ハジメが彼と初めて出会ったのは、中学の入学式の日であった。
ハジメ達は、同じ中学に進学し、四人で一緒に掲示板に貼られたクラス表を見ていた。
「えっ‥と……南雲、南雲……あった。僕は二組、か……優花ちゃんは?」
ハジメは自分のクラスを確認すると、左隣にいる小学の私服姿から此処の中学の制服を着ている優花に聞く。 優花も、自分の名前を探している最中でクラスを表に視線を向けていた。
「うーん、あっ、あった。私も二組だったよ」
「じゃあ、一緒だねっ」
「うんっ」
なんとか、優花と同じクラスになれたことで安心してハジメは安堵する。すると、右隣から一緒にクラス表を見ていた二人の声が聞こえた。
「ウソー ! 私だけ一組なの?!」
「あー、ドンマイ、奈々……」
それは幼なじみである宮崎奈々と菅原妙子の声であった。
妙子はハジメと優花と同じ二組だったが、奈々だけが一組だったらしく嘆いている。
「あのさ奈々、クラスは違うけど昼ご飯は毎回そっちにいくからさ。ねぇ、ハジメ君」
「そうだよ、だから安心して奈々ちゃん」
「二人もこう言ってるんだし」
「うぅ…南雲っち、ユウカ〜」
「ほらほら、早く教室に行こ? 入学式もあるんだし……」
三人でなんとか奈々を励ましていると、妙子がそろそろ入学式の時間が迫っていることを言うので、ハジメ達は各クラスに向かうのだった。
入学式が始まり、校長などの挨拶などがあって終わると各クラスで自己紹介などをしていた。
『遠藤浩介。遠藤?……遠藤!あれぇ、アイツって今日、休みだったかぁ?』
しかし、自己紹介の際にハジメ達のクラスの二組で、名前を呼ばれているのに返答が無く、そのままスキップされる珍事件もあったが、担任の挨拶でホームルームが終わり下校時間になった。
「ハジメ君ー」
「ハジメ〜」
「南雲っち〜」
「うん?優花ちゃん、二人共」
ハジメは後ろから呼ばれて振り返ると優花と妙子、奈々の三人がハジメの所へ駆け寄って来ていた。
「どうしたの?」
「早く一緒に帰ろう〜」
「そうそう、お母さん達が皆でお祝いしようって」
三人が来たのは、一緒に早く帰って〝ウィステリア〟で皆でお祝いパーティーをしようということらしい。ハジメは、企画したのは自分の母の菫だろうと予想していると、更に妙子からも呆れる報告があった。
「既に、父さん方達はもう、お酒飲んじゃって出来上がってるらしいわ……はぁ、全く」
「あーーアハハ……原因は絶対、ウチの父さんだ」
「ハジメは悪くないでしょ」
妙子の報告を聞いて、原因を察したハジメは苦笑いで校内の窓から見える空を見上げた。何故そうするのか?簡単に現実逃避が出来るからだ。
そうてると、優花からも声が掛かった。
「だから、ハジメ君も行こ?」
「あー、僕はちょっと校内を見て回ってから向かうよ」
「えぇ〜」
「どうして?」
ハジメはそう返すと、奈々からは「えぇ〜」と何故と疑問符を浮かべる。優花も首を傾げている。
「ちょっとした興味だよ。でも安心して僕もすぐに向かうから」
「はぁ〜、ハジメって時々、変よね」
「変って……」
妙子に変人と言われ、少し傷付くが苦笑いしながらハジメは優花ちゃん達に一緒に帰ろうと誘われたがやんわりと断った。
「じゃあ、ハジメ君、また後でー」
「早く来ないと、お料理、全部食べちゃうからね〜」
「いや、アンタそんなに大食いじゃないでしょ? じゃ、ハジメ また後でね」
「うん、わかった〜」
優花はそのまま、手を振りながら後で合流しようと言って、奈々はボケるも妙子に突っ込まれたりしながら先に〝ウィストリア〟に向かっていくのを手を振りながら見送るハジメだった。
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ハジメは、優花達と別れてから適当に校内を回っていると、何処からか微かに人の声が聞こえた。
「…………な……」
「えっ?」
その声を聞こえ、ハジメは立ち止まって周りを見渡すが誰もいない。
「うん…? 空耳かな……」
やはり誰もいない。空耳だと決めつけ、再び歩きだそうと一歩踏み出そうとした瞬間だった。
「…な…で………も、こん…ばっか…ぐす」
「……!」
それは空耳じゃなく、啜り泣いてるのか震えた声だった。ハジメは、すぐさま声の発生元を探し始めた。
「此処かな……」
発声元を辿りながらハジメが辿り着いた場所は、空き教室だった。普段は余った机や椅子が閉まってある所謂、物置教室だった。
ガラガラ……
「誰か、いますか〜?」
少しずつスライドさせ扉を開けながら誰かいないかと声を掛けながら教室誰も居なかった。
「やっぱ、違う場所かな?」
空き教室の何処も見渡しても人影すらも見えず、居ないと思ったハジメは扉を閉めようとした時だった。
ハジメのすぐ近くから……
「ぐすっ……」
再び、啜り泣く声が聞こえ辺りをすぐにまた教室を見渡していく。そして、よく見ると部屋の隅に体育座りをした前髪を伸ばした男の子がいた。
