ありふれた職業で世界最強if優花   作:白San

40 / 188
二十五話 ライセン迷宮・最後の試練

 

ミレディ・ゴーレムは左腕のフレイル型モーニングスターをハジメ達に向かって射出した。投げつけたのではない。予備動作なくいきなりモーニングスターが猛烈な勢いで飛び出したのだ。

ハジメ達は、近くの浮遊ブロックに跳躍してモーニングスターを躱す。モーニングスターは、ハジメ達がいたブロックを木っ端微塵に破壊しそのまま宙を泳ぐように旋回しつつ、ミレディ・ゴーレムの手元に戻っていく。

 

「やるぞ! ユエ、シア。ミレディを破壊する!」

 

「んっ!」

 

「了解ですぅ!」

 

ハジメの掛け声と共に、七大迷宮が一つ、ライセン大迷宮最後の戦いが始った。

 

大剣を掲げたまま待機状態だったゴーレム騎士達が、ハジメの掛け声を合図にしたかのように一斉に動き出した。通路でそうしたのと同じように、頭をハジメ達に向けて一気に突っ込んでくる。

 

ユエが、くるり身を翻しながらじゃらじゃらぶら下げた水筒の一つを前に突き出し横薙ぎにする。極限まで圧縮された水がウォーターカッターとなってレーザーの如く飛び出しゴーレム騎士達を横断していく。

 

「あはは、やるねぇ~、でも総数五十を超える無限に再生する騎士達と私、果たして同時に捌けるかなぁ~」

 

嫌味ったらしい口調で、ミレディ・ゴーレムが再度、モーニングスターを射出した。シアが大きく跳躍し、上方を移動していた三角錐のブロックに飛び乗る。ハジメは、その場を動かずにドンナーをモーニングスターに向けて連射した。

 

ドパァァンッ!と轟音と共に放たれた銃声は一発。されど放たれた弾丸は六発。早打ちにより解き放たれた閃光は狙い違わず豪速で迫るモーニングスターに直撃する。

 

「チッ……(流石に壊れねぇか……)」

 

流石に大質量の金属球とは言え、レールガンの衝撃を同時に六回も受けて無影響とはいかなかった。その軌道がハジメから大きく逸れる。同時に、上方のブロックに跳躍していたシアがミレディの頭上を取り、飛び降りながらドリュッケンを打ち下ろした。

 

「見え透いてるよぉ~」

 

そんな言葉と共に、ミレディ・ゴーレムは急激な勢いで横へ移動する。横へ〝落ちた〟のだろう。

 

「くぅ、このっ!」

 

目測を狂わされたシアは、歯噛みしながら手元の引き金を引きドリュッケンの打撃面を爆発させる。薬莢が排出されるのを横目に、その反動で軌道を修正。三回転しながら、遠心力もたっぷり乗せた一撃をミレディ・ゴーレムに叩き込んだ。

 

咄嗟に左腕でガードするミレディ・ゴーレム。凄まじい衝突音と共に左腕が大きくひしゃげる。しかし、ミレディ・ゴーレムはそれがどうしたと言わんばかりに、そのまま左腕を横薙ぎにした。

 

「きゃぁああ!!」

 

「シア!」

 

悲鳴を上げながらぶっ飛ぶシア。何とか空中でドリュッケンの引き金を引き爆発力で体勢を整えると、更に反動を利用して近くのブロックに不時着する。

 

「はっ、やるじゃねぇの。おい、ユエ。お前、シアに一体どんな特訓したんだ?」

 

「……ひたすら追い込んだだけ」

 

「……なるほど、しぶとく生き残る術が一番磨いたって感じか」

 

遠目にシアがピョンピョンと浮遊ブロックを飛び移りながら戻ってくるのを確認しつつ内心シアの成長に感心する。そんな、ハジメとユエのブロックに、遂にユエ一人では捌ききれない程のゴーレム騎士達が殺到する。

 

「……騎士がうぜぇ。メツェライを使うか」

 

一体、一体のゴーレム騎士達を意識してたらミレディに集中できないハジメは、〝宝物庫〟からガトリング砲〝メツェライ〟を取り出す。そして、ユエと背中合わせになり、毎分一万二千発の死を撒き散らす化物を解き放った。

