ありふれた職業で世界最強if優花   作:白San

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二十一話 大樹とハウリア

 

「えへへ、うへへへ、くふふふ~」

 

同行を許されて上機嫌のシアは、奇怪な笑い声を発しながら緩みっぱなしの頬に両手を当ててクネクネと身を捩らせてた。それは、ハジメと問答した時の真剣な表情が嘘のように残念な姿だった。

 

「……キモイ」

 

見かねたユエがボソリと呟く。シアの優秀なウサミミは、その呟きをしっかりと捉えた。

 

「……ちょっ、キモイって何ですか! キモイって! 嬉しいんだからしょうがないじゃないですかぁ!」

 

ユエとシアが言い争っていると、向こうからこちらに向かって来る気配を感じ取ったハジメは、その方向へと視線を転じる。

 

「戻ってきたな」

 

ハジメがそう声を上げると言い争いをやめたシアが聞いてきた。

 

「えっ、誰がですか?」

 

「カム達だよ」

 

「父様達ですか。最近、会ってないんで楽しみですぅ!」

 

ハジメ達が待ってると霧をかき分けて数人のハウリア族が、ハジメの課した課題をクリアしたようで魔物の討伐を証明する部位を片手に戻ってきた。よく見れば、その内の一人はカムだ。

 

シアは久しぶりに再会した家族に頬を綻ばせる。本格的に修行が始まる前、気持ちを打ち明けたときを最後として会っていなかったのだ。たった十日間とはいえ、文字通り死に物狂いで行った修行は、日々の密度を途轍もなく濃いものとした。そのため、シアの体感的には、もう何ヶ月も会っていないような気がしたのだ。

 

早速、父親であるカムに話しかけようとするシア。報告したいことが山ほどあるのだ。しかし、シアは話しかける寸前で、発しようとした言葉を呑み込んだ。カム達が発する雰囲気が何だかおかしいことに気がついたからだ。

 

歩み寄ってきたカムはシアを一瞥すると僅かに笑みを浮かべただけで、直ぐに視線をハジメに戻した。

 

そして……

 

「ボス。お題の魔物、きっちり狩って来ました」

 

「ボ、ボス?と、父様? 何だか口調が……というか雰囲気が……」

 

父親の言動に戸惑いの声を発するシアをさらりと無視して、カム達は、この樹海に生息する魔物の中でも上位に位置する魔物の牙やら爪やらをバラバラと取り出した。

 

「予想した討伐数より多いな……よくやったお前達」

 

「有り難き幸せ」

 

「しゃっ、ボスに褒められた」

 

「やった〜!!」

 

ハウリア全員がハジメの事をボスと呼んでいる姿をシアは目を丸くしながら呟いた。

 

「……誰?」

 

シアがハジメの方へと向き、困惑した表情で声を上げた。

 

「ど、どういうことですか!? ハジメさん! 父様達に一体何がっ!?」

 

「落ち着け。どういうことも何も……訓練の賜物だ」

 

「いやいや、何をどうすればこんな有様になるんですかっ!? 完全に別人じゃないですかっ! ちょっと、目を逸らさないで下さい! こっち見て!」

 

「……別に、大して変わってないだろ?」

 

「貴方の目は節穴ですかっ! 見て下さい! 皆顔付きとか変わってますぅ~」

 

樹海にシアの焦燥に満ちた声が響く。

 

シアは、そんな変わり果てた家族を指差しながらハジメに凄まじい勢いで事情説明を迫るも……

 

「訓練の賜物だ」

 

「……つぅ〜もうっ!」

 

どう聞いても同じことしか言わず埒があかないと判断したのか、シアの矛先がカム達に向かった。

 

「父様! みんな! 一体何があったのです!? まるで別人ではないですか!……正気に戻って下さい!」

 

縋り付かんばかりのシアにカムは、表情を緩め前の温厚そうな表情に戻った。それに少し安心するシア。

 

だが……

 

「何を言っているんだ、シア? 私達は正気だ。ボスのおかげで目が覚めただけだ」

 

「め、目が覚めた? どういうことですか、それは?」

 

嫌な予感に頬を引き攣らせながら尋ねるシアに、カムはにっこりと微笑むと胸を張って自信に満ちた様子で宣言した。

 

「口だけでは大切な者は守れないとな……」

 

