今でも思い出す。
あの出来事は俺にとっては忘れられない記憶だろう。彼女のあの笑顔を守りたかった。
彼女を守りたかった。
──だから、俺は
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夏休みも明け、日常生活に戻ったハジメ達。
風が涼しく秋を感じるようになってきた日、優花は訳あってハジメ達に「先に行く」とだけ告げて一人で登校していた。普段なら、そんな行動派取らない優花なのだが今回は理由があった。
その理由は昨日のことだった。下校する時に下駄箱から靴を取り出そうとした際に、一通の手紙が下駄箱の中に入っていたからだ。
ー昨日ー
優花は足早で教室から不満をタラタラと流しながら下駄箱へと向かっていた。
「もうっ、何で今日が日直なの!今日はハジメ君がお手伝いしに来る日なのに〜!」
優花は急いでいた。それは今日、ハジメが家の〝ウィステリア〟のお手伝いにしてくれる日だった。優花はいつもこの日を楽しみにしており、今日の日直が自分だったことを恨んだ。
下駄箱に辿り着くと、急いで下駄箱から靴を取り出そうとした時だった。下駄箱の中に白い紙が入っており、優花は首を傾げながら紙を取り出す。
「……何これ手紙?」
よく見ると、それは一通の手紙だった。しかし、優花は手紙を見る気も無く適当に鞄にしまうと、急いで家に帰ったのだった。
ーその日の夜ー
なんとか、間に合ってハジメと共にお手伝いしていたことを優花は笑みを浮かべながら思い出ししていた。
カラァン、カラァンと、勢いよく扉を開けたせいか、大きくなるベルを気にせず優花は厨房の奥へと中入った。
『お父さん、お母さん、ハジメ君。ゴメン、遅れた!』
優花が帰ってきた時はまだ、お客さんの出入りは少なく大丈夫そうだったが、優花達は申し訳なく謝罪をするが博之達は既にハジメから事情を聞いていたらしく、優しく笑みを向け優花を宥めた。
『大丈夫だよ、優花は日直だったんだろ? 心配しなくてもハジメ君が色々と準備を手伝ってくれたから大丈夫さ。ハジメ君はキツくなかったかい?』
『ハハ、大丈夫ですよ博之さん。僕も鍛えてますし、何年もこの手伝いをしているんですよ』
ハジメはそう言って照れているのか苦笑いを浮かべながら片手で頭をポリポリと掻いていると、博之は納得したように「そうだったね」と笑った。
『ハハっ……それもそうか。ほら、もうすぐ人の出入りも激しくなると思うから優花も早く着替えておいで』
『うん、ハジメ君ありがとね』
『どういたしまして』
優花はハジメにお礼を言うとすぐ更衣室に行って着替えて店内に戻った。
そして、手伝いしながらハジメと二人で一緒に作業している時には……
『ふふ、熱いわね〜』
『ちょっ、お母さん!』
『なーに〜ふふ』
カウンターを拭いていた母の優里に
その後も……
『たっのもぉー!』
『奈々、騒がしいでしょ』
『よぉ、来たぞぉ〜。真実も一緒だけどな』
『私は浩にぃのオマケじゃない…… あっ、優花ねぇ!ハジメにぃ!』
奈々や妙子、遠藤と妹の真実が来てくれて、楽しい一日だったと思う。因みに奈々は妙子に制裁を喰らっていた。
優花はそう思い出しながら優花は笑みを浮かべながらベッドで寝転がっていた。
「ふふ、こんな日が続けば良いなぁ〜」
そう呟いていると、明日の学校の準備をしてなかったことに気が付いた。
「あっ、明日の学校の準備しないと」
優花は明日の準備をする為、急いで鞄を開けると中に白い紙切れが入っていた。
「ん? これ……手紙? あっ」
それは手紙で、優花は下校時のことを思い出した。
「忘れてた………どんな内容だろ」
忘れてたことに書いた人に申し訳ないと思いながら、優花は手紙だし封を破って、手紙の内容を読み始めた。
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園部 優花さんへ
園部優花さん、明日の朝に1ー2の教室に来てください。
貴女に伝えたいことがあります。待ってます。
R.Tより
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手紙をも読み終えた優花は、口元を片手で隠しながら少し驚いていた。
「R.T ? てか、これってもしかして……」
それは、簡単に言えば「ラブレター」だった。
「ラブレターよね。これ……でも、R.Tって誰? イニシャルなのはわかるけどなぁ……」
ハジメはこんな回りくどいことをしないし、それにイニシャルN.Hだったら良いのにと優花は思った。
「まぁ、誰であっても……」
優花は手紙を見ながら苦笑いを零す。
例え告白の相手が誰だったとしてもで優花は断るだろう。だって彼女は彼のことしか……
「でも、行かないのは流石に酷いよね」