 

ドゥルルルルル!!と、六砲身のバレルが回転しながら掃射を開始する。独特な射撃音を響かせながら、真っ直ぐに伸びる数多の閃光は、縦横無尽に空間を舐め尽くし、宙にある敵の尽くをスクラップに変えて底面へと叩き落としていった。

回避または死角からの攻撃のため反対側に回り込んだものは、ユエの水のレーザーにより、尽く両断されていく。

 

瞬く間に四十体以上のゴーレム騎士達が無残な姿を晒しながら空間の底面へと墜落した。時間が経てば、また再構築を終えて戦線に復帰するだろうが、しばらく邪魔が入らなければそれでいい。そう、親玉であるミレディ・ゴーレムを破壊するまで。

 

「ちょっ、なにそれぇ! そんなの見たことも聞いたこともないんですけどぉ!」

 

ミレディ・ゴーレムの驚愕の叫びを聞き流し、ハジメは、メツェライを〝宝物庫〟にしまうと、再びドンナーを抜きながら、少し離れたところにいるシアにも聞こえるように声を張り上げた。

 

「ミレディの核は、心臓と同じ位置だ! あれを破壊するぞ!」

 

「んなっ! 何で、わかったのぉ!」

 

再度、驚愕の声をあげるミレディ。ゴーレムを倒すセオリーである核の位置が判明し、ユエとシアの眼光も鋭くなる。周囲を飛び交うゴーレム騎士も今は十体程度。

三人で波状攻撃をかけて、ミレディの心臓に一撃を入れるのだ。ハジメが、一気に跳躍し周囲の浮遊ブロックを足場にしながらミレディ・ゴーレムに接近を試みる。

 

「クっソ……」

 

今のレールガンの出力だと、ミレディ・ゴーレムの巨体を粉砕して核に攻撃を届かせるのは難しい。ゼロ距離射撃で装甲を破壊しつつ、手榴弾でも突っ込もうとハジメはそう考えて行動しようとしたが、そう現実は甘くはない。

 

ミレディ・ゴーレムの目が一瞬光ったかと思うと、彼女の頭上の浮遊ブロックが猛烈な勢いで宙を移動するハジメへと迫った。

 

「!?」

 

「操れるのが騎士だけとは一言も言ってないよぉ~」

 

「チッ! あのブロックもかっ!」

 

ミレディのニヤつく声音を無視して、ハジメは、ガシュンという音と共に義手のギミックを作動させた。

 

ドゴンッ!!と、腹の底に響くような爆発音を響かせながら義手の甲から正面に向けて衝撃が発生する。正確には、強力な散弾が発射されたのだ。電磁加速は出来ないが、燃焼粉の圧縮率はドンナーの弾丸よりもずっと高い。

それに伴って反動も強烈だ。宙にあるハジメの体は弾かれた様に軌道を変えて、飛来した浮遊ブロックをすんでの所で躱す。そして、何とか目標の浮遊ブロックに足を掛けた。

 

「危っ……(知性が高いぶん、オルクスのヒュドラよりめんどくせぇぞ)」

 

ライセン大渓谷という魔法分解するという地理的性質と神代魔法を行使する神を倒した解放者の一人であるミレディという二つの最悪の組み合わせにハジメは辟易する。

 

当然、ミレディ・ゴーレムは、ハジメの足場を〝落とそう〟とするが、いつの間にか背後から迫っていたシアが、強烈な一撃をミレディ・ゴーレムの頭部に叩き込もうと跳躍する。

そんなミレディ・ゴーレムは、シアの接近に気がついていたのか跳躍中のシアを狙ってゴーレム騎士達を突撃させた。宙にあって無防備なシア。あわや大剣に両断されるかと思われた瞬間……

 

「……させない」

 

これまたいつの間にか移動していたユエが、〝破断〟によりシアを襲おうとしているゴーレム騎士達を細切れにしていく。

 

「流石、ユエさんです!」

 

