ありふれた職業で世界最強if優花   作:白San

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投稿が予定よりも遅れてしまい申し訳ありませんm(_ _)m



幕間 ハジメの師匠

 

長い作戦会議は終わり、各々は部屋に戻り明日に向けての準備などを終えたり、体を癒すために早めに眠りについている頃。

 

静寂が満ちる中、飛空艇〝フェルニル〟の甲板の上で一人。一心不乱で刀を振るっている者がいた。

 

「ふっ───」

 

其の男は上半身裸で己の短い呼気に合わせ、手に持つ刀を振るう。

 

ヒュッヒュッと空気を裂く音と共に紅き稲妻が奔る。男は、刀を上から下、左から右、斜め上から下へと一連の動作を卒なくこなしていく。

 

男の動きは極めて洗練されており、彼が描く稲妻の軌跡は一つの乱れもなく、一切の無駄もない。加えて、その太くも細くもなく偏りがない鍛え抜かれた肉体はあらゆる戦いにでも順応できる理想的な肉体だ。

 

そして、久しぶりの剣技に男は興が乗ってきたのか足技や搦手を使って先の剣技にオリジナル性を付け加えていく。遂には、ズボンに取り付けていたホルスターから大型のリボルバー式の拳銃を抜き取ると、剣と銃を合わせた見事な二刀流を繰り出していく。

 

銃に込められてるのは実弾であるにも関わらず、事前に周囲に飛ばしていた円月輪に向けて発砲する。放たれた弾丸は、驚異的なことに、常人では視認も難しい速度で飛び回る円月輪の中穴へ吸い込まれるようにして飛び込んでいく。そして、〝ゲート〟を利用して、別の円月輪から弾丸を弾き出し、全く別の方向と角度から男自身へ強襲した。

 

「ふっ………」

 

然し、男は小さく息を吐くと臆することなく迫る弾丸全ての弾道を把握しているかのように最小限の動きで躱し、右手に持つ刀で弾丸を受け流し軌道を逸らしていく。そして、逸らした弾丸達は再び〝ゲート〟へ飛び込み飛翔力が失うまで男を強襲していく。

 

だが、男はそんな事は気にも留めず、軽いステップで避けた。その後も撃って、躱し、また撃って、逸らす。そんな一連の動きをまるで機械ののように繰り返していく。

 

やがて、最後に放った弾丸の飛翔力が落ちていくのを最後に向かってきた一つの弾丸を刀で真っ二つに叩き切り終えた男───ハジメは深くを息を吐いた。

 

「ふぅーーー、久ぶりに振るってみたがやっぱ鈍ってるな」

 

ハジメは己の持つ刀を見て少し悔しそうに言葉を漏らす。

 

剣技は、地球にいた頃から師匠である(リー)から教わっていたハジメであったが、トータスに転移してからは銃技と槍術を主に鍛錬していたせいか目に見えるほど腕が落ちていた。

 

元々、剣技は苦手な節があるハジメであったが李の過酷な指導のお陰でそれなりにも形にはなっていた。しかし、異世界に飛ばされてからと、魔物を喰らい身体能力が上がった要因もあってか力の入れ方、間合いなどが微妙にズレていたりと、この場に李がいたら「見てられないな」と辛口で指摘するのは目に見えている。

 

それに、刀のことに思考が寄ってしまい他の動きに少し無駄があったことを理解したことにハジメは溜息を吐く。

 

明日のジャブラとの戦いには刀と近接武器を用いた戦いは絶対に要する。それに、ハジメが考えているジャブラ対抗策に刀は必須なのだ。

 

それなのに、この様だとジャブラとの勝負は目に見えている。そんな状況も相まって不安、焦りといった感情も芽生えてきそうになりハジメは己自身に悪態を吐く。

 

「クソっ………駄目だな。らしくもねぇ……マイナス思考は厳禁だ」

 

ネガティブになってるハジメは気分を入れ替えるようと強く自分の頬を叩きつける。そして、大きく深呼吸すると同時に思考も切り替えていく。

 

負ける前提の考えは駄目だと、約束したじゃねぇか。とハジメは最愛との約束を破りそうになった己に怒りをぶつける。

 

「(俺は、優花を……ユエ達を)大切を守りたい」

 

──弱さを捨てろ。

──傷を強さに変えろ。

──己の全てを強さの糧にしろ。

 

そう心に刻みつけた思いを胸にと、気分を切り替えたハジメは鍛錬を再開しようとした其の時だった。

 

「鍛錬するのもいいのですが………汗を拭かないと体が冷えてしまいますよ」

 

後ろから声を掛けられたハジメは後ろへ振り返る。そこには、神官服を着た金髪の青年が白のタオルを手に持ちながら立っていた。

 

「アレスか。いつからいた?」

 

