なんとか投稿できた〜ε-(´∀`;)
アレスがチャクラム達三人の鬼人との戦いが始まったのと同時刻。
飛空艇〝フェルニル〟を防衛をしていたハジメ達のところにも二つの脅威が現れていた。
其の名は鬼人族。
「鬼人族……二人共、知ってる?」
「いえ、初めて聞きました」
〝妾も初めて聞く種族の名じゃな〟
優花が同じ亜人族であるシアとティオに聞くが、二人は知らないと首を横に振る。すると、思いがけない人物が口を開いた。
「鬼人族。創獣神エルネシア・ハルツィナが樹海と他種族間の均衡を保つべく従来の亜人族達の中で選りすぐりの者達に自分の力を与えたことにより誕生した亜人最強種の連中だ」
そう答えたのは、ハジメだった。目の前の連中を知っているかのように話すその姿は、優花達をより一層、困惑させる。対して、ジャブラと呼ばれた男はニィッと笑みを浮かばすと、隣の少年の鬼人に指示を送る。
「カラ、奴等の飛空艇を潰せ」
「ッス!」
指示されたカラと呼ばれた三角帽子を被った額に二本の角が生えた鬼人族の少年は気合いの入った返事をしてハジメ達の飛空艇〝フェルニル〟を潰そうと突撃する。
しかし、十二の銀の長方形の杭がそれを阻む。カラはバックステップして避け切るも、カラに影が差し込む。
「っ!」
次は何だと見上げた先には、
「どっせい、ですぅ!」
「!」
ドリュッケンを振り落とすシアの姿がそこにあった。その姿に、いや、シアを見て大きく目を見開いたカラの動きが一瞬、止まる。
「は!、〝錐流〟・
しかし、体が反射的に動き、振り落とされる寸前にカラは自身の手を地面に付けると、次の瞬間、カラを覆うように地面から這い出た土のドームをつくり上げる。
「しゃらくせぇですぅ!!」
声を張り上げながらシアの振り落とされたドリュッケンがドームに直撃する。
しかし、
「な、硬っ!?」
声を上げたのはシア。視線の先にはヒビ割れただけでシアの渾身の一撃を防いだドームが見えた。余りの硬さにシアの両手がジンジンと痺れる。その時だった、ドームの表面から無数の棘が姿を表す。それを見たシアは「あ、ヤバ」と本能的に察する。
案の定、ドーム表面の棘が伸び、シアに襲いかかった。
「ひゃあ〜!」
襲いかかる棘に、悲鳴を上げながら避け、退避するシア。しかし、棘の方もしつこくシアを追いかけていく。そして、後数センチの所へと迫った時、白銀の魔力を纏う数本の聖剣がシアを追う棘を破壊する。
「シア!」
「優花さぁ〜ん」
助けてくれた天使─優花を見て、シアの表情が安堵に変わる。しかし、優花はフェルニルを守っている筈だと、尋ねると、優花は「大丈夫」と口にする。
「今、六の〝聖杖〟に形状変化させた聖杭で結界を張ってるから」
そう、今優花の周りに飛び回る聖杭の数は六。残りはフェルニルの守る結界を張っているのだ。
「でも、流石に長くは無理そうだから、シアのサポートに回るわ」
「了解ですぅ!」
シアはドリュッケンを強く握る。その隣で優花も四つの聖杭達を〝聖槌〟へ、二つの聖杭を〝聖盾〟へと形状変化させて戦闘態勢に入る。二人の視線の先にはドームの中から現れた無傷のカラ。
カラは再び、地面から棘をつくり出し駆け出す。
「っ……邪魔です!!」
「知りませんよ!」
土の棘と二人の武器がぶつかる。
カラVSシア&優花の戦いが始まった。
