二話構成です( *¯ ꒳¯*)
樹海の大迷宮を終えて、美しき【フェアベルゲン】にて、しばしの休養を取ることにしたハジメ達。
【フェアベルゲン】側も、都の復興やら負傷者の回復、何より奴隷だった同胞の解放に成功したことで、ハジメ達には大きな恩と好意を抱いてくれているらしく、それが待遇という形で示されているため、ハジメ達は非常に快適な日々を送れていた。
とはいえ、いつまでも平穏に浸っているわけにもいかない。
明日には最後の大迷宮───【氷雪洞窟】に出発すべく、ハジメ達は都の郊外にある静かな広場に集まって、切り株の円卓に座り、明日以降の打ち合わせなどを行っていた。
「つーわけで、氷雪洞窟は、南大陸のシュネー雪原を突破する必要があるわけだが、フェルニルがあれば、まぁ、大した問題はないだろう」
「本当だったら、数十ヶ月はかけて極寒の地を旅しなきゃいけなかったんだよね。ほんと、南雲くんがいて良かったぁ」
「言っとくがな、谷口。ショートカットできるってことは、もしかしたら経験すべき大事な何かをスルーして先へ進むってことかもしれないんだぞ? 楽できて良かったとか、そんな心構えで大丈夫か?」
「うぐっ。……肝に銘じ、集中して挑む、所存です……」
樹海の大迷宮攻略に失敗した身であるから、気を引き締めろと言われれば反論の余地はない。まして、無理を押して同行に願い出たのだ。
ハジメの鋭い眼差しが、光輝や龍太郎に巡る。二人共、苦い表情で頷いた。
そんなハジメを、優花やユエ、ティオとアレスが、どこか温かい目で見ていた。
「…………なんだ?」
視線に気が付いたハジメが訝しむように目を細めた。
「ふふ、なんでもない」
「……ん、何も」
「なんでもないのじゃ」
「なんでもないですよ」
優花達三人は、何故かより一層、ほにゃんとした表情で、首を振り、アレスは口に手を当てて笑みをこぼしていた。妙に居心地が悪い気持ちになるハジメ。そんな優花達とハジメを、雫が交互にチラチラと見ている。なんとなく、雫には優花達の感じているものが分かるようだ。
「(……南雲君。雰囲気が変わったかしら? 前よりも、更に、優しくなった感じ?)」
少し前、この世界に転移する前のハジメなら、鈴や龍太郎はともかく、すこぶる仲が悪い光輝に〝大丈夫か?〟などと聞かなかっただろう。その違和感と、ハジメの纏う雰囲気から、雫は、そんなことを思った。
と、その時、この場に欠けていた二人の仲間が、ようやくやって来た。
「すみませ〜ん、遅くなりました。リューティリスさんにこってり絞られたアルテナを運んでたものですから」
「ご、ごめんなさい、シア。……うぷっ」
「おいおい、大丈夫かよ? アルテナ」
シアに背負われながら魔力の大量消費で吐き気を催すアルテナに、ハジメが心配そうな表情をして、シアとアルテナの方へ歩み寄る。
「平気か?」
「ふふっ、大丈夫です。少し魔力の操作に慣れてないだけですので」
「クハッ……そうかい」
二人の元へ来るとシアの背から降ろされたアルテナを、ごく自然に優しく抱きとめるハジメ。アルテナも、これまたごく自然に、ハジメの胸元に幸せそうに顔を埋めている。
そんな、二人の動きが自然すぎて誰も言えない。
「むぅ」
そんな中、シアが小さく唸る。それに気付くアルテナは「シアもこちらへ」と声をかけると、シアはこやかに笑って頷くと、アルテナと同じようにハジメに密着した。ハジメは苦笑いを浮かべながらも、シアのウサ耳を優しく撫でた。
