空き教室で影が薄い浩介と友達になったハジメは優花達に次の日に彼を紹介した。しかし、返ってきたのは浩介にとって心抉られるものだった。
『ハジメ君、だ、大丈夫?』
『そ、そうだよ。南雲っち今日早退する?』
『ハジメ保健室行こ?』
三人ともハジメがおかしくなったか、心配した表情で詰め寄る。このことを隣で聞いていた浩介はたまったものではなく、だがいつまでも黙ってるわけもいかなず心の奥底から叫んだ。
『ずっと、隣にいるわ!!』
浩介の怒りの叫びにのおかげで、ようやく三人とも浩介の存在に気が付き驚きの余り目を見開いた。
『ホントにいた……』
『冗談じゃなかったんだ〜』
『全然、気付かなかった……』
三人共、浩介を人じゃないかのように言い始める。それを聞いた浩介は辛さの余り膝から崩れ落ちた。
『南雲……俺、泣いて良いかな?』
『遠ゥゥ藤ぉぉクゥゥン!!』
泣き崩れる浩介を、ハジメは彼の背中を摩りながら励ますのだった。
それが、浩介と三人の最初の出会いであり、この出会いから始まった五人の仲は強固になっていくのだった。
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中学に入学して数ヶ月。ハジメ達は中学初の夏休みに突入した。
そして今、ハジメ達は……
「海、綺麗だな〜」
海にいるのだった。
何故、ハジメが海にいるかは、三日前ほど前だった。その日は、五人で〝ウィステリア〟で夏休みの宿題をしていた。
そして、休憩の時、ご飯を食べながら雑談をしていると何かを考えていた奈々が突然と立ち上がった。
いきなりの立ち上がった奈々に驚く四人。妙子も遂に頭がおかしくなったかと思っていると、奈々は店全体に響く声音で、
『海、行こう!』
『奈々、うるさい』
『あ……はい』
しかし、デカイ声で話す奈々は青筋を立てた優花によって注意されるのであったが話は進んでいき結果、五人は海に行くことになった。
そして、現在に戻る。波の音、夏の太陽が照りつける中、砂浜でハジメは海パン姿でポケーっと海を眺めながら皆の着替えを待っていた。浩介は、とある用事で更衣室へ居るため此処には居ない。
「ハジメく〜ん」
少ししてから優花の声が聞こえたハジメは、勢いよく声がする方向へと視線を向けた。
「ごめんね、ハジメ君。待った?」
そして、ハジメの目には、ピンクと白が混じった色でフリルの付いた水着、スラリとした白く綺麗な肌。少し頬を赤くなっている優花の姿を見たハジメは、
「────」
美しさの余り、口をポカンと開けたまま時が止まったかのようにフリーズしていた。それを見た優花が心配した表情で座ったハジメに四つん這いで近付きながら声を掛けた。
「ハジメ君?」
優花の呼ぶ声のおかげでハッと我に帰ったハジメだが、すぐ目の前には水着姿の優花。そして、優花が四つん這いをしているせいでチラリと見える胸元に、ハジメは片腕で顔の下半分を隠してバッと顔を横に向けた。
「(落ち着け、落ち着け南雲ハジメ! こんなとこで反応したら流石に駄目だろ!)っ──だ、大丈夫だよ//」
「そっか……」
顔を逸らしながら大丈夫だと宣うハジメに対し、優花は少し頬を膨らましムスッと不満な表情を浮かべてから、次に決心したようなな表情になるとハジメの肩を叩く。
肩を叩かれたハジメは「どうしたの?」とゆっくりだが優花の方へ視線を戻すと、耳までも真っ赤にしながら水着をまるで見て欲しいかのようなポーズを取った優花が目に入った。
「ねぇ……こ、この水着ど、うかな?」
「!?」
恥ずかしさも我慢して自分の水着をどうかと尋ねる優花に、ハジメもちゃんと答えないと失礼だと思い、ちゃんと優花の方へと向き直った。
「す、凄く、似合ってるよ!」
「ほ、ホントに?!」
「うん!」
そう己の本心に従って優花に水着の感想を言うハジメ。すると彼女は嬉しそうに微笑んだ。
そうしていると後ろから聞き慣れた声が聞こえた。
「おーい、二人共ーー!」
二人は声のする方向を見ると、奈々達も着替えを終えたようだ。そして、奈々達は自分達を呼んでいるようでハジメは優花に手を差し伸べた。
「行こ優花ちゃん」
「うんっ」
差し出された手を彼女は笑みを浮かべながら応えて手を握った。そして、僕達は奈々達の元へと手を繋ぎながら向かった。
少し駆け足で行きながら奈々達の元へ向かうと、ハジメは三人とそして、ある女の子に笑って声を掛けた。
「待ってたよ三人共。それに真実ちゃん」
「園部達もだが、南雲もありがとな妹を連れて来ちゃってすまないな。ほら真実?」