場面は変わり、シア達とは違ってハジメとジャブラは睨み合っていた。
ジャブラは、殺気に満ち溢れ、ギラついた瞳がハジメを捉え、獰猛な笑みを覗かせている。対してハジメも〝威圧〟を放ちながら睨み返す。傍にいるティオも竜化のままハジメを守るように動く。
そんなお互いが睨み合って動かない中、先に動いたのはジャブラの方だった。二メートルは軽く越え、筋骨隆々な肉体。そんな巨躯の男が一瞬で二人の前から消える。
そして、二十メートル離れた気をつけ距離を一気に詰めたジャブラの巨大な拳が目の先まで迫ってきたいた。一瞬、反応に遅れたハジメは目を見開く。
「っ!?」
防御は不味い。と、ハジメの本能が告げ、防ぐより回避を取る。突き出された拳は、ハジメの目でもギリギリ追い付ける程のスピード。咄嗟に〝瞬光〟を発動して自身の知覚機能を最大限に拡大させたハジメは、体を大きくのけ反って紙一重に避ける。
次の瞬間、ゴウッと風切り音が鳴ると共に突き出されたジャブラの拳から強風を生みだしハジメの髪が大きく靡かせる。その強風にティオもやっとジャブラに気が付き、驚きの声を上げる。
「(危ねぇーーー!)」
〝ぬお?!〟
「む、避けたか……!」
避けられたことに気付くジャブラであったが、次の瞬間、腹部に衝撃が走る。ハジメだ。拳を避けると同時に右足を軸にして回し蹴りを繰り出していたのだ。
「しっ」
ハジメの追撃は終わらず、バックステップして少し距離を取ると〝宝物庫〟から取り出した〝焼夷手榴弾・雷〟を手に取って、こちらを追う前に口でピンを抜くと、ジャブラの顔面へと勢いよく投げつけた。
「む?」
直後、〝焼夷手榴弾・雷〟が破裂し、摂氏三千度の燃え盛るタールと紅の雷がジャブラを襲う。相手の顔面に手榴弾を投げつけるとは人道的ではないが、今は関係ない。
「(こいつはヤベェ!!)」
ハジメは本能が感じ取ってしまう。いや、自身の中にいる
故に、速攻に、隙が多くある今しか勝ち筋が見えないハジメは追撃を繰り返す。〝オルカン〟と〝メツェライ〟を〝宝物庫〟から取り出し、一斉掃射を開始する。十を超えるミサイル弾と電磁加速された千を軽く超える無数の弾丸が今も尚、煙で姿が見えないジャブラへと降り注ぐ。
〝ハジメ、どうしたのじゃ!〟
ハジメの焦り具合に、心配したのか呼びかけるティオに、構っている暇はないハジメは今、現状最優先と言えるべきことを伝える。
「ティオ! ブレスを撃て!」
何故そこまでと、言いたいティオであるが、ハジメがそう言うにはそうすべき理由があるのだと判断したティオはハジメの言葉に従う。
〝……了解じゃ!〟
ティオは訳が分からずとも、ハジメの言葉を信じる。
口元から自身の魔力を一点へと集約し、高密度な魔力砲弾へと変わる。
〝これが最大火力のブレスよお!!〟
轟音と共に黒色の閃光を放ち、膨大な熱量を持ったブレスがジャブラ諸共、辺り一帯を呑み込んでいく。
「団長!?」
場所は変わって、カラがブレスに直撃したジャブラを心配した様子で声を上げる。しかし、そんなカラも余裕ではなかった。
「どりゃあああ!」
「チィっ、やりにくい!」
シアの〝未来視〟の派生〝天啓視〟によって的確にカラの移動先を読まれ、逃げようとしてもシアはわざと囲い込むように攻撃して逃がさず、攻撃を避けたとしても、そこを補うように優花がシアに〝
