ありふれた職業で世界最強if優花   作:白San

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二十話 シアの想い

 

「さて、お前等には戦闘訓練を受けてもらおうと思う」

 

フェアベルゲンから出たハジメ達は、一先ず大樹の近くに拠点を作って一息ついた時の、第一声がこれだった。

拠点といっても、ハジメがアルフレリックから貰ってきたフェアドレン水晶を使って結界を張っただけのものだ。その中で切り株などに腰掛けながら、ウサミミ達はポカンとした表情を浮かべていた。

 

「え、えっと……ハジメさん。戦闘訓練というのは……」

 

困惑する一族を代表してシアが尋ねる。

 

「そのままの意味だ。どうせ、これから十日間は大樹へはたどり着けないんだろ? ならその間の時間を有効活用して、魔物ぐらいには戦えるように育て上げようと思ってな」

 

「な、なぜ、そのようなことを……」

 

ハジメの目と全身から迸る威圧感にぷるぷると震えるウサミミ達。シアが、あまりに唐突なハジメ宣言に当然の如く疑問を投げかける。

 

「簡単だシア、フェアベルゲンの掟はこれから変わるが、それが何時までかかるのか分からない。それに俺とユエも大樹の場所へ案内をして貰った後は目的の為に此処を離れる。その間もまだ、掟が変わってなかったら確実にお前等に対して不満を持ってる亜人共に襲われる」

 

「「「「「「……」」」」」」

 

ハジメの言っていることは全くその通りなので、ハウリア族達は皆一様に暗い表情で俯く。誰も言葉を発さず重苦しい空気が辺りを満たす。そして、ポツリと誰かが零した。

 

「そんなものいいわけがない」

 

その言葉に触発されたようにハウリア族が顔を上げ始める。シアは既に決然とした表情だ。

 

「そうだ。いいわけがない。ならば、どうするか。答えは簡単だ。強くなればいい。襲い来るあらゆる障碍を打ち破っていけば良い」

 

「……ですが、私達は兎人族です。虎人族や熊人族のような強靭な肉体も翼人族や土人族のように特殊な技能も持っていません……とても、そのような……」

 

兎人族は弱いという常識がハジメの言葉に否定的な気持ちを生む。自分達は弱い、戦うことなどできない。どんなに足掻いてもハジメの言う様に強くなど成れるものか、と。

 

ハジメはそんなハウリア族を鼻で笑う。

 

「俺も昔はケンカで負けるぐらいに弱かったぞ」

 

「え?」

 

ハジメの告白にハウリア族は例外なく驚愕を顕にする。ライセン大峡谷の凶悪な魔物も、戦闘能力に優れた熊人族の長老も、苦もなく一蹴したハジメが〝弱い〟など誰が信じられるというのか。

 

「だが、俺はある時から力が必要になった。だから、強くなったそれだけだ……それで、お前等はどうする?」

 

ハジメは黙り込み顔を見合わせるハウリア族を見る。すると、そんな彼等を尻目に、先程からずっと決然とした表情を浮かべていたシアが立ち上がった。

 

「やります。私に戦い方を教えてください! もう、弱いままは嫌です!」

 

樹海の全てに響けと言わんばかりの叫び。これ以上ない程思いを込めた宣言。シアとて争いは嫌いだ。怖いし痛いし、何より傷つくのも傷つけるのも悲しい。しかし、一族を窮地に追い込んだのは紛れもなく自分が原因であり、このまま何も出来ずに滅ぶなど絶対に許容できない。とあるもう一つの目的のためにも、シアは兎人族としての本質に逆らってでも強くなりたかった。

 

不退転の決意を瞳に宿し、真っ直ぐハジメを見つめるシア。その様子を唖然として見ていたカム達ハウリア族は、次第にその表情を決然としたものに変えて、一人、また一人と立ち上がっていく。そして、ハジメだけでなく、女子供も含めて全てのハウリア族が立ち上がったのを確認するとカムが代表して一歩前へ進み出た。

 

「ハジメ殿……宜しく頼みます」

 

言葉は少ない。だが、その短い言葉には確かに意志が宿っていた。襲い来る理不尽と戦う意志が。

 

「……クハッ」

 

ハジメはその覚悟と意思を受け取って笑みを零した。

 

「わかった。覚悟しろよ?」

 