「十分前ほど、少し体を動かそうと思い甲板に来てみたら先着がいましてね。少しだけ見入ってました」

 

そう感心しながらアレスはハジメにタオルを投げ渡す。

 

「そんな見入るものかー?」

 

投げ渡されたタオルを受け取ったハジメはそう自嘲めいた口調で話しながら貰ったタオルで汗を拭い始める。

 

その間に、ハジメの隣にまで歩み寄っていたアレスは先程のハジメの発言に対する返答を口にした。

 

「ハジメ殿の基準がおかしいのですよ。剣技は苦手と言っていた割に形になっているではないですか」

 

「形ができていようが歪だったら元も子もねぇだろ?」

 

アレスの答えにそう返すハジメ。

 

例えるなら四角形であっても正四角形じゃなきゃ駄目だと言ってるようなものだ。アレスはハジメの基準に呆れたような顔になると深く溜息を吐く。

 

「あーー………ハジメ殿の判断基準は理解しました。剣技についても……ですが、これだけは断言しましょう。貴方の、その合理性を追求させた動きは素晴らしいもの、だと」

 

そう述べるアレスはハジメの洗練された動きを思い出す。

 

ハジメの動きは雫みたいな演舞じみた武術特有の流麗さは欠けている。ある者は卑怯などと罵る者もいる。しかし、その洗練された動きは戦いの勝利だけを求め特化された合理的さを体現したもの。

 

南雲ハジメという男が培ってきた経験。

 

アレスからしてはハジメの動きは、此の世界で最も必要とされるものであり極めるべき技の一つであると確信している。

 

そう感心した様で語るアレスに対して、ハジメは照れ臭そうに苦笑いしながらも少し嬉しいのか頬を掻いた。

 

「そこまで言われんのは優花達や李さん以外、初めてだよ」

 

「ふふっ、そうですか。しかし、何故いまになって剣を?」

 

アレスは、そう言ってハジメに疑問を呈する。

 

それもそうだ、ハジメは剣を使わずとも神業の域に達してる銃技(ガン=カタ)、自分と遜色のない腕前の槍術があるのだ。

 

アレスに言われハジメは隠すことでもないかと躊躇いもなく理由を淡々と話す。

 

「ん、まぁ………ジャブラ対策の一つだな。奴を倒すのに要であるアーティファクト自体は前々から完成させていたが、今の銃技や槍に特化させた俺の体じゃあ意味がねぇ」

 

「なるほど。つまり剣術などの近接戦闘の勘を取り戻したいという訳ですね」

 

「まぁ、そういう訳だ」

 

自分の話を聞いて、的確に結論を述べるアレスに笑って返事をするハジメはそのまま言葉を続ける。

 

「ま、俺は李さんに剣の才はねぇって散々言われてるけどな」

 

自嘲めいた笑みをしながら話すハジメにアレスは有り得ないと耳を疑った。それは、ハジメの剣技を見たからこそ言えることであり、あれほどの剣技を前に彼の師である李という者は「才がない」と言うのだ。

 

そして、前々からハジメの師と聞いていたこともあってか俄然、興味を持ってしまったアレスはハジメに李のことについて聞いてみることにした。

 

「ハジメ殿、その李という師はどんな方だったのですか?」

 

「ん? 李さんのことか…………まぁ、一言で言うなら滅茶苦茶に強くて謎に包まれた爺さんだな」

 

そう言ってハジメは、自分の知っている内容だけをアレスに教え始める。

 

曰く、数十年前からハジメ達が住んでいる街に来たこと。

 

曰く、怪しい商売をしていたヤクザ共をたった一人で一掃し改心させたこと。

 

曰く、現在住んでいる道場と家はヤクザ達が建てたものであるということ。

 

曰く、ハジメを弟子とる前は誰一人も弟子を取らなかったこと。

 

その他にも色々と謎がある無数ある。それが李である。

 

「………怪しくありません?」

 

話を聞いて、率直に述べるアレス。ハジメは否定せず頷く。

 

「俺もな長年の間、一緒にいたが李さんは謎が多すぎる人だ。でも、これだけは言える」

 

話してる内にハジメは懐かしむように思い出す李との出会いを。

 

 

それは、ハジメが父である愁の趣味になりかけつつあるアイデア探しの取材に着いて行ったことが始まりであった。

 

以前にもハジメは幼い頃であるがある有名な剣道場(・・・・・・・・)に赴いたことはあるが今回は取材しに行くのは無名な道場だった。

 

何故、そんな場所に決めたのか?と、ハジメが理由を求めると、父の愁は自信満々に語りだした。其の道場に住んでいるのは李という初老の男性らしく弟子の一人も取らずどんな流派の道場かも一切不明らしい。そんな所に愁は興味に惹かれたらしい。

