石龍と氷龍で滅ぼす。
「分かったわ。操作は私が引き受ける」
「……ん。じゃ、威力は私」
「ええ、任せたわ」
二人は話を付けると再び、お互いの額を合わす。
すると、十の龍星達が今さっきよりも更に研ぎ澄まされた動きへと変化し、魔法の威力も増している。直後、飛び退こうとした〝人型〟だったが、真白の龍──石龍が一瞬で移動し、とぐろ巻きに動きながら上から石化のブレスを放ち、石化させると下から天へと昇るように上がる嵐龍が移動するついでに石化した〝人型〟をギロチンと化した風刃で粉々にする。
同時に、二人は手を離して〝天龍・星〟を解除した。空間を支配していた龍を纏う聖剣達は、再び、
「……今、準備する。物凄く高度だから」
背中合わせで、少し疲れた表情でユエが言う。
どうやら、今までずっと大技を準備していたために、大規模な魔法の操作などの大半は優花に任せていたらしい。〝想像構成〟による魔法の構築に意識の大半を割り振っているようだ。と、その時、ユエの正面、それなりに距離のある場所で、〝人型〟が魔法陣を形成しているのが見えた。魔法の専門家のユエとして、あれは不味いと危機感が募る。
更に、優花の正面では、わざと集合を解いた〝人型〟が、散弾の如く迫ってきた。全ての腐食黒煙付き。だが、この二人には関係ない。
────精密力は優花が。
────殲滅力はユエが。
ユエと優花は、互いにそう思ったと瞬間に、目線だけを合わせて頷き合うと、目の前の敵を放置して背後へとターンした。同時に。そうであるのが当然の如く。何一つ、背後を心配することなく。
絶大な
まるで鏡合わせのように、互いに背中を預けたまま位置だけ交換した二人は、
「させないわ」
「……させない」
そう言って、得意技を繰り出した。
魔法にも〝核〟になる部分があると最愛の人が教えてくれた。彼は続けて、通常の見えないそれを破壊すれば、魔法は構成が解けて崩れ去る。彼には〝魔眼石〟という義眼を右目に埋め込んでおり、通常の視界が見えない代わりに〝核〟を見ることができる。しかし、自分にはそういう物は持っていない。が、自分には彼女から受け継いだ〝
それに気付いた優花は、この場所の
その規則性に気付いた優花は可能した。最愛の彼のように魔法の〝核〟を視る魔法を。
「──〝
優花の翡翠色の瞳は輝きを失い、神の使徒のような感情を失ったような瞳へと変化した。だが、今の優花には
───天性魔法〝天眼〟
通常では見えない魔力の流れや強弱、属性を色で認識できるようになった上に、魔法の〝核〟も視えるようになる天性魔法。
優花の〝天眼〟は、その〝核〟を見抜く。
針の穴を通すような精密操作が、狙い違わず、発動直後の魔法を聖剣で破壊した。
そして、ユエの方も、黒く渦巻く巨大な闇の渦を一つの
───魂魄・重力複合魔法〝
飛来した腐食の散弾は、拡散したのも虚しく、無数の手によって強制的に一ヶ所に引き寄せられ、丸め込まれてから闇の宝玉へと呑み込まれていく。
「後、残りは三十体弱ぐらいね」
〝人型〟が距離を取って周囲を旋回し出した。どうやら怒涛の攻撃を跳ね除けられ、十の龍の脅威を警戒して、少し慎重になったらしい。
優花は、〝聖杭〟をユエと自分を守るように周りを旋回させて飛ばしつつ、ユエに話しかけた。
「それで、ユエ。そのとっておき、あとどれくらいかかりそう?」
「……ん。優花が守ってくれるなら、二十秒」
その言葉に優花は笑みを浮かべる。
「完全に解けたわね」
「……んっ」
「早く終わらせて、ハジメに甘えたい」
「……んっ、私もハジメによしよしされたい」
「じゃ、行きますかっ」
「……ん!」
感情の反転が完全に解け、早く最愛の彼との再会を。とそんな願望を糧に瞳の輝きが増す。優花とユエは、笑顔で頷き合って敵を見据え直す。
ユエが戦場にあって禁忌の所業──目を閉じるという行為に入った。凄く集中しているのが傍目で分かる。完全に優花に命を預けた体勢だ。
優花は、今さっきのことで天の魔力の理解が深まったことにより、新たな力を手にしたような感覚を味わった。それは、天使の力を受け継いでから階段を一段、一段と上がっいくような感覚で〝天性魔法〟の汎用性、〝聖杭〟の数を増える際に味わっていた。
───その感覚が今、訪れたのだ。
その間にも〝人型〟が、次の手を決めたらしい。数体を残して、残りが一斉に襲いかかった。凄まじい数の腐食の竜巻や砲弾が迫る。
「何もさせないっ──〝限界突破〟!
