ありふれた職業で世界最強if優花   作:白San

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二章 亜人樹海と奇天烈迷宮ライセン〜ウサ耳少女との出会い〜
十六話 ライセン大峡谷と兎娘


 

 

魔法陣の光に満たされた視界、何も見えなくとも空気が変わったことは実感した。奈落の底の澱んだ空気とは明らかに異なる、どこか新鮮さを感じる空気にハジメの頬が緩む。

 

やがて光が収まり、目を開けたハジメの視界に写ったものは……洞窟だった。

 

「洞窟か……」

 

それもそうだ。自分達がいた場所は隠された反逆者の住処なのだから。ハジメは当たり前のことに苦笑いを零しつつ、ユエがいることを確認してから此方を見るユエを呼びかける。

 

「行くぞ、ユエ」

 

「……ん」

 

ハジメとユエは洞窟を進んでいくにつれ光が大きく見える。道のりは長かったが待望の地上へ出ることが達成するが出れた場所に立ち止まってしまう。

 

「此処は確か……」

 

「……ハジメ、此処って」

 

「あぁ、ライセン大峡谷だろうな」

 

ハジメは図書館で、この世界の地図などを覚えていて良かったと安堵する。そんな二人が辿り着いた場所は、ライセン大峡谷の谷底にある洞窟の入口だった。地の底とはいえ頭上の太陽は燦々と暖かな光を降り注ぎ、大地の匂いが混じった風が鼻腔をくすぐる。

 

「戻って来たんだな……」

 

「……んっ」

 

二人は、ようやく実感が湧いたのか、太陽から視線を逸らすとお互い見つめ合い、ハイタッチをする。

 

「よっしゃぁああーー!! 戻ってきたぞぉーーー!」

 

「んっーー!!」

 

二人してケラケラ、クスクスと笑い合う。ようやく二人の笑いが収まった頃には、すっかり……ライセンに棲みつく魔物達に囲まれていた。

 

ライセンは魔力が分解されて魔法が使えないと記憶していたので、此処は自分の出番だとハジメが立ち上がる。

 

「ちっ、全く無粋なヤツらだな……ユエ、此処は俺に任せて貰えるか」

 

「……ん、わかった。でもハジメ、力ずくなら此処でも魔法は使える」

 

ユエの言葉にハジメは耳を傾けながらその発動効率を聞く。

 

「効率は?」

 

「……十倍程」

 

「了解」

 

十倍は少しキツイなと思いながらハジメは、ユエの返事を聞いた直後、おもむろにドンナーを発砲した。相手の方を見もせずに、ごくごく自然な動作でスっと銃口を魔物の一体に向けると、これまた自然に引き金を引いたのだ。

 

あまりに自然すぎて攻撃をされると気がつけなかったようで、取り囲んでいた魔物の一体が何の抵抗もできずに、その頭部を爆散させ死に至った。

 

「おっ、ホントに撃てるな」

 

ユエの言う通りで、魔力をいつもより十倍程で使えばレールガンは打てた。次に、ハジメはオルクスの奈落の魔物と此処ライセンの魔物の強さはどれくらいの差があるのかを調べることにした。

 

「じゃ、試させて貰おうか?」

 

スっとドンナーの対なるシュラークをホルスターから抜き取り、迷宮内で身に付いた戦闘スタイル──ガン=カタの構えをとり、眼に殺意が宿る。常人なら其処にいるだけで意識を失いそうな壮絶なプレッシャーが辺り一帯を覆う中、遂に魔物の一体が緊張感に耐え切れず咆哮を上げながら飛び出した。

 

「ガァアアアア!!」

 

しかし、ズドンッ!!と、ほぼ同時に響き渡った銃声と共に一条の閃光が走り、その魔物は避けるどころか反応すら許されず頭部を吹き飛ばされた。

 

そこから先は、もはや戦いではなく蹂躙。魔物達は、ただの一匹すら逃げることも叶わず、まるでそうあることが当然の如く頭部を吹き飛ばされ骸を晒していく。辺り一面が魔物の屍で埋め尽くされるのに五分もかからなかった。

 

ドンナー・シュラークを太もものホルスターにしまったハジメは、首を僅かに傾げながら周囲の死体の山を見やって一言呟く。

 

「弱ぇ……」

 

奈落の魔物とライセンの魔物だと、比べることもない程の強さに格差があることが分かった。予想はしていたことだが地上では、ステータスの上昇は見込めないことにハジメは残念そうに溜息を吐くと、トコトコとユエが傍へと寄って来た。

