二月に更新できなくて申し訳ありませんでしたm(_ _)m
「ん? ジャブラの持つ力を知りたい?」
心象世界に滞在中、ハジメが、その力の存在を知ったのはデウスにジャブラの尋常では強さの原因を聞いたのが最初だ。
「ああ、あの野郎が強えのは、あの鍛え抜かれた強靭な肉体もあるが一番の要因は固有技能だ」
ジャブラは自ら魔法は使えないと公言していた。なら、あの強さに後押しさせてるのは強力な固有技能しかないと思えない。
「俺が戦った限りわかったのは身体強化の類いと再生能力、そして肉体を黒色に変色させる能力ぐらいだ」
身体強化はシアの強化版、再生能力はユエの持つ自動再生よりも速度が早い。黒く変色させてるのは何らかの強化だとハジメはそう見解している。
そんなハジメの言葉にデウスはうんうんと頷いた。
「ああ、いい線はいってる。でも、少し違う」
「じゃあなんだよ?」
「それは─────」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
密林の中央、そこに建つ神殿の前で二人の強者が対峙していた。
ただの移動だけで辺りに紅雷が鳴り響き、大地が割れ粉塵が舞い散り災害並のことを起こすハジメとジャブラの戦闘に周りのオーガ達は近付けない。
そして、そんな災害レベルの戦闘は一方が距離を取ろうとし、一方が縮めようとする構図だ。距離を取っていたハジメの二対のレールガンから放たれる十二の閃光がジャブラを襲う。
「ぬんっ」
だが、光沢を放つ黒鉄の如き純黒に変色させたジャブラの剛腕は、レールガンの直撃を真っ向から受け止め、そのまま地面に叩き落とした。
「チッ、やっぱドンナーじゃ無理そうか」
岩をも簡単に貫く威力を持つドンナーを以てしても強化されたジャブラの剛腕を貫くことが不可能であると分かり舌打ちする。そして、近距離ならばと距離を取るのをやめ、紅雷を纏うと一気に攻めるようにジャブラへ駆け出した。
ジャブラも迫るハジメを見て攻勢に変わったと理解し、膝を深く曲げ大地を強く踏み込んだと同時に前方へ跳んだ。その跳ぶ姿がブレたかと思えば一瞬にしてハジメの背後へと回り込む。そして、上体を捻り拳を振り下ろして攻撃しようとした瞬間、何故かジャブラの眼前には銃口が向けられていた。
「!」
「バレバレなんだよ」
目を開くのも束の間、引き金を引かれ放たれる一発の紅き閃光がジャブラを襲う。防御しようにも光の速度に近い弾速が、その暇を許す筈がなく、防御を取る前にジャブラの右肩を抉る。
「ぐっ」
「オラァ!」
肩を抉られた痛みに表情を歪ませるジャブラ。そこへ、ハジメから鋭い蹴りを貰い地面に叩き付けられた。
地面に伏すジャブラ、ハジメはチャンスだと〝宝物庫〟から十基の〝クロスビット〟を取り出した。クロスビットはくうをきるかの如く空を飛び回り、ジャブラへ照準に合わせると砲撃を開始した。
いたる角度から放たれる無数のスラッグ弾。ついでにとハジメからも赤雷を纏う風爪〝雷爪閃〟と展開した〝紅翼〟を捻じるように形成させた赤雷の槍を放つ。
抵抗しようとも赤雷の槍によって反撃させる隙も阻まれ、逃げようとも飛び回る十基のクロスビットがそれを許さない。そんな攻め手を与えない戦術で攻撃を続けるハジメだったが、突如、ジャブラを中心に地面が砕け、その反動で舞う粉塵によりジャブラの姿が見えなくなる。
「どこいったっ」
一瞬の出来事で少し焦りを見せるが、ハジメには〝魔力感知〟があるため身を隠そうとしても無駄だ。しかし、ジャブラは地面を砕いたのは姿を隠すためじゃない。ハジメが一瞬であるものの意識を変え、攻撃を止めた瞬間を待っていた。