 

そんな理由を聞いたハジメもハジメで俄然興味を持ってしまった訳なのだが……

 

『お主、弟子にならんか?』

 

道場に入った瞬間、ハジメを一目見た李が開口一番にそれを口にした。

 

唐突過ぎて最初は戸惑ってしまい口が噤んでしまって何も言えずいると、隣で『是非、家の息子をお願いします!!』と軽々と言う愁をハジメは呪った。

 

何故、弟子にしたんだと李に聞くと『光るものが見えた』と一言だけで。なんやかんや(愁の勝手)あって李に弟子入りしたハジメだったが李から『本格的な修行はお主の覚悟が決まったのなら始める。それまで基礎のみを続けろ』と言われ、はぁ?と怒りが湧いたがハジメ自身、それなりに鍛えたいなと思っていた時期だったので不本意であるも李の言葉に従い基礎を続けるハジメであった。

 

そして、ハジメが覚悟を決めるのは、以外に早かったのはまた別の話である。

 

己の師との初めての出会いを懐かしみながらほくそ笑むハジメは謎多き師にこれだけは言えると自身満々に告げる。

 

「俺はあの人に感謝してる」

 

あの人から叩き込まれた技術でここまで生きてこれた。

 

あの人から学んだ覚悟で心は強くなった。

 

あの人から教えられた強さの在り方に今のハジメがある。

 

故にハジメは越えなければならない。

 

己の全てを真っ正面から打ち破り為す術なく敗北を突き付けた鬼人という壁を────

 

クハッと不敵に笑みを零しハジメは密林の奥に視線を移す。

 

「だからこそ俺は、今度こそ奴を喰らって証明する」

 

越えて証明すると、あの人の技術は最強であるということを示してやるんだと。。

 

そう熱く告げるハジメから溢れる圧にアレスは少しぶるっと震え笑みを零し頷いた。

 

そして、やはり目の前の彼こそ世界を救える確信する。

 

「貴方の言葉も意思も伝わりましたハジメ殿」

 

「そうか?」

 

「ええ、十分に」

 

故に、己がすべきことは唯一つ。

 

その言葉の皮切りにアレスは嬉しそうに笑いながら〝宝物庫〟から一つの刃が潰されたロングソードを取り出した。

 

「?」

 

目の前で、いきなりロングソードを取り出すアレスに少しばかり驚くも、すぐに平静になって剣を取り出したかを聞くハジメにアレスは詰まることなく返す。

 

「どうした? いきなり剣なんか取り出して」

 

「いえ、ハジメ殿は剣を無難に振るうより実戦形式の方が鍛錬になり易いと思いましてね」

 

アレスの言葉に納得するハジメ。

 

「安心してくださいハジメ殿。私、槍を使う前は剣術も学んでいたね……まぁ、言いますと剣技も貴方よりかは私の方が遥かに強いですよ?」

 

「おもしれぇこと言うじゃねぇか」

 

わざとのように売られた挑発に黙っていられる筈もなく青筋を浮き立てたハジメはアレスの挑発にすんなりと乗った。

 

そして、二人は数メートル離れるとハジメは刀を突きの構えを取る。アレスも実直な構えをしながら手に持ったロングソードを向ける。

沈黙が続く中、二人は持ち手を強く握り、深く息を吐いて呼吸を整える。

 

そして、互いの準備は整ったと分かると、

 

「……いざ」

 

「尋常に……」

 

「「勝負!!」」

 

二人は掛け声を告げると一斉にアザンチウム鉱石でコーティングした甲板を勢いよく踏み込んで突風を生じさせるほどの早さで一瞬で接近すると同時にハジメとアレスは己の得物を振るうのであった……。

 

 

================================

 

月が沈みかける頃、自室でぐっすりと寝ていた雫は外から金属同士がぶつかるような甲高い音が微かに聞こえ、眠たそうに薄目を開ける。 

 

「んんー?」

 

艶めかしい声を漏らしながら重たい瞼をゆっくりと開けた雫はベッドから上半身を起こす。しかし、其の表情は己の睡眠を邪魔され不機嫌極まりないといった表情をしていた。

 

「んーもう、誰なのよ〜? こんな早くにうるさくしてるのはぁ……」

 

まだ頭がぼーっとして頭がポワポワするも甲板から響く金属音は確かだと確信する雫はベッドから降りておぼつかない歩きながらも自室の扉へと歩くのであった。

 

「こんな日に誰だか知らないけど、許せないわ」

 

もう数時間後も経たない内に戦いが始まるというのに元気に甲板でうるさくしてる誰かに怒りを湧きながら雫は髪を下ろしたままフェルニルの甲板にいるだろう誰かを叱るべく艦内の通路を歩く雫。

 