「あの子かな……」
彼は、顔を俯かせているせいかハジメに気付く様子もなく、彼に近付こうとするが……
「クソ……なんでクラス表の名簿に名前がなかったり…自己紹介も順番とばされるし…ホントに俺……この先、友達出来るかな…? ぐすっ」
彼の虚しい内容の独り言を聞いたハジメは気まずさと少し同情してしまうが、ひとまず彼に声を掛けることにした。
「あのー、大丈夫…?」
「……ぇ?」
声を掛けると、彼はハジメの存在に気が付いたのかハジメの方へと振り向き、固まるだけだった。
「おーい聞こえる?」
「…ッハ! おっお前、俺に気付いたのか!?」
彼は驚くように声を上げるが言ってる意味が分からず、ハジメはなんとなく手を差し出し、自分の自己紹介をする。
「あの僕は南雲ハジメって言うんだ。君の名前は?」
「あっ、ゴメン。俺の名前は遠藤浩介って言うんだ」
「遠藤君か……あっ、僕は何でも呼んで良いからっ」
「じゃっ、南雲で」
「うん」
そしてこの日、ハジメは空き教室で出会った彼、遠藤浩介との奇妙な出会いを果たしたのだった。
ー数分後ー
「……えっ!遠藤君もあの漫画を読んでるの!?」
「まさか、南雲もアレ読んでんの?」
ハジメは浩介と話してる内にお互い好きな漫画の好みが合いハジメが今お気に入りの漫画を持っていたりと好きだと知って話が弾んでいた。それに、ハジメはこれまでの人生で同い年の男子とここまで話すことは滅多に無かったので新鮮さも感じていた。
「うん、最新巻も持ってるし、番外編の小説も持ってるよ!」
「マジ!? 俺も読みてぇなー!」
浩介はそう唇を尖らせながら言って両手を後ろに回した。そんな浩介を見てハジメは口を開いた。
「じゃあ……今度、僕のを貸そうか?」
「えっ、良いのか?」
ハジメの言葉に浩介は予想外だったのか驚いた様子でハジメを見つめる。
「うん、良いよ僕もこんなに話しが合う人あまりいなかったから…」
「え?」
そう、ハジメは男友達がそんなにいない。いるとしてもネットのゲーム仲間ぐらいだ。男の子とはそれなりには遊んではいたが、優花達と遊ぶ方が多く。それに大事と言える程の男友達が出来ずにいた。
「……」
ハジメの言葉に浩介が黙ってしまい、ハジメは不安と焦ってしまって唇を震わせながら話しかけた。
「……遠藤君?」
「あっあのさ南雲……俺からも友達になってくれないか?」
「えっ……?」
遠藤君の言葉にハジメは驚きを隠せず、固まってしまった。すると、浩介が首を傾げながらハジメの名前を呼ぶ。
「南雲?」
「うん、良いよ!僕も遠藤君とはこれからも仲良くしたい!」
ハジメは、初めての男友達が出来たことに嬉しさを隠せず、声を上げながら感謝を伝える。すると、浩介からも同じように声が上がった。
「よっしゃぁー! 俺も、これからよろしくな南雲」
「うん、こちらこそ」
浩介が差し伸べた手をハジメがしっかりと応えるように手を差し出して二人は握手をする。
そして、ハジメは浩介という初めての男友達と呼べる男の子と出会えることが出来たのだった。ふと、ハジメは浩介は何処のクラスなのか聞くことにした。
「あっそうえば遠藤君って何組? 僕は二組だけど…」
「えっ…俺も二組なんだが………」
ハジメは、浩介が同じクラスだったことに驚くも、自己紹介の時のことを思い出した。
「遠藤……ハッ、あの居なかった子は遠藤君なのか?!」
「えっ、今気付いたのか?」
浩介は、ハジメを信じられないといった眼差しを送る。ハジメは浩介の眼差しに耐えれず顔を逸らす。
「遠藤君、ゴ、ゴメン。気付いてなかった……」
「……ウソだろーーー?!」
浩介の心の叫びは学校中二響くぐらいの大きさだった。
「アハハ……ドンマイ」
ハジメはそんな影の薄さを嘆く浩介を見ながら、これから楽しい中学校生活が送れていくと笑みを浮かべながらそう思ったのだった……。
〜オマケ〜
途中まで、一緒に下校しているハジメと浩介。
「そうえばさ〜南雲?」
「ん、どうしたの?」
ハジメは話しかけられ、浩介の方へと向いた。
「いや、握手したときさ……お前って思ったより力強いんだな」
「あー……」
そう、浩介はハジメと握手した際に、ハジメの容姿から思えないほどの握力の強さに少し驚いていたのだ。なので何かやってるのかと聞いてみると、ハジメはすんなりと答えた。
「僕、格闘技やってるんだ」
「へぇ、格闘ねぇ……それは納得……じゃねぇわ!」
「えぇ?!」
その驚きが、遠藤浩介の今年一の驚きにランクインするのであった……。
<編集しました。十月十九日。
雫はハーレムにいる?
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いる
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いらない