皆さん、遅くなりましたm(*_ _)m
生存報告とリハビリと兼ねてこの話を投稿します
それは、ある夜のことだった。
ハジメが作成したアーティファクトの一つであり、全長百二十メートルのマンタのような形をした飛空艇〝フェルニル〟。
艇内の設備も凄く、前面高所にあるブリッジと中央にあるリビングのような広間の他、更にキッチン・バス・トイレ付きの居住区まであり、ハジメの趣味を詰め込んだ娯楽施設もあるという。甲板も鍛錬に最適な場所であり、また一風変わった鍛錬も可能である。
そんなフェルニル艇内の広間に六人の女子達が集まってガールズトークで花を咲かせていた。勿論、メンバーは優花、ユエ、シア、ティオ、雫、鈴である。
その他の男メンツはハジメは仮眠、アレスは仮眠中のハジメの代わりでフェルニルの運転、光輝と龍太郎はそれぞれの部屋で夢の中だ。
優花はレースの黒ワンピース、ユエは袖口がブカブカになる程の大きめの赤色のパーカー、シアは水色のTシャツにショートパンツ姿、ティオは髪を下ろして白の襦袢姿、雫は翠色のキャミソールにボトムス姿、鈴はラフな服など皆、寝間着姿であり、シャワーを浴びた後なのか少し頬がほんのりと紅い。特にティオは大人の色気が更に増しており、この場に男共がいたならば鼻血を出して倒れる程だ。
そんな六人は、シアと優花が準備した手作りのお菓子や淹れた紅茶を美味しそうに口にしていた。
「わぁ〜。シアシアが作るクッキーとっても美味しい!」
「いや〜、それほどでもですぅ」
「こっちの、優花のパイも美味しいわ。本当にお店のみたい」
「まぁ、小さい頃からお菓子作りはしてたしね。そう言ってくれるのは、嬉しいわ」
「……ん、本当に二人の作るものは美味しい。けど、言ってくれれば手伝ったのに……」
二人の作ったお菓子を頬張りながらユエが呟く。それを聞いた優花とシアは微妙な表情になると顔を逸らした。
「「大丈夫です」」
「……んん?!」
二人同時に拒否され、目を見開くほど驚くユエ。すると、紅茶を嗜んでいたティオが呆れた目を向けながら追撃する。
「それは、そうじゃろう。ユエは、あの
「……む、未確認物質じゃないっ。ハジメが美味しく食べてくれるもん!」
「いや、あれはハジメがユエを悲しませないためじゃよ。心当たりあるじゃろ?」
「うっ……」
ムッと頬を膨らましプンスカ怒りながら反論するユエだったが、ティオの思いの寄らぬ口撃にユエは言葉に詰まる優花達もそのティオの言葉に察しがつき「あー」と思い出したように言葉を漏らす。
それは、二日程前のこと。まだ〝フェアベルゲン〟に滞在している間に事件は起こった。ユエが料理を担当する亜人の許可なく、こっそり厨房で作った料理をハジメ、アレス、光輝、龍太郎の四人に振る舞ったことから始まった。呼ばれた四人はそれぞれの反応を示しながらも、ユエの作る料理の味を知るハジメは顔を真っ青になりながらも完食。何も知らない三人は、ユエの
案の定、ユエは優花とシアに叱られ、ティオと雫は料理担当の亜人に「ウチ者がすみません!」と謝るのであった。
そして事件後、アレスは何故かユエの料理は危険と判断されたのか〝適応〟が発動してしまい〝耐異常〟の技能が追加されていたらしい。
そんな悲惨な事件を思い出しながら苦笑いを浮かべる女子一同。
「本当、あの時は失念だったわ」
「ですぅ〜。私も、アルテナと一緒に特訓中でしたので……」
「私達もユエがあそこまで料理が出来ないなんて知らなかったしね」
「う、うん……」
「……はうっ」
悪意はない優花達の口撃にユエの心は大ダメージ。胸を抑えたまま蹲り、そのままのそのそと四つん這いになりながら優花の膝上に自分の頭を乗せる。
慰めて欲しいらしく、ユエの気持ちを理解した優花は困った笑みを浮かべながらもユエの頭を撫でる。
「ユエ。今度から、一緒に料理作ってハジメに美味しいって言われるよう頑張ろ?」
「………ん」
「ユエさん! 私もお手伝いますよぉ〜!」
優花とシアの言葉にユエは蹲りながら首を縦に動かす。その光景をティオ、雫、鈴も柔らかい表情で見つめていると、視線に気付いたのか顔を上げる優花。
