ありふれた職業で世界最強if優花   作:白San

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二十二話 ブルックの町

 

遠くに町が見える。周囲を堀と柵で囲まれた小規模な町だ。街道に面した場所に木製の門があり、その傍には小屋もある。おそらく門番の詰所だろう。小規模といっても、門番を配置する程度の規模はあるようだ。

 

「おぉ……」

 

ここならば、充実な備蓄を揃えることが出来そうだとハジメは町を見ながら頬を緩めた。

 

そんな道中、シアがあることでブチブチと文句を垂れていたが、スルーして遂に町の門までたどり着いた。案の定、門の脇の小屋は門番の詰所だったらしく、武装した男が出てきた。格好は、革鎧に長剣を腰に身につけているだけで、兵士というより冒険者に見える。その冒険者風の男がハジメ達を呼び止めた。

 

「止まってくれ。ステータスプレートを。あと、町に来た目的は?」

 

「あー、分かった」

 

ハジメは〝隠蔽〟を使って偽装したステータスプレートを門番に渡しながら目的を伝える。

 

「食料の補給がメインだ。旅の途中でな」

 

「……」

 

「……」

 

門番は、ハジメの目的を聞きながら偽装ステータスプレートとハジメを交互に見て、問題は無いと判断する。

 

「よし、良いだろう……しかし、そっちの二人は?」

 

門番がユエとシアにもステータスプレートの提出を求めようとして、二人に視線を向ける。

 

「あ〜、少し前に魔物の襲撃があっちまってな、こっちの子のは失くしちまったんだ。こっちの兎人族は……わかるだろ?」

 

その言葉だけで門番は納得したのか、なるほどと頷いてステータスプレートをハジメに返す。

 

「それにしても随分な綺麗どころを手に入れたな。白髪の兎人族なんて相当レアなんじゃないか?……まぁ良し行け」

 

「ああ、どうも。おっと、そうだ。素材の換金場所って何処にある?」

 

「それなら、中央の道を真っ直ぐ行けば冒険者ギルドがある。店に直接持ち込むなら、ギルドで場所を聞け。簡単な町の地図をくれるから」

 

「おぉ、そいつは親切だな。ありがとよ」

 

門番から情報を得て、ハジメ達は門をくぐり町へと入っていく。門のところで確認したがこの町の名前はブルックというらしい。

 

一見、ホルアドみたいな活気で平和そうな町で少しばかり気が楽になる。それは、ハジメだけでなく、ユエも楽しげに目元を和らげている。しかし、シアだけは先程からぷるぷると震えて、涙目でハジメを睨んでいた。怒鳴ることもなく、ただジッと涙目で見てくるので、流石にハジメもシアに視線を合わせる。

 

「あ〜、シア、そろそろ機嫌を直してくれないか?」

 

「うぅ〜、でもこの首輪! これのせいで奴隷と勘違いされたじゃないですか! ハジメさん、わかっていて付けたんですね! うぅ、酷いですよぉ~、私達、仲間じゃなかったんですかぁ~」

 

シアが怒っているのは、旅の仲間だと思っていたのに、意図して奴隷扱いを受けさせられたことが相当ショックだったようだ。もちろん、ハジメが付けた首輪は本来の奴隷用の首輪ではなく、シアを拘束するような力はない。それ自体はシアも勿論わかっている。だが、だとしても、やはりショックなものはショックらしい。

 

「それについてはすまない。だが、奴隷でもない亜人族、それも愛玩用として人気の高い兎人族が普通に町を歩けるわけないだろう?」

 

「うぅ〜そうですけど」

 

「嫌なのは分かっているが今は我慢してくれ」

 

「……ん、シア我慢」

 

「うぅ〜、分かりましたぁ」

 

ハジメとユエが宥めることでなんとかシアは首輪の事は渋々、頷いて納得した。そして、ハジメはシアに首輪に備えつけの機能の説明をする。

 

「あとな、その首輪だが、念話石と特定石が組み込んであるから、必要なら使え。直接魔力を注いでやれば使えるから」

 