その言葉に、ハウリア族は皆、覚悟を宿した表情で頷いたのだった。

 

ハジメは、ハウリア族を訓練するにあたって、まず、〝宝物庫〟から取り出した錬成の練習用に作った装備を彼等に渡した。

 

「まぁ、教えるとしたら師範……いや、駄目だ。簡単な体術にしよう」

 

一応、ハジメはある程度の武器は扱えるが基本となる体術を教えようとメニューを考えてると一瞬、自分の師範である(リー)の教える武術が脳裏に過ぎったが、あの高度な技は時間が掛かるので諦めたハジメは簡単な誰でも分かり易い体術などを教えている。ちなみに、シアに関してはユエが専属で魔法の訓練をしている。亜人でありながら魔力があり、その直接操作も可能なシアは、知識さえあれば魔法陣を構築して無詠唱の魔法が使えるはずだからだ。

 

時折、シアの悲鳴が聞こえるがユエが教えるので大丈夫だろうが問題はこっちだった。

 

訓練開始から二日目。ハジメは片手で頭を抱えながらハウリア族の訓練風景を見ていた。確かに、ハウリア族達は自分達の性質に逆らいながら、言われた通り真面目に訓練に励んでいる。最初の走り込みや基礎体力は亜人ゆえか常人以上、魔物だって、幾つもの傷を負いながらも何とか倒している。

 

しかし……

 

魔物の一体に、ハジメ特製の小太刀が突き刺さり絶命させる。

 

「ああ、どうか罪深い私を許しくれぇ~」

 

それをなしたハウリア族の男が魔物に縋り付く。まるで互いに譲れぬ信念の果て親友を殺した男のようで見るに堪えない。

 

瀕死の魔物が、最後の力で己を殺した相手に一矢報いる。体当たりによって吹き飛ばされたカムが、倒れながら自嘲気味に呟く。

 

「ふっ、これが刃を向けた私への罰というわけか……当然の結果だな……」

 

その言葉に周囲のハウリア族が瞳に涙を浮かべ、悲痛な表情でカムへと叫ぶ。

 

「族長! そんなこと言わないで下さい! 罪深いのは皆一緒です!」

 

「そうです! いつか裁かれるときが来るとしても、それは今じゃない! 立って下さい! 族長!」

 

「僕達は、もう戻れぬ道に踏み込んでしまったんだ。族長、行けるところまで一緒に逝きましょうよ」

 

「お、お前達……そうだな。こんな所で立ち止まっている訳にはいかない。死んでしまった彼のためにも、この死を乗り越えて私達は進もう!」

 

「「「「「「「「族長!」」」」」」」」

 

「……」

 

帝国兵の時もそうであったが兎人族の異常とも言うべき善性にハジメの頬が引き攣ってしまいる。

 

「ハジメ殿どうしましたか?」

 

怒りを通り越して呆れながら俯いてるハジメに、カム達が心配してかぞろぞろと此方に来ていた。

 

「ハジメ殿?」

 

「ん? あぁ……大丈夫だ。悪かったのは、俺の考えが甘すぎたことだ。 お前等……少しギアを上げるぞ」

 

「「「「「「「「「え……」」」」」」」」」

 

そして、ハジメはカム達に笑顔で告げながらホルスターからドンナーを取り出した。

 

「次からは俺との実戦形式で行こうか?」

 

数分後、ハウリア達の悲鳴が樹海の一角で響き渡るのであった。

 

 

================================

 

 

ズガンッ! ドギャッ! バキッバキッバキッ! ドグシャッ!と樹海の中、凄まじい破壊音が響く。

野太い樹が幾本も半ばから折られ、地面には隕石でも落下したかのようなクレーターがあちこちに出来上がっており、更には、燃えて炭化した樹や氷漬けになっている樹まであった。

 

この多大な自然破壊はたった二人の女の子によってもたらされた。そして、その破壊活動は現在進行形で続いている。

 

「でぇやぁああ!!」

 

裂帛の気合とともに撃ち出されたのは直径一メートル程の樹だ。半ばから折られたそれは豪速を以て目標へと飛翔する。確かな質量と速度が、唯の樹に凶悪な破壊力を与え、道中の障害を尽く破壊しながら目標を撃破せんと突き進む。

 

「……〝緋槍〟」

 