 

「……どうしたのハジメ?」

 

「いや、あまりにあっけなかったんでな……ライセン大峡谷の魔物といやぁ相当凶悪って話だったからな。オルクスの奈落の魔物達と比べてどれくらい強いか試してた」

 

「……どうだった?」

 

「まぁ、奈落の魔物が強すぎたってことと、地上じゃ俺のステータスの上昇は無理ってことが分かったな。ま、【遺跡】も暇があれば行ってみたいがユエの見解的にどうだ?」

 

「………ん、【遺跡】でも強いのと弱いのが別れてるけど強いものなら、もしかしたらいける、かも?」

 

「なら、条件的には未踏破のぐらいのレベルしかステータス上昇には繋がらないかもな」

 

そう言ってハジメは肩を竦め、もう興味がないという様に魔物の死体から目を逸らした。

 

「さて、この絶壁、登ろうと思えば登れるだろうが……どうする? ライセン大峡谷と言えば、七大迷宮があると考えられている場所だ。せっかくだし、樹海側に向けて探索でもしながら進むか?」

 

「……なぜ、樹海側?」

 

「いや、峡谷抜けて、いきなり砂漠横断とか嫌だろ? 樹海側なら、町にも近そうだしな」

 

「……確かに」

 

ハジメの提案に、ユエも頷いた。魔物の弱さから考えても、この峡谷自体が迷宮というわけではなさそうだ。ならば、別に迷宮への入口が存在する可能性はある。ハジメの〝空力〟やユエの風系魔法を使えば、絶壁を超えることは可能だろうが、どちらにしろライセン大峡谷は探索の必要があったので、特に反対する理由もない。

 

方針が決まったのでハジメは、右手の中指にはまっている〝宝物庫〟に魔力を注ぎ、魔力駆動二輪を取り出す。颯爽と跨り、後ろにユエが横乗りしてハジメの腰にしがみついたのを確認し、魔力駆動二輪を走らせた。

 

「よしっ、これなら大丈夫そうだな」

 

動作確認を終えてハジメは魔力駆動二輪を走らせた。ライセン大峡谷は基本的に東西に真っ直ぐ伸びた断崖だ。そのため脇道などはほとんどなく道なりに進めば迷うことなく樹海に到着する。

 

しばらく魔力駆動二輪を走らせていると、それほど遠くない場所で魔物の咆哮が聞こえてきた。

 

「ん?」

 

二つの気配を感じながらハジメは魔力駆動二輪を走らせ突き出した崖を回り込むと、その向こう側に大型の魔物が現れた。かつて見たティラノモドキに似ているが頭が二つある。双頭のティラノサウルスモドキの魔物。

 

「確か、ダイヘドアったか? そして、もう一つは……あぁ? 人?」

 

だが、真に注目すべきなのはダイヘドアではなく、その足元をぴょんぴょんと跳ね回りながら半泣きで逃げ惑うウサミミを生やした少女だった。ハジメは魔力駆動二輪を止めて胡乱な眼差しで今にも喰われそうなウサミミ少女を見やる。

 

「……アレは亜人か?」

 

「……兎人族?」

 

「しかし、なんでこんな場所(大峡谷)にいる? 兎人族って谷底が住処なのか?」

 

確か、亜人族は海人族とある滅ぼされた一族以外の大体は樹海に住んでる筈だと記憶していたハジメが疑問に思い首を傾げていると、ユエもそうらしく頭に疑問符を浮かべていた。

 

「……ん、私も聞いたことない」

 

「じゃあ、あれか? 犯罪者として落とされたとか? 処刑の方法としてあったよな?」

 

「……悪ウサギ?……助ける?」

 

「まぁな。何故、こんな場所に兎人族がいるのかも知りたいしな」

 

「……ん、わかった」

 

ハジメはウサミミ少女を助けようとドンナーを取り出そうとした時、それなりの距離があるのだが、ウサミミ少女の必死の叫びが峡谷に木霊しハジメ達に届いた。

 

「「グゥルァアアアア!!」」

 

「だずげでぐだざ~い! ひっーー、死んじゃう! 死んじゃうよぉ! だずけてぇ~、おねがいじますぅ~!」

 

滂沱の涙を流し顔をぐしゃぐしゃにして必死に駆けてくる。そしてウサミミ少女が次の言葉を言う前に銃声が聞こえた。

 