「念話石と特定石ですか?」

 

「ちなみに、その首輪、きっちり特定量の魔力を流すことで、ちゃんと外せるからな?」

 

「なるほどぉ~。なんとも無駄な高性能ですねぇ〜」

 

「……ん、流石ハジメ」

 

「はぁ、無駄とはなんだ、無駄とは……まぁ、ギルドに向かうとするか」

 

ハジメ達はメインストリートを歩いていき、一本の大剣が描かれた看板を発見する。かつてホルアドの町でも見た冒険者ギルドの看板だ。

 

「あった……」

 

規模は、ホルアドの冒険者ギルド比べて二回りほど小さかった。もしかしたら、普通の町ならばこの規模かもしれない。ハジメは看板を確認すると重厚そうな扉を開き中に踏み込んだ。

 

ハジメ達がギルドに入ると、冒険者達が当然のように注目してくるがスルーし、カウンターへと向かった。

 

「……」

 

カウンターへ向かう中、ハジメ達は周りの冒険者達に注目はされているが、足止めとかはされてないないので気にしないことにした。カウンターに向かうとそこには笑顔を浮かべたオバチャンがいた。

 

「少し良いか?」

 

「おや、珍しい。受付がこんなオバチャンなのに残念と思わないんだね〜」

 

「あんまり見た目で人を判断しない性格でな。それに、アンタは相当な熟練に見える」

 

ハジメがそう話すと、オバチャンは笑みを浮かべハジメの後ろにいたユエとシアに視線を向ける。

 

「そりゃ嬉しいねぇ〜。そこのお嬢ちゃん達も良い男を捕まえれて良かったねぇ〜」

 

「……んっ」

 

「はいですぅ〜」

 

二人も何故か嬉しそうに頷く。

 

「さて、じゃあ改めて、冒険者ギルド、ブルック支部にようこそ。ご用件は何かしら?」

 

「ああ、素材の買取をお願いしたい」

 

「素材の買取だね。じゃあ、まずステータスプレートを出してくれるかい?」

 

「ん? 買取にステータスプレートの提示が必要なのか?」

 

ハジメの疑問に「おや?」という表情をするオバチャン。

 

「あんた冒険者じゃなかったのかい? 確かに、買取にステータスプレートは不要だけどね、冒険者と確認できれば一割増で売れるんだよ」

 

そして、オバチャンは冒険者のシステムについてあまり詳しくないハジメに冒険者について色々と説明してくれた。

 

「そうだったのか……」

 

オバチャンの言うことだと、冒険者になれば様々な特典も付いてくるし生活に必要な魔石や回復薬を始めとした薬関係の素材は冒険者が取ってくるものがほとんどで町の外はいつ魔物に襲われるかわからない以上、素人が自分で採取しに行くことはほとんどない。危険に見合った特典がついてくるのは当然らしい。

 

ハジメが納得していると、オバチャンは更に言葉を続ける。

 

「他にも、ギルドと提携している宿や店は一~二割程度は割り引いてくれるし、移動馬車を利用するときも高ランクなら無料で使えたりするね。どうする? 登録しておくかい? 登録には千ルタ必要だよ」

 

「そうか。ならせっかくだし登録しておくかな。買取金額から差っ引くってことにしてくれないか? もちろん、最初の買取額はそのままでいい」

 

ハジメは、そう言いながらオバチャンにステータスプレートを差し出す。

 

「はいよ」

 

戻ってきたステータスプレートには、新たな情報が表記されていた。天職欄の横に職業欄が出来ており、そこに〝冒険者〟と表記された。

 

同時に冒険者ランクも教えられた。

 

今、登録したハジメ含めた冒険者の最初のランク青となって初級冒険者という括りになる。

次の赤から紫は第三級冒険者、緑から黒が第二級冒険者、銀から金が第一級冒険者と呼ばれ、それ以上の力を持つ存在を白金(プラチナ)の称号を持つ英雄級冒険者。

 