「……」

 

シアがカムの言葉に唖然としているとハウリアの一人の少年はスタスタとハジメの前まで歩み寄る。

 

「ボス、報告があります」

 

「おう? パルどうした?」

 

「はっ、課題の魔物を追跡中に完全武装した熊人族の集団を発見しました。場所は、大樹へのルート。おそらく我々に対する待ち伏せかと」

 

ハジメは少年──パルの報告を聞いて、予想はしていたが、本当に来るのかと知り、溜息と共に呆れたように頭を掻く。

 

「あ~、やっぱ来たか。やはり熊人族の奴等は来ると思ったが……なるほど、どうせなら掟が変わる前に叩き潰そうって魂胆だな、いい性格してるじゃねぇの。……で?」

 

「はっ! 宜しければ、奴らの無力化は我らハウリアにお任せ願えませんでしょうか!」

 

「……カムはどうだ? パルはこう言ってるけど?」

 

話を振られたカムは、ハジメの前で跪き頭を垂れ応えた。

 

「我々に、お任せ頂けるのなら是非」

 

カムの言葉と同時に他のハウリアもハジメの前に跪つく。

 

「……任せる」

 

「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」

 

ハジメの了承にハウリア達はその目に炎を灯す。そして、素早い速さで散開して熊人族を無力化しに向かった。その光景を前にシアは呆然と立ち尽くしすのだった。

 

 

================================

 

 

レギン・バントンは熊人族最大の一族であるバントン族の次期族長との噂も高い実力者だ。現長老の一人であるジン・バントンの右腕的な存在でもあり、ジンに心酔にも近い感情を抱いていた。

 

レギンは、変わり果てたジンの姿に呆然とし、次いで煮えたぎるような怒りと憎しみを覚えた。腹の底から湧き上がるそれを堪える事もなく、現場にいた長老達に詰め寄り一切の事情を聞く。

しかし、ジンはその人間族の男から貰った回復薬で復帰出来ると知ったが、全てを知ったレギンは、長老衆の忠告を無視して熊人族の全てに事実を伝え、掟が変わる前に報復へと乗り出した。

 

しかし……

 

「ぐっ……何だこれは…」

 

レギンは目の前の光景に驚愕のあまり固まってしまった。亜人族最強と呼ばれた熊人族が底辺とも言われる兎人族に無力化された光景は一瞬だった。

 

「遅いぞ」

 

「ガッ!?」

 

いつの間にか背後に現れた兎人族に寝技を決められ、そのまま意識を落としてまったり………

 

「武器は破壊させて貰うわ」

 

「なっ!」

 

相手が女だと舐めて、調子に乗って武器を勢いよく振り上げた瞬間、投げナイフによって視界を遮られ、その隙に武器を破壊されたり……

 

「少し痛いが我慢しろよ」

 

「ぐあっ!?」

 

フィジカルでは差が歴然としているのに、男の兎人族の圧倒的な技術と敏捷の差によって負けてしまい片膝を突いてしまったり、と。

 

「おい、なんだこれ……っ?!」

 

「クソ……邪魔──ガッ?!」

 

飛来する弓や石によって認識が狂わされた熊人族達が気配を消していた兎人族に一瞬で、意識を落とされたりして既に半数が制圧されてしまっている。

 

しかし、この状況を作り出せたのは幾つか理由がある。

 

奇襲しようとしていた相手に逆に奇襲されたこと、亜人族の中でも格下のはずの兎人族の有り得ない強さ、どこからともなく飛来する正確無比な弓や石、認識を狂わせる巧みな気配の断ち方、そして何より高度な連携能力! その全てが激しい動揺を生み、スペックで上回っているはずの熊人族を圧倒しているのだ。

 

実際、単純に一対一で戦ったのなら兎人族が熊人族に敵うことはまずないだろう。だが、この十日間、ハウリア族は、地獄というのも生ぬるい特訓のおかげでその先天的な差を埋めることに成功していた。

 

そして、レギンは目の前にいるハウリア族長──カムに刃を向けられ追い詰められていた。

 

「諦めて撤退することを勧める、熊人族達よ」

 

「くっ……殺さないのか?」

 

「殺す?……そんな真似はしない。我等はボスに忠実に仕えしハウリアだ! 決して残酷な帝国兵ではないっ!」

 