「そういえばさ、なんか雫、変わったね」
「え、そうかしら?」
「うん。大迷宮攻略後から雰囲気とかね。今日の組手もそうだったけど、動きに迷いがないように見えた」
「あ、私も雫さんの太刀筋が凄くカッコ良く見えました〜」
優花の的を得た言葉とシアの感嘆の言葉に、戸惑う雫はドキッと表情が強ばり、頬を少し赤らめる。それは、雫自身もそう感じており、以前よりも刀を思うがままに振れている。それもこれも、先日の大迷宮の最終試練の際、心が曇る自分に送られたティオの言葉のお蔭だろう。
『その感情は、誰でも抱く。妾も抱くこともある。だが、それを卑下にせず糧にするんじゃ。そうして妾達は強くなっていくのじゃ』
『胸を張って良いのじゃよ、雫。そこまでの剣術も、その努力も、今この場に役立っていることも、お主は誇って良い』
『雫。お主のことも、妾が守ろうぞ。天職〝守護者〟を持つ、黒竜ティオ・クラルスの名に懸けて』
ティオの言葉が頭の中を過ぎりながら、チラリと雫はティオの方へ視線を向けると、なんとも意味ありげなニンマリとした表情でこちらを見詰めており、目が合った瞬間、ティオを〝お姉様〟と呼びそうになったことを思い出してしまい顔を真っ赤にして視線を逸らす。
「ん? 雫、ティオと何かあったの?」
「そういえば、最終試練の際に雫さん。ティオさんと一緒にいましたね」
「……そうなの、ティオ?」
ユエの言葉に、ティオはクスッと笑みをこぼしながら答えた。
「ふふっ、妾はただ少し小さな悩みを抱える子供をあやしたに過ぎんよ」
「つっ〜〜〜」
それを聞いて、恥ずかしくても何も言い返せずに言葉を詰まらす雫は、このままじゃ私だけが恥ずかしい思いをする!?と、なんとか話題を変えようと自分の脳をフル回転させる。
そして、チラリと前を向けると、一人の少女が目に入ったは「これだ!」と雫すぐさま口を開く。
「変わったって言えば、優花もだいぶ私達の中では印象が変わったわよ」
「へ、そう?」
やや早口になってる雫の言葉に、パイを摘んでいた優花がキョトンと首を傾げるが、クッキーを頬張っていた鈴が雫の言葉に頷く。思い当たる節があるらしい。
「うんうん。日本にいた時のユウカちゃんって、挨拶はしてくれるし、人当たりも良いから凄く優しい人なのは分かってたけど、何か近寄り難いなぁ〜って感じだったね」
「え、嘘!?」
鈴の発言に驚いて口元を手で覆う優花。
「まさか、優花、知らなかったの?だって、あの南雲君を止めれるのは優花ぐらいだったし……私は平気だったけど、他の子達は気軽に話し掛けるのは難しそうだったわ。特に男子は」
雫の言葉にうんうんと頷いている鈴。ユエ達異世界組は知らないが、ハジメは学校全体で不良と周知されており(光輝とぶつかることが多い為、周りからそう思われている)、そんなハジメを止めれる唯一の人物は幼なじみである優花ぐらいしかいないのだ。しかし、当の本人の優花は、「そんなにハジメは怖くないけどな〜」と少し不満気に唇を尖らす。そんな彼女も〝裏女神〟と呼ばれてることなど知る由もない。
「……もう少し聞きたい。特にハジメのこと」
「私も、優花さん達の故郷について知りたいですぅ」
「うむ、妾も興味あるのぅ」
「ふふっ、わかった。じゃあ、ハジメがよく浩介と一緒に浮気してた行きつけのカフェについて話そっか」
「……! その話、気になる!」
日本の話をハジメからしか聞いたことがないユエやシア、ティオが優花達の日本での話に興味を示す。それを聞いて悪戯な笑みをこぼした優花がハジメのやらかし集を ユエ達に話すのであった。何故か平静な面持ちしていた雫も耳を傾けていたことは黙っておこう。
時間は経ち、女性陣は日本の話題からオシャレな服装へと変わっていき、鈴が懐かしむように口を開いた。
「でも、初めてシアシアと会った時びっくりしたなぁ〜。戦ってる時もパンツ丸見えだったし」
「ちょっ、鈴さん!どこ見てるんですか!? 一応、見せパンですが恥ずかしいですぅ!」
「私はティオさんに驚いたわ。この世界に着物姿の人がいるなんてね」