だが、その数秒後経った時だった。三人の横を黒い影が横切った後、大木の大きな破砕音が鳴り響く。何事?!と、驚いた様子で音がした方向に振り向いた優花とシアの表情が真っ青に染まる。
そこには、折れた大木にめり込んでハジメの姿があった。
「ハジメ!?」
「ハジメさん!?」
項垂れるハジメの姿に驚愕しながら優花とシアはハジメに呼びかける。しかし、ハジメの返事はなく、動く気配も微塵もない。その直後、今度は〝くうっっ!〟と苦痛の叫びを上げながら此方へと吹き飛ばされた黒竜の姿が二人の目に入る。
「ティオ!」
優花は急いで吹き飛ばされているティオを〝聖盾〟で受け止める。
「ティオ、無事!?」
〝うぅ……すまぬ優花、助かった〟
頑丈な竜鱗がヒビ割れてしまって痛々しいその姿を見て驚愕のあまり優花は両手で口を覆う。直後、限界だったのか力が抜けるように人型に戻ったティオはそのまま眠るように気を失う。優花は咄嗟にティオを抱きとめると、大木に埋め込まれてるハジメと共に〝聖杖〟を使って回復させていく。
「ハジメとティオがここまで……」
優花は、あの二人が意図も容易く押し負けている姿に息を飲む。すると、そこへ何者かが優花の前に姿を見せた。
「まさか、天使族までいようとはな。それに、この懐かしき魔力……姿は変わってはいるが貴様〝慈神〟だな?」
「っ!」
現れたのは、ハジメの一斉放射とティオの渾身のブレスを真っ正面から受けた筈のジャブラであった。しかし、その姿は服がボロボロで少し火傷を負ってる程度で、それ以外は無傷に等しかった。
「アンタが二人をっ」
キッとジャブラを睨みつける優花。しかし、ジャブラは物怖じとせず、逆に優花を睨み返す。それも、ハジメに見せた同じように激しい憎しみを瞳に宿しながら、
「黙れ、貴様等の方が許せないことをしてるだろう」
「は? 何言って──」
優花の言葉が詰まる。理由は一つ、先程まで離れていたジャブラとの距離が縮まってしまっているからだ。優花から「え?」と声が漏れる。
「積年の恨み……ここで果たす!死ね慈神!!」
手に持っていた金属塊を横薙ぎに優花に向かって振るった。優花も咄嗟に避けようとしても既に手遅れ。頭部が吹き飛ばされるという数秒先の最悪の未来が過ぎり、せめて気を失っているティオを守ろうと抱き締め、ギュッと目を瞑った。
しかし、その一撃は優花に届くことはなかった。
不思議に思った優花は瞑っていた目を開けると、そこには振るわれた金属塊は、柩型の大盾によって阻まれていた。そして、大盾を持つ白髪の人物の姿に優花の瞳が歓喜が宿り、その名を呼ぶ。
「ハジメ!」
優花が呼んだ通り、先程まで吹き飛ばされ意識を失っていた筈のハジメの姿がそこにおり、金属塊が振るわれる一瞬に、優花の前に移動して〝宝物庫〟から大盾を取り出し直撃を防いだのである。その間までの時間は一秒弱。
ジャブラは憎らしげに、ハジメは不敵な笑みで互いを睨み、力を強めていく。金属塊と大盾からギチギチと音が聞こえだす。
「……丈夫だな、数時間は寝てると思っていたが」
「クハッ、俺のタフさと優花の回復魔法を舐めんな」
元から化け物じみたタフさを持つハジメは、ジャブラの攻撃を受けても意識は失わずいたが体が思うように動かなかった。しかし、優花の〝聖杖〟による治癒魔法と再生魔法のおかげで戦える程度まで回復したのである。
