上空から落とされてしまったが乗っていた魔物の死体がクッションとなり異世界で頑丈な肉体を得た少年は数分ほど気を失っていただけで済んだ。
「………っ」
そして、痛む体を気にしながら起き上がると少年は自分の目に入る光景に目を見開いて声を上げた。
「!……こ、これは!?」
一瞬、夢かと思ったが遠くから聞こえる魔物の断末魔や痛む体で現実だと突きつけられ自覚する。
ウルの町を襲う数万規模の魔物の大群の遥か後方で、即席の塹壕を堀り、出来る限りの結界を張って必死に身を縮めている少年──清水幸利は、目の前の光景に体を震わせながらこの展開に歓喜して言葉を失っていた。
願っていた光景、自分の手で人が死なない現実に、内心で言葉に表現できない喜びと安堵を感じていた。
あの魔物の大群をけし掛けたのは紛れもなく、行方不明になっていた愛子の生徒──清水幸利である。とある男に偶然に相対した末に、アーティファクトによって操られ、ウルの町を愛子達ごと壊滅させられる事になってしまった。
清水が闇魔法で山脈で強制的に魔物を操り、男がとあるアーティファクトを使って【遺跡】を強制的に〝魔力暴走〟を引き起こして出来上がった〝
そんな魔物群勢と戦っているのは何処かの熟練や実力のある冒険者達なのだろうか。
なら、町や人の被害は軽く済むだろう。
だから、魔物を殲滅してくれた後は………
「──殺して貰おう」
清水は今も自分の過ちで呼びつけてしまった魔物の殲滅をしてる冒険者達にそう願ったのだった。
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魔物蔓延る平野に無数の光の槍が飛来する。
ドゥルルルルルルルルル!!!
ドゥルルルルルルルルル!!!
そんな独特の音を戦場に響かせながら、無数の閃光が殺意をたっぷりと乗せて空を疾駆する。瞬く暇もなく目標へと到達した光の槍は、大地を鳴動させ雄叫びを上げながら突進する魔物達の種族、強さに関係なく、僅かな抵抗も許さずに一瞬で唯の肉塊に変えた。毎分一万二千発の死が無慈悲な〝壁〟となって迫り、一発で一体など生温いと云わんばかりに目標を貫通し、背後の数十匹をまとめて貫いていく。
穿たれた魔物達は、慣性の法則も無視してその場で肉体の大半を爆散させながら崩れ落ちた。咄嗟に左右に散開して死の射線から逃れようとする魔物達だったが、撃ち手のハジメが当然逃がす訳もなく、二門のメツェライを扇状になぎ払う。解き放たれた〝弾幕〟は、まるでそこに難攻不落の城壁でもあるかのように魔物達を一切寄せ付けず、瞬く間に屍山血河を築き上げた。
解き放たれた〝弾幕〟はまるで難攻不落の城壁でもあるかのように魔物達を一切寄せ付けず、瞬く間に屍山血河を築き上げた。
更にハジメの左手側からは、オルカンを担いだシアが「好きに飛んでいけですぅ〜!」とばかりに引き金を引きまくり、パシューという気の抜ける音と共に連続してロケットランチャーをぶっ放していた。
その間抜けな音とは裏腹に、火花の尾を引いて大群のど真ん中に突き刺さった弾頭は、大爆発を引き起こし周囲十メートルの魔物達をまとめて吹き飛ばした。
爆心地の周辺の魔物は木っ端微塵となり、離れていた魔物も多少の被害を受け後に続く魔物によって踏み潰され息絶えた。
「おかわりですよぉ!!」
ロケットランチャー全弾を撃ち尽くしてもシアは、ハジメから配備され傍らに積み上げられた替えの弾頭を入れ替えて連射して魔物達を爆散させていく。
シアの左に陣取るのはティオだ。
その突き出された両手の先からは周囲の空気すら焦がしながら黒い極光が放たれる。あの竜化状態で放たれたブレスだ。どうやら人間状態でも放てるらしい。
ハジメをしても全力の防御を強いた殲滅の黒の炎は、射線上の一切の刹那のうちに消滅させ大群の後方──主達の元へ届くもミツマタノヅチが風と水のブレスを放ちティオのブレスを止める。
「ほぅ、蛇ていどが妾のブレスを止めるか……片腹痛い!」
ノヅチに自身のブレスが拮抗してることにティオはニヒルな笑みを浮かべ更にブレスに注ぐ魔力を上乗せする。
「蛇よ、これが竜のブレスよぉ!」
魔力の上乗せで放つ極光が肥大化し先程までの拮抗状態が崩れティオのブレスがノヅチを飲み込み、一つの首を消し飛ばした。
『『シャァァァァア!!』』
首を失った痛みで叫ぶノヅチを無視して今度はブレスを水平に薙ぎ払うティオ。それに合わせて真横へ移動する黒い砲撃は触れるもの達の一切を残さず消滅させる。
砲撃が過ぎたあとは抉れた大地以外なにも残っていない。代わりにその一撃で相当消耗したのか肩で息をして体をふらつかせるティオ。しかし、ネックレスをギュッと握ると埋め込まれた一つの魔晶石の輝きが失うと同時にティオは立ち直る。
「ふふ、第二陣いこうかのぅ!」
多少、余裕できたティオはふふっと、笑みを浮かべるのだった。
ハジメの右を陣取るユエも多岐に渡る魔法を行使して魔物の殲滅していた。
「〝緋槍・百連〟、〝氷槍・百連〟」
それぞれ百の数を誇る炎の槍と氷の槍が魔物達の上空に二色の幻想的な雨が降り注ぎ、魔物を突き刺さり、突き刺さった箇所から肉体を燃やし尽くし、身体機能を停止するほどの勢いで凍らせる。
「──〝大嵐〟、〝石鋭槍〟」
大きな竜巻を引き起こし、数百の魔物を上空に吹き飛ばすと地面から形成された石の槍が落下する魔物を突き刺した。
「──〝大海〟、〝雷槌〟」
空気中に生成された大量の水が津波の如く押し寄せ、魔物達を飲み込みんていくと上空から雷が落ちる。そして、水は電気をよく通すため、