膨大な白銀の魔力の奔流。〝限界突破〟により、今この瞬間、全てのスペックが三倍に膨れ上がる。更に優花の元に
天使族の聖杭の最大は十二。しかし、それを成した者は絶滅した天使族でも数は少なく、精鋭や王のみだけであった。今も十二を扱えてることが判明してるのは〝五神〟の一柱でありクリスタの双子の姉〝聖母神〟エクストラだけである。
そんな神の領域なる力の一端に優花は至った。いや、正確には取り戻した。
「──〝聖盾〟」
優花の言葉に十二の聖杭達は形状変化して聖なる盾となり、迫っていた全ての黒煙を防ぎきった。
これを使えば、優花といえどタイムリミットが課される。効果時間後は、倦怠感に襲われ、一時的に行動不能になるだろう。だが、心配など欠片はない。頼れる大切な仲間が、請け負ったのだ。全て終わらせる、とっておきの魔法だと。
ならば、やることは簡単。
今この時、大切な仲間を守れば、それでいい。
「〝聖剣〟よ。行きなさい」
主人の意に従うように聖杭達は、〝聖盾〟から十二の〝聖剣〟へと形状変化し、流れる流星のように〝人型〟達へと殺到する。
「「「ギィイイイイッ!?」」」
自分達を殺すまで追尾してくる十二の流星は、精密に敵の未来位置を貫いていく。三倍に跳ね上がったスペックによって、〝聖杭〟達は、更に速度と機動性が増した状態になっている。
ならば背後から。と思っても、そこには既に〝聖剣〟から〝聖槌〟に形状変化していた〝聖杭〟によって遠くへ吹き飛ばされる。
優花とユエを中心に駆け巡る十二の星。それは言葉通り二人を守る空中の絶対要塞だった。
───とても、近付けない。
〝人型〟はそう判断するのに時間はかからなかった。とはいえ、〝人型〟にとって、それは大した問題ではなかった。優花とユエを襲う〝人型〟は全て、陽動であるが故に。
大樹を盾に、反対側に回り込んだ数体の〝人型〟が絶叫を撒き散らす。そうすれば、どこからともなく聞こえてくる、羽ばたきの音と壁を這う音。何処からでも聞こえてくる音で、〝人型〟が呼び寄せる眷属が、この大迷宮中から、否、この樹海中から集められているためか。
「うわ。………最後の最後にっ」
感情反転が解けた今の優花には、この想像するのも嫌になる大量の音には表情が引き攣り、若干、青ざめている。
「もしかして、そんなに沢山湧き出すってことは、〝ネームド〟は、ともかく〝量産〟はそんなにいるって警告なの?」
そんなことを独り言ちた次の瞬間、それは起きた。
地下空間全ての壁の───噴火。
そう錯覚するほどの勢いで、全ての壁からゴキブリの大群が噴出したのだ。それはもう、津波などという表現ではまるで足りない、地下空間の壁の縮小ともいうべき現象だった。噴出するゴキブリで、壁や天井はもちろんのこと、もはや大樹も見えない。シア達の姿も見えず、どうなったのかも分からない。
もし、この地下空間を
優花は直感的に悟った。これは、大迷宮の、引いては解放者達のメッセージだと。
───〝神の使徒〟を、まともに相手取るな。本体を叩け。さもなくば呑まれるぞ
そういうメッセージなのだと。
「だとすれば、この地下空間のどこかに〝本体〟があるってことよね」
おそらく、そうなのだろう。数の暴力に屈する前に、どこかに隠された〝本体〟とも言うべきものを見つけ、そして破壊することが〝本当の攻略方法〟なのだ。
もっとも、
「ルールに従うとは言ってないけど」
ユエの直ぐ傍まで近付くと十二の〝聖剣〟が二人の周りを廻る。
「ラスト三十秒」
優花は時間が迫る中、自分の全力を繰り出す。
優花の雰囲気が変わり、十二の聖杭の白銀の輝きが増し、聖剣の形から巨大な矢へと変化した。その大きさは一つ三メートル以上はある。