そんな三人の様子を優花達は気にしてなく、光輝は少し暗い表情で俯く。雫はジッと三人を見詰めている。
「(なんというか、アルテナさんも変わったわね。貫禄?余裕? 落ち着いた感じなのは確かね。原因は、うん、それしかないけど)」
冴え渡る雫さんの人間観察。
ハジメの大切な恋人になれたという事実は、アルテナという少女に絶大な自信を与えたらしい。どことなく、〝少女〟から〝女性〟へと踏み込んでいるような、浮ついたもののない魅力で溢れているようだった。
「そうそう、アルテナを背負いながら此方へ来る途中に、これを頂きましたよ」
そう言って、シアが円卓の上に出したのは、地球でいうところの雑誌のようなものだった。同じものが数冊ある。
それの表示には、こう記されていた。
【月刊フェアベルゲン 再編版第一号】
「……ん? これって、もしかして翼人族の?」
「ええ、翼人族はフェアベルゲンの広報担当の役目を担ってますの。最近は魔人族や帝国の襲撃で止まっていましたのですけど、元々、月一でこれを発行していますので、ほら、皆様も昨日か一昨日か、取材受けませんでしたか?」
「ああ、たしかに来たな。翼人族族長のマオっつー女が、いろいろと、聞いてきた」
「ええ、私もいろいろと聞かれたわね」
同胞が奴隷から解放され、活気づく【フェアベルゲン】ではあるが、失ったものが大きいことに変わりはない。戦死した者達は数知れず、奴隷にされた後亡くなって戻ってこなかった者も多い。多くの同胞が戻ってきてくれたからこそ、戻ってこなかった者達への悲しみも募る。
だからこそ、止まっていた月刊情報誌──普段から、娯楽関係や、明るいニュースをメインを伝えている──を、再開したのだろう。
その再開を記念として、是非ともハジメ達のことを記事にさせてくれと、翼人族族長にして長老の一人であるマオが直々に頼みに来たのである。
ハジメは適当に一冊を、机に置きながらペラっとめくる。
【初代女王リューティリス・ハルツィナ様がご帰還!?】
「へぇ、よくできてるな」
その見出しの出来の良さを見たハジメの賞賛の言葉に全員が覗き見る。
そこには、こう書かれていた。(※一部抜粋)
【この樹海で、我等同胞をまとめ、導き、大樹の守護者であった女王リューティリス・ハルツィナ様が我等の祈りを聞いてか、フェアベルゲンに大樹の妖精として来てくださった。
そして現在、リューティリス様は、新たに魔力が発現された森人族長老アルフレリックの孫娘アルテナ様を弟子に取ったと聞き、その理由を聞くことに成功した。
著者の取材によれば、リューティリス様は「わたくしは、貴方達を守れる力が限られています。ですが、安心してください。今、わたくしが育てているアルテナは、わたくしを超えるだろう実力の持ち主です。ですから安心してくださいまし」と感動せざるを得ない言葉ともにリューティリス様は女神のような美しい微笑みを向けてくださった!(著者は興奮のあまり、そこで意識が途絶えてしまった。)
なんとか意識を取り戻した著者は、僭越ながら、今後ともリューティリス様とアルテナ様の修行するお姿を記事にし同胞達に伝え、アルテナ様の成長を応援したいと思う】
そう書かれた記事を見て、アルテナは嬉しそうに笑みをこぼす。そんな中、光輝も、リューティリスとアルテナの記事を見てか、にこやかに笑いながら一冊手に取った。
「懐かしいなぁ。日本でインタビューされた時のことを思い出すよ」
イケメン剣道男子として剣道関係雑誌に度々……のみならず、ファッション誌やらなんやら、取り敢えずイケメンが映える雑誌に、ということらしい。