と、オバチャンに冒険者ランクについて教えられたハジメはふむ、と頷いているとハジメに笑って言う。

 

「男なら頑張って第二級冒険者の黒か白を目指しなよ? お嬢さん達にカッコ悪いところ見せないようにね」

 

「ああ、そうするよ。それで、買取はここでいいのか?」

 

「構わないよ。あたしは査定資格も持ってるから見せてちょうだい」

 

オバチャンは受付だけでなく買取品の査定もできるらしい。やはり、ハジメの思った通りオバチャンはかなり優秀な人ようだ。

 

ハジメは、あらかじめ〝宝物庫〟から出してバックに入れ替えておいた素材を取り出す。品目は、魔物の毛皮や爪、牙、そして魔石だ。カウンターの受け取り用の入れ物に入れられていく素材を見て、オバチャンが驚愕の表情をする。

 

「こ、これは!」

 

恐る恐る手に取り、隅から隅まで丹念に確かめる。息を詰めるような緊張感の中、ようやく顔を上げたオバチャンは、溜息を吐きハジメに視線を転じた。

 

「とんでもないものを持ってきたね。これは…………樹海の魔物だね?」

 

「ああ、そうだが?」

 

ハジメは樹海の魔物は相当なレア物の可能性が出て少し冷や汗が流れ出る。すると、オバチャンから樹海の魔物についての説明がはいった。

 

「樹海の素材は良質なものが多いからね、売ってもらえるのは助かるよ」

 

「そうか……やっぱり珍しいか?」

 

「そりゃあねぇ。樹海の中じゃあ、人間族は感覚を狂わされるし、一度迷えば二度と出てこれないからハイリスク。好き好んで入る人はいないねぇ。亜人の奴隷持ちが金稼ぎに入るけど、売るならもっと中央で売るさ。幾分か高く売れるし、名も上がりやすいからね」

 

「……」

 

今度は素材の提出にも気を付けとこうとハジメがそう思ってるとオバチャンはチラリとシアを見る。

 

「…………」

 

オバチャンはおそらく、シアの協力を得て樹海を探索したのだと推測して、ハジメは樹海の素材を出しても、シアのおかげで不審にまでは思われなかったようで安堵する。

 

ハジメはシアに心の中で感謝した。

 

それからオバチャンは、全ての素材を査定し金額を提示した。買取額は四十八万七千ルタ。結構な額だった。

 

「これでいいかい? 中央ならもう少し高くなるだろうけどね。」

 

「いや、この額で構わない」

 

ハジメは五十一枚のルタ通貨を受け取る。この貨幣、鉱石の特性なのか異様に軽い上、薄いので五十枚を超えていても然程苦にならなかった。そして、ハジメは、この町に入る際に門番に教えて貰ったことをオバチャンに聞く。

 

「ところで、門番の彼に、この町の簡易な地図を貰えると聞いたんだが……」

 

「ああ、ちょっと待っといで……ほら、これだよ。おすすめの宿や店も書いてあるから参考にしなさいな」

 

「おぅ、感謝す……っ!」

 

ハジメはオバチャンに貰った地図の出来映えに驚愕する。

 

「おいおい、いいのか? こんな立派な地図を無料で。十分金が取れるレベルだと思うんだが……」

 

「構わないよ、あたしが趣味で書いてるだけだからね。書士の天職を持ってるから、それくらい落書きみたいなもんだよ」

 

「……」

 

ハジメはオバチャンの落書き感覚だと聞いて苦笑いする。

 

「そうか。まぁ、助かるよ」

 

「いいってことさ。それより、金はあるんだから、少しはいいところに泊りなよ。治安が悪いわけじゃあないけど、その二人ならそんなの関係なく暴走する男連中が出そうだからね」

 

オバチャンは最後までいい人で気配り上手だった。ハジメは苦笑いしながら「そうするよ」と返事をし、入口に向かって踵を返した。ユエとシアも頭を下げて追従した。

 

