なんとか三月中に投稿できました(*´`*)
ハジメがジャブラを押さえている頃、優花とユエの二人は攫われたシアがいると思われる神殿へ向かっていた。
『グルァァァァ!』
そこへ、二人を神殿に行かせないとオーガやゴーレム達が一斉に襲いかかる。
しかし、優花の周りを飛び回っていた聖剣が二人に近付こうとするオーガの頭を吹き飛ばし、同様にゴーレムも聖槌で核を破壊し行動不能にさせ優花達の行く手を阻む存在を蹴散らしていく。
そして、神殿の入り口にまでさしかかろうとした突如、入り口の傍で佇んでいた十メートルはあるゴーレムが動き出し、神殿内に入ろうとする二人の侵入者へ鉄槌の如き剛腕を振り下ろす。
「「邪魔!!」」
だが、二人は避けることもせず、優花はゴーレムの右腕の関節部に天性魔法〝
「廻れ──〝天輪〟!」
優花が呟く。瞬間、あちこちに飛び回っていた〝聖杭〟が聖剣へと変わり、一斉に集結し、連結していき一輪の花を創りだすとコマのように廻りだし加速する。そして、天の花はゴーレムの胴を足を頭を切り刻み残骸へと変えていく。
「いくわよ、ユエ!」
「……ん!」
ゴーレムの残骸を後に優花とユエは声を掛け合いながら神殿内部へ突入するのであった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「────────」
神殿内部の最奥。そこには大きな広間の中心に祭壇が置かれており、其の上で眠るウサ耳少女のシアがおり、その傍では桃色髪の鬼人──ベールがシアに手を翳しながら何か詠唱を唱えている。
そして、シアが眠る祭壇を中心には巨大な魔法陣が展開されておりベールの詠唱に反応し薄緑色の光が発光している。が、詠唱を続けていたベールの口が突然と止まる。そして、不機嫌な表情で後ろへ振り返りざまに呟いた。
「───────ちっ、もう来たの」
舌打ちしながらベールが向ける視線の先、この大広間に繋がる通路から二人の人物が駆けつけた。
「ここが一番魔力を感じるわね」
「……ん、部屋も見た中で一番広い」
部屋へ辿り着いた二人──優花とユエは神殿内部に入るのに成功したが、内部は空間が拡張されて迷宮じみており、加えてゴーレムやオーガ達といった魔物達が配置され優花達を見つけだした瞬間、襲いかかる。
優花達は、襲いかかる魔物達を一網打尽にしながら一番大きな魔力反応がある場所を見つけ全速で駆けつけて来たのだ。
そして、辿り着いた部屋を見渡してると優花とユエは、桃色髪の鬼人と中央の祭壇の上に眠る自分達の大切なウサ耳少女を見つける。
「「シア!」」
シアの姿を見た二人は安堵と喜びの表情になるも近くに敵がいることも忘れてないため、真剣な顔に戻り、助け出そうと一気に祭壇へ駆ける。その時、部屋の石床から無数の手が伸び二人の進行を阻む。
「くっ」
「むっ……〝禍天〟!」
床から魔力を感じ取った優花は天翼を展開して上に飛翔する。すると、床から無数に伸びてくる手の奇襲を回避。ユエも宙に浮いて重力魔法〝禍天〟を発動し発生した三つの重力球によって伸びる手の軌道を乱す。そこへ優花が上から聖杭を飛ばして石の手を破壊する。しかし、無数の手も生成されていくのを目撃した二人は顔をしかめる。
「ちょっ、この手、壊しても復活してくる!」
「……術者を止めないとっ」
破壊しても再び生成される石の手に邪魔され前に出れない二人。そこへ今までよりも巨大な石の手が二人の前に現れ、その手の平の上に立つ桃色髪の鬼人が口を開く。
「まさか、ここまで来るとはね。団長の言葉通り来たのは慈神と先祖返り」
まるで、優花達が現れると分かってたのように喋る鬼人───ベールに優花が問う。
「……貴女がベールね」