元々、そういう事に関して興味のないハジメと龍太郎は特に気にした様子もないが、ここにクラスの男子がいれば、舌打ちの一つは出たかもしれない。
光輝は、何気なくペラペラとめくり、
【勇者様は男色家!? 狙われる南雲殿!】
「なんでぇ!? どういうことだよ!」
雑誌をペシンッと地面に叩きつけた。
他の雑誌に手を取って、全員が該当ページを見てみると、こう書かれていた。(※一部抜粋)
【勇者こと天之川光輝氏は、帝国の奴隷解放のため、帝城への侵入に協力したり、演説の際に一役買ったりと、数々の尽力を頂いた大恩ある方である。
そんな彼に、心奪われた亜人女性は少なくない。著者が独自に調査したところでは、元奴隷の、未婚女性の三割近くが、彼に対して何かしらのアプローチをしたとのことだ。
生憎、想いが成就した女性はいないようだが、ここで一つ、驚愕すべき事実が明らかとなった。
著者の取材によれば、とある女性は、光輝氏に「俺には、今すべきことがある。俺は、南雲よりも……」などと濁した言葉で断られたそうなのだが、その時、偶然にも南雲殿が通りかかり 、光輝氏は、彼の後ろ姿に熱い視線を向けていたのだという。
もうお分かりだろう。光輝氏の言葉に続き。それは「俺は、南雲よりも想える人がいないんだ!」に違いない。彼は、同性である南雲殿に、秘めたる想いを抱いていたのだ!光輝氏の熱い眼差しは、今なお、南雲殿の後ろ姿に向けられているのだろう。僭越ながら、著者は光輝氏の至難の恋路を応援したく思う】
ユエがスッと立ち上がった。光のない瞳が、「勇者、お前を殺す!」と無言の主張をしている。神罰之焔ステンバ〜イ。
同じくシアとアルテナの両名も立ち上がった。光のない瞳が、「ハジメさんのお尻は私達が守りますぅ!」と無言の主張をしている。ドリュッケン&マグナ・アルト(ハジメが作成したアルテナの専用アーティファクト)ステンバ〜イ。
「待てっ、待ってくれ! 悪意だ、悪意を感じるぞ、この記事! ユエさんもシアさんもアルテナさんも、分かるだろ!? 独断と偏見と個人的趣味に悪意がブレンドされた記事じゃないかっ」
光輝、死に物狂いの弁明。
「あ、天之川、お前…………」
「やめろぉっ。南雲! 俺をそんな目で見るな!」
「へぇーー、天之川君。ハジメをそういう目で見てたんだぁ〜。フゥ〜〜ン……」
「園部さん!? お願いだから察してくれ! 決意の視線だよ! 南雲より強くなってみせるっていう、け・つ・い・の・視線!!」
「ケツへ、の視線?」
「龍太郎。今はふざけて良い時じゃない。ぶっ飛ばすぞ」
「男色家ですか……おっと、すみません、鳥肌が……」
「アレスさんも、揶揄うのをやめて下さい!!」
しばらく、光輝を警戒して殺意満々、瞳孔の収縮した目を向け続けるユエと、ドリュッケンとマグナ・アルトから手を離さない荒ぶるウサ耳のシア(ヤクザみたいなメンチ切っている)とエルフ耳のアルテナを押さえることに時間が費やされた。
ようやく落ち着きが戻った広場。一番執り成しに尽力した雫が、どこかぐったりしている。その傍らで光輝が「ありがとう雫。雫ありがとう」を繰り返している。
それくらい、瞳孔収縮ユエ様と、ヤクザアイのシアとアルテナは怖かったらしい。しかし、最も、光輝が恐れていたのは、聖剣に形状変化させた〝聖杭〟を周りに飛ばしながら背筋を凍らすような視線を送っていた優花であるのだが。
「なんか、嫌な予感しかしないが……続き読むか?」