突如、ガシャン!と何かが地面に叩きつけられた音がした。視線を向けると、そこには叩き壊されたクロスビットの残骸が、
「! まさかっ」
気付いたとて、もう遅い。ハジメは上を見ると既に残りの九基の破壊されたクロスビットが墜落していく光景に思考が鈍る。
「っ!」
「遅い」
そして、その油断を相手はつかない筈がなく、いつの間に現れたジャブラの攻撃に反応が遅れる。
「ふんっ」
既に再生された剛腕から放たれる剛拳に対応を遅れたハジメは完璧な防御が間に合わずに一撃を貰い、慣性の従うように一直線に吹き飛ばされていき、そのまま大木に激突する。
「ガハッ」
大木に勢いよく激突して口から血を吐くハジメ。
だが、『奈落から生きて帰ってきた男』
その誰もが目を張るほどの復帰力は骨が幾つも折れてもなお立ち上がり不敵に笑いながら口に付着する血を拭う。
「クハッ……流石に効いたぜ」
「ほぅ……」
自身が放った一撃を受けて尚、すぐに復帰したハジメに感心を抱くするジャブラ。しかし、其の目は何かを探るような目。
「〝昇華〟で肉体の再生能力を上げたか」
「クハっ……見ただけで分かるのかよ」
ハジメが早々に復帰できた理由を一目で理解したジャブラにハジメは苦笑いを浮かべ、その並外れた洞察力に舌を巻く。そして、タネが割れたなら隠す必要はなくなった。
再生以外の能力も〝限界突破〟並に己の器を昇華させるハジメ。
「(以て、三十分ってところか)………行くぞ、ジャブラ」
「来い、デウス」
お互い、睨み合い、少ない会話を交えながら二人は再び、構えを取り直す。ハジメはドンナーとシュラークを、ジャブラは拳を構えた。
そして、
「〝
最初に動いたのはハジメ。駆け出すと同時に魔法〝霹靂牙烏〟を発動。数メートル先のジャブラへ紅雷の烏がはばたきながら突き進む。そのすぐ後ろに控えるハジメも持ち前の神速撃ちクイックドロウで様々な角度から十二の閃光が放たれる。
「ふんっ」
しかし、ジャブラ。神速の速度で突き進む紅雷の烏を片手で握り潰し霧散させると瞬きすら許さない弾速で進む十二の閃光を腕を振るって生じた風圧だけで相殺する。
仕掛けた全ての攻撃がいとも容易く破られる。だが、ハジメにとっては予想の範疇。故に既に次のステップへと進む。
先の合間にジャブラのすぐ傍まで近付くことが出来たハジメは顔面に向かって〝竜鱗化〟させた右脚で蹴りを入れる。
「しっ!」
「……む(速く、重いっ)」
ハジメの右脚が届く寸前に反応したジャブラが右腕で受け止める。その昇華させたハジメの蹴りにジャブラは足を踏ん張っても尚、数十センチ後ろへ下がる。
そして、右腕で受け止めたおかげで顔面の直撃は免れるが頬を鋭利な竜の鱗で切り裂いた。
「ちっ」
渾身の蹴りを避けられたことに歯噛みするハジメ。そして、今、攻撃が失敗したハジメは大きな隙を見せてしまっている。そんなチャンスを見逃すジャブラではない。
「ふんっ!」
まだ、体勢を取り直せていないハジメへ拳を突き出した。
直撃したら骨を木っ端微塵に砕くであろう拳が迫る中、ハジメの目は諦めの色など微塵もない。
「(野郎は相手が隙を見せたときに絶対に右を振るう!)」
そうだ、ハジメは刻んできたのだ。
腹を貫かれ生死の狭間を彷徨ってる間、デウスが招いた心象世界で、何百、何千、何万回ものイメージの中のジャブラとずっと戦ってきたハジメ。それは、イメージであるもののデウスと自分の記憶を擦り合わせ、本物に近いジャブラの戦闘スタイル、クセ、間合いを全てインプットしてきた。
故に、
「らぁっ」
「!」
迫る攻撃の軌道を〝瞬光〟で予測し、無理矢理、体を捻ることでジャブラの拳の軌道から外れたことに成功しハジメは、間一髪に死へのルートを回避する。
ジャブラも、ハジメが自身の決め手を避けられたことに有り得ないと、驚愕しながら目を見開いた。