「ふむ、いろんな意味で面白そうな連中だね……」

 

後には、そんなオバチャンの楽しげな呟きが残された。

 

 

================================

 

 

ハジメ達が、もはや地図というよりガイドブックと称すべきそれを見て決めたのは〝マサカの宿〟という宿屋だ

 

宿の中は一階が食堂になっているようで複数の人間が食事をとっていた。俺達が入ると、また注目されたがそれらを無視して、カウンターらしき場所に行くと、十五歳くらい女の子が元気よく挨拶しながら現れた。

 

「いらっしゃいませー、ようこそ〝マサカの宿〟へ! 本日はお泊りですか? それともお食事だけですか?」

 

「宿泊だ。このガイドブック見て来たんだが、記載されている通りでいいか?」

 

ハジメが見せたオバチャン特製地図を見て合点がいったように頷く女の子。

 

「ああ、キャサリンさんの紹介ですね。はい、書いてある通りですよ。何泊のご予定ですか?」

 

「一泊でいい。食事付きで、あと風呂も頼む」

 

ハジメは女の子の口からギルドのオバチャンの名前を聞き、そのインパクトさに苦笑いする。

 

「はい。お風呂は十五分百ルタです。今のところ、この時間帯が空いてますが」

 

女の子が時間帯表を見せる。なるべくゆっくり入りたいので、男女で分けるとして二時間は確保したい。その旨を伝えると「えっ、二時間も!?」と驚かれた。

 

「ん?」

 

「え、え〜と、それでお部屋はどうされますか? 二人部屋と三人部屋が空いてますが……」

 

ちょっと好奇心が含まれた目でハジメ達を見る女の子。年頃なのか? と思いながらハジメは、周りも聞き耳を立ててい少女と宿にいる人達を尻目にハジメは部屋のことを伝える。

 

「ああ、三人部屋で頼む。お前等も良いよな」

 

「……ん」

 

「はいですぅ〜」

 

ハジメは二人の確認を取り女の子に視線を戻すと顔を赤くしながらとんでもない事を言い出した。

 

「さっ三人部屋……つ、つまり三人で? す、すごい……はっ、まさかお風呂を二時間も使うのはそういうこと!? お互いの体で洗い合ったりするんだわ!それから……あ、あんなことやこんなことを……なんてアブノーマルなっ!」

 

「……」

 

ムッツリであろう女の子はトリップしていた。それを見かねた女将さんらしき人がズルズルと女の子を奥に引きずっていく。代わりに父親らしき男性が手早く宿泊手続きを行った。

 

「すみません、家の娘が……」

 

「問題ない、そういう年頃なんだろ?」

 

父親の人は、苦笑いして頷いていた。なんやかんやあったがハジメはそのまま、受付をし終えるとユエ達と一緒に部屋に入り、一晩過ごしたのだった。

 

翌朝、朝食を食べた後、ハジメは、ユエとシアに金を渡して、旅に必要なものの買い出しを頼んだ。チェックアウトは昼なのでまだ数時間は部屋を使える。なので、ユエ達に買出しに行ってもらっている間に、部屋で済ませておきたい用事があったのだ。

 

「用事ってなんですか?」

 

「ちょっと作っておきたいものがあるんだよ。その設計図は〝脳内設計〟で完成してるし、数時間もあれば作れる」

 

「分かりました〜、あっユエさん。私、服も見ておきたいんですけどいいですか?」

 

「……ん、問題ない。私は、露店も見てみたい」

 

「あっ、いいですね! 昨日は見ているだけでしたし、買い物しながら何か食べましょう」

 

「……ん、じゃあハジメ行ってくる」

 

「行ってきますですぅ〜」

 

「おう」

 

 

================================

 

 

現在、シアとユエは町に出ていた。昼ごろまで数時間といったところなので計画的に動かなければならない。目標は、食料品関係とシアの衣服、それと薬関係だ。武器・防具類はハジメがいるので不要である。

 