「ハジメ……」
「優花、ティオを連れて下がってろ」
「……うん」
ハジメを心配そうに見つめる優花に、ハジメは横目でそのの姿を捉えながらここから逃げろと促し、優花もハジメの戦いの邪魔になると分かっており首をコクリと頷いた後、ティオを連れて後方へ下がっていく。
優花がティオを連れて離れていくのを横目で見届けたハジメは、視線を前に向ける。
残った二人、一切も隙を見せず睨み合う。ハジメも優花達が下がった今、存分に力を奮える状態。
刹那、
ズドンッと爆砕音と共に二人のいた場所にクレーターが出来上がる。ハジメは義手に装着していたくの字に曲がってしまった大盾を〝宝物庫〟にしまうと同時に黒き大槍〝
「第2ラウンドといこうかクソ鬼!!」
先制はハジメ。一気に距離を詰め〝神喰雷槍〟でジャブラの金属塊を押さえつけると、顔面に向かって数発レールガンを放つ。同時に、〝竜鱗化〟、〝集中強化〟させた右足の蹴りをお見舞いするも、ジャブラは全く効いてないのかハジメの右足を握り潰すぐらいに掴むと投げ飛ばす。
「ぐっ!(今さっきので確実に折れたな)」
「貴様はこの程度かぁ!!」
ハジメの戦いに対して苛立ちを募らすジャブラは、乱暴に金属塊を振り回す。だが、その乱暴さは的確に狙いが定められており、ハジメは上手く武器の軌道を予測、回避、防御、逸らすことでなんとか切り抜けると、反撃も行う。
「穿てっ──〝轟雷方天戟〟!」
突き出した右手から、赤雷の大槍がジャブラへと直撃して視界を一時的に奪う。同時に駆け出したハジメは、赤雷を纏わせた〝神喰雷槍〟で左肩に突き刺し肉を抉る。
「………」
「ちっ、これでも無反応かよ!」
しかし、轟く赤雷の雷槍を受け、肉を抉るも全く表情を変えないジャブラに対してハジメは「テメェは、本当に生き物かぁ!?」と口走りながら舌打ちする。
しかし、攻撃を緩めず「〝紅狼〟──
そして、ハジメはジャブラの背後へと回り込むと片足を天高く上げると勢いよく踵を振り落とした。
「死ねぇ!!」
叫びながら繰り出したハジメの一撃は、ジャブラへと直撃し左足に集中的に纏っていた赤雷が四方八方に紅の落雷が降り注ぐ。大地を砕くほどの赤雷はジャブラを襲い、辺りに砂埃が舞う。
ハジメは踵を落とした後、着地すると目の前の敵の様子を窺う。やがて砂埃が晴れ、ハジメの目に見えた有様に驚愕しかなかった。
「嘘だろ?」
そこには、あれ程の雷を喰らっても、ハジメが踵落としした後頭部を摩るだけで平然と立っているジャブラの姿があった。
「あれは効いたぞ、デウス」
「化け物がっ」
ハジメは、ジャブラの無傷の姿を見た瞬間、左のホルスターからシュラークを抜きとり右手に持つ〝ドンナー〟と共にガン=カタの構えを取る。
「………今度は玉遊び、か」
そう言うとジャブラは、金属塊を地面に叩き落とす。瞬間、地面が谷のように割れ隆起していく。
「くっ」
ハジメは、折れた右足を庇いながらも隆起した地面の破片を足場にしながら、空中を飛び跳ねる。同時に周りの自身の目に映るもの全てを記憶し解析する。
直後、ハジメから放たれた紅き流星が空間を蹂躙し、遅れて破裂音が轟く。その回数は既に六。計七十二の閃光がジャブラを襲う。
ハジメの〝