光輝の残状を見たハジメが、微妙な顔をしながら雑誌に目を向ける。雫が、疲れ顔で頷いた。
「逆に、私達の話がどう記録されているのか、チェックしないと怖いのだけど」
「だ、だよねぇ。鈴、せっかく亜人の子達と仲良くなったのに、変な目で見られるようになったりしたら嫌だし……」
取り敢えず、読むことに決定。最初から見ていこうと、それぞれ雑誌を手に取り、一ページ目を開いた。
【第一号特集!! 新長老の姫、シア様のラブロマンスに迫る!】
「姫!? シア様!? なんですかこれぇ!?」
動揺して、シアのウサ耳がぶるんぶるんっと荒ぶっている。その様子にハジメが失笑しつつ頷きながら言う。
「まあ、間違いではないな。ほら、カムは新たな長老の一人になったし、ハウリア族は、英雄の一族でもあるんだ。そして、シアは長老の娘なんだから、一般の亜人からすれば、十分に〝姫様〟であり〝シア様〟なんだろ」
「シアが姫仲間になりましたわ〜!」
「……ん。者共、頭が高い。ここにおられるはシア様なるぞ!」
「くっ……それは、とんだご無礼をシア姫様」
「くふっ…お、お許しくださいシア姫様……ぷっ」
「やめてください、ユエさん! それに、アレスさんも優花さんも、そんな茶番に乗らないください! 羞恥心で死んでしまいます!」
素直に、嬉しそうに喜ぶアルテナ以外の全員が、そんなシアを、どことなくニヤニヤしながら眺めつつ続きを読む。
【新長老カム・ハウリアの娘様であるシア様。彼女の人生は波乱万丈だった。幼き頃にお母上を亡くし、一族揃って樹海を出奔。帝国に追われ、ライセン大峡谷でも、死と隣り合わせ。挙句、樹海に戻れば追放処分!】
「追放処分にしたの、フェアベルゲンですけどね。その決定をした一人は、マオ長老ですけどね」
今はマオは編集長なので、客観的に書いているのだろう。(ハウリア族の追放の件については、魔力持ちの亜人の事情を知って、非常にお怒りになったリューティリスから、マオ含めた長老達は、数時間のお叱りを受けたらしい)
シアが物凄いジト目になっている。ユエばりの凄まじいジト目だ。
【だが、そんな逆境の中、彼女は諦めなかった。だからこそ、出会ったのだ。運命の相手に! そう、我等の英雄である南雲殿に!】
瞬間、シアがジト目をやめて、もじもじし出した。
「あ、改めて言われると恥ずかしいですねぇ」
「全くだ。言われてる俺も恥ずかしいけどな……それに、英雄ってなんだよ………」
まるで、自分達の実話を書籍化されたような気恥ずかしさ。二人の様子に、優花達は微笑ましそうにし、光輝はなんとも言えない表情となり、龍太郎はあからさまに「ケッ」とやさぐれてる。
【シア姫に直撃インタビューを行った。
───南雲殿と出会った当初、やはり運命を感じたのか。どういう印象だったのか。
シア姫「そうですねぇ。運命だったのか分かりませんが、導かれた先に、私とハジメさんは出会いましたから運命かもしれませんね。実際に会った後は、亜人である私に優しく接しくれるハジメさんに驚きました。ハジメさんは『俺は、別の世界から来た人間だからな。変に亜人に対して嫌悪感はない』と、言ってましたが、私にとっては、物凄く嬉しかったですね!」】
「……ん、分かる。吸血鬼の私にもハジメは優しかった」
「本当です、ハジメさんの優しさに嬉し泣きしそうになりましたもん、私」
ハジメが照れてしまったのか明後日の方を向いた。優花達が微笑ましそうにそんなハジメを見る。
【───好意は最初からあったかのか?