町の中は、既に喧騒に包まれていた。露店の店主が元気に呼び込みをし、主婦や冒険者らしき人々と激しく交渉をしている。飲食関係の露店も始まっているようで、朝から濃すぎないか? と言いたくなるような肉の焼ける香ばしい匂いや、タレの焦げる濃厚な香りが漂っている。

 

道具類の店や食料品は時間帯的に混雑しているようなで、二人はまず、シアの衣服から揃えることにした。

 

オバチャン改めキャサリンさんの地図には、きちんと普段着用の店、高級な礼服等の専門店、冒険者や旅人用の店と分けてオススメの店が記載されている。やはりオバ……キャサリンさんは出来る人だ。痒いところに手が届いている。

 

二人は、早速、とある冒険者向きの店に足を運んだ。ある程度の普段着もまとめて買えるという点が決め手だ。

 

その店は、流石はキャサリンさんがオススメするだけあって、品揃え豊富、品質良質、機能的で実用的、されど見た目も忘れずという期待を裏切らない良店だった。

 

ただ、そこには……

 

「あら~ん、いらっしゃい♥可愛い子達ねぇん。来てくれて、おねぇさん嬉しいぃわぁ~、た~ぷりサービスしちゃうわよぉ~ん♥」

 

化け物がいた。身長二メートル強、全身に筋肉という天然の鎧を纏い、劇画かと思うほど濃ゆい顔、禿頭の天辺にはチョコンと一房の長い髪が生えており三つ編みに結われて先端をピンクのリボンで纏めている。動く度に全身の筋肉がピクピクと動きギシミシと音を立て、両手を頬の隣で組み、くねくねと動いている。

 

ユエとシアは硬直する。シアは既に意識が飛びかけていて、ユエは奈落の魔物以上に思える化物の出現に覚悟を決めた目をしている。

 

「あらあらぁ~ん? どうしちゃったの二人共? 可愛い子がそんな顔してちゃだめよぉ~ん。ほら、笑って笑って?」

 

「……人間?」

 

その瞬間、化物が怒りの咆哮を上げた。

 

「だぁ~れが、伝説級の魔物すら裸足で逃げ出す、見ただけで正気度がゼロを通り越してマイナスに突入するような化物だゴラァァアア!!」

 

そんなに言ってない!とユエは心の中で叫びながらも頭を下げて謝罪する。

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「あら? いいのよ~ん。それでぇ? 今日は、どんな商品をお求めかしらぁ~ん?」

 

結論から言うと、化物改め店長のクリスタベルさんの見立ては見事の一言だった。店の奥へ連れて行ったのも、シアが粗相をしたことに気がつき、着替える場所を提供するためという何とも有り難い気遣いでユエとシアは満足だった。

だが、ユエが一つ気になったのは店の中に大きな大剣が置かれていて、その大剣はユエから見ても相当な業物だと分かる。故に、気になってクリスタルベルに聞くと、彼女?は、少し含んだ笑みを浮かべて答えた。

 

「ふふ、それはね私が昔に愛用していた武器よん」

 

「……なら、昔は冒険者だったの?」

 

「ええ。だから、今も感覚を鈍らせないために鍛錬したり、近くの【遺跡】とかに潜ったりしてるわ」

 

「へぇ! そうなんですねぇー」

 

「………近くに【遺跡】があるの?」

 

「あら、知らなかったの? ここ〝ブルック〟は【ブルリア遺跡】の近くにある町だから冒険者が多くて繁盛してるのよ。まぁ、ランクは第二級程度だから私的には味気ないけどね」

 

そう色々と町について話してくれるクリスタルベル。ユエは【遺跡】が近くにあるという有益な情報を得たことと、クリスタルベルは元冒険者だと知り初対面の時の強者の佇まいに納得した。

 

その後、ユエとシアはクリスタベル店長にお礼を言い店を出た。その頃には、彼女?の笑顔も愛嬌があると思えるようになっていたのは、あの人のの人徳ゆえだろう。

 