優花の言葉に、ベールは頷き、礼儀正しく一礼しながら口を開く。
「ええ、私の名はベール。女神の杖であり城の守り手。ようこそ侵入者、我が城へ攻めてきたことを悔やむがいい」
「どういう──っ!」
「なにを──!?」
その言葉ともに石の手から無数の魔力の反応を感じ取る二人。見れば無数の手が優花達を囲んでおり、手の平から魔法陣が展開されていた。
「まずは小手調べに全掃射」
ベールは手を翳し告げる。直後、無数の手に展開されていた魔法陣から次々と無数の魔法を放たれる。
それは、まさに敵軍を屠る無数の砲台。
「ユエ!」
「………ん!」
優花の呼びかけに答え、ユエは〝聖絶〟を展開、優花は更に〝聖盾〟へ形態変化させた聖杭を〝聖絶〟の周りに配置させ防御力を底上げしたことで全方位から襲いかかる無数の魔法を防ぐ結界を作り上げる。
次の瞬間、周りの砲台から〝緋槍〟、〝凍雨〟、〝雷撃〟、〝石砲〟、〝水流弾〟、〝光刃〟、〝黒槍〟といった様々な属性魔法の大群が優花達を襲うも、二人の展開した防御陣はそう易々と突破できずにいる。
「……やっぱり、この程度だと通りそうにないわね」
砲撃が効いてない光景を見て残念そうに呟くベール。やはり無数の魔法砲撃であっても威力は中級~上級魔法程度、あの頑丈な防御結界を壊すのは不可能だと判断。魔力も余り無駄なことで消費したくないので砲撃を終了させる。
優花達も砲撃が止んだのをわかると〝聖盾〟は飛ばしながらも〝聖絶〟は解除しベールを睨む。ベールの方も優花達を見る。
「やっぱり、面倒ね貴女達」
「そっちこそ」
「………ん、お互い様」
睨み合い、相手の動きを警戒しながら短い会話を行う三人。
「シアに何する気なの?」
「逆に聞くけど、そう簡単に教えると思う?」
「………なら、こっちはシアを助けるだけ!」
優花の問いかけに、そう返答するベール。その間を割ってユエがシアの元へ向かう。
「行かせるわけないでょう?」
「こっちもね!」
しかし、それをベールは許す筈がなく無数の手共にユエの後を追いかけるも、白銀の少女が邪魔するように割り込んできたためベールは足を止める。石の手を向かわせようとするも聖杭が行く手を阻む。
「「────」」
互いに見合う中、優花は四つの聖杭をユエに付け、ベールも優花が届かない範囲からユエを攻撃開始する。
「アンタの相手は私よ」
「へぇ、やる気?」
優花は〝宝物庫〟からハジメが倒した〝ネームド〟の神の使徒〝ノイント〟が所持していた大剣を優花が扱い易いように改良し長剣となった優花専用アーティファクト〝天剣〟を取り出し手に持つ。ベールも魔法で創りだした両刃斧を手に持つ。
「シアを返せ!」
「神は堕ちろ!」
二人は声を上げながら己の得物を振るう。直後、白銀の魔力と桃色の魔力が激しくぶつかり合う。発生した余波は辺りの空気を震わせていく。
「………くっ」
無数の石の手と石のゴーレム兵に囲まれてしまったユエは口を歪ませる。どんなに突破しようしても埒が明かない壁。
「………邪魔っ!」
襲いかかる石の手に対しユエは空間魔法〝界穿〟を発動してシアの元へ向かおうとしたが問題が起こる。
「?!」
何度発動してもゲートが一向に開かないのだ。なんで?!と心の中で叫ぶユエは数秒の間、その現状に理解が追い付けず動きが止まり隙ができてしまう。
案の定、その隙をゴーレム達が見逃すわけがなくユエを取り押さえようと襲いかかる。
「っ!」
その事態に気付き、回避しようとしたユエであったが気付くのが遅く間に合わない。その時、四つの聖剣がユエの頭上を駆けながらゴーレム達を薙ぎ払いユエとの距離を遠ざける。
ユエも聖杭の存在に気付き安堵した。
「……聖杭……助かった」