ドパンッドパンッ!!と、二つの閃光が目前に迫っていたダイヘドアの口内を突き破り後頭部を粉砕しながら貫通した。力を失った両方の頭が地面に激突、慣性の法則に従い地を滑る。ダイヘドアはバランスを崩して地響きを立てながらその場にひっくり返り目から光が失った。

 

追われていたウサミミ少女が思わず「へっ?」と間抜けな声を出し、おそるおそるハジメの脇の下から顔を出して自分を追い掛けてた魔物の末路を確認するウサ耳少女にハジメとユエはケガはないかと心配しながら話しかける。

 

「し、死んでます…そんなダイヘドアが一撃なんて……」

 

「おい、平気か?」

 

「……ん、大丈夫?」

 

すると、ウサ耳少女はハジメ達が近付いたことに気が付くと少女は礼節を弁えてないのか図々しいお願いをする。

「はっ……先程は助けて頂きありがとうございました! 私は兎人族ハウリアの一人、シアといいますです! 取り敢えず私の仲間も助けてください!」

 

「「……」」

 

二人はウサ耳少女のシアの図々しさに少し頬が引き攣る。

 

「シア?だったか? 俺達も質問したいことがあってな。まず、この場所に何故、兎人族が此処にいるのか聞かせて貰えねぇか?」

 

「はいっ、実は……」

 

語り始めたシアの話を要約するとこうだった。

 

シア達、ハウリアと名乗る兎人族達は【ハルツィナ樹海】にて数百人規模の集落を作りひっそりと暮らしていた。兎人族は、聴覚や隠密行動に優れているものの、他の亜人族に比べればスペックは低いらしく、突出したものがないので亜人族の中でも格下と見られる傾向が強いらしい。性格は総じて温厚で争いを嫌い、一つの集落全体を家族として扱う仲間同士の絆が深い種族だ。また、総じて容姿に優れており、エルフのような美しさとは異なった、可愛らしさがあるので、帝国などに捕まり奴隷にされたときは愛玩用として人気の商品となる。

 

そんな兎人族の一つ、ハウリア族に、ある日異常な女の子が生まれた。兎人族は基本的に濃紺の髪をしているのだが、その子の髪は青みがかった白髪だったのだ。しかも、亜人族には無いはずの魔力まで有しており、直接魔力を操るすべと、とある固有魔法まで使えたのだ。

当然、一族は大いに困惑した。兎人族として、いや、亜人族として有り得ない子が生まれたのだ。魔物と同様の力を持っているなど、普通なら迫害の対象となるだろう。しかし、彼女が生まれたのは亜人族一、家族の情が深い種族である兎人族だ。百数十人全員を一つの家族と称する種族なのだ。ハウリア族は女の子を見捨てるという選択肢を持たなかった。

 

しかし、樹海深部に存在する亜人族の国【フェアベルゲン】に女の子の存在がばれれば間違いなく処刑される。魔物とはそれだけ忌み嫌われており、不倶戴天の敵なのである。国の規律にも魔物を見つけ次第、できる限り殲滅しなければならないと有り、過去にわざと魔物を逃がした人物が追放処分を受けたという記録もある。また、被差別種族ということもあり、魔法を振りかざして自分達亜人族を迫害する人間族や魔人族に対してもいい感情など持っていない。樹海に侵入した魔力を持つ他種族は、総じて即殺が暗黙の了解となっているほどだ。

 

故に、ハウリア族は女の子を隠し、十六年もの間ひっそりと育ててきた。だが、先日とうとう彼女の存在がばれてしまった。その為、ハウリア族はフェアベルゲンに捕まる前に一族ごと樹海を出たのだ。

行く宛もない彼等は、一先ず北の山脈地帯を目指すことにした。山の幸があれば生きていけるかもしれないと考えたからだ。未開地ではあるが、帝国や奴隷商に捕まり奴隷に堕とされてしまうよりはマシだ。

 

しかし、彼等の試みは、その帝国により潰えた。樹海を出て直ぐに運悪く帝国兵に見つかってしまったのだ。巡回中だったのか訓練だったのかは分からないが、一個中隊規模と出くわしたハウリア族は南に逃げるしかなかった。

女子供を逃がすため男達が追っ手の妨害を試みるが、元々温厚で平和的な兎人族と魔法を使える訓練された帝国兵では比べるまでもない歴然とした戦力差があり、気がつけば半数以上が捕らわれてしまった。