勝手な言われ様に酷く怒りの表情を顕にするカムにレギンは兎人族とは思えない覇気に気圧され顔を真っ青にして息を呑むが、それでも熊人族の次期族長としての矜恃でなんとか耐えつつカムに問う。

 

「……本当に良いのだな」

 

「あぁ、我等は無益な争いはしないボスの教えだからな」

 

「………感謝する」

 

「後、熊人族の者よ。ボスからの伝言だ」

 

カムの言葉にレギンはなんだと言った感じで耳を傾ける。

 

「『お前達の族長にはやり過ぎたと思っている』とのことだ」

 

「……了解した。全員撤収だ!」

 

そして、カムからハジメの表情言伝を聞いたレギンはまだ意識がある部下を呼んで気を失っている者達を運びながら霧の向こうへ熊人族達が消えていった。

 

すると、カム達の後ろから声が聞こえた。

 

「上出来だ、お前等」

 

「ボス!」

 

 

 

ー数分前ー

 

ハジメはユエ達と共にカム達の戦いを外野から眺めていた。

 

「どうだスゲーだろ? アイツ等」

 

「……ん、凄過ぎ」

 

「………」

 

ハジメのカム達を感心してることにユエは反応したがシアはまだ呆然としていて無言だった。

 

「シア?」

 

「ハジメさん……」

 

「ん、どうした?」

 

シアが話しかけきたのて、その方向へと向けると、シアのハジメを見る目がジト目だった。

 

「後で事情を聞かせて貰いますよ」

 

「そう睨むなよ」

 

「ゔぅ〜」

 

そんな話してる間に戦いが終わったらしく、ハジメは立ち上がると、ユエとシアも同じように立ち上がった。

 

「行くぞ」

 

「……ん」

 

「はっ、はい」

 

ハジメ達はそのままカム達に下に向かうと、カム達もハジメの存在に気付いたらしく「ボス」と呼びながら集まった。

 

「ボス、我等の戦術はどうでしたか?」

 

「そうだな、相手の余裕の隙を突いて雪崩込むように攻め、隊を上手く分散……見事な連携だった。よくやった」

 

「「「「「「「「有り難き幸せ!」」」」」」」」

 

ハジメがそう褒め称えた瞬間、跪きながら顔を上げハウリア全員が感極まった声を上げていく。同時にウサ耳もピコピコしていて、褒めて貰えて嬉しそうだとわかった。

 

「おう」

 

「……流石ハジメ」

 

「皆ァ〜! ホントに何があったんですかぁ〜!」

 

跪くハウリア達にシアは涙目になりながら声を上げたのだった。

 

そんな事が、なんやかんやあってハジメ達一行は深い霧の中、大樹に向かって歩みを進めていた。先頭をカムに任せ、護衛にとハウリア達は周囲に散らばって索敵をしている

 

「流石は亜人族こんな霧深くても位置がわかるんだな」

 

「いえ、ボスの訓練もあって更に能力が上がりましたよ」

 

「そうか……」

 

そんな話をしてるとシアが恨みがましい視線をハジメに向けている。

 

「そんな目で見るなよ、鬱陶しいな」

 

「ほんとに何があったか後で聞かせて貰いますよ」

 

「わかってるって」

 

和気あいあいと雑談しながら進むこと十五分。一行は遂に大樹の下へたどり着いた。

 

大樹を見たハジメは声が出てしまった。

 

「……なんだこりゃ」

 

という驚き半分、疑問半分といった感じのものだった。ユエも、予想が外れたのか微妙な表情だ。二人は、大樹についてフェアベルゲンで見た木々のスケールが大きいバージョンを想像していたのである。

 

「……枯れてるだと?」

 

なんで大樹が枯れていることに疑問に感じる。大きさに関しては想像通り途轍もなく明らかに周囲の木々とは異なる異様だ。だが、周りの木々が青々とした葉を盛大に広げているのにもかかわらず、大樹だけが枯れ木になっている。神代魔法の類いか、それともクソ神共の仕業だろうかと推測が頭に過ぎる。

 

ハジメは腕を組んで、この大樹の有様を考察していくいくが、分からず疑問顔になる。隣にいるユエも同様だった。

 