聖杭のおかげにより難を逃れたユエは、今もベールを抑えている優花に感謝しながら再び、シアの元へ駆ける。
「(〝界穿〟を使えなかった……空間系の魔法を封じる魔法?)……なら、〝千断〟!」
ユエは四つの聖杭と共にゴーレム達を退けながら思考していく。最初に思い浮かんだのは空間魔法といった空間系魔法の封じる魔法。しかし、空間魔法〝千断〟を使ったら発動し、ゴーレムを真っ二つに出来た為、空間魔法自体の封印ではないことは確定する。
「(空間魔法自体は使えた……なら、封印……いや、制限?)もしかして、ゲートといった空間を繋げる魔法の制限」
答えを辿り着くユエ。そして、そんな限定的な魔法の制限を可能に出来るベールの技量に舌を巻く。だが、制限されてると分かればユエのやることは一つ。
「(他にも制限されてる可能性は高い)なら、しらみ潰しにしていくだけ! ───〝雷龍〟!」
ユエの言葉と共に黄金の稲妻の龍が現れ、その顎を以てゴーレム達を噛み砕く。続けて、〝蒼龍〟も発動しようとするが、先程の〝界穿〟みたいに発動がされない。
「(一つ以上の魔法の制限……いや、違う。これは、神代魔法以外の属性魔法の制限)」
この大広間内で制限されてるのは空間を繋ぐ〝ゲート〟の使用と属性魔法の使用の制限だと理解したユエ。
「(まだ、他にもあると思うけど私が注意するのはこの二つ)なら、行ける!」
他にも制限されてる可能性はあるも、近接戦闘は無理なユエが心配するのは先に見つけた二つのみ。ならばとユエは今度こそシアの元へ直行する。
シアがいる場所へ近付くほどゴーレム達の守りが強固になっていくもユエには関係ない。
「〝
現れたのは黒の渦。そこから無数の禍々しい漆黒の手が這い出てくる。
そして、這い出てきた黒色の手はユエを阻むゴーレム達を捕まえていき渦の中へと引き摺り込んでいく。例え、抵抗しようとも無数に這い出る手が許さず、圧倒的な数によってゴーレム達は為す術なく暗黒の渦へと引き摺り込む。まれていく
やがて、ユエを阻むゴーレム達の数は減っていくばかり守りが手薄になっていく。そこへ壁や床から伸びてくる石の手は、ユエの周りで円周上に飛び回る聖杭が防ぐ。
漆黒の手と聖杭により道が切り開かれ、遂にシアに触れれるところまでやっとの思いで辿り着いたユエは彼女の名前を呼ぶ。
「シア!」
名を呼ぶが反応はない。もしかしたら魔法によって眠らされてるかもしれない。ならばとユエは精一杯に手を伸ばす。
だが、それを女神の城は許さない。
声が聞こえながらも、手を伸ばすユエと眠るシアとの距離がほんの数センチにまで迫った瞬間だった。ジョリッとユエの耳に何か硬いものが切断されたような音が聞こえた。
「……ぇ」
ユエから虚しい声が漏れる。理由は彼女の目に映った二つの光景。一つは、手を伸ばした筈の腕が肘から先が失っていること、もう一つはシアの眠る祭壇は分厚い石壁によって覆われてしまったこと。
それは、ユエにとっては予測なんて不可能に近いこと。
「まさか、いけるとお思いで?」
声が聞こえた。視線を向ければ、長剣を振るう天使の少女を相手をしている桃色髪の鬼人が自分を見ていた。彼女は自分が腕を失った瞬間を目にて不気味に笑みを浮かべてるのだった。
時間は少し遡る。
「〝
優花の知らない三つの付与魔法を行使したベールから放つのは巨大な三つの炎弾。直撃せずとも皮膚が焼け爛れそうになるほどの膨大な熱を発しながら優花の方へ向かう。
「〝水属性適正強化〟〝范海牢〟!…………っ」
対して、優花も属性強化させた水の障壁を展開させるが、たった一つの炎弾が直撃するだけで水の障壁が簡単に蒸発したことに優花の口が僅かに歪む。
「(また防御しても埒が明かない!)ならっ」