それを正面から迎え撃つのは全てを灰塵に帰す豪炎の槍。巨大な質量を物ともせず触れた端から焼滅させていく。砲弾と化した丸太は相殺され灰となって宙を舞った。

 

「まだです!」

 

〝緋槍〟と投擲された丸太の衝突がもたらした衝撃波で払われた霧の向こう側に影が走ったかと思えば、直後、隕石のごとく天より丸太が落下し、轟音を響かせながら大地に突き刺さった。バックステップで衝撃波の範囲からも脱出していた目標は再度、火炎の槍を放とうとする。

 

しかし、そこへ高速で霧から飛び出してきた影が、大地に突き刺さったままの丸太に強烈な飛び蹴りをかました。一体どれほどの威力が込められていたのか、蹴りを受けた丸太は爆発したように砕け散り、その破片を散弾に変えて目標を襲った。

 

「ッ!──〝城炎〟」

 

飛来した即席の散弾は、突如発生した城壁の名を冠した炎の壁に阻まれ、唯の一発とて目標に届く事は叶わなかった。

 

しかし……

 

「もらいましたぁ!」

 

「ッ!」

 

その時には既に影が背後に回り込んでいた。即席の散弾を放った後、見事な気配断ちにより再び霧に紛れ奇襲を仕掛けたのだ。大きく振りかぶられたその手には超重量級の大槌が握られており、刹那、豪風を伴って振り下ろされた。

 

「〝疾風壁〟」

 

大槌により激烈な衝撃が大地を襲い爆ぜさせる。砕かれた石が衝撃で散弾となり四方八方に飛び散った。だが、目標は、そんな凄まじい攻撃の直撃を躱すと、余波を風の障壁により吹き散らし、同時に風に乗って安全圏まで一気に後退した。更に、技後硬直により死に体となっている相手に対して容赦なく魔法を放つ。

 

「〝凍柩〟」

 

「ふぇ! ちょっ、まっ!」

 

相手の魔法に気がついて必死に制止の声をかけるが、聞いてもらえる訳もなく問答無用に発動。襲撃者は、大槌を手放して離脱しようとするも、一瞬で発動した氷系魔法が足元から一気に駆け上がり……頭だけ残して全身を氷漬けにされた。

 

「づ、づめたいぃ~、早く解いてくださいよぉ~、ユエさ~ん」

 

「……私の勝ち」

 

そう、問答無用で自然破壊を繰り返していたこの二人はユエとシアである。二人は、訓練を始めて十日目の今日、最終試験として模擬戦をしていたのだ。内容は、シアがほんの僅かでもユエを傷つけられたら勝利・合格というものだ。

 

その結果は……

 

「うぅ~、そんな~、って、それ!ユエさんの頬っぺ! キズです! キズ! 私の攻撃当たってますよ! あはは~、やりましたぁ! 私の勝ちですぅ!」

 

ユエの頬には確かに小さな傷が付いていた。おそらく最後の石の礫が一つ、ユエの防御を突破したのだろう。本当に僅かな傷ではあるが、一本は一本だ。シアの勝利である。

それを指摘して、顔から上だけの状態で大喜びするシア。体が冷えて若干鼻水が出ているが満面の笑みだ。ウサミミが嬉しさでピコピコしている。無理もないだろう。何せ、この戦いには訓練卒業以上にユエとハジメとした大切な約束事がかかっていたのだ。

 

そして、その約束事はハジメが了承したから仕方なく、自分も同意した故に、

 

「……傷なんてない」

 

固有技能〝自動再生〟により傷が直ぐに消えたのをいい事にしらばっくれた。拗ねたようにプイっとそっぽを向く。

 

「んなっ!? 卑怯ですよ! 確かに傷が……いや、今はないですけどぉ! 確かにあったでしょう! 誤魔化すなんて酷いですよぉ! ていうか、いい加減魔法解いて下さいよぉ~。さっきから寒くて寒くて……あれっ、何か眠くなってきたような……」

 

先ほどより鼻水を垂らしながら、うつらうつらとし始めるシア。寝たら死ぬぞ!の状態になりつつある。その様子をチラッチラッと見て、深々と溜息を吐くとユエは心底気が進まないと言う様に魔法を解いた。

 

「ぴくちっ! ぴくちぃ!あうぅ、寒かったですぅ。危うく帰らぬウサギになるところでした」

 