「ボス。この大樹は、フェアベルゲン建国前から枯れているそうです。しかし、朽ちることはない。枯れたまま変化なく、ずっとあるそうです。周囲の霧の性質と大樹の枯れながらも朽ちないという点からいつしか神聖視されるようになりました。まぁ、それだけなので、言ってみれば観光名所みたいなものですが……」

 

ハジメとユエの疑問顔に気付いたカムが解説を入れる。

 

「へぇ………」

 

それを聞きながらハジメは大樹の根元まで歩み寄っていくとある物を見つけ足を止める。

 

「ん?……これは……」

 

そこには、アルフレリックが言っていたものと思われる石板が建てられていた。そして、その石板に刻まれた文様にハジメは声を上げた。

 

「! これは……オルクスの扉の……」

 

「……ん、同じ文様」

 

石板には七角形とその頂点の位置に七つの文様が刻まれていた。解放者──オスカー・オルクスの部屋の扉に刻まれていたものと全く同じものだ。ハジメは確認のため、オスカー・オルクスの指輪を取り出す。指輪の文様と石板に刻まれた文様の一つはやはり同じものだった。

 

「ビンゴ。やはり、ここが大迷宮の入口みたいだな。だが、こっからどうすりゃいいんだ?」

 

ハジメは石板を隅々調べていると裏側に表の七つの文様に対応する様に小さな窪みが開いていることに気が付いた。

 

「ユエ、あったぞ」

 

「……んっ」

 

「これは……」

 

ハジメが、手に持っているオルクスの指輪を表のオルクスの文様に対応している窪みに嵌めてみる。

 

すると……石板が淡く輝きだしていく。

 

何事かと、周囲を見張っていたハウリア族も集まってきた。しばらく、輝く石板を見ていると、次第に光が収まり、代わりに何やら文字が浮き出始める。そこにはこう書かれていた。

 

〝四つの証〟

 

〝再生の力〟

 

〝紡がれた絆の道標〟

 

〝全てを有する者に新たな試練の道は開かれるだろう〟

 

「……んっ、どういう意味?」

 

「四つの証はたぶん、他の迷宮の証の可能性が高いな」

 

「……再生の力と紡がれた絆の道標は?」

 

ユエの言葉に頭を捻るハジメにシアが答える。

 

「う~ん、紡がれた絆の道標は、あれじゃないですか? 亜人の案内人を得られるかどうか。亜人は基本的に樹海から出ませんし、ハジメさん達みたいに、亜人に樹海を案内して貰える事なんて例外中の例外ですし」

 

「……なるほど。〝紡がれた絆の道標〟はそれっぽいな」

 

「……あとは再生……私?」

 

「いや、それは違うと思う」

 

「……ん、何で?」

 

疑問顔のユエにハジメは説明していく。

 

「それだと、ここの迷宮に入るにはユエみたいな〝自動再生〟持ちみたいな奴がいないと、ここは攻略出来ない事になる」

 

「………そっか」

 

「俺の推測だと神代魔法には〝再生〟に関する魔法があるんだろう。……まぁ、要するに今すぐ攻略は無理ってことか、仕方ないが他の迷宮から当たるしかないな……」

 

「……ん」

 

ここまで来て後回しにしなければならないことに歯噛みする。ユエも残念そうだ。しかし、大迷宮への入り方が見当もつかない以上、ぐだぐだと悩んでいても仕方ない。気持ちを切り替えて先に三つの証を手に入れることにする。

 

ハジメはハウリア族に集合をかけた。

 

「よし、お前達。いま聞いた通り、俺達は、先に他の大迷宮の攻略を目指すことにする。今のお前達なら、もうフェアベルゲンの庇護がなくても、この樹海で十分に生きていけるだろう。そういうわけで、ここでお別れだ」

 

ハジメの言葉を聞いていたカムが代表でコチラに歩み寄る。

 

「はっ畏まりました。後、ボス」

 

「何だ?」

 

カムはハジメの前に声を高らかに宣言する。

 

「我等は、ボスがお戻りになるまで樹海の守備を行っていこうと思う所存です」

 

「あぁ、了解した頼むぞ?」

 

「はっ、お任せを!」

 

そんな進言をするカムが片膝を突いて跪く。すると、ユエの隣にいたシアはもう堪忍が切れたか怒ったように表情を変える。

 

「もうっ! ホントッ、この十日間の間に何があったんですかっ!?」

 