そんなことを叫びながら、障害がいなくなった宙を進み、シアは極限まで強化した身体能力を以て大上段の一撃を繰り出した。

 

「パワーでゴーレムが負けるわけないよぉ~」

 

ミレディ・ゴーレムは自身の言葉を証明してやるとでも言う様に、振り返りながら燃え盛る右手をシアに目掛けて真っ直ぐに振るった。

 

シアのドリュッケンとミレディ・ゴーレムのヒートナックルが凄まじい轟音を響かせながら衝突する。発生した衝撃波が周囲を浮遊していたブロックのいくつかを放射状に吹き飛ばした。

 

「こぉののの!」

 

「ハハッ、やるね。凄い兎人族では考えられない力だよ。でもね、ミレディさんも負けてられないよー!」

 

突破できないミレディ・ゴーレムの拳に、シアは雄叫びを上げて力を込める。そのシアの並外れたパワーにミレディは称賛と共に更に拳に力を乗せる。

それに、ギリギリ耐えてたシアがミレディの膂力に負けて、振り切られた拳に吹き飛ばされた。

 

「きゃああ!!」

 

悲鳴を上げるシア。飛ばされた方向に浮遊ブロックはない。あわや、このまま墜落するかと思われたが、予想していたようにユエが横合いから飛び出しシアを抱きとめ、一瞬の〝来翔〟で軌道を修正しながら、眼下の浮遊ブロックに着地した。

 

「中々のコンビネーションだねぇ~」

 

「だろ?」

 

「!?」

 

突然の死角から聞こえた声に驚愕し慌てて声のした方向に視線を転じるミレディ・ゴーレム。ハジメは懐に潜り込み、アンカーと甲冑の隙間に足を入れることで体を固定しながら、オルクスから改良を重ねた兵器〝シュラーゲン〟を心臓部に突き付け引き金を引く。直後、シュラーゲンから紅いスパークが迸り電磁加速された銃弾が砲弾の如く放たれる。

 

「い、いつの間ッ!?」

 

「喰らえ」

 

砲撃に近い攻撃を受けて胸部から煙を吹き上げながら弾き飛ばされるミレディ・ゴーレム。ハジメも反動で後方に飛ばされてしまうが、咄嗟にアンカーを飛ばして、近くの浮遊ブロックに取り付けると巻き上げる勢いそのままに空中で反転して飛び乗る。そして、ミレディ・ゴーレムの様子を観察した。

 

そこへ、ユエとシアもハジメの近くの浮遊ブロックに飛び乗ってくる。

 

「……いけた?」

 

「いや、まだだ……浅い」

 

ハジメはであるが、ミレディを仕留めれた感じはなくミレディのいる方向に目を細めていると案の定、煙の中から巨大の影が見える。

 

「いやぁ~大したもんだねぇ、ちょっとヒヤっとしたよぉ。分解作用がなくて、そのアーティファクトが本来の力を発揮していたら危なかったかもねぇ~、うん、この場所に苦労して迷宮作ったミレディちゃん天才!!」

 

勘が当たり、胸部の装甲を破壊されたままのミレディ・ゴーレムが、何事もなかったように近くの浮遊ブロックを手元に移動させながら、感心したような声音で三人に話しかける中、やはりといった表情のハジメはミレディに問う。

 

「やはり、アザンチウム製の装甲だな?」

 

アザンチウム鉱石。ハジメの装備の幾つかにも使われている世界最高硬度を誇る鉱石。薄くコーティングする程度でもドンナーの最大威力を耐え凌ぐほどの硬度。故に、シュラーゲンの強力な一撃でさえもバレルが傷一つつかないほどだ。

 

「面倒な……」

 

そんなアザンチウム鉱石の詳細を知るからこそミレディの装甲を破るには相当な時間が掛かると理解してるハジメは眉間にシワを寄せながら悪態を吐く。

 

「おや? 知っていたんだねぇ~、ってそりゃそうか。オーくんの迷宮の攻略者だものねぇ、〝錬成師〟で生成魔法の使い手が知らないわけないよねぇ~、さぁさぁ、程よく絶望したところで、第二ラウンド行ってみようかぁ!」