距離的に障壁は張れないと悟る優花は迫り来る残り二つの炎弾の対処を考える。そして、思い付いた優花はユエの護衛に行かせた四つ以外の聖杭を聖剣に形態変化させ突貫する。
「ふぅー(まだ慣れてはないけどやるしかない!)、〝光属性適正強化〟!〝神威付与〟! ──煌めけ〝
優花は突貫しながら聖剣達に光属性を強化させ、〝神威〟を付与させたことで一度きりとはいえ爆発的な火力を得た聖剣達は優花に迫る巨大な炎弾達を五芒星を描きながら切り裂いた。切り裂かれた炎弾は膨大な熱を発しながら爆破したが聖剣達に付与された〝神威〟によって相殺される。
「………〝焦熱炎牙〟を相殺ですか。なら、これならどうです?〝
少し驚いた顔をしつつベールは優花の力量を量るかのように今度は風の刃が込められた無数の宝玉を乱れ撃ちする。先程よりも範囲が広く速度が早い攻撃に優花は片手を前に突き出した。
「〝
先程よりも余裕がある優花は、その程度の範囲魔法なら効かない。放たれる宝玉達を一瞬にして光のドーム内に包み込んだと思えば凝縮させ一つの宝玉を完成させる。
「お返しよ!」
「!」
そして、突き返すように光のドームをベールの方へとやり何か行動させる前にドームを破裂させた。瞬間、凝縮された風刃の宝玉と破裂した際に起こる光の熱量がベールへ襲い、周囲は周りの石壁の粉塵や爆煙に包まれる。
「やっ……た?」
煙が舞う中、優花はポツリと呟く。だが、その願いは一瞬で消されることになる。爆煙を切り裂きながらベールが姿を現す。それを見た優花はすぐに臨戦態勢に戻る。
その時、ベールは笑っていた。
「なに笑ってんの、よ!」
突然、不気味に笑うベールに眉をひそめ訝しむ優花は加速しながら長剣を振るう。が、ベールにいとも容易く片手で持たれた斧で受け止められてしまう。
「っ!」
己の攻撃が簡単に止められ目を見開く優花に対しベールは納得した表情で口を開いた。
「うん、やっぱり貴女。剣なんて余り使ってないでしょ?」
「っ!」
ベールに核心を突かれ口を歪ませる優花。そんな彼女の呼吸はいつもより荒く、鼓動も早くなっている。理由は単純、近接戦闘である。
一応、優花もハジメよりも短くはあるも転移前はハジメの師匠である
少し学んだ程度の剣の扱いでは圧倒的な差が確実に生まれる。今もベールとの実力が拮抗しているのは〝天使化〟によるステータスの大幅な強化のおかげである。しかし、それは優花の疲労が溜まっていくほど段々と綻び生まれていく。
そして、
「いえ、魔法戦はある程度喰らいついていましたが……近接戦は、ここまで貴女方とこれほどの差があることに驚きまして……」
口に開いたかと思えば、癪に障る発言に優花は怒りの余り剣の柄を強く握り締める。
「アンタね! そうい──「ぐぅっぁぁあ!!」──ユエ!?」
青筋を立てながら優花は口を開く。だが、それは吸血鬼の少女の苦痛の声により遮られ、その声を聞いた天使の少女は焦った顔で後ろを振り向き名前を呼ぶ。
そして、目に写った光景に唖然とした。
そこには、ドーム状の石壁に包まれた祭壇とすぐ横で、切断された右腕の痛みに悶え苦しむユエの姿。
「ユエ!」
大事な仲間が倒れ込む姿に優花は焦る。なにをどうしたらいいかと思考が乱れる。そんな瞬間をベールは見逃す筈はなく、手に持つを両手に持ち変えると斧を大きく振り上げる。
「戦闘中に考え事とは呑気なことです、ねぇ!!」
「! キャァァァアア!!」
ベールの言葉に反応し視線を戻せば、既に斧を勢いよく振り下ろすベールの姿。咄嗟に優花は、長剣を面を盾にして斧の直撃をギリギリ防ぐも其の威力には耐えれず吹き飛ばされてしまう。