そして、店を後にするユエとシアを笑顔で見送っていたクリスタルベルは誰にも聞こえない声音で呟く。

 

「まさか、あんなに強い吸血鬼族の子がいるなんて驚きだったわ。最初は問い詰めようと思ったけど………」

 

クリスタルベルはいつの間にか店に飾っていた大剣を手に持っていたが、すぐに閉まって優しい表情を浮かべる。

 

「あの子は、自分の力を他人の為に使える子。なら、私はなにも知らない程で接しないとね」

 

折角できた仲良く話せるお客様だ。ならば自分は店長として彼女達と接しればいい。

「ねぇ……ユエちゃん、シアちゃん。貴女達はこの世界を救うのに大事なピースなのかしら(・・・・・・・・・・・・・・)?」

 

そう問いかけるようなクリスタルベルの声は誰にも聞こえることないのであった。

 

 

================================

 

 

「いや~、最初はどうなることかと思いましたけど、意外にいい人でしたね。店長さん。」

 

「ん……ハジメが言ってみたいに人は見た目によらない」

 

「ですねぇ~」

 

そんな風に雑談しながら、次は道具屋に回ることにした二人。しかし、唯でさえ目立つ二人だ。すんなりとは行かず、気がつけば数十人の男達に囲まれていた。冒険者風の男が大半だが、中にはどこかの店のエプロンをしている男もいる。

 

その内の一人が前に進み出た。ユエは覚えていないが、この男、実はハジメ達がキャサリンと話しているとき冒険者ギルドにいた男だ。

 

「ユエちゃんとシアちゃんで名前あってるよな?」

 

「? ……合ってる」

 

ユエの返答を聞くとその男は、後ろを振り返り他の男連中に頷くと覚悟を決めた目でユエを見つめた。他の男連中も前に進み出て、ユエかシアの前に出る。

 

そして……

 

「「「「「「ユエちゃん、俺と付き合ってください!!」」」」」」

 

「「「「「「シアちゃん! 俺の奴隷になってくれ!!」」」」」」

 

大勢の男達から盛大な告白を受けたユエとシアは……

 

「……シア、道具屋はこっち」

 

「あ、はい。一軒で全部揃うといいですね」

 

まるで何事もなかったように歩みを再開した。

 

「ちょっ、ちょっと待ってくれ! 返事は!? 返事を聞かせてく「「断る(ります)」」……ぐぅ……」

 

まさに眼中にないという二人の態度に、男は呻き、何人かは膝を折って四つん這い状態に崩れ落ちた。しかし、諦めが悪い奴はどこにでもいる。まして、ユエとシアの美貌は他から隔絶したレベルだ。多少、暴走するのも仕方ないといえば仕方ないかもしれない。

 

「なら、なら力づくでも俺のものにしてやるぅ!」

 

暴走男の雄叫びに、他の連中の目もギンッと光を宿す。二人を逃さないように取り囲み、ジリジリと迫っていく。

 

その時だった。ユエとシアにとっての好きで大切な人が自分達の前に颯爽と横から割って入り二人を守るように立つのだった。

 

その人物とは……

 

「おい……てめぇ等、人の仲間に何しようしてる?」

 

勿論、ハジメである。

 

 

ー数分前ー

 

「アイツ等、マジ何処にいんだ……」

 

ハジメは作りたかった物は出来たので帰りが遅いユエ達を迎えに行く為、外に出ていた。

 

すると……

 

「「「「「「ユエちゃん、俺と付き合ってください!!」」」」」」

 

「「「「「「シアちゃん! 俺の奴隷になってくれ!!」」」」」」

 

自分がいる所から少し離れたとこから二人に告白する大勢の男の声が聞こえて一瞬、呆ける。

 

「なんだぁ? なんか盛大な告は……って、ユエとシアの名前が聞いたような……」

 

しかし、告白の相手の名前が聞こえて、もしかしてと察したハジメは溜息を吐いて呆れながらそこへと向かった。

 