しかし明日の朝に教室に来なかったらラブレターを書いてくれた相手にも悪いと思い、何か嫌なことがあったら嫌と思って優花は向かうこととを決めたのだった。
そんな昨日のことを思い出しながら、生徒が居ない早い時間に学校に着いた優花は、手紙に書かれていた1ー2の教室に向かった。
ガラガラと、教卓の反対側の扉から、そぉーっと開けながら優花は誰かいないかを確かめる。
「だ、誰かいますか……?」
そうしてると、教卓の方からギリギリ教室全体に聞こえる程度の声が優花の耳に入った。
「待ってたよ園部さん」
「えっ?」
声が聞こえ優花は顔を向けると、そこには一番前の席の机に座るクラスで人気者な男子で文武両道、イケメンで高身長の龍堂拓也の姿があった。
「え……龍堂君?」
優花は彼の姿に驚くも、それ以上に手紙の相手が拓也の可能性があるということに優花は固まってしまう。そうしいると拓也は腰がけていた机から降りると、優花の元へ歩み寄りながら爽やかな笑顔で優花に話しかける。
「園部さん、来てくれたんだ。俺、嬉しいよ」
「アハハ……もしかしてだけど、手紙の相手って、龍堂君だったんだね……」
優花の問いかけに素直に拓也は認めて頷いた。
「そうだよ。俺さ……園部さんを一目見た時好きになってしまったんだよ。所謂一目惚れって奴」
拓也の話を聞きながら優花は、確かに手紙のイニシャルのR.Tと拓也の龍堂拓也であることに気付いた。
「ふっ……園部さん」
頭の中で答え合わせをして呆けていると、拓也君はキザな笑みを浮かべながら急に優花の手を掴みだした。
「えっ、ちょっ……あのっ……!」
突然、手を掴まれたので優花は咄嗟に彼の手を振り払って、すぐさま彼との距離をとって彼を睨む。
すると、彼も自分に非があると分かったか軽く謝った。
「驚いちゃったかな? ゴメンね。つい君が可愛いくて……でも、これから一緒になるんだし」
「はぁ?……一緒?」
唐突な意味不明な発言に、優花は訳が分からなくなる。と同時に背筋がゾッとし、悪寒が走る。
「だってそうだろ? 俺の彼女になるんだし」
「はっ? えっ?」
優花は拓也君の言葉に少し恐怖を覚えながら、更に距離をとろうとするのだが、拓也は再び優花へと近付き彼女の手を再び掴む。彼の顔を見ると優花の目が合った瞬間、嬉しそうに笑って口を開いた。
「園部優花さん、君のことが好きだ。俺と付き合ってくれいないか? 俺は絶対に君を幸せにできる」
「……っ」
拓也に告白されたが優花はずっと前から決めていた。例え告白してきた人がどんな人でも、自分は彼と一緒にいたい。
だから……
「ごめんなさい!」
優花は彼と一緒にいたい。だから、頭を下げて断った。そして、顔を上げて彼の顔を見ると、その表情は自分が言ったことに呆気に取られている様子だった。
予定と違っていたのか拓也は戸惑いを隠せず少し慌てたような口調で話しかける。
「えっ…こ、断る?俺の告白を……な、何で?」
断られることがない。と思っていたのだろう。少し困惑気味になって噛みまっくている拓也を見て優花は彼にちゃんと顔を合わせて繰り返しながら自分の気持ちを告げた。
「ごめんなさい。私……心に決めた人がいるので」
「そ…そうかい、わかったよ」
その言葉に拓也は納得してくれたのか、少し覚束無い歩きで教室を出て行くのだった。
「ホッ……」
彼が教室から出ていくのを見て、急に脱力感に襲われへたり込む優花。だが、それと同時に安堵した。
しかし……
「ギリッ……」
優花は気付かなかっただろう。拓也が教室を出る際に優花を睨んでいたことを……。
その後は、いつも通りにハジメ達と過ごしていた。また、拓也から何かあるかと不安に感じていたが何もなかったので安心した。
だが、次の日にそれは起きた。優花はハジメ達と一緒に登校して、教室に入り自分の席に向かった。
そして……
「えっ……」
自分の机の有様を見て、一瞬、何が分からず止まってしまま絶句する。
「な…何これ……」
優花の目に入ったのは、机に『死ね』と大きく書かれていたのだ。急いで文字を消そうと筆箱から消しゴムを取り出す。
「け、消さないと……っ」
幸い文字は消しゴムで擦ることで消える感じだったので急いで消していると優花は嫌な視線を感じて、その方向へと視線を向けた。そして、優花は誰が犯人かを察してしまい声が漏れる。
「ぁ……」
其処には、拓也とつるむことが多いクラスカーストの高い男女が優花の方を見ながら、クスクスと下卑た笑みを浮かべる姿がそこにあった。
そして、優花にとって、忘れ去ることはないだろう出来事。そして、優花達のとっての幸せだった日常の崩壊の始まりを……。
<編集しました。十月二十二日
雫はハーレムにいる?
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いる
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いらない