全滅を避けるために必死に逃げ続け、ライセン大峡谷にたどり着いた彼等は、苦肉の策として峡谷へと逃げ込んだ。流石に、魔法の使えない峡谷にまで帝国兵も追って来ないだろうし、ほとぼりが冷めていなくなるのを待とうとしたのである。魔物に襲われるのと帝国兵がいなくなるのとどちらが早いかという賭けだった。

 

しかし、予測に反して帝国兵は一向に撤退しようとはしなかった。小隊が峡谷の出入り口である階段状に加工された崖の入口に陣取り、兎人族が魔物に襲われ出てくるのを待つことにしたのだ。

そうこうしている内に、案の定、魔物が襲来した。もう無理だと帝国に投降しようとしたが、峡谷から逃がすものかと魔物が回り込み、ハウリア族は峡谷の奥へと逃げるしかなかった。そうやって、追い立てられるように峡谷を逃げ惑い……

 

「……気がつけば、六十人はいた家族も、今は四十人程しかいません。このままでは全滅です。どうか助けて下さい!」

 

「……そうか」

 

ハジメは話を一通り聞いて、シアはユエと同じように先祖返りの可能性であると考える。しかし、何故、樹海側は魔力持ちを迫害しようとすることに疑問を感じるが、その理由も探りたい為、ハジメはシアの頼みを引き受けることにした。

 

「わかった……助けてやる」

 

「い、良いんですか?!」

 

シアはハジメが自分の頼みを引き受けてくれることに驚きを示した。

 

「あぁ。だから、まず、お前達の住処まで案内してくれ」

 

「はいっ!」

 

ハジメとシアが話してると蚊帳の外で不満だったのかハジメのコートの袖をグイグイと引っ張りながらユエが聞いてきた。

 

「……どうして助けるの?」

 

「いや、な……まぁ、シアは迫害されたとは言え、樹海に住んでたんだし樹海の大迷宮の案内になるし……それに、見過ごせないからな……済まないユエ、良いか?」

 

そんなハジメの真摯な気持ちが伝わったのかユエは仕方ないなぁ〜的な表情をしながら頷いた。

 

「……ハジメがそうするなら、私もそうする」

 

「ありがとよ、ユエ」

 

「……んっ」

 

ハジメの頼みを聞いてくれるユエに頭を撫でてるとシアが話しかけてくる。

 

「あ、あの!」

 

「ん、何だ?」

 

「あ、あの、宜しくお願いします! そ、それでお二人のことは何と呼べば……」

 

シアはハジメ達の名前が知りたいらしく、此方も隠す必要もないので答えることにした。

 

「ん? そう言えば名乗ってなかったか……俺はハジメ。南雲ハジメだ」

 

「……ユエ」

 

「ハジメさんとユエちゃんですね」

 

「……さんを付けろ。ウサギ」

 

「シア……ユエはお前より年は上だ」

 

「ええ?!」

 

ユエらしからぬ命令口調に戸惑うシアは、ユエの外見から年下と思っているらしく、ハジメからユエが吸血鬼族で遥に年上と知ると土下座する勢いで謝罪した。

 

「おい、シア取り敢えず後ろに乗れ」

 

ハジメはシアに指示を出す。しかし、シアは少し戸惑っているようだ。それも無理はない。なにせこの世界に魔力駆動二輪等と言う乗り物は存在しないのだ。しかし、取り敢えず何らかの乗り物である事はわかるので、シアは恐る恐るユエの後ろに跨った。

とある魔物の革を使ったタンデムシートだが、ユエが小柄なので十分に乗るスペースはある。シアは、シートの柔らかさに驚きつつ、前方のユエに捕まった。その凶器を押し付けながら。

 

その感触にビクッとしたユエは、おもむろに立ち上がると器用にハジメの前に潜り込む。ユエの小柄な体格は、問題なく腕の間にすっぽりと収まった。

 

「………あぁ」

 

ユエの行動理由をなんとなく察したハジメは苦笑いを零す。すると、シアが後ろから話しかけてくる。

 

「あ、あの。助けてもらうのに必死で、つい流してしまったのですが……この乗り物? 何なのでしょう? それに、ハジメさんもユエさん魔法使いましたよね? ここでは使えないはずなのに……」

 

「あ~、それは道中でな」

 

そう言いながら、ハジメは魔力駆動二輪を一気に加速させ出発した。悪路をものともせず爆走する乗り物に、シアが俺の肩越しに「きゃぁああ~!」と悲鳴を上げた。地面も壁も流れるように後ろへ飛んでいく。