七十二の閃光の射線上は、的確にジャブラの関節など急所を狙い、たとえ振り払おうとも弾いた弾丸が、隆起した地面に、周りに薙ぎ倒れた大木に、同じ弾丸同士に、ぶつかり跳弾する。そして、跳弾した閃光の射角は全て再び、ジャブラへと向かいだした。
その精度は、新たに手に入れた神代魔法〝昇華魔法〟により、更に分析把握能力、情報処理能力が増し、正確性が増している。
これこそ、空間の支配するハジメの銃技。
地形の分析把握能力。普通なら脳が焼き切れる程の情報量を処理する能力があって為せる
しかし、
「跳ね返しても返ってくる弾……まさに神技か──面白い。だがな」
古代から生きる傑物の──
「ふん!」
圧倒的な力の前には意味を成さない。
「俺には無駄だ」
たった一振。その一振から生じた風圧で返ってくる全ての閃光をジャブラは吹き飛ばした。
「────」
ハジメのその光景に圧倒され言葉を失い、開いた口が閉まらず呆然と立ち尽くしてしまう。
「殺し合いの最中に呆けるとはいい度胸だな? 」
「っ!」
ジャブラの言葉で意識が戻るハジメ。両手で金属塊を持つと自分の体ごとクルクルとコマのように回り出していく。
「(また、あれか!?)」
場の空気が変わる。そして、クルクルとコマのように回るジャブラの動きを見て、その意味を知るハジメに眉を顰めると「最悪だ」と口をこぼす。
そう、あの動きこそ〝竜化〟したティオを一撃で沈め、ハジメを戦闘不能に近い状態に追いやった一撃。回るジャブラを中心に竜巻が生まれ、更に回転速度が上昇していくのに比例し遠心力も更に加わり、繰り出される一撃の重さも増していく。
「どう足掻いても同じことぉ!」
嵐を生じさせる程の回転によって威力が上がり、風を纏った金属塊の一撃が再び、ハジメへと繰り出された。
「豪嵐、撃ィィイ!!」
バットのスイングのように振るわれた一撃。回避しようとも右足が折れてるハジメには手遅れ。故に、全身を〝竜鱗化〟、〝昇華魔法〟。体全体に竜の鱗が纏い、肉体が一段階昇華する。追加に特に右腕に〝集中強化〟を施すとハジメは、真っ向からジャブラの一撃を受け止める。
直後、全身に衝撃が奔る。
〝竜鱗化〟を施し、肉体を一段階昇華させてる筈なのに重い。骨が軋み、鱗が砕け、嫌な音と金属が割れるような音が聞こえる。骨に響き、折れた右足から悲鳴が聞こえる。やがて、右腕の筋肉が破裂し表情を歪ませるハジメから苦痛の声が漏れる。
「グウッゥゥウウ!!」
しかし、ハジメは耐える。こんな痛みなどこの世界に来てから何度も受けている。自分の体なんてどうでも良い。故に、ハジメは〝構造把握〟を発動して思考を巡らせる。
先程、受けた一撃。
今、受けた一撃。
その敵の動作、肉体、魔力量、癖、武器の性能。その全てをハジメは解析する。しかし、体の限界も近い。
「(探せ! あるはず、あるはずだ!)」
脳をフル稼働させ、己の全神経を研ぎ澄ませる。これの代償なのか血がぐつぐつと沸騰し、皮膚が内側から焼けそうだ。目が赤く染まり血が流れてくる。が、ハジメは止めない。いや、止まらない。
───見つけた!
ハジメは自身の右腕を代償にする。あらぬ方向へと折れ曲がり、至る血管から血が噴射してしまっている。自然治癒能力じゃ到底回復は不可能。
だが、これで良い。
だって、
「な?!」
相手の武器を破壊させれるから!