「ぐっ」
そして、地面に直撃する寸前に衝撃を減らすために受け身を取って着地し、その反動で地面に転がりながら体勢を持ち直したハジメ。その顔は安堵の表情なのだが、すぐに真剣な顔に戻り右手に持ったドンナーをジャブラへ向ける。
ジャブラの方も厳つい顔に戻っており、ハジメを見る。
「まさか、あれを避けるか」
「はっ、少しは驚いたかよ」
「ああ、驚きはした。故に───」
この短期間で確実に魔力は勿論、諸々の能力が前回よりも上昇してると確信したジャブラ。どうやったのかは知る由もないが、強くなったならばそれ相応の
そして、片膝をつき両手を地面に付ける。
「少しギアを上げよう」
ジャブラはそう言い放つと地面を掴み取るように両手の指に力を入れた。
直後、ジャブラを中心に地面が砕け始めた。
「っ、おいおい!(コイツ、指の力だけで辺りの地面を砕きやがった!?)」
地面が砕けていく光景にハジメはジャブラの規格外さに冷や汗を流しつつも、問題なく飛んで回避する。
「チッ、足場を悪くしたな」
しかし、地面が砕けたせいで足場が不安定になっていることに舌打ちをこぼすハジメ。
「
そこへ、ジャブラが爪を立てた両手をクロスさせながら振り下ろしたことで生じた空気を切り裂く斬撃がハジメへ迫る。
「っ、〝錬成〟!」
それに対し、砕けた地面を錬成して〝金剛〟、〝竜鱗化〟を付与した即席の土壁で斬撃を防いだハジメは、土壁を飛び越えながらジャブラの方へ駆け出した。
そして、距離を詰めていく中、ハジメは三つの手榴弾を〝宝物庫〟から取り出すと勢いよくジャブラへ投げ入れ、投げた手榴弾が連鎖的に爆発し、周囲に爆煙に包まれる。
すると、ハジメは〝魔眼石〟でジャブラの位置を特定し爆煙の中に入り込んだ瞬間、取り出していた〝オルカン〟で、ジャブラがいる方向へ砲門を向ける。
「ぶっ飛べ」
そう言って引き金を引くと、砲門から十二のロケット弾が発射され轟音を響きかせながらジャブラがいる場所へ集中する。
「無駄だ」
だが、爆煙から服が少し破けた程度で現れるジャブラは、慣れた手つきで着弾する前に触れても爆発しない程度の力加減で全ての砲弾を弾き飛ばし直撃を全て防ぐ。
「だろう、なっ」
ハジメも、防がれるのは承知の上、無傷なジャブラを確認すると、持っていた〝オルカン〟を適当に投げ捨て、そのまま駆け出す。
今まで戦闘や地面が砕けたせいで、不安定な足場になっているにも関わらず問題なさそうに駆けるハジメの姿にジャブラは勢いよく飛んだかと思うとハジメの真上から攻撃する。
「潰れろ」
「っ(左!)」
しかし、ハジメ。ジャブラの動きを確認するや否や繰り出される攻撃を予測し、進行方向を右に変える。
「!」
突然の進路を変えたハジメに対応できないジャブラの一撃はまたも空振りとなる。その合間にハジメはジャブラの背後に回り込むとドンナーとシュラークを構えレールガンを放った。
喰らえば腕は軽く吹き飛ばすだろう弾丸に対しジャブラは雄叫びを上げながら振り向きざまに腕を豪快に振るう。
「ォォォオオオ!!」
「嘘だろっ!?」
振るわれた黒く変色した腕は弾丸を弾き返す。ハジメは直撃を避けるために後ろへ飛んだまま、その異常な反応速度に驚きを隠せない。
そして、ジャブラは起き上がりさまに大地は踏み砕ききながら加速、同時に拳を突き出した。
「ふんっ」
「っ!」
眼前に迫る拳にハジメは冷静に右のドンナーで軌道を逸らしつつ、左のシュラークでレールガンを放ちカウンターを繰り出す。しかし、軌道を逸らしても突き出した拳から生まれた風が刃となってハジメの頬に掠り傷を負わす。
「……これも防ぐか」
「(バケモンがっ)」