シア姫「いえいえ、まさか。一族郎党処刑される寸前だったんですよ?ハジメさんが話をつけてくれるまで、そんな余裕はありませんでしたよ」
なんということだろう。運命の出会いを果たしてなお、シア姫に襲いかかる不幸! 神は、一体どれだけ彼女を追い詰めれば気が済むのか!】
「だから、処刑しようとしたのはフェアベルゲンで、決定したその一人は、この著者のマオ長老なんですけど。私を追い詰めたの、神じゃなくて貴女ですけど!」
「中々、記者魂があるというか……」
「面の皮が厚い方ですね」
【───では、いつ明確に好意を自覚したのか。
シア姫「それはやっぱり、あの時ですね。長老衆に向かって、ハジメさんが言ってくれたんです。『シアは、俺の運命の相手だ! 俺からシアを奪おうってんなら……覚悟して貰おうか』って! 痺れしまいました!」】
「おい、待て。俺は、そんなこと言ってないぞ」
言った覚えがないハジメがジト目を向けながら雑誌にかかれた自分の言葉を否定する。それを耳にした全員の視線がシアに向いた。シアは激しくウサ耳を泳がせた後、冷や汗を一筋流し、
「…………すみません、ちょっと盛りました」
乙女だもの。恋バナを盛っちゃうのは仕方ない。と、思ったのか、生温かい視線がシアに集まる中、ユエがフォローする。
「……でも『俺からこいつらを奪おうってんなら〜』とは言ってた」
「!? ……よ、よく覚えてたなユエ」
ハジメの言葉は、一言一句暗記している……かもしれないユエ。
全員の生温かい視線が、今度はハジメに集中した。ハジメは片手で目元を覆い、珍しいことに「もう少し、言葉を選ぶべきだったな」と、羞恥に震えている。
【絆の深さが窺える。こうして、我等が同胞たるシア姫は、見事、女神である優花様に勝利し、南雲殿の唯一無二の存在となったわけだ。優花様も、シア姫を祝福している様子であった。おそらく、敗北を認め、潔く身を引いたに違いない。シア姫の魅力に勝てるわけがないので、これは仕方のないことだろう。何はともあれ、シア姫の今までの苦労が報われて、我々同胞一同、感動に震える思いである】
優花の顔がぐりんっとシアに向いた。
「シア? これは、どういうこと?」
「ししし、知りませんよ! 私、こんなこと一言も言ってません!」
「わかった。ちょっと、女神の件も含めてマオ編集長と少しオハナシしてくるわ」
「……優花、落ち着いてぇ!」
ユエに腕を掴まれつつも、「安心して、ユエ。少し大きな焼き鳥を作るだけよ」と既に、十二の〝聖杭〟達を外に向けて射出しようとしてる優花。おそらく、〝同胞〟を強調していることから、亜人族達を盛り上げるための演出の一環として、事実を少し曲げて書いたのだろうが……
「い、命知らずな奴じゃなぁ、マオとやらは」
ティオの呟きに雫達も揃って頷いた。
【著者は、南雲殿の周りにいる女性達について、シア姫は何を聞かれているのか分からないといった様子だった。著者は改めて、南雲殿の周りにいる女性達について、どう思ってるかの尋ねた。
この先の、シア姫の言葉は、敢えてそのまま記載させていただく】
シアが、「え!? そのまま!? 軽いコメントで編集するって言ってましたのに!?」と動揺をあらわにする。女性陣の目がキランッとして輝いた。食いつくように雑誌編集目を落とす。
【大好きですよ。私が生まれてきたのは、この人達と出会うためだったんだって思えるくらい、大好きです】
この時点で、シアが「うばぁ」と奇怪な声を上げた。羞恥で真っ赤に染まり、円卓に突っ伏す。「何も聞きたくなぁ〜〜〜〜〜いっ」と言いたげに、ウサ耳を両手で押さえる。
【優花さんは、私の憧れの一人です。周りを、よく見て自分のやるべき事を常に分かっているところが尊敬します。それに、ハジメさんの全て分かってるのか、あんな自然にハジメさんと息の合う連携は、優花さんが一番だと私は思います】
「……恥ずかしいけど、嬉しいわ」
優花は、照れくさそうに頬を染めながら、髪をいじいじする。
【でも、ハジメさんが居ないと時々、臆病になりがちなのは控えて欲しいですね】
「うっ」
「そうじゃのぅ。ハルツィナの時は大変じゃった」
「……ん、ティオママのおかげでなんとかなった」
「うぅ……」
優花は、恥ずかしさのあまり椅子の上で三角座りになって蹲ってしまう。
【でも、そんな優花さんは、やる時は凄くて、見惚れてしまいました。流石は、ハジメさんがこの世で一番愛してると豪語してる理由がわかった気がしました!