「……」ペコリ
「照れてる真実ちゃん〜可愛い」
「こら、やめなさい奈々」
奈々が抱き着こうとして、妙子に止められる。そして、浩介の傍に離れないでいるのは浩介の二つ下の妹の遠藤真実である。
何故、彼女がここにいる理由はハジメ達が〝ウィステリア〟で海に行く前日の話し合いをしている時だった。
浩介が申し訳無さそうな表情で、皆に話を切り出した。
『なぁ、お前等〜』
『どうしたの遠藤君?』
『明日、海行くけどさあ〜』
『まさか、浩ちん来れない?!』
奈々は残念そうな表情になるが、浩介は「ちゃうちゃう」と先走り過ぎだと笑って否定すると、用件を話した。
『いや、来れるけどなんか親が海に行くなら真実……まぁ妹も連れてけって言うんだよ』
『えっ遠藤って妹いたんだ……』
『え、全然お兄ちゃんって感じしない……』
『……喧嘩売ってる?』
妙子と奈々の言葉に、ピキっと浩介は青筋を立てると優花が止めに入って、話をハジメに振る。
『まぁまぁ三人共、ストップ! でも、そう言う事なら連れて行っても良いと思うけどハジメ君は?』
『僕も全然構わないし良いよ』
『まぁ、私も良いけど』
『私は全然有りだよ〜』
『おっ助かる!』
そんな感じで真実ちゃんも参加する事になったのだった。そして当日、海に行く途中で浩介の妹の真実と出会った時に四人が一斉に「妹なのに影が薄くない?!」と驚いた時に浩介がキレたのは置いておこう。
そういうことがあって現在に至る。全員が集まったことだしと発案者の奈々が勢いよく海に向かって走り出した。
「じゃあ! 皆、揃ったし泳ごっ〜!」
「ちょっ奈々!」
「あっ二人共!待って!」
走る奈々に続いて、呆れた表情の妙子と優花も海に向かっていった。その光景を後ろから眺めていたハジメと浩介は苦笑いしていた。
「うわぁー、元気だなアイツ等……」
「だね……」
「まぁ……俺等も行こうぜ。ほら真実?行くぞ」
「うん、そうだね。 真実ちゃんも行こ?」
「……うん」
そして、真実の手を握ってハジメと浩介も海へと向かうのだった。
それからは六人で海を泳いで、ハジメの見た目と合わない身体能力を見て浩介があんぐりと口を開けたり、ビーチバレーで奈々が顔面に砂浜に突っ込むこともあって、笑わなかった真実もクスッと笑いだしたりして楽しんだ。
その後も、恒例行事になりつつある浩介捜しが始まった。
「せっかくの海なのになんでだぁーーーー!!」
何処からか浩介の叫び声が聞こえた。だが、見つかった際時に真実から「浩にぃ、うっさい!」と怒鳴りながら浩介の頭を引っ叩くのだった。
そして海の家で昼食を取った後、事件が起きた。ハジメと浩介が少し離れて近くの店で買い物をして少し海から離れてる時だった。二人は優花の悲鳴が聞こえ急いでけた走り出した。
「ハジメ君、遠藤君!」
「……っ! どうしたの?!」
「二人共、 真実ちゃんが!!」
「なに!?」
優花の話だと僕と遠藤君が離れてる時、女子四人で浅瀬で泳いでた時だった。真実ちゃんの足がつったらしくそのまま四人で砂浜に戻ろうとした瞬間に運悪く大きい波が沖の方へ強く流れたらしく真実ちゃんが波に攫われたらしいのだ。
「どうしよう!ハジメ君……私」
「……っ」
今は、近くに大人も見つからない。海の家には、妙子と奈々が向かったらしいが時間がない。それを考えたハジメはすぐに行動に出た。それを見た優花が驚いて叫ぶように名前を呼ぶ。
「ハジメ君?!」
「南雲?!」
「大丈夫!」
ハジメは、二人の待ったを聞かずに海へと飛び込んだ。
バシャバシャ!と真実は、足がつってるせいか上手く泳げず音を立てながら溺れそうになるのを耐えていた。
「……ゲボッ、助けっ」
呼吸が上手く出来ず、もう体力の限界も来そうだった。
自分が海に行きたいと兄にごねたせいだ。バチが当たったんだと溺れそうになる中、真実は思う。
「(浩にぃ、ごめんね……)」
そして、もう限界になってそのまま海の底へと沈んでいくと思った時だった。誰かに体を支えられる感じがした。
「(アレ……溺れてない?)」
誰かに支えられ真実が溺れてないことに、困惑していると近くで荒い息遣いが聞こえた。その方向を振り返ると
「ハァハァ……なんとか、間に合った」
間に合って良かったと安堵するハジメの姿があった。真実はハジメがいることに驚くがハジメの名を呼んだ。
「ゲホッ、ゲホッ……ハジメお兄ちゃん」
「ふぅ……真実ちゃん大丈夫かい?」
「……うん、ゲホッ……大丈夫」