「まぁ、この世界では珍しいじゃろうな。この服は、繊維に竜鱗も混ぜた防御性能も備わった妾達、竜人族の伝統的な衣服なのじゃよ」
「へぇ、それは凄いですね」
因みにだが、ティオの着物にはハジメが〝金剛〟等を付与を施しているので更にその性能が上がっている。
「ユエはそういうのなかったの?」
「……んー……吸血鬼族には余り、そういうのはなかった。強いて言えばドレスなんかが多かった」
優花の質問に少し苦しそうな表情になりながら答えるユエ。それを見た優花がハッと口元を抑える。
「あー……そういえば、ユエって王女様だったね。ごめん、嫌なことを思い出しちゃった?」
「……もう昔のこと。今の私はユエ。優花の大切な仲間で、一緒にハジメを支える一人だから」
そう答えて優花の膝上に乗るユエに、優花は嬉しそうに「ありがと」と言いながらユエの頭を撫でる。
「後、服と言えばアレスさんは、全身白一色で、The神官って感じだよね。本当に神官だけど」
「ま、その本人は、神に叛逆してますけどね」
シアの言葉に女子一同「確かに」と口を揃える。
「そんなアレスさんの逆に南雲君は黒要素が多めよね」
「ハジメは昔から黒系の服を好んでたからね」
「確か、あの服を仕立てのはユエと聞いておるが……」
「……ん、ハジメにどんな服が良い?って聞いたらあれが良いって言ったから仕立てた」
職人ユエの言葉を聞いてやっぱりーと、納得した表情をした鈴が口を開く。
「じゃあ、やっぱり南雲くんってそういう系が好──」
「谷口さん、それ以上の言及は止めてくれる。怒るよ?ハジメだって趣味があるの」※ハジメ厄介オタク
「ええ、そうよ鈴。貴女だってこういう事は知人に言われたくないでしょ?」※可愛い物好き
「ご、ごめんなさいぃ」
しかし、口にした矢先、二人から伝わる覇気に鈴は即座に土下座に入る。異世界組の三人は話の内容がよく分からず首を傾げている。
「でも、服と言えば一番変わったのは優花よね」
「!」
雫の一言に、優花は口にしていた紅茶を吹き出し、ビクゥッと肩を震わせる。
「……ん、シアみたいに大胆になってる」
「あの、ユエさん。どういう意味ですかね?でも、まぁ……私も優花さんの服装には大胆にしたなぁ〜って思いましたけど」
「妾も、流石にあの装いは驚いたのぅ。じゃが、妾的にせくしーだと思うぞ優花?」
「えっ、と……鈴は、可愛いと思っとるよ!」
さらっと口にするユエの感想に頬を引きつらせながらもユエの言葉に同意するシア。ウンウンと頷きながら悪戯な笑みを向けるティオ。何とかフォローをしようとする鈴。しかし、それが追撃となり優花の心にダメージが入り「カフッ」と声が漏れる。
「だって、〝天使化〟になる時、翼の邪魔になるんだもん……」
皆からの悪気はない口撃に、恥ずかしさの余り顔を真っ赤にした優花がプルプルと唇を震わせながら力なく呟く。それは、否定ではなく肯定だった。
その言葉は正しく、優花の戦闘服は下は、黒のニーソにスカートという普通な感じであるのだが、上は〝天使化〟する際、背中に生えた翼を広げるのに、普通の服だと邪魔になってしまう。故に、優花の戦闘服は背中が丸見えといった男共が大歓喜の声を上げるような少し際どい服になっている。
本人は不本意だが、強敵との戦闘には〝天使化〟は必須。天使の翼も防御力が高い為、盾にもなるのだ。
「うぅ、恥ずかしぃ……」
顔を手で覆い隠して耳まで真っ赤にして喋れる状況じゃない優花。すると、雫がユエに聞く。
「ねぇ、ユエ。南雲君は優花の服にどんな反応だったのかしら?」
「鼻血を出しながら数メートル後ろに飛んだ」
「鼻血?! 飛んだぁ!?」
ユエ曰く、優花の要望を聞いて急いで仕上げた服装を身に着けた優花を見たハジメは鼻血を勢いよく吹き出しながら後ろへぶっ飛んでいき、その表情は凄く幸せそうだったらしい。
「だから、ハジメの戦闘に妨げになると思ってフードも作った」
そんな優花に耐性がカスであるハジメの為にユエは背中を隠し、〝天使化〟しても翼の邪魔にならないショート丈のパーカーを作ったのであった。
「そいうことだったのね」
「でも、凄く似合ってるよユウカちゃん!」
「あ、ありがと」