可愛らしいくしゃみをし、近くの葉っぱでチーン!と鼻をかむと、シアは、その瞳に真剣さを宿してユエを見つめた。ユエは、その視線を受けて物凄く嫌そうな表情をする。無表情が崩れるほど嫌そうな表情だ。

 

「ユエさん。私、勝ちました」

 

「………………ん」

 

「約束、覚えてますよね?」

 

「……………………ん?」

 

「ちょっとぉ! 何いきなり誤魔化してるんですかぁ!」

 

ぎゃーぎゃーと騒ぐシアに、ユエは心底鬱陶しそうな表情を見せる。

 

シアの言う通り、ユエは、ハジメの了承済みで彼女と一つの約束をした。それは、シアがユエに対して、十日以内に模擬戦にてほんの僅かでも構わないから一撃を加えること。それが出来た場合、シアがハジメとユエの旅に同行することを認めること。

 

シアは、ハジメのことを想っている。しかしハジメへの想いとは別に、ユエに対しても近しい存在になりたいと本気で思っているのだ。それは、この世界でも極僅かな〝同類〟であることが多分に影響しているのだろう。つまり、簡単に言えば〝友達〟になりたいのだ。想い人が傍にいて、同じ人を想う友も傍にいる。今のシアにとって夢見る未来は、そういう未来なのだ。

 

一方、ユエは何故、シアとそのような約束を交わしたのか。ハジメは了承したがユエ自身には何のメリットもない約束である。その理由の二割は、やはりシンパシーを感じたことだろう。ライセン大峡谷で初めてシアの話を聞いた時、自分とは異なり比較的に恵まれた環境にあることに複雑な感情を覚えつつも、心のどこかで〝同類〟という感情が湧き上がったことは否定できない。僅かなりとも仲間意識を抱いたことが、シアに対する〝甘さ〟をもたらした。

 

そして、八割の理由は……ハジメの恋人の優花の存在だった。自分もハジメの恋人になりたいが、一人だとなんか心もとない。しかし、自分と同じ想いを抱く存在がいれば少し安心するし、戦力にもなる。

そして、優花と出会った日に「私もハジメのことが大好きです。二番目でも良いので恋人になるのを許して下さい!」と言う為に仲間を増やして起きたい気持ちがあった。

 

そして、約束をかけた勝負の結果がシアの勝利だったのである。

 

「……はぁ。わかった。ハジメも了承もしてるし約束は守る……」

 

「ホントですか!?」

 

「………………………ん」

 

「何だか、その異様に長い間が気になりますが……ホント、お願いしますよ?」

 

「……しつこい」

 

渋々、ほんと~に渋々といった感じでユエがシアの勝ちを認める。シアは、ユエの返事に多少の不安は残しつつも、ハジメ同様に約束を反故にすることはないだろうと安心と喜びの表情を浮かべた。

 

そろそろ、ハジメのハウリア族への訓練も終わる頃だ。不機嫌そうなユエと上機嫌なシアは二人並んでハジメ達がいるであろう場所へ向かうのだった。

 

 

================================

 

 

ユエとシアがハジメ達のもとへ到着したとき、ハジメは腕を組んで近くの樹にもたれたまま瞑目しているところだった。

 

「………おっ」

 

自分へと近付く二人の気配に気が付きハジメはゆっくり目を開けると二人の姿を視界に収める。全く正反対の雰囲気を纏わせているユエとシアに訝しそうにしつつ、片手を上げて声をかけた。

 

「よぉ、二人共。勝負とやらは終わったのか?」

 

「ハジメさん! ハジメさん! 聞いて下さい! 私、遂にユエさんに勝ちましたよ! 大勝利ですよ! いや~、ハジメさんにもお見せしたかったですよぉ~、私の華麗な戦いぶりを! 負けたと知った時のユエさんたらもへぶっ!?」

 

「シア、おま……あー」

 

模擬戦に勝てたことに嬉しさのあまり調子に乗っているのか、身振り手振り大はしゃぎという様相で戦いの顛末を語るシア。だが、流石に調子に乗りすぎたので、ユエのジャンピングビンタを食らい錐揉みしながら吹き飛びドシャと音を立てて地面に倒れ込んだ。よほど強烈だったのかピクピクとして起き上がる気配がない。

 

フンッと鼻を鳴らし更に不機嫌そうにそっぽを向くユエに、ハジメが苦笑いしながら尋ねる。

 