 

得意気にミレディは、砕いた浮遊ブロックから素材を奪い、表面装甲を再構成するとモーニングスターを射出しながら自らも猛然と突撃を開始した。

 

「ど、どうするんですか!? ハジメさん!」

 

「大丈夫、まだ手はある。何とかしてヤツの動きを封じるぞ!」

 

「……ん、了解」

 

「させないよぉ~」

 

ミレディ・ゴーレムの気の抜けた声と共に足場にしていた浮遊ブロックが高速で回転する。いきなり、足場を回転させられバランスを崩すハジメ達。そこへモーニングスターが絶大な威力を以て激突した。

 

ハジメ達は、木っ端微塵に砕かれた足場から放り出される。ハジメは、ジャラジャラと音を立てながら通り過ぎる鎖にしがみついた。ユエは砕かれた浮遊ブロックの破片を足場に〝来翔〟を使って、シアはドリュッケンの爆発の反動を利用して何とか眼下の浮遊ブロックに不時着する。

 

そこへ狙いすました様にミレディ・ゴーレムがフレイムナックルを突き出して突っ込んだ。

 

「くぅう!!」

 

「んっ!!」

 

直撃は避けたものの強烈な衝撃に、ユエとシアの口から苦悶の呻き声が漏れる。それでも、すれ違い様にユエは〝破断〟をミレディ・ゴーレムの腕を狙って発動し、シアはドリュッケンのギミックの一つである杭を打撃面から突出させて、それを鎧に突き立て取り付いた。

 

一方、ミレディ・ゴーレムの肩口に取り付いたシアは、そのまま左の肩から頭部目掛けてドリュッケンをフルスイングした。が、ミレディ・ゴーレムが急激に〝落ちた〟ことによりバランスを崩され宙に放り出された。

 

「きゃあ!」

 

「シアっ」

 

悲鳴を上げるシア。そこへ、モーニングスターの鎖にしがみついていたハジメが、振るわれる鎖の遠心力を利用してシアのもとへ飛び出し空中でキャッチする。

 

「ハジメさん!」

 

「大丈夫か?」

 

「はいっ。大丈夫ですぅ」

 

ミレディは迎撃で、ヒートナックルを放とうと拳をグッと後ろに引き絞る。と、その瞬間、手元に戻したモーニングスターに繋がっている鎖がいきなり大爆発を起こした。

 

「わわわっ、なにっ!?」

 

「っし! かかった!」

 

驚きの声を上げるミレディ。爆発の原因は、ハジメが鎖に捕まっている間に仕掛けた大量の手榴弾である。凄まじい爆発力により鎖が半ばから弾け飛び、巻きつけていた左腕が大きく損傷する。衝撃により、ミレディ・ゴーレムの体勢も崩れてしまう。

そこへ、ハジメを踏み台にしてミレディに急接近したドリュッケンを振りかぶったシアが到達する。

 

「りゃぁあああ!!」

 

気合のこもった雄叫びと共に、手元の引き金が引かれ内蔵されたショットシェルが激発する。衝撃により一気に加速したドリュッケンが空気すら叩き潰す勢いでミレディ・ゴーレムに迫った。

ミレディ・ゴーレムは反射的に損傷の激しい左腕を掲げる。直後、ドリュッケンの一撃が左腕に直撃した。ドリュッケンは、脆くなった左腕を打ち砕き肩口から先を容赦なく粉砕した。

 

ドリュッケンを振り切り勢いそのままに宙を泳ぐシア。ミレディ・ゴーレムは、せめて、奪われた左腕の仕返しに一撃を入れてやると、死に体のシアにヒートナックルを放とうとする。

しかし、ミレディがシアに意識を集中した瞬間、下方から水のレーザーが迸り、先ほど入れられた切れ込みに寸分違わず命中した。そして、その傷口を更に抉り切り裂いて、遂にミレディ・ゴーレムの右腕を切断した。

 

「……してやったり」

 

そう言ってほくそ笑んだのは、もちろんユエである。

 

「っ、このぉ! 調子に乗ってぇ!」

 