私は、そんな優花さんが大好きです! 】
隣のシアに、優花は無言で抱きついた。シアがビクンッと震えるが、優花がお構いなしにくっつく。
【ユエさんは、私にとってお姉さんみたいな存在で、戦いの師匠であって、初めてできた友達です。今の私がいるのはユエさんがいたから。ユエさんを脅かすものは、何があっても、私は許しません】
ユエが、ほんのり頬を染めて、円卓に突っ伏すシアを見つめた。
【ティオさんは、一番私のことを理解してくれていると思うんですよね。ティオさんって、気が付くと、いつも少し離れた場所にいて、なんだか凄く優しい目付きで私達のことを見てるんです】
ティオが「むぅ」と変な声を出した。ちょっぴり頬が染まっているのは気が付かれていたことに照れたからか。
【見守ってくれてるし、いつも心を砕いてくれてるし、どんなことでも、一番落ち着いていて、いつも冷静なのってティオさんなんです。私、思うんですが、実は、ハジメさんって、ある意味一番頼りにしてるのはティオさんなんじゃないかって】
ハジメは、肩をすくめながら苦笑いをこぼす。
【傍にいてくれるだけで、安心できる人。それがティオさんです。皆のお姉さん的な、母親的な人で、私も頼りにしてるし大好きです!】
恥ずかしさのあまりティオは顔を覆いながらハジメに抱きついた。余程、恥ずかしかったらしく、ハジメもティオの頭を撫でると、ティオは下に向けた。口元がむにむにと動いているのは、今、感じている想いを噛み締めているからなのか。ほんのり頬を染めて、長いまつ毛を震わせる姿は、まさに絶世の美女であった。
思わず、見惚れてる光輝と龍太郎。雫や鈴は、甘いお菓子でも頬張ったような表情だ。が、ハジメの睨みに四人はバッと顔を逸らす。
【アルテナですか? 最初は、ムカつく奴だなって思いました】
アルテナが跳ねた。「う、嘘ですよね」と、ショックを隠しきれてない様子。
【ハジメさんに助けられたからって、見え見えアプローチしたり、やけに私に突っかかってくるのでぶっ飛ばしてやろうかとも思いましたよ】
光輝が龍太郎を見て呟いた。
「シアさんって、考え方が龍太郎と似てるな」
「おい、光輝。どういう意味だ、こら」
そんな中、アルテナはそれどころではないようで、食い入るように先を読む。
【しかもっ、しかもですよ! ハジメさんがやたらと気に入ってるんでんですよ!恋人の私を差し置いて、談笑とか色々と私が知らない間にイチャイチャしやがってぇ!】
アルテナの目元に一杯の涙が溜まってしまっている。もしかして、まだ嫌われてるんじゃないかと思ってしまっているのだろう。
【でも、今は、大切な友達であり、仲間です】
アルテナだけでなく、全員が目を丸くして優花に抱きしめられてるシアを見る。シアは、相変わらず羞恥に耐えるように突っ伏したままだ。
【アルテナは、ただの構ってちゃんです。イラッとするほどのですけど。でも、諦めない執念は凄いと思います。私が何度も拒絶しても友達になろうと、ハジメさんにフラれても諦めず努力している姿は、凄く心が強い人だなぁって思いました】
アルテナは大きく目を見開くと、涙を拭って、言葉もなく、ただ打ち震えるように文字を追う。
【だから、妹みたいな感じで好きですよ。アルテナは私が守ります】
「シアァァァァア!!」
感極まったアルテナがシアに勢いよく抱き着いた。シアから「ぐぇっ」と声が漏れる。優花は、咄嗟にシアから離れ回避したが、シアはアルテナと一緒に倒れ込んだ。
「こら、アルテナ! 離れろですぅ!このっ!」
「嫌ですわぁぁ!」
シアが抱き着くアルテナを剥がそうとするが、アルテナも離れずにいてキャットファイトが始まってしまっている。しかし、アルテナを剥がそうとするシアの表情は嫌そうではなく、少し嬉しそうで笑っている。
そんな光景をハジメ達は、微笑ましそうに見るのであった……。
次回は、早め投稿を頑張ります(ㅅ´꒳` )