 

谷底では有り得ない速度に目を瞑ってギュッとハジメにしがみついていたシアも、しばらくして慣れてきたのか、次第に興奮して来たようで、ハジメがカーブを曲がったり、大きめの岩を避けたりする度に、きゃっきゃっと騒いでいる。

 

「ほぅ……」

 

ハジメは、シアはもしかしたら乗り物好きの可能性を秘めてるのかもしれないと思いつつ魔力駆動二輪を走らすそして、ハジメは、道中、魔力駆動二輪の事やユエが魔法を使える理由、ハジメの武器がアーティファクトみたいなものだと簡潔に説明した。すると、シアは目を見開いて驚愕を表にした。

 

「え、それじゃあ、お二人も私みたいに魔力を直接操れたり、固有魔法が使えると……」

 

「ああ、そうなるな……ん? シアもなんか固有魔法があんのか?」

 

「……ん、気になる」

 

「はい私のは〝未来視〟といいまして、仮定した未来が見えます。もしこれを選択したら、その先どうなるか? みたいな……あと、危険が迫っているときは勝手に見えたりします。まぁ、見えた未来が絶対というわけではないですけど……そ、そうです。私、役に立ちますよ! 〝未来視〟があれば危険とかも分かりやすいですし! 少し前に見たんです! 貴方が私達を助けてくれている姿が! 実際、ちゃんと貴方に会えて助けられました!」

 

「へぇ、それは、スゲェな……ん?」

 

ハジメはシアの固有魔法の説明を聞いて、その能力の凄さに頷くも、ふと、ある疑問が湧く。

 

「なぁ、シア。一つ聞きたいが、そんなすごい固有魔法持っていて何でバレたんだ? 危険を察知できるならフェアベルゲンの連中にもバレなかったんじゃないか?」

 

ハジメの至極真っ当な疑問に「うっ」と唸った後、シアは目を泳がせてポツリと零した。

 

「じ、自分で使った場合はしばらく使えなくて……」

 

「バレた時、既に使った後だったと……何に使ったんだよ?」

 

「ちょ~とですね、友人の恋路が気になりまして……」

 

シアの言葉にハジメと前で寛いでるユエすらも溜息を吐く。

 

「はぁ……お前は、何やってんだよ……」

 

「……馬鹿ウサギ」

 

「うぅ~猛省しておりますぅ~」

 

そう言っていたシアだったが、突然、何かを堪える様にハジメの肩に顔を埋めた。そして、何故か泣きべそをかき始めた。

 

「おい、どうしたんだシア?」

 

「一人じゃなかったんだなっと思ったら……何だか嬉しくなってしまって……」

 

「「……」」

 

魔力操作を持つことは一般的に魔物と同じ性質や能力を有していることになる。この世界で自分があまりに特異な存在である事に孤独を感じて家族だと言って十六年もの間危険を背負ってくれた一族、シアのために故郷である樹海までも捨てて共にいてくれる家族、きっと多くの愛情を感じていたはずだし、それでも、いや、だからこそ、〝他とは異なる自分〟に余計孤独を感じていたのかもしれない。

 

ハジメは前を見ながらもシアに話しかけた。

 

「シア」

 

「は、はい」

 

「安心しろ、お前の気持ちは分かる。だから、今は泣くな。家族を助けんだろ?」

 

「……ん、私達は同胞、安心して」

 

「うぅ…ハジメさん、ユエさん」

 

しばらく、ハジメとユエの二人でシアを慰めていると、遠くで魔物の咆哮が聞こえた。どうやら相当な数の魔物が騒いでいるようだ。

 

「……多いな」

 

ハジメがざっと魔物は十前後ほどだと分かると後ろのシアが声を上げた。

 

「! ハジメさん! もう直ぐ皆がいる場所です! あの魔物の声……ち、近いです! 父様達がいる場所に近いです!」

 

「わかってる。飛ばすからな二人共、しっかり掴まってろよ!」

 

「……んっ!」

 

「はいっ!」

 

ハジメは、魔力を更に注ぎ、二輪を一気に加速させた。壁や地面が物凄い勢いで後ろへ流れていく。そうして走ること二分。ドリフトしながら最後の大岩を迂回した先には、今まさに襲われようとしている数十人の兎人族達が見えてきたのだった……。

 






<編集しました。十一月四日。
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