その矢尻の形は、まるで星。夜空に浮かぶ星々のように光輝いている。
星は廻転し、更に輝きを増していく。
優花は集中力を極限に高めるためにスッと瞼を下ろす。すると、頭の中から声が聞こえた。
───〝聖杭〟は夜空を駆け巡る輝く星々。
───十二の神星は黄道の道を廻り巡る。
───流るる十二の星々は、我が身を害する敵に星の裁きを与え滅却する。
声に従い詠唱する優花は、両手を合わして星を連想させるような掌印をつくりだす。
しかし、優花のやろうとすることをさせまいと、次の瞬間、ゴギュッという生々しい音と共に、優花とユエの姿が消えた。ゴキブリの閉鎖空間が、一気に圧縮したのだ。圧縮率から見ても、おそらく中心部は深海レベルのプレッシャーがかかっている。金属すら保てないだろう死の領域となっているはずだ。
生き残った〝人型〟数十体が、圧縮された球体の閉鎖空間の周りに集まる。そのうちの一体が、スッと前に進み出て球体を開けようとする。そうして、見えるはずの光景は、無残な姿を晒す二人の大迷宮挑戦者………。
しかし、現実は違った。
直後、球体がゴムのように、軟性の殻を破るかのようには動き爆散した。周りにいた〝人型〟達は瞬時に距離取る。
球体の爆散した場所からは、無傷の優花とユエの姿が現れる。優花は掌印を崩さないまま、両腕を天に掲げた。莫大な魔力が優花の中へと収束していき、圧倒的な存在を示す白銀の魔力の奔流が天と地を繋ぎ合わせた。
今から繰り出されるのは、十二全ての〝聖杭〟が揃ってこそ完成する天使達が編み出した天罰。
黒から白へ、紅から白へ、蒼から白へと全てが何もない平等な白へと染まらす秘技。
───故に最強の絶技。
銀の髪が靡き、背中に生えた純白の天翼が大きく広がり、星の輝きで照らされた優花は、何も言葉を発しないその姿も、まさに天使といえる美しさを見せる。
掌印を解いた優花は、片手を天へ掲げる。それを見た〝人型〟は絶叫を上げて止めに入るが、それを十二の星が立ち塞がり阻止する。そして、その間に既に天の判決が下された。
天へと掲げられた優花の手は、裁きを与える対象へと勢いよく天から地へと振り下ろす。
「十二の星に裁かれなさい!───」
力強く口上を述べ、優花は裁きの名を口にして叫ぶ。
「〝
その瞬間、放たれた十二の光輝く矢が〝人型〟達を強襲を開始した。流星のように天から大地へ裁きを与えるかのように降下していく。
「ギィッ………」
〝人型〟達は、無自覚だった。試練としての使命も、魔物としても本能も、全て無視して後退ったのだ。
生物としての根源的な本能故に。
〝あれ〟はいけないと、紛れもない恐怖が〝人型〟を襲う。同時に、慈悲など無い裁きが下った。
数十体の〝人型〟達のいる場所に、巨大な十二の柱が顕現した。全てを滅するその光の柱達は、そこら一帯を更地にし〝人型〟を跡形も残さず滅却していく。
そんな全てを裁くような勢いで進んでいく柱であったが………
「!?………カフッ」
だが、優花の方もタイムリミットを迎えた。強制的に〝限界突破〟が解け、倦怠感に襲われる。〝
裁きの星々は消え、〝人型〟は心底、安心したのだろう。
だが、現実は甘くはない。〝人型〟は視線を優花に移すと彼女は笑っていた。
そう、優花の役目は、ただ彼女を守るために、死力を尽くしていたのだから……
だから結果は当然、優花は不敵な笑みを浮かべた。
「………カウント、ゼロよ」
優花のお陰で傷一つ付いてないユエは、優花の隣で浮きながら、今、この時、初めて瞑目を解く。
「───〝選定〟」
開眼と同時に、紡がれた言葉。