ユエの説明に納得する雫に、鈴の褒め言葉に少し嬉しそうに答える優花。
「それにしても南雲君は本当に優花に事に関しては弱いのね」
「……ん、ハジメは優花耐性の数値はマイナス10000」
「ぷっ、何よそれ」
ユエの言葉にツボったのか笑う雫。すると、優花の隣にいたシアが「あ」と口を漏らす。
「そうえば、優花さんの背中を見た男は両目を絶対に潰すってハジメさんが言ってましたね」
「…………光輝と龍太郎にはキツく言っておくわ」
自分の幼なじみ達二人が仲間の生背中を見て失明する事態は全力で回避しようと誓った雫であった。
「でも、明日には着くんだよね。最後の大迷宮……」
そう口にしたのは鈴。その表情は少し感慨深そうな表情は色々な感情が混じっており、その理由も優花達は知っている。
「今度はどんな試練が待っているんだろうね?」
「うむ。これまでの大迷宮と同じなら過酷であろうな。ユエは知っておるか?」
優花の言葉にティオは、これまでの大迷宮の経験から危険であることは変わりないだろうと仮定し、この中で氷雪洞窟の大迷宮を攻略した魔人族フリード・バグアーと話したことのあるユエに話を振った。
「……フリードからは詳しく教えて貰えなかったけど、己を見詰め直せる試練とは聞いた」
ユエは、フリードから余り詳しく教えて貰えなかったが、知れた範囲のことを優花達に話す。
「己を見詰め直す、ですか………」
「それが、氷雪洞窟の大迷宮のコンセプトじゃろうよ」
そう分析するティオに頷く一同は、少し表情に不安が見えている。鈴などは特に思い詰めているのか顔を俯かせている。
「絆の次は、自分自身、か」
「次も厳しい戦いになりそうね……」
「……ん、でもいつも通り乗り越えていけば良い」
「ユエさんの言う通りです!」
「うむ、ユエの言う通りじゃ。妾達はこれまでのように乗り越えていけば良い。それが、大迷宮を創った解放者達の目的であるのじゃからな」
「ふふっ、そうよね。いつも通り私達は突き進んでいけばいい」
ユエの言葉を聞いてか、優花達の不安が薄れていく。しかし、まだ顔を俯かせている鈴に隣に座る雫が心配そうに声をかける。
「……鈴」
「大丈夫だよシズシズ……。前に南雲くんに伝えたように恵理を止めるんだ。それが鈴のやらなくちゃいけないことだから、安心して」
「鈴……そうね。ええ、貴女はそうだったわね。私も……(香織を止めないとね)」
そんな鈴の覚悟を決めた表情を見てしまったのか、雫自身も感化されて強く頷く。だが、その時、パンッと手を叩く音が聞こえ、音がした方向に視線を向けると手を合わせた優花の姿があった。
「はい! 真剣な話はこれでお終い。根を詰めすぎたら疲れるわよ? 」
そう言って、優花は「よし、何話す?」と次の話題を求めると調子が戻ったのか元気な鈴が「じゃあ、恋バナしよ! 最初はシズシズからね!」と意気揚々と声を上げる。すると、雫から「なんで私?!」と声を荒あげるも「お、それは面白いですねぇ〜」「……ん、私も雫には聞きたいことがある」とシアとユエも話に乗り、雫から「嘘〜!」とあたふたとしている。
そんな中、ティオは「ほぅ」と声を漏らす。
「(流石は優花、張り詰め過ぎると録なことをよく分かっておる。これまで、ハジメの隣でずっと支えてきていたことだけはある)」
そうティオは優花に感心を抱いていると、「ティオさーん。雫さんの口を割らせるのを手伝って下さいよ〜」とシアから声がかかる。
「ふふ、わかったのじゃ」
そう返すとティオはこんな楽しい一夜も有りじゃな、と内心思いながら笑みを零す。そして、自分のカップの残りの紅茶を飲み干して顔を赤くする雫の元へと近付く。
「ほれ、雫よ。お主の慕うお姉様である妾に好いてる者を教えてたもう〜」
「へ、お姉様?」
「ちょっ、ティオさん!?」
その後、楽しい女子会の夜は続くのであった。顔を真っ赤にした雫の叫びを添えて……
その翌朝、目の隈が酷く何故かゲッソリしている雫の姿に、理由を知らない男性陣は不思議そうに朝食のパンを齧りながら首を傾げるのであった……。
次回は本編です。
今度は、もう少し早く投稿できるよう努力したいと思います( ̄∇ ̄*)ゞ