またも攻撃を防がれたことに驚くジャブラは微かに笑みを見せると、そのままハジメへ猛攻を仕掛ける。
「これは、どうする?」
そう告げると、一気に距離を詰めた放たれるのは残像を作りだすほどの素早い連撃。その速度はハジメの〝瞬光〟も併用した並外れた動体視力を以てしてもギリギリ追えるか追えないかのレベルの速度。
「っ……(右の突き出し、左はフェイク、斜め上からの振り下ろし!)」
しかし、ハジメ。繰り出される拳撃に対し、目で追えなくても、体で覚えたジャブラの戦闘スタイルと培ってきた己の直感を駆使して紙一重に避け、避けきれない攻撃は〝瞬光〟で軌道を読んで上手く受け流すことで最低限のダメージに抑えていく。
「(やはり、コイツっ)」
そんな攻防一戦の中、ジャブラはハジメの無駄のない効率的に己の攻撃が捌くという、まるで数秒先の未来を見ているのかと思わせる技量の動きを見て驚き、その狂気じみたやり方に笑みをこぼす。
「ジャハっ(南雲ハジメ……ここまでイカれてるとはな!)」
表情を崩しながら笑うジャブラは余りにイカれた精神を持つハジメにある意味、敬意を抱いた。繰り出すすべての攻撃を目の前にいる人間は、この短期間の間で、どれほどのイメージ上の
何度も挑み、戦い……そして、その都度、
負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて、負けて………
幾度、負けても尚、立ち上がり、貪欲に喰らいつきてたのだろう。身に刻まれてきた傷を糧にしてきたのだろう。己の理想を成さんと折れず進んできたのだろう。
目の前にいる男は、その傷を以て、器を更に昇華させたのだろう。
であるのならば、ジャブラのすべきことは唯一つ。
〝我は越えるべき壁として、貴様に立ちはだかるだけ〟と。
この拳を以て叩きのめすだけである、と。
激しい攻防が繰り広げられている中、ジャブラの猛攻をできる限り防いでいたハジメは焦りを抱き始めていた。
「っ!(コイツ! 攻撃の速度をまた、上げやがった!?)」
ハジメが思っている通り、先程からジャブラの拳を突き出す速度が段々と早くなってきているのだ。まるで、弾が尽きることのないマシンガンを繰り出しているようで、〝瞬光〟及び〝昇華魔法〟により昇華された肉体の受け流していくだけで手一杯である。
「チィっ(こりゃあ駄目だ、ここは一旦、距離を取るしかねぇ!)」
ハジメは内心で悪態を吐きつつ、このまま時間が経てば自分が押し負けるだろう。ならばと、ジャブラが次の手を繰り出す間に〝宝物庫〟から十は超える手榴弾を無造作にジャブラと自分の間にぶちまけた。
直後、栓を抜かれた手榴弾の郡が爆発し自分ごとジャブラを爆発に巻き込んだ。そして、爆煙から抜けたハジメは後方へ下がり距離を取り始めようとするが、
「温いぞ、デウス。もう少し楽しませろ」
ハジメに続き爆煙の中を突き抜けながら、ほぼ無傷の姿で現れたジャブラが、片足を踏み込む体勢を取ると、一瞬にして距離を取っていたハジメへ迫る。
「っ」
下がるハジメへ手刀を繰り出すジャブラ。避ける暇もないハジメはドンナーとシュラークをクロスして防御しようとするも、まるで大岩が空から降ってきたような衝撃に為す術なく吹き飛ばされる。しかし、紅雷の翼〝紅翼〟を展開させて繭のように自身を包み込んでダメージを軽減することに成功する。
「ほう、これも防ぐか……む」
その対応力に関心を示すジャブラ。しかし、違和感を感じ視線を落とすと、手刀を繰り出した右手に紅雷の槍が突き刺さっていることに気付く。
「これは──「余所見か、デカ鬼達磨ァ!!」──!」