辿り着くけば、やはりと言うべきかフラれた野郎共が問題無いと思うがユエ達に手を出そうとしたので割って入った。

 

そして、現在。

 

「おい……てめぇ等、人の仲間に何しようしてる?」

 

突然のハジメの乱入に驚いていたがハジメの顔を思い出した男はハッと我を取り戻し声を上げた。

 

「てめぇは!ユエちゃんとシアちゃんのっ!」

 

「あぁ、仲間だ」

 

ハジメがそうキッパリと言う姿に、嫉妬に呑まれた男共は嫉妬を通り越して怒りの表情を歪ませていく。

 

「てめぇ、可愛い二人が傍にいるからって恋人じゃなくて仲間ァ? 調子に乗りやがって……」

 

「調子に乗ってねぇよ」

 

「はっ、嘘つきやがれ!」

 

「そんな戯言なんてどうでもいい。それより……」

 

ハジメは男共が何か戯言をほざいているがそんなの適当に無視して、ただ睨みつけるだけだ。しかし、ハジメから伝わる圧に気圧された男達はたじろぐ。

 

「……っ、なんだよっ!」

 

「てめぇ等な……女の子に、ましてや俺の大切な仲間に手ぇ出そうとしたんだわかってるよな?」

 

「「「「「「「「「……っ!」」」」」」」」」

 

ハジメはそう告げながら〝威圧〟を発動して大勢の男達を怯ませる。それでも諦めきれないのかユエ達に手を出そうとした男に対してハジメは手を突き出し挑発する。

 

「……来いよ?」

 

「…っ、くっそぅぉぉぉ!!」

「……遅え」

 

「ぐへっ」

 

男はハジメの挑発に激高し、無我夢中に剣を抜いて突撃してきたが、ハジメの見えない手刀によって意識を失った。

周りはユエ達以外にはハジメの手の動きが早過ぎて見えなかったらしくハジメの恐ろしさに後退りし始める。

 

「で……次は誰が来るんだ?」

 

「「「「「「うわあああ!」」」」」」

 

ハジメが再度、〝威圧〟しながら告げると恐怖した男共は逃げ帰って行った。ハジメはそれを確認した後、溜息と共に〝威圧〟を解き、ユエ達の方へ向き直る。

そして、大丈夫だろうが一応、二人に声をかける。

 

「お前等、大丈夫だったか?」

 

「……ん」

 

「ハジメさん、ありがとうございますぅ」

 

「今度からは絡まれないように気をつけとけよ」

 

「分かりましたぁ〜」

 

ハジメの言葉にシアは上機嫌であるがユエは首を傾げてが質問した。

 

「……でもハジメの助けが無くても大丈夫だった」

 

「まぁ、そうだが……一応な」

 

「……?」

 

「いや、この町に入ってからな、お前達に対する視線が凄いんだよ。だから、こういう時に脅しでもしとけば収まると思っただけだ」

 

ハジメの答えを聞くとユエは嬉しそうに頬を緩め「……ん、わかった」と言って納得して貰えた。

 

「そろそろ、部屋に戻ろうぜ」

 

「……んっ」

 

「はいですぅ〜」

 

ハジメ達はそのまま宿に帰っていくのだった。

 

だが、この日、ハジメに気絶させられた一人の男がクリスタベルに捕まったらしく、後の次代の英傑になるマリアベルちゃんが生まれた。彼は、クリスタベル店長の下で修行を積み、二号店の店長を任され、その強さで冒険者界隈で名を上げるのだが……それはまた別のお話。

 

そのせいでかハジメに、〝白髪の悪魔〟という二つ名が付き、後に冒険者ギルドを通して王都にまで名が轟き、冒険者を震え上がらせるのだが、それもまた別の話。

 

そして、畏怖の視線を向けてくる男達の視線をさらっと無視して宿へと向かった。道中、その一連を見ていた女の子達が「お兄様……」と呟いきながら熱い視線を向けているのをハジメは知らない。

 

 

================================

 

 