「で? どうだった?」

 

ユエは話したくないという雰囲気を隠しもせず醸し出しながら、渋々といった感じでハジメの質問に答えた。

 

「……魔法の適性はハジメよりも無い雑魚」

 

「ありゃま、宝の持ち腐れだな……で? それだけじゃないんだろ? あのレベルの大槌をせがまれたとなると……」

 

「……ん、身体強化に特化してる。正直、化物レベルだと思う」

 

「……へぇ。俺達と比べると?」

 

魔法の天才であるユエの評価に目を細めるハジメ。珍しく無表情を崩し苦虫を噛み潰したようなユエの表情が何より雄弁に、その凄まじさを物語る。ユエは、ハジメの質問に少し考える素振りを見せるとハジメに視線を合わせて答える。

 

「……強化してないハジメの……三〜四割くらい」

 

「マジか……最大値だよな?」

 

「ん……でも、鍛錬次第でまだ上がるかも」

 

「おぉう。そいつは確かに化物レベルだな」

 

ハジメは、自分のステータスから考えるとシアの最大値のステータスは6000超えるぐらいであり、ユエの説明でシアの〝身体強化〟は化け物レベルのことを聞いて少し唖然とした。

 

「まぁ、これなら……」

 

認めるしかないか……と静かに呟いたハジメは目を伏せ苦笑いしなが息を吐くとシアはしっかり視線を合わせて想いを告げた。

 

「ハジメさん。私をあなたの旅に連れて行って下さい。お願いします!」

 

「……シア、お前の気持ちはわかっただが一つ聞きたい?」

 

「はい?」

 

「どうして、俺にそんなに付いていきたいんだ?」

 

そう、ハジメは今のシアなら樹海の魔物や亜人には大丈夫だろうとカム達を安心出来ると考えており、家族が大事なシアなら自分達に着いて行くより、カム達の傍にいた方がいいんじゃないかと考えていた。

 

「それは、そのぉ……」

 

「……」

 

「ハジメさんの傍に居たいからですぅ! しゅきなのでぇ!」

 

「……はぁ?」

 

シアはハジメの問いかけに体をモジモジしだし、そして、声を上げた瞬間、彼女のトンデモ発言に呆けてしまう。

 

「あー、シア……俺には優花がいる。だから、お前の気持ちは……」

 

「わかってます!!」

 

何とか気を取り直しつつシアの告白を断ろうとした途端、シアに遮られた。

 

「ハジメさんには優花さんっていう人が一番であって大切な恋人さんであることは知ってます!でもっ好きなんですっ!ハジメさんが大好きなんですぅ!」

 

「……」

 

ここまで言われてしまって困り果てるハジメは、ガリガリと頭を掻き、シアに告げた。

 

「分かった、同行は認める。しかし、今はお前の気持ちには答えられない」

 

「はい。でも、一緒にいたいです」

 

「危険だらけの旅だ。 シア、お前を守り切れない場面があるかもしれない」

 

「化物でよかったです。お蔭で貴方について行けます」

 

「最後に確認だ。俺の望みは神を殺し優花達と再会して故郷に帰ることだ。もう家族とは会えないかもしれないぞ?」

 

「話し合いました。それでも(・・・・)です。父様達もわかってくれました」

 

今まで、ずっと守ってくれた家族。感謝の念しかない。何処までも一緒に生きてくれた家族に、気持ちを打ち明けて微笑まれたときの感情はきっと一生言葉にできないだろう。

 

「俺の故郷は、お前には住み難いところだ」

 

「何度でも言いましょう。それでも(・・・・)です。 だからハジメさん……私も連れて行って下さい」

 

「はぁ……まぁ、約束だしな。よろしく頼むぞシア」

 

「……ん、よろしく」

 

理由がどうあれ、シアの覚悟に魅せられたハジメは苦笑いをするもシアの同行を認めると、ユエはハジメが認めたなら仕方ないと賛同するかのように頷きながらシアを歓迎した。

 

「はいっ!!」

 

樹海の中に一つの歓声が響く。

 

その様子に、ハジメは……

 

「………」

 

もし再会しても、この状況を優花にどう説明しようかと、いろんな意味でこの先も大変そうだと上を見上げ、空の色と同じように顔を青くしながら苦笑いを零すのであった……。

 

 




<編集しました。十一月六日
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