だが、優花は吹き飛ばされながらも純白の翼を大きく羽ばたかせて床への直撃をギリギリ回避するとユエの元へ駆け飛び、そのまま回収して彼女を抱き寄せる。
「ユエ、大丈夫!?」
「……ん、なんとか」
優花の呼び掛けに痛みに耐えながらも答えるユエ。切断された腕は、既に彼女の技能〝自動再生〟のおかげで、再生し始めているため安堵する優花。
「なにがあったの?」
「………シアに触れようとしたら突然、周りの石床が動きだして私の右腕を切断しながらシアを覆った。後、この部屋はアイツの
「! そういうことね」
ユエの言葉にベールと同じ付与魔法を扱う優花は理解し、ベールを睨む。ベールの方は笑みを浮かべながら此方を見ている。
「ベール、貴女……この部屋全体に付与魔法を行使してるのね」
「正解、言ったでしょ? ここは私の城だって」
そう優花の言葉の通り、ベールはこの大広間全体に付与をしていた。その付与の効果は、〝軟化〟、〝硬化〟、〝形質変化〟、〝痛覚向上〟、〝属性魔法制限〟、〝境界制限〟など他にも全属性の魔法が付与され、まさにベールの指示一つで変幻自在に変化する生きる城。
故に、だからこそ優花達は驚愕せざるを得ない〝
「有り得ない………いや、〝
「……これが神代の御業」
「やっと、理解しました? 貴女達は無謀な戦いをしてることを」
ベールのした付与魔法の技量と力に優花は同じ付与魔法の使い手として、ユエは魔法に長けた者であるこそ畏怖し驚愕する。
斧を軽々と持って構えるベールは、優花とユエを見下ろしながら言葉を続ける。
「そして、理解しろ。貴女達には到底、扱えることは不可能。魔法──いえ、
ベールは告げる。途端、大広間の四隅が蠢くと石像が出来上がる思えば石像から計四つの巨大な魔法陣が形成される。
「なにこの魔法陣!?」
「………こんな大きい魔法陣があるなんて!」
優花とユエは大広間に広がる魔法陣に驚きの声を上げる中、ベールは詠唱を詠い始める。
「【果てる理想 廃れる繁栄 其の雷は万物を焼き払う】 」
「っ! 私が防御魔法を発動するからユエは────」
「! ………分かった!」
聞いたことのない魔法の詠唱とヒリヒリと肌で感じる異常な魔力の上昇。優花とユエはすぐに動く。そんな中、優花は自分が思い付いた策をユエに伝える。ユエは、その内容を聞いて余りにも危ない手段に否定したいが優花の覚悟を決めた銀の瞳と其の想いに負け、策に乗る。
「【眼は焼け爛れ 決して逃れることはできない破滅 迎撃も防御も後悔も赦さない】」
そして、ベールの詠唱の終わりを告げる。
「【死すことも理解できず ただ灰となるだけ 神の怒り 天の災い 下界の声は届かない 之は不変不可測の死の閃光】」
ベールの言葉に反応し四隅の石像が光輝きが増し、床に広がる四つの魔法陣は混ざり合い黒い稲妻を発しながら新たな一つの魔法陣へと昇華して漆黒に染まる。
そして、魔法陣から現れた一つの雷雲が漆黒の雷を放ちながら一つの宝玉へ凝縮されていく。対して、優花も己が持つ最高峰の防御魔法を展開する。
「死に晒せ 破滅の雷霆!───【黒王雷】」
「───〝
解き放たるは黒き稲妻が凝縮された死の雷雲。対して、優花が顕現させたのは嘗て始祖の竜神の息吹を以てしても耐えきった光輝く大聖堂。
顕現した大聖堂から黄金の大鐘楼が鳴り響き光のドームが展開され護るべき者を守護する。対して黒の雷雲は解き放たれた直後、破裂した。其れは音も、衝撃も、魔力すらも置いていき、目にも止まらぬ早さで漆黒の閃光は此の大広間全体を黒に埋め尽くし瞬間、死の閃光がすべてを焼き払った。
置いていかれてた音は鼓膜を破壊するほどの轟音を鳴らし、衝撃も大地を大きく震わした。そして、始祖の竜神の息吹すらも耐えきった大聖堂は跡形もなく砕け散り光のドームは見事に破壊されていた。