紅雷により内側の神経がズタボロになってることに気付くジャブラ。刹那、声を荒あげながら迫ってきたハジメの〝竜鱗化〟によって硬質化させた足での回し蹴りがジャブラの顔面に直撃する。
奇襲によって三半規管を揺らし思考を鈍らすジャブラにハジメは反撃をさせないように追撃を行う。〝風爪〟で肩から腰まで斜めに切り裂く。雷魔法で炭化させるほど皮膚を焦がす。〝竜鱗化〟で四肢を硬質化させジャブラの上体を集中して殴る蹴るを繰り返す。〝宝物庫〟から十を超えるクロスビットを周りに展開させ防御、固有技能を発動させる隙を許さない無数の砲撃を放ちジャブラの体に無数の風穴を開け再生する暇を与えない。
「(いけるっ)」
この連攻をミスなく続ければ確実にジャブラを倒せる。そう思ったのも束の間、突如、ガシッと右腕を掴まれる。
「っ!?」
「ふんっ!!」
そして、そのまま地面に叩きつけられるように投げ飛ばされるハジメ。しかし、空中で回りながら上手く体勢を持ち直して怪我なく地面に着地する。しかし、顔を上げれば、今までのやってきたことを全て無に返すかのように無数の傷口が蒸気を発しながらみるみると塞がっていく。
「この短期間で、よく強くなった……もし、このまま貴様の連撃が続けていれば我が負けていただろう」
「チッ、早すぎだろ」
そう心からの称賛を送り、ハジメへ歩み寄るジャブラ。その間にも今まで与え続けた傷は蒸気を排出するかのような傷口から煙が発生し、同じように完全に潰れた顔面を元通りに再生させるという光景を目の当たりしたハジメは余りにも早い再生能力に舌打ち、そして口を開いた。
「やはり、イカれてるな……てめぇの、その再生速度」
「ふん、この程度など我の傷にはならん」
驚異的な再生能力に対し文句を垂れるハジメに対し、当然だ、との如くジャブラは淡々と答える。それを聞いてハジメは不意に笑みを浮かべ同意するかのように頷いた。
「………だろうよ。てめぇの持つ〝
瞬間、ジャブラの足が止まる。顔を見れば、目が大きく見開き驚きを隠せていなかった。
「どこで知った?……その名を……我の力を!」
ジャブラの叫び。対しハジメは笑みを崩さず己の胸に手を当てながら、隠すことなく正直に答えた。
「教えて貰ったんだよ。てめぇの、お嫌いなデウスの野郎にな」
そう語るハジメはデウスとの会話を思い出していた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ジャブラの力の正体。デウスは話す前にハジメにある質問をする。
『ハジメ、君は技能とはなんだと認識してる?』
『はぁ? 何を今更』
唐突に聞かれた質問の内容にハジメは困惑した表情をするが、話が進みそうにないので素直に答えた。
『………確か技能は、天職。言うなれば其の才能と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮させる能力だったか』
『ああ、実に模範的な回答。流石だ』
『舐めてんのか?』
癪に障るような言い方にイラつきを覚えるハジメ。しかし、今は我慢だと自分に言い聞かせてデウスの説明を聞く。
『そう技能とは秘める才能を発揮、自覚させ更なる輝きを齎す力。しかし、例外はある。ハジメ、君が其の最もたる例の一つだ。魔物を喰らって得た力を技能として扱える君は』
『……………』
デウスの言葉に奈落の嫌な記憶が蘇ったハジメは顔を顰めながらも何も口出すことなく沈黙で返す。
『普通は有り得ない技能の獲得方法には、流石に驚いてる。別物として名称するなら〝魔技能〟と呼んだ方がいいか』
『勝手にしろ』
ハジメの素っ気ない返しに、少しつまんなさそうにするデウスだったが口には出さない。
『ま、名称のことは置いといて……知ってるかいハジメ。神代にも〝魔技能〟みたいに普通の技能とは別物扱いされていた技能の存在を』