「じゃあ、浅瀬に戻るから、肩に捕まって」
「……うん」
ハジメは息を整えると真実ちの安全を確認して、大丈夫だと分かると彼女を連れて浅瀬まで泳いでいった。その間、真実は嬉しそうに顔を赤くしたながらハジメの肩に捕まっていたのをハジメは知らない。
浅瀬に戻ると、優花と浩介、そして、奈々と妙子が連れてきたと思われる複数の大人の姿もあった。
「南雲! 真実!」
「びぇぇえええん!二人共〜!」
「二人共っ無事?!」
「ハジメ君! 真実ちゃん!」
「大丈夫かい!君たち!」
四人共、心配して声を上げ、奈々は泣いてすらもあった。大人の人達も焦ったように此方に駆け寄った。
そして、ハジメは助けにきた大人の人に「今回は上手く救助を出来たから良かったが君もまだ子供なんだ! 気をつけなさい! 」と叱られてしまったが、これは独断専行した自分が悪いと思っているため大人達のお叱りをハジメはしっかりと受け止める。
でも、真実を助ける事が出来てハジメは安堵の笑みを浮かべていた。
そして、ハジメ達は夕方になる前に海を出て帰り支度をしていた。早めに着替えが終わったハジメと浩介、真実は女子三人組を待っていると、浩介が苦笑いしながら話し掛けた。
「ふぅ……散々な目にあったがなんとか楽しめたな」
「だねぇー」
そんな話をしていると浩介がハジメの前に立つ。ハジメが困惑するが、浩介は気にせず頭を下げた。
「南雲。真実を助けてくれてありがとう」
「ううん、僕が助けたかっただけだよ」
「それでも──「ハジメさん!」えっ、真実?」
浩介が何か言うのを遮って真実がハジメに話し掛けた。
「真実ちゃんどうしたの?」
「あっあの今日はありがとうございます」
「良いよ、真実ちゃんの方こそ大丈夫?」
ハジメがそう言うと、真実がハジメが近付いたせいなのか少し顔を赤くなっている。
「はいっ……それでハジメさ……「ごめん。ハジメ君、待ったー?」……」
真実が何かを言おうとした時だった。丁度、優花達も着替えを終え此方へと駆け寄った。すると、目の前の光景を見て優花は首を傾げた。
「あれ、なんか話してたの?」
「うん。それで真実ちゃん何か…「だ、大丈夫です」えっ、うん」
真実はそう言って、浩介の近くへと戻っていった。
「よーし、全員揃ったし帰ろう!」
「今さっきまで泣いてたのに、元気ね」
「うっさい!」
そして、全員揃ったのを確認してハジメ達は、電車に乗って駅に付くと解散となった。
ハジメは優花と共に帰路についていた。すると優花が話し掛けてきた。
「海、楽しかったね」
「うん、そうだね」
ハジメも相槌を打って返事をする。すると、優花がハジメのすぐ近くまで顔を寄せると耳元で囁いた。ハジメの心音が早くなる。
「ねぇ、ハジメ君?」
「ど、どうしたの?」
「今日カッコ良かったよ」
「えっ!……あ、ありがと」
「ふふ」
優花にカッコイイと言われ、嬉しくなっていると自分達の家の近くに辿り着いた。そして、優花は家の方向へと駆け出すとハジメの方に振り返って手を振った。
「またね、ハジメ君」
「うん、またね」
ハジメも手を振って、別れを告げると家に戻るのだった。その後も、ハジメ達五人は色々なことをして行った時々、真実ちゃんも遊ぶようになり中学最初の夏休みを満喫したのだった。
そして、ハジメはこの時に思いもしなかっただろうこれから起こってしまうあの悲劇を……。
〜遠藤兄妹の帰り道〜
遠藤兄弟は、二人並んで帰路についていた。
「南雲がいて良かったな〜真実?」
浩介がそう言っていると、真実が迫りながら浩介に話し掛けた。その表情は圧があり、浩介は息を飲む。
「ねぇ……浩にぃ。ハジメさんって彼女いるの?」
「いや、聞いた事ねぇな……「分かった!」うぉっ、いきなり叫ぶなよ」
以外な質問に、困惑する浩介だが普通に答えるとすぐ近くで真実に叫ばれ耳を抑える。そんな浩介を置いて真実は決心したように口を開いた。
「私、頑張る!」
「おっおう?……頑張れ?」
真実の言葉の迫力に圧倒され適当に応援する浩介。
しかし、彼は後に驚くことになる。自分の妹が高校で出会う八重樫雫のようなソウルシスターズ並の勢力をハジメのファンクラブを立ち上げたということを………。
編集しました十月二十一日
雫はハーレムにいる?
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いる
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いらない