そして、目的地に近付くにつれ眠気が少し覚めていき少しスムーズに歩けるようになった雫は甲板へのハッチに到着する。

 

「やっぱり此処ね」

 

歩いていく内に金属音が大きくなってることがわかってはいたが……案の定、金属音の発生源が甲板からと再確信した雫は歩みを止まることなく甲板に続くハッチを開けると顔をだけを覗かせて辺りを見る。

 

「で、夜明け前からうるさくしてるのは誰なのかし………へ?」

 

犯人は誰かと甲板を覗く雫だったが、その目の前の光景に目を疑った。

 

そこには、上半身裸のハジメとローブを脱いで身軽の格好をしたアレスの二人が雫がギリギリ見えるぐらいのスピードで激しい剣戟を繰り返していたのだった。

 

「くっ……」

 

「ムっ……」

 

アレスがロングソードで迫りくるハジメの刀を振り払い、その振りの早さによって威力が倍増され弾く。手がジンジンと広がり麻痺したのかと連想させるような一撃にハジメは少しよろめく。

 

其処へアレスがよろめくハジメへ追撃を行おうと拳を振るったか、ハジメは紙一重に避け切り、同時にアレスの肩へ目掛けて物凄く早い突きを行うが反応したアレスがロングソードの平な面で防ぐ。

 

互いの力が拮抗してるように見えるがハジメの次の行動が一段早く、しゃがみ込むとアレスの足を回し蹴りで体勢を崩してから、そのまま立ち上がって一気にたたみかける。しかし、アレスも体勢が崩れる合間にロングソードの持ち手を変えて、後ろに倒れな混みながらもハジメが繰り出す一撃を見事に防ぎきる。

 

だが、そのせいで大きな隙が出来てしまう。アレスもすぐに気付くも束の間、横腹へハジメの右足からの一撃を諸に喰らってしまい吹き飛ばされる。

 

「ぐっ」

 

横腹の耐え難い痛みに顔を歪ませるアレスだがすぐに体勢を立て直すと、接近したハジメの次なる攻撃に迎え討つべきと再び駆け出した。

 

 

「すごい…………」

 

目の前に広がる激しい攻防を繰り返す二人の姿を顔を覗かせながら見ていた雫は感嘆する余りポツリと言葉を漏らす。

 

「アレスさん、剣も扱いが上手いのは驚きだけど、南雲くんも凄い。光輝が負けたのも納得だわ」

 

アレスが剣を扱えていることに驚いた反面、あのアレスだからどんな武器も扱えるし当然だろうなと雫は思った。

そして、ハジメは転移される前に剣道で光輝に勝利していると龍太郎から聞いていた為、剣も扱えると知ってはいたが、見る限り搦手を多く使うハジメの戦い方は光輝が最も苦手とするため雫は改めて其の事実に納得した。

 

誰もが思うような美しさはない。だが、ハジメとアレス一つ一つの動きが全てに意味があり、泥臭く無様を晒しても勝とうとする貪欲さ、その覇気を纏うギラつく瞳が二人の真剣さが物語り演武とはまた違う美しさがあった。

 

止むことのない剣戟。鳴り響く金属音。荒くも生を感じさせる呼吸音、無駄のない足取りと洗練された技術が楽器のように、段々と一つの合奏へとなって(観客)の胸を弾ませる。

 

雫はその凄まじい光景に魅入り思わず自分も混ざりたい、と二人のところへと駆け出そうとした。が、無意識にも足が止まってしまう。

 

「いえ……私じゃ無理よね」

 

例え、自分も戦いに参戦したとしても二人の剣戟に着いていけず、寧ろあの美しい合奏を壊してしまうだろう。雫はそう思い少し悲しげな顔をしながら苦笑いを浮かべてしまう。

 

同時にある感情か雫に駆け巡る。

 

羨ましい。

 

あんな戦いをできる二人に、

 

あんなに楽しそうに笑い合える好敵手(とも)がいる二人に、

 

(ハジメ)と傍で戦えるアレスに………

 

 

「………いいなぁ」

 

誰も聞こえないぐらいの声音で吐露する雫。其の目線は無意識であるもずっとハジメだけを追っているのであった………。

 

 

数時間後、雫が部屋に戻っていった後も馬鹿みたいに実戦に近い模擬戦を続けていたハジメとアレスはというと、青筋をピキピキと浮かばせたガチギレモードの優花に再生魔法と天性魔法の重ね掛けで回復してもらいながら「戦いの前に殺し合いに近い模擬戦をするなんて馬鹿なの!?」と正座のまま叱られているのを目撃した雫が罪悪感を抱いてしまったのはまた別の話。

 




新年初投稿!

読者の皆様、応援して下さる皆様、今後ともありふれif優花をよろしくお願いしますm(*_ _)m
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