『!』
デウスの言葉を聞き、つまんなそうな顔から一変、心底驚いた表情を見せるハジメは食いつくように前に出た。
『おい、王国の図書館に置かれた本には、そんなもの一つも記述されてなかったぞ』
『それもそうだろうな。今や解放者の世代の奴等でも発現させる奴はゼロに等しかった。故に、誰にも至れることはなかった力の存在を忘れ去られて当然』
デウスの話を黙々と聞くハジメ。そして、問う。
『其の技能の名は?』
『名は、〝
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「神代魔法とも渡り合える技能。納得いったぜ。てめぇの強さの理由。そんな力があんなら神代魔法使いも圧倒する訳だ」
「なるほど、奴から聞いたか」
ハジメの話を聞いて、ジャブラは納得した顔をしている。
デウスから聞いたジャブラの持つ
・驚異的な再生能力を誇る〝
・単独戦闘時に筋力、体力、耐久を倍増させ、多対一であるほど能力を更に倍増させる〝
聞いた限り、乱戦に対して強い二つの技能。無敵とも呼べる再生能力と一人での戦闘におけるステータスの倍増。それは、一人であるほど強くなり続けるということ。
まさに不屈の戦士。
神代の戦争で英雄と呼ばれていたのも納得がいける強さ──それがジャブラ。
「ああ、貴様の言う通り俺には二つの神代技能を持っている。だが、それを知ったとて戦況は変わらん」
「クハっ……だろうよ」
ハジメは笑い立ち上がる。ジャブラの言う通り奴の力の理由を知ったって何も状況は変わらないだろう。故に、ハジメは今までの戦闘を思い返す。
「(〝戦々孤高〟は乱戦にのみ真価を発揮できる技能。だが、今、相手は俺だけだから余り気にかけなくていい。)……ジャブラ討伐には〝不撓不屈〟の攻略が必須」
視線を向ければ、ジャブラは己の再生能力に自負がある故の余裕を見せている。そして、その油断をハジメは待っていた。
「だから、これはどうだ」
「……それは、どういう───!」
ニヤリと笑うハジメに何かを感じ身構えるジャブラだったが、いつの間に取り出したのかハジメの手には〝感応石〟が握られてることに気付いたと同時に嫌な予感が押し寄せ、ふと、目線を上を向けた。
「アレは……」
ジャブラの目に映ったのは、この密林を覆う結界の頂点に近い場所──つまり、自分の頭上と直線上の宙で浮かぶ謎の物体。そして、物体とジャブラのいる位置とハジメが持つ〝感応石〟。
「(まさか、あの爆発の時から我は奴に誘導されていた? 逃げたのではなく誘い込まれ、先程の会話も時間稼ぎで!)………そうはさせぬ!」
ハジメの思惑に気付いたジャブラは、咄嗟にハジメの手に持つ〝感応石〟を破壊しようと動く。しかし、話に乗せられてしまい、ハジメの策略に気付くのに少し時間を掛けすぎた。
「バーカ、気付くのが遅せぇよ」
悪い笑みを浮かべながら、そう告げたハジメは〝感応石〟に魔力を流して発動する。
「待っ───」
瞬間、天から地上へ降り注ぐ断罪の光がジャブラを呑み込んだ。
───太陽光収束型レーザー砲〝ヒュベリオン〟
それは、嘗て王国で万を越える魔物達を一掃した天より降り注ぐ断罪の光。触れたものを、種族も性別も貴賎も区別せず、一切合切消し去る無慈悲なる破壊。大気を灼き焦がし、太陽の光で目標を薙ぎ払う。
独特な調べを咆哮の如く世界に響き渡らせ大地に突き立った光の柱は、光の真下にいた生物は一瞬で蒸発し、凄絶な衝 撃と熱波が周囲に破壊と焼滅を撒き散らす。
しかし、前回とは違うのは、今回の狙いは一人なため前回よりもレーザーの範囲を狭め、一極集中させることで威力が底上げされた光の柱がジャブラ目掛けて降り注ぐ。