「へぇ……近くに【遺跡】ね。ちょっと暇が出来たら攻略してみてぇな」

 

宿に戻ってハジメは、ユエとシアから今日あった町であったことや情報聞いて、その中に【遺跡】の情報を知って笑みを零しつつ、ユエに必要な備蓄は買えたのかを聞く。

 

「そうえばユエ、必要なものは全部揃ったか?」

 

「……ん、大丈夫」

 

ハジメ達は宿に戻るとまだ買いたい物は買えたか確認してなかった為、ユエに聞くと、買いたい物は買えたらしい。

 

「ですね。食料も沢山揃えましたから大丈夫です。にしても〝宝物庫〟ってホント便利ですよね~」

 

「まぁな、俺も〝宝物庫〟は便利過ぎて愛用してるが、今の俺でも作れない代物だからなぁ〜」

 

「えっ、そうなんですか?!ハジメさんでも作れない物があるなんて驚きですぅ〜」

 

「あぁ……」

 

シアが驚くのも無理はない。ハジメはこの世界でもトップクラスの錬成師だ。しかし、そんなハジメでも〝宝物庫〟の作成に至れない。理由は簡単、他の神代魔法も組み合わせないといけないとからだ。ハジメは既に〝脳内設計〟で〝宝物庫〟の設計図を作成して、創り上げるがそれはただの魔力を貯蔵する程度の指輪のみだ。。

 

「まぁ、それはさておき、シア。こいつはお前にだ」

 

話題を変えてハジメはシアに直径四十センチ長さ五十センチ程の円柱状の物体を渡した。銀色をした円柱には側面に取っ手のようなものが取り付けられている。

ハジメが差し出すそれを反射的に受け取ったシアは、あまりの重さに思わずたたらを踏みそうになり慌てて〝身体強化〟の出力を上げた。

 

「な、なんですか、これ? 物凄く重いんですけど……」

 

「そりゃあな、お前用の新しい大槌だからな。重いほうがいいだろう」

 

「へっ、これが……ですか?」

 

シアの疑問はもっともだ。円柱部分は、槌に見えなくもないが、それにしては取っ手が短すぎるし何ともアンバランスな形だ。

 

だが……

 

「シア、その状態はただの待機状態だ。取り敢えず魔力流してみろ」

 

「えっと、こうですか? ッ!?」

 

ハジメの言われた通り、シアは槌モドキに魔力を流すと、カシュン! カシュン! という機械音を響かせながら取っ手が伸長し、槌として振るうのに丁度いい長さになった。

この大槌型アーティファクト:ドリュッケン(ハジメ命名)は、幾つかのギミックを搭載したシア用の武器だ。魔力を特定の場所に流すことで変形したり内蔵の武器が作動したりする。

 

「今の俺にはこれくらいが限界だが、腕が上がれば随時改良していくつもりだ。これから何があるか分からないからな。ユエとの訓練でもたったの十日。俺達が庇い切れない場合もあるし、まだまだシアは危なっかしい。その武器はシアの力を最大限生かせるように考えて作ったんだ」

 

「ハジメさん……ふふ、大丈夫です。まだまだ、強くなって、どこまでも付いて行きますからね!」

 

シアは嬉しそうにドリュッケンを胸に抱く。

 

「期待してるぞ」

 

「はいですぅ!」

 

はしゃぐシアを連れながら、宿のチェックアウトを済ませる。未だ、宿の女の子が俺達を見ると頬を染めるが無視だ。外に出ると太陽は天頂近くに登り燦々と暖かな光を降らせている。それに手をかざしながらハジメは大きく息を吸った。

 

今日は、良い旅日和だな。と思いつつ振り返ると、ユエとシアも同様に頬を緩めてハジメを見つめている。

 

「じゃあ、行くぞ迷宮攻略」

 

「「んっ(はいですぅ)!」」

 

ハジメは二人の反応を見ると、スっと前に歩みを進めた。ユエとシアも追従していく。

 

さぁ、迷宮攻略の再開だ……。

 

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