「わかった、わかった。話すよ、話す」

ハジメは怒りを顕にしながら声を上げるシアを尻目にハウリアとの十日間の訓練を簡単に話し出した。

 

 

──八日前。

 

ハジメはハウリア全員の性根を一から叩き直す為、ゴム弾を使い、発砲しながらハウリアを一人ずつ叩きのめしたり、自分が扱う体術を使ってハウリア達を圧倒していた。

 

『てめぇ等の覚悟はそんなもんかぁ!?』

 

ハジメは休む暇も与えず倒れ伏すハウリア達に怒号と共に発砲していきながら、近付くハウリアを大木よりも高く投げ飛ばす。

 

『ガハッ!…ハジメ殿ォーー!』

 

『ギャーー!』

 

『うわあぁあっ!』

 

多くのハウリアが悲鳴を上げるも、ハジメは止まらない。そんな事を約五日間続けていった。

 

地獄のような訓練が続き、ボロボロながら、棒があって、やっと立ってられるくらいのカムがハジメに〝なぜ?〟といった様子で話しかけた。

 

『ハジメ殿、何でこんな事を……』

 

カムの言葉にハジメは、その真意をまだ分かってないと知り、呆れるも溜息を吐いて理由を口にする。

 

『俺は、お前等に呆れてる』

 

『えっ』

 

ハジメの唐突の発言にカムはポカンと口を開けた。傍で倒れ伏すハウリア達も同様だった。

 

『今のお前達ではシアを守れないし一族すら守れない。守ると言っても口だけ、現実はそうじゃねぇ』

 

『……っ、それは! 我々が弱っ………』

 

『弱いからって言うなよ。それはただの逃げだ』

 

『……っ』

 

ハジメの〝弱い〟という言葉はただの逃げだと言われてぐうの音も出ないカムは口を噤む。

他のハウリア達も同様で何も言えず顔を逸らして悔しそうに唇を噛むことしか出来ない。

 

そんなハウリアの様子にハジメは傍にあった切り株に腰をかけてハウリア達に話しかけた。

 

『一つ昔話をしよう、俺は昔な……守ると言っておきながら大切な人を守れなかった』

 

『えっ』

 

ハジメの口から告げられた事にカムそして、倒れているハウリア達までも言葉を失ってしまう。

 

『そん時に頭の中で理解したよ。口だけじゃ守れない、本当に大事なものや大切な人を守るには力が、誰にも負けない圧倒的な強さが必要ってことがよ』

 

『……守れる強さ』

 

ハジメの自虐するような笑みをしながら、話しているとカムがボソッと独りでに呟く。

 

『あぁ、だから俺は強くなったんだ。体がボロボロになるまで努力した。〝大切〟を守る為にな……で、お前達はどうする? 口だけか? それとも行動で示すか? 』

 

ハジメは真剣な眼差しでハウリア達に問い掛ける。

 

言葉だけ強気で、弱者のままでいるのか?

 

本当に大切を守るために行動を取るか?

 

しかし、ハジメの言葉でカム達の答えは既に決まっていた。

 

『そ、そんなの一つしかありませんよ行動のみですよ!』

 

『そうだっ!』

 

『俺達は家族でシアを守るんだ!』

 

ハウリア達は威勢よく立ち上がり瞳に燃ゆる炎を宿したカムが代表で宣言する。

 

『ハジメ殿……いやボス! 私達を強くしてください!』

 

『『『『『『『お願いしますボス!』』』』』』』

 

少し……いや、想像以上のやる気のカム達の勢いに息を呑んだが、すぐに笑みが零れてしまった。

 

『クハッ……その意気だ。よし、お前等!俺も、とことん付きやってやるからよ!掛かってこい!』

 

『はっ!』

 

『行くぞ、てめぇ等ァ!』

 

ハジメはドンナーに〝纏雷〟を発動させて、レールガンの速度でゴム弾を発砲すると同時にハウリア達へと襲いかかる。

 

『ブへっ!?』

 

ドパァンッ!とゴム弾が頭に被弾するが、すぐに武器を持って突進する。

 

『ぐっ!』

 

一人は電磁加速されたゴム弾が肩に掠り、倒れ伏すもすぐさま立ち上がる。

 

『ゲフッ!』

 

ドゴォッ!と、ハジメに投げられ木にぶつかっても尚、立ち上がる。

 