ミレディが、勢いがついてる三人にイラついた様子で声を張り上げた。その間に、上方の浮遊ブロックにアンカーを打ち込んだハジメが振り子の要領で宙を移動し、落下中のシアをキャッチする。

 

「よくやったシア」

 

「ありがとうございますぅ」

 

近場の浮遊ブロックに着地した瞬間、両腕を失ったミレディが何故か、周囲の浮遊ブロックを呼び寄せて両腕を再構成することもなく、天井を見つめたまま目を強く光らせる。

 

「ん?……っ!」

 

猛烈に嫌な予感がした瞬間、それを裏付けるようにシアの表情が青ざめている。

 

「ハジメさん、ユエさん! 避けてぇ! 降ってきます!」

 

「降る…………っ! そうかアレはっ」

 

ミレディがやろうとする事を察しがついたハジメは急いでシアを抱き寄せでて〝空力〟を使って空中を高速で移動する。

 

その直後、それは起こった。

 

空間全体が鳴動する。低い地鳴りのような音が響き、天井からパラパラと破片が落ちくる。いや、破片だけではない。天井そのものが落下しようとしているのだ。

 

「っ!? こいつぁ!」

 

「ふふふ、さっきのお返しだよぉ。この肉体(ゴーレム体)では騎士以外は同時に複数を操作することは出来ないけど、ただ一斉に〝落とす〟だけなら数百単位でいけるからねぇ~、見事凌いで見せてねぇ~」

 

のんきなミレディの言葉に苛立つが、そんな事に気を取られている余裕はない。この空間の壁には幾つものブロックが敷き詰められているのだが、天井に敷き詰められた数多のブロックが全て落下しようとしているのだ。一つ一つのブロックが、軽く十トン以上ありそうな巨石である。

 

「……ホントになんでもアリだなっ!」

 

一つでも、当たったら致命傷になり兼ねない巨石が豪雨の如く降ってくるのだ。ハジメの額に冷たい汗が流れる。

 

「ハ、ハジメさん!」

 

「シア、捕まってろ! ユエと合流する!」

 

シアを抱えて、アンカーによる振り子を利用しつつ、ユエのいる方向へ飛び降りる。ユエもこちらに合流しようと浮遊ブロックを足場に跳躍して来た。ミレディ・ゴーレムは、その間もずっと天井を見つめたままだった。

おそらく、彼女の言葉通り、ゴーレム騎士以外の操作は一つ二つが限度なのだろう。落とすだけとは言え、数百単位の巨石を天井から外すのには集中がいるようだ。

 

何とか、ハジメ達が合流するのと天から巨石群が降り注ぐのは同時だった。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!! ゴバッ!!何かが分割するような音と共に天井からブロックが外れ、地響きがなり止む代わりに轟音を立てながら自由落下する巨石群。

 

「えげつねぇ……」

 

しかもご丁寧にと、ある程度軌道を調整することが出来るらしくハジメ達のいる場所へ特に密集して落としてぐくる。ミレディ・ゴーレムも心中するつもりはないだろうから、彼女のもとへ行けば安全かと視線を巡らせるが、ちょうど猛スピードで壁際に退避して行くところだった。今から追ったのでは間に合わない。

 

「ユエ! シア! 掴まってろ! 絶対に離すなよ!」

 

「んっ」

 

「はいですぅ!」

 

ハジメは、ユエとシアにそう言うやいなや、〝宝物庫〟から再びオルカンを取り出す。そして落ちてくる巨石に対して十二発のロケット弾を全弾連射した。火花の尾を引きながら頭上の死を吹き飛ばさんと突撃したロケット弾は次々と大爆発を起こすと巨石を粉砕していく。

しかし、ハジメの迎撃もそこまでだった。遂に、豪速を以て落下してきた巨石群がハジメ達に到達する。

ハジメは、左右のユエとシアがきっちり自分に掴まっているのを確認すると固有魔法を発動した。技能〝瞬光〟だ。世界が一気に色あせ、落ちくる死の欠片の一つ一つを明確に認識できるようになる。

 

しかし、脳を神速化させても、肉体が着いていかない為にハジメは続け様に発動。

 