その光景を上から眺めていたベールは語り始める。
「どう? 魔術の到達点の一つ。祭壇魔術の力は?」
───祭壇魔術
其れは数多の魔術陣、触媒、贄を用いて発動させる
祭壇は
そして、祭壇魔術とは個人が扱う範疇を大きく逸脱する超々大規模魔術であり、其の威力は一撃で一つの都市を滅ぼせる程。
しかし、ベールは違った。彼女は数多の魔術陣も、触媒も、贄も必要としない。ただ、魔術的な建造物さえあれば一人で祭壇魔術を行使できる。
故に、女神の杖であり城の守り手。
そんな彼女の持つ神代技能。それは、
───
能力は単純。それは一人で祭壇魔術を行使できる技能。祭壇魔術に使う魔力の大幅削減。
この技能を持つ彼女は祭壇魔術を神以外で唯一単独行使をできる存在である。
ベールは光の粒子となって消えていく大聖堂だった残骸を横目に光のドーム内にいるだろう敵の姿を探してると、ドームが展開されていた場所に影が見えベールは鼻を鳴らす。
「あら、流石に生きてたのね」
「──っ」
ベールが見つけたのはユエだった。彼女は〝聖域〟の護りによって無事であったのだが、無傷という訳でもなく左腕の皮膚が焼け爛れており、苦痛に耐えてるのか口を大きく歪ませ、眉をしかめている。
その姿を見てベールはユエにトドメを刺そうともう一度、祭壇魔術を行使しようとしたが、ふと手が止まった。
「(………慈神の姿が見えない?)」
そうだ。
なら、どうして姿が見えない?
頭に警鐘が鳴り響く。短い時間で思考を張り巡らせ幾つかのパターンを思い付くがどれもリスクが高く有り得ないと決め付ける。
「でも、まさかっ………」
不安に感じたベールはユエを見た。そして、視線に気付いて此方へ向いたユエの表情は先程とは違いしてやったり、と笑っていた。
「っ!」
その笑みを見て顔を青ざめるベールは後ろに振り向いた直後、目を見開き顔を引き攣らせた。そして、目に映った光景に対し顔を大きく歪ませながらポツリと呟いた。
「博打でしょ……それは」
そこには全体に纏わせていた幾つかの聖杭が粒子になって消えていく中、残りの聖杭と共に純白の翼を羽ばたかせながら駆ける傷だらけの白銀の髪の少女がそこにいた。
手には長剣を持ち、その目には
「あぁ」
ベールは思った。
まさか、ここまで馬鹿だとは思わなかった。
そして、優花に称賛を送った。畏怖を込めて、
それもそうだろう。普通ならやるわけない、やろうとしない。まさか、自身の発動した防御魔法の操作をユエに任せ、自身は祭壇魔術を、都市を滅ぼせる大魔術を前に、最上級の防御魔法をせずに防御魔法を付与した聖杭を周りに展開しただけで此方に奇襲を仕掛けたのだから。
自殺行為に近く、するとしたら
にも関わらず、目の前にいる敵はやってのけたのだ。
だから嫌いなんだ。
不可能を可能にする神が、英雄が、そんな想いが満ち溢れていく内に秘めた怒りが込み上げていきベールは心の底から叫ぶ。
「ほんとっ、神って奴は! 大っ嫌いよ!」
「(ヤバイ、意識飛びそう)」
優花は既に満身創痍だった。
〝黒王雷〟による熱と衝撃で体の所々が火傷を負い、意識が朦朧とする中、優花は自分の手が握る〝天剣〟だけは離すわけにいかないと更に握り締める。
今思えば自殺に近いやり方だった。ユエだって否定してた。でも、それでも、優花はやると決断した。
───
「(ああ、ハジメに怒れちゃうかもなぁ~~)」
内心、最愛の人に怒られるだろうなと苦笑する優花。ユエにも、ティオにも、アレスにも、雫にも、そしてシアにも
だけど、
「私はっ、諦めない!」
優花は出来る限り自然回復に使われる魔力を全体に送り続ける。荒い息を整え、歯を食いしばる。
諦めるな、届け!