光の柱は止まることなく地上へ降り注ぎ、凄絶な熱波が周囲の木々を焼き払い、膨大な熱量が地面を蒸発させ、巻き込まれたオーガは一瞬にして跡形もなく消え去り、地形すらも変えていく。
そして、数十秒後。熱量に耐えきれず空中で砕け散ると光の柱も霧散し虚空へ消えていく。その光景をハジメはじっと見つめている。
「以て一分弱ってところか。ちっ、改良したが……擬似太陽レベルの熱量には、まだ耐えれそうにないな」
改良した〝ヒュベリオン〟を試して、そう口をこぼすハジメ。その顔は悔しそうであるも、また更に改良していけばいいと前向きに考えることにする。
「んで──やっぱ、生きてるよな」
〝ヒュベリオン〟の改良案頭の隅に置いといてハジメは語りかけるように喋りながら、レーザーによって出来上がったクレーターに目を向ける。そして、ハジメの呼びかけに答えるかのようにクレーターから姿を現したのは全身に火傷を負い、皮膚が焼け爛れ、肉が溶け落ち、骨が零れ剥き出し、右半身が酷くおぞましいほどに歪むほどの損傷を受けても尚、生きてる鬼人の姿。
ハジメは、だろうなと納得する反面、地形を変えるレベルの太陽光収束レーザーを諸に受けても尚、生きてるジャブラにドン引きする。
「ああ、流石にこの傷は効いた」
溶けた口や潰れた喉が再生したのか、喋れるようになったジャブラはそうハジメに告げる。他の損傷箇所も蒸気が発生し再生を開始しているが今までの傷の時よりも再生速度が遅いことに気付く。
「クハっ、この攻撃でやっと遅くなるか……(今、ある最高攻撃力を誇るヒュベリオンでも無理か)」
ハジメは、ジャブラを倒す作戦案の一つ、再生不能にまで追い込む作戦は不可能だと判断する。
周囲の地形を変えるレーザーでさえも殺せない理不尽の権化。
アザンチウムさえもいとも容易くは破壊す力。
不死身に近い異常な再生速度。
「おもしれぇ、じゃねぇか」
ハジメは笑う。そして、ドンナーとシュラークを手に取る。それを見たジャブラ。再生が未だに終わらずとも銃程度ならそこまでダメージはない。
「ふん、その銃で何ができる?」
「できるさ、この力ならな───〝
ハジメの発した言葉。ジャブラの目が見開いた。
「!………それはっ」
「〝
言い終えた瞬間、紅の稲妻が迸り二丁の銃が分解しハジメの両腕に纏い始め籠手へと変貌する。
───ドンナー&シュラーク モード:
「よし、成功!」
慣れない力ではあったが、上手くできたことに安堵するハジメ。黒の籠手に紅の線が奔る。
「まさか、デウスの能力を扱えるとはな驚いた」
ジャブラは素直にハジメの成長を認め両腕を構える。
「それで、今度は 殴り合いを所望か?」
「………いんや」
ハジメは〝宝物庫〟から一本の純黒に輝く黒刀を取り出し、そして、刀を前へ突き出すように構える。
「俺が所望するのは斬り合いだ」
「おもしろい」
刀を構えるハジメを見て、どうやって、自分という壁を乗り越えるかを期待を込めて微笑を浮かべるジャブラは声高らかに口を開く。
「では、見せてみろ! デウスの力を何処まで引き出せてるかを!」
「うるせぇ!てめぇは、とっとと俺に負けやがれ!」
瞬間、二人は抉れた大地を踏み締め加速し、互いの刀を、拳を振るうのであった……。
ジャブラの
◆〝
回復と耐久系の技能の能力を極限にまで引き上げたことで発現した神代技能。
魔力と体力を消費すればどんな傷の具合でも再生可能であるが傷が深くなる度、再生速度は著しく下がる。発動は任意と
◆〝
戦闘系の能力を極限にまで引き上げたことで発現した神代技能。
単独戦闘時に筋力、体力、耐力の三つのステータスを倍増させ、戦う相手が多くなるほどステータスも倍増するという乱戦向きな技能。