「チィッ、〝限界突破ァ〟!」

 

固有魔法〝限界突破〟を発動する。ハジメの体を一瞬、紅い光が包み込んでいく。これで、肉体も限定的な強化で落ちる巨石郡に対応しつつ、ユエとシアをしがみつかせながらフラフラと揺れるような動きで、降り注ぐ死を紙一重で回避して砕かれ激しく揺れる足場の上で神業的なバランスを取りながら、時には落下してくる破片自体も足場にしていく。

 

「……ぐっ」

 

流石に魔力と魔法が制限される中で無理をしてるせいかハジメの眼球には毛細血管が浮かび上がり、僅かに鼻血が流れ出してきている。

 

「でもっ、やらないと、いけないよなぁ!」

 

しかし、そんな無理も分かっていながらもハジメは更に強化系の固有魔法を発動させる。そんなハジメ達の様子を壁際で観察していたミレディの目には、一瞬で巨石群に飲み込まれたように見えた。

 

「う~ん、やっぱり、無理だったかなぁ~。でも、これくらいは何とかできないと、あのクソ野郎共には勝てないしねぇ~」

 

少し残念そうにミレディは、そう呟きながら、巨石郡からハジメ達の死体を探す。と、その時……

 

「あぁ……そうだよな。こんなとこで死んじまったらそのクソ野郎共に勝てねぇよな」

 

「えっ?」

 

そこには、荒い息を吐き、目や鼻から血を流してはいるもの紅の雷を纏った五体満足のハジメが浮遊ブロックの上に立ってミレディを睥睨していた。

 

「ど、どうやって……」

 

ハジメが、目の前にいることに思わず疑問の声を上げるミレディ。そんな彼女に、ハジメは、ニィと口の端を吊り上げて笑う。

 

「答えてやってもいいが……俺ばかりを見ていていいのか?」

 

「えっ?」

 

先程と同じ口調で疑問の声を上げるミレディ。だが、その疑問は、直後、魔法の直撃という形で解消された。

 

「〝破断〟!」

 

ユエの凛とした詠唱が響き渡り、幾筋もの水のレーザーがミレディ・ゴーレムの背後から背中や足、頭部、肩口に殺到する。着弾したウォーターカッターは各部位の表面装甲を切り裂いていく。

 

「っ!? でも、こんなの何度やっても一緒だよぉ~、両腕再構成するついでに直しちゃうしぃ~」

 

「いや、そんな暇は与えねぇよ」

 

振り向きもせず余裕の雰囲気でユエの魔法を受けきったミレディ・ゴーレムに、ハジメがアンカーを打ち込みながら一気に接近する。片手にはシュラーゲンを持っている。

 

「あはは、またそれ? それじゃあ、私のアザンチウム製の装甲は砕けないよぉ~」

 

「普通ならな……だが、これは一味違うぜ?」

 

ハジメは〝限界突破〟をした直後、更に〝紅狼〟を発動させ、更に敏捷の倍加により巨石郡を回避、更に〝紅狼〟の能力による雷属性の威力増加……故にハジメが放ったシュラーゲンの威力は……

 

引き金を引き、電磁加速された銃弾が更に加速して紅雷が纏い獣のような顎門となってミレディに直撃する。

 

「なぁっ?!」

 

一瞬にして、轟音と共にミレディ・ゴーレムを吹き飛ばし、そのまま両腕を木っ端微塵に破壊した。

 

「こ、こんなことしても結局は……」

 

「ユエ!」

 

ミレディの言葉を無視して、ハジメがユエの名を呼ぶ。すると、跳躍してきたユエが更に魔法を発動した。

 

「凍って! 〝凍柩〟!」

 

「なっ!? 何で上級魔法が!?」

 

驚愕の声を上げるミレディ。ユエが上級魔法である氷系統の魔法を使えたのは単純な話だ。〝破断〟と同じく、元となる水を用意して消費魔力量を減らしただけである。あらかじめ、ミレディ・ゴーレムを叩きつけるブロックを決めておき水を撒いておく。そして、隙をついてミレディ・ゴーレム自身の背面にも水を撒いておく。最初の〝破断〟はそれが目的だった。