ジャブラの金属塊は一見破壊は無理と思えるだろうが、ハジメの構造把握によってあの金属塊の秘密が露見される。あの金属──
故に、ハジメはその性質を逆に利用した。ハジメは右腕で金属塊の一撃を耐えながら、同時に触れ、ありたっけの魔力を流す。
ここからは、腕が先に壊れるか、武器が先に壊れるのかの耐久戦。そして、遂にハジメの魔力が金属塊内のジャブラの魔力を押し退け、金属の硬さを泥のように溶かした。
「な!?」
ジャブラの表情に戸惑いが見え、困惑しているのか動きも僅かに遅れを見せている。
「今ァァア!!」
今こそ、最大の好機。ハジメは今の状態から更に、〝限界突破[+覇潰]〟を発動。ステータスが五倍となり、全身から力が漲る。
ハジメは、背中に背負っていた義手で握り締めると黒き大槍の真なる力を解放する。
「〝
その言葉を引き金に、黒き大槍に紅の線が奔り、赤雷の魔槍へと変貌する。赤雷の魔槍を投擲する構えを取る。
「武器を壊しただけで、貴様に何が出来る!? その体で何を為せるというのか!!」
ジャブラの言葉はご最も。
今のハジメは、〝昇華魔法〟と〝限界突破[+覇潰]〟により全身に力が漲る。それは、逆に体が悲鳴を上げていること。右腕は既に使いものにならない。全身の至る血管から沸騰した血が噴射し、湯気がたっている。
そんなボロボロな体であるハジメ。
なのにだ。ハジメから放たれる圧倒的な殺気と、狂気を感じさせる不敵な笑みにジャブラの表情は強ばる。
「っ!(あんな瀕死に近いというのにっ、この殺気とあの狂気的な笑み!やはり、魂が違えとデウス!!)」
右足を踏み込む。同時に右足が完全に折れ曲がる。しかし、ハジメは止まらず、痛みを無視してただ一点のみを見詰める。
視界が霞む。足の感覚がない。だが、
「関係ねぇえええ!!」
ハジメの決死の一撃が繰り出される。
赤雷が迸る槍は閃光へと、獣のように目の前の標的へと喰らいつき、そして………
「ぐぅっォォォオオオオ!!?」
ジャブラの横腹を穿ち、大部分を抉り出し、そのまま遠くへ吹き飛ばすのだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「やった、か?」
ハァハァと荒い息を吐くハジメ。既に満身創痍。〝限界突破〟も〝昇華魔法〟も切れ、立つとことも難しく、神喰雷槍を杖代わりにしてやっと立っているこの状況。
その光景を、見ていた優花、シアもハジメの勝利を確信し、歓喜の表情を見せる、対して、シアと戦っていたカラは表情を変えずにただ呟いた。
「へぇ、やるじゃん。団長の体に傷を与えるなんて」
「どういうことですか?」
焦りも動揺も見せずにいるその姿。それを見たシアは不安が込み上げながらも聞いた。
「敵に教える義理はない……と、言いたいけど。貴女の顔でそう聞こえたら答えましょうか──」
何故、自分2?と、思うところはあるが、カラの含みのある言葉に更に不安が募りだし、次のカラから発せられた言葉によりその不安は真実に変わる。
「あんなんで団長を、翡翠の団長──不屈のジャブラを倒される訳がない」
───不屈のジャブラ
その二つ名は、その名の通り如何なる攻撃も天災も防御魔法なしで耐え、千を越える神の使徒達と相手に、固有技能だけで圧勝した功績を持つ鬼人族最強の男。
魔法を持たず、固有技能と己の武と折れぬ不屈の心だけで女神の右腕まで上り詰めた最強の武人。
畏怖と共に付けられた異名〝歩く要塞〟。
故に、
「久しぶりに、痛いと思える痛みを感じたな。流石はデウスと言ったところ───」
声が聞こえた。バッと顔を上げたハジメは、目を見開くが視界が霞んでおり朧気にしか見えずとも此方に近付く何かが見える。そして、上手く声を発せられずとも「有り得ない」と口にする。
「まさに、神殺しを彷彿させるような一撃。しかし、この程度では本気の三神は愚か、あの破壊神ラーゼンには無に等しい。いや、俺が知っているデウスは、この程度ではない。まだ機神の力が戻ってないのか、力を上手くコントロール出来てないのか……」
考察の声と足音が聞こえる。その足音が一歩一歩が息が詰まるような圧を発し、近付く度に冷や汗が流れる。
足音が鳴り止む。だが、この息が苦しい重圧から
「さぁ、俺に魅せろ。そして、全力で戦って俺に無惨に殺されろ。それこそが、俺があの御方へ送る手向けなのだから」
そう口にして、ハジメの目の前に立ち、狂気じみた笑顔を向ける
次回は少し投稿が遅れます。m(_ _)m