その想いに呼応したのか背中に生えた天翼が輝き加速して、ベールに接近する。
「舐めるなぁ!!〝
ベールが魔法を発動する。それは、先程よりも巨大で熱を発する炎弾。そして炎弾は優花へ一直線へと放たれる。しかし、今の優花は避けられない。防ぐ手段もない。
だが、対抗できる手段があった。
「──〝魔力解放〟」
優花の言葉に呼応し、手に握られていた〝天剣〟の刀身が伸び白銀の線が浮かび上がったと思えば光を放出し始める。そして、向かってくる炎弾に対して優花は天剣を縦に振り下ろして綺麗に真っ二つに斬り裂いた。
「は?」
ベールは、有り得ない光景に目を剥いた。それもそうだ。〝魔術強化〟よりも格段上の〝魔術究極化〟を防いだり、避けるのではなく叩き斬ったのだから。
魔法を斬った。それは余りにも有り得ないこと。しかし、優花は……いや、天剣はそれを可能にした。
天剣に付与されてる神の使徒達が使う〝分解〟
〝天剣〟は、フェアベルゲンから出る前にハジメに製作して貰った専用アーティファクト。素材はノイントが持っていた大剣と銀翼の一部を使われたらしいがハジメが魔力を流しても〝分解〟は発動しなかった。
そんな普通なら誰も使えないはずの神の使徒達の持つ力だ。しかし
優花が魔力を流せば〝分解〟は発動した。そして、〝分解〟を発動したとき優花は理解した。〝分解〟とは天性魔法を、天使が持つ〝浄化〟の力を変容させたものではないかと。
故に優花専用アーティファクト〝天剣〟とは、簡単に言えば〝分解〟の力を理解、慣れるためのアーティファクトなのだ。
声を上げながら流星のように加速していく優花。
「ハァァアアアア!!」
魔法を斬り裂いた後も、止まらずに天剣を構えながらベールへ向かう。そんな優花の勢いにベールは少したじろいでしまう。
「くっ! なら!」
ベールは祭壇魔術に送る魔力を取り止め、城を動かす。魔力を注がれた石壁や石床は針の形に変形すると優花へ襲い始める。だが、それを見ていた吸血姫は許さない。
「………優花はやらせない……!〝禍天〟!!」
ユエが重力魔法〝禍天〟を発動。顕れた幾つのも重力球が優花を狙う針の軌道を逸らし直撃を防いでいく。
「なぁ!?」
その光景にベールは唖然するや束の間、既に目の前には天剣を構えた優花がそこにいた。
「終わりよ!!」
「っ! 〝
しかし、ベールは諦めず刃が届く寸前に三重の魔法障壁を展開することに成功する。が、天使の〝分解〟の前には意味を成さなかった。
優花は己に身を任せがら勢いよく天剣を振り下ろす。振り下ろされた剣は障壁にぶつかるも分解により弾かれることなく其のまま通り抜けていきベールの眼前に迫る。
優花は叫ぶ。全身の力を使い前へと進むために
「いっ、けぇぇえええええ!!!」
ベールは叫ぶ。理不尽な神々への怨嗟を
「神がぁぁあああ!!」
二人の想いがぶつかる。しかし、結果は変わらない。
振り下ろされた天剣はベールの体を袈裟斬りにしながら吹き飛ばし、そのまま斬られたベールは勢いよく石床に叩きつけるのであった………。
モチベに繋がるんで出来ればでいいので感想、評価お願いしますm(_ _)m