 

それでも、莫大な魔力が消費され、ユエが所持している魔晶石の全てから魔力のストックを取り出す羽目になってしまい、ユエは肩で息をしながら近場の浮遊ブロックに退避していく。

 

「よくやった、ユエ!」

 

体を固定されたミレディ・ゴーレムの胸部に立ち、ハジメは〝宝物庫〟から切り札を取り出す。虚空に現れたそれは全長二メートル半程の縦長の大筒だった。外部には幾つものゴツゴツした機械が取り付けられており、中には直径二十センチはある漆黒の杭が装填されている。下方は四本の頑丈そうなアームがつけられており、中程に空いている機構にハジメが義手をはめ込むと連動して動き出した。

ハジメはそのまま、直下の身動きが取れないミレディ・ゴーレムをアームで挟み込み、更に筒の外部に取り付けられたアンカーを射出した。合計六本のアームは周囲の地面に深々と突き刺さると大筒をしっかりと固定する。同時に残りの魔力を注ぎ込んでいく。すると、大筒が紅いスパークを放ち、中に装填されている漆黒の杭が猛烈と回転を始める。

 

キィイイイイイ!!!と、音速並の回転する杭をミレディに向ける。

 

「存分に喰らいやがれ」

 

その言葉と共に、吸血鬼に白木の杭を打ち込むがごとく、ミレディ・ゴーレムの核に漆黒の杭が打ち放たれた。

 

ゴォガガガン!!!と、凄まじい衝撃音と共にパイルバンカーが作動し、漆黒の杭がミレディ・ゴーレムの絶対防壁に突き立つ。胸部のアザンチウム装甲は、一瞬でヒビが入り、杭はその先端を容赦なく埋めていく。

あまりの衝撃に、ミレディ・ゴーレムの巨体が浮遊ブロックを放射状にヒビ割りながら沈み込んだ。浮遊ブロック自体も一気に高度を下げる。ミレディ・ゴーレムは、高速回転による摩擦により胸部から白煙を吹き上げていた。

 

だがしかし、これでもかという一撃でさえもミレディ・ゴーレムの目から光は消えておらず、まだ健在だ。

 

「ハ、ハハ。どうやら未だ威力が足りなかったようだねぇ。だけど、まぁ大したものだよぉ?四分の三くらいは貫けたんじゃないかなぁ?」

 

「そんなん元から知ってるからな……シアっ!」

 

ハジメは、〝宝物庫〟に杭以外のパイルバンカーをしまうと、ミレディ・ゴーレムの胸部から勢いよく飛び退いた。そして、代わりに現れたのは、ウサミミをなびかせ、ドリュッケンを大上段に構えたまま、遥か上空から自由落下に任せて舞い降りるシアだった。

 

「ッ!?」

 

シアが何をしようとしているのか察したのだろう。今度こそ、焦ったようにその場から退避しようとするミレディ・ゴーレム。自分が固定されている浮遊ブロックを移動させようとするが猛スピードで落下してくるシアに間に合わないと悟り……諦めたように動きを止めた。

 

シアは、そのままショットシェルを激発させ、その衝撃も利用して渾身の一撃を杭に打ち下ろした。

 

「ドリャアアアですぅっ!」

 

ドゴォオオ!!と、何かを打ち砕く音が響くと同時に生まれた衝撃で遂に漆黒の杭がアザンチウム製の絶対防御を貫き、ミレディ・ゴーレムの核に到達する。先端が僅かにめり込み、ビシッという音を響かせながら核に亀裂が入った。

 

地面への激突の瞬間、シアはドリュッケンを起点に倒立すると、くるりと宙返りをする。そして、身体強化の全てを脚力に注ぎ込み、遠心力をたっぷりと乗せた蹴りをダメ押しとばかりに杭に叩き込んだ。

 

シアの蹴りを受けて更にめり込んだ杭は、核の亀裂を押し広げ……遂に完全に粉砕した。

 

この瞬間、七大迷宮が一つ、ライセン大迷宮の最後の試練が確かに攻略された瞬間だった……。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。