顔面を蹴り飛ばしても、殴り飛ばして木にぶつかっても、ゴム弾の乱れ撃ちを喰らっても……

 

『まだ、まだぁ……』

 

心を折れずに真剣な目で立ち上がるハウリア達。

 

そんな様子のハウリアを見て、ハジメは更に笑みを深める。

 

『クハッ……まだ行くぞぉ!』

 

『うおぉぉ!』

 

そして、ハウリア達は何度も倒れても、ハジメに立ち向かい続け、それに比例してハジメも興が乗り、一人、一人と返り討ちにしていくのを約五日間続けていくのだった。

 

「………という訳だ」

 

ハジメが話し終えるとシアはウサ耳を垂れたまま、無言だった。

 

「…………」

 

「いや〜恥ずかしいですなぁ。今思い出すと……」

 

カムは何故か恥ずかしながら頭をかいてるとシアがカムに歩み寄る。

 

「父様……」

 

「ん、どうしたんだシア?」

 

「馬鹿ァッ!」

 

「ぐほぉぉっ!」

 

シアは唐突にカムを流石に〝身体強化〟を使ってはないが頬を全力で殴った。

 

「父様も皆も私なんかの為に、ぐすっ……無茶して……フェグ」

 

「シア……」

 

殴られてもすぐに立ち上がれるほど頑丈になったカムは自分達を心配して泣き始めるシアを抱き締めて伝える。

 

「安心してくれシア。私達は辛くは無いし寧ろ家族を、お前を守れる強さを手に入れたんだ」

 

「父様……」

 

「だから、安心してお前もボスと共に行ってこい」

 

「っ……は、はい!」

 

ハジメはそんな二人の様子を見ていて無自覚だが頬が緩み微笑んでいた。

 

 

================================

 

 

樹海の境界でカム達とアルフレリック達長老衆の見送りを受けたハジメ、ユエ、シアは再び魔力駆動二輪に乗り込んで平原を疾走していた。

 

すると、肩越しにシアが質問する。

 

「ハジメさん。そう言えば目的地はライセン大峡谷でしたっけ?」

 

「あぁ、そうだ」

 

「でも……ライセン大峡谷に迷宮ってありましたっけ?」

 

ハジメの告げた目的地に疑問の表情を浮かべるシア。

 

現在、確認されている七大迷宮は、【ハルツィナ樹海】を除けば、【グリューエン大砂漠の大火山】と【シュネー雪原の氷雪洞窟】で確実を期すなら、次の目的地はそのどちらかにするべきだろうシアの疑問も当たり前なのだろう。

 

シアの疑問に察したハジメは意図を話した。

 

「一応、ライセンも七大迷宮があると言われているからな。シュネー雪原は魔人国の領土だから必ず面倒な事になる」

 

「そ、それはそうですね……」

 

「だから、取り敢えず大火山を目指すのがベターなんだが、どうせ西大陸に行くなら東西に伸びるライセンを通りながら行けば、途中で迷宮が見つかるかもしれないだろ?」

 

「つ、ついででライセン大峡谷を渡るのですか……」

 

思わず、頬が引き攣るシアにハジメは苦笑いする。

 

ライセン大峡谷は地獄にして処刑場というのが一般的な認識だ。その反応は理解は出来る。

 

「で、では、ライセン大峡谷に行くとして、今日は野営ですか? それともこのまま、近場の村か町に行きますか?」

 

「……ん、どうするハジメ?」

 

「そうだな出来れば、食料とか調味料関係を揃えたいし、今後のためにも素材を換金しておきたいから町がいいな。前に見た地図通りなら、この方角に町があったと思うんだよ」

 

「そうですか〜」

 

「……ん、わかった」

 

ハジメはシア達に町に行くと告げた後、ハッとあることを思い出した。

 

そして、運転しながらハジメはシアに確認取ろうと声をかける。

 

「シア」

 

「はい? どうしたんですかハジメさん?」

 

「少しな、町に着く前に渡したいものがあるから近くまで着いたら渡したい物があるんだが……良いか?」

 

「分かりましたですぅ〜」

 

「おう……了承は取ったからな

 

重要なとこは話さずにシアからの許可を得たハジメ。そのまま、近くの町に向かって魔力駆動二輪を走らせていったのだった……。

 

 

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