胸元には祈るように合わされた小さな手。その中から漏れ出す蒼い光が、静かに脈動した。
不可視の、しかし確実に力ある何かが波紋を広げるのを、〝人型〟は明確な恐怖と共に感じ取ってしまった。
ユエが、そっと壊れ物を扱うように、手を開いた。そこにあったのは、渦巻く小さな
それは、まるで小さな蒼色の星。
少しずつ脈動を強めていくその小さな蒼い星をユエは、捧げるかのうように天へ掲げた。自らが生みだした蒼星の輝きに照らされた吸血姫の姿は、どこまでも神秘的で美しい。
ハッと〝人型〟が我を取り戻す。
優花の〝
「───〝
可憐な声で、しかし、残酷に響き渡った詠唱。
直後、その魔法は殲滅の意思の乗せて発動された。
蒼く輝く星が、一際強く波打った。
次の瞬間、蒼き星を中心に光が膨れ上がり、地下空間へ広がっていく。まるで凪いだ水面に落ちた一滴の水滴がもたらす波紋の如く。静かに、穏やかに、されど慈悲など微塵も宿さずに。
まず、閉鎖空間の近くにいたゴキブリが灰燼に帰した。一瞬の内に、一匹も余さず。〝人型〟もまた〝神罰之焔〟と詠われた瞬間、脱兎の如く逃げ出したが、幾ばくも距離を取らない内に、空間全てを蹂躙する蒼の光に捕まって、悲鳴を上げることもできずにあっさりと消滅した。
シア達の姿が見えた。どうやら無事なようだ。
広がり続ける蒼い光は、そのままシア達をも巻き込んで〝半人型〟を呑み込んでいく。一瞬で〝半人型〟を殲滅していく蒼炎に、シア達が焦った表情になるが、アレスは「もう、習得したのですね」と笑みを浮かべている。だが、シア達も直ぐに、焦ることできていること自体に不思議そうな表情となる。そして、自分達を透過して、それどころか大樹や枝通路すら傷一つ付けず、ただゴキブリだけを滅ぼしていく光景に、更に不思議そうな、あるいは戦慄したような表情となった。
不可思議で恐るべき現象の原因。それは、
──火・重力・魂魄複合最上級魔法〝神罰之焔〟
火属性最上級魔法〝蒼天〟を、重力魔法によって計十発分圧縮し、更に、魂魄魔法〝選定〟によって、ユエが指定した魂を持つ者だけ、あるいは指定しなかった魂を者だけ焼き滅ぼす超広域殲滅魔法である。
───ユエに許された存在だけが生き残ることを許される魔法。
───ユエに敵と定まれた者は、逃れ得ぬ消滅を余儀なくされる魔法。
それは最早、〝
ユエという名の神が下す、まさに〝神罰之焔〟というわけだ。〝人型〟が復活してないことからすると、どこかにあったはずの〝本体〟も消滅したに違いない。
「とんでもない魔法ね。流石、ユエ」
「………んん。優花も凄かった」
蒼炎の光が消えて静寂を取り戻した地下空間に、二人の声が響く。流石に、大魔法中の大魔法を放ったせいか疲れた様子でふらついたユエを、優花は、そっと労るように抱きとめた。
ユエは抱きとめくれた優花に微笑み、優花も微笑み返した。だが、優花も流石に〝限界突破〟の倦怠感によりゆっくりと地上へ降り、〝天使化〟を解除する。
戦いが終わり、地上に降り立つも足の力が入らず優花は、そのまま座り込んでしまう。ユエは優花の膝上に座り込んだ。そして、安堵したように一息吐く。
「終わったね」
「……ん。早くハジメの血を飲みたい」
「……ねぇ、ユエ。そ、そんなにハジメの血って美味しいの?」
「……んっ、ハジメの血は最高に美味。他の人と違ってコクが────」
「そ、そう……ハジメの血……ゴクリッ」
戦いが終わり、疲れているのか二人は仲良く少しアブノーマルな会話をするのであった……。
次回は、ハジメと機神兵のラストバトルです。
ハジメの得た新能力もありますのでご期待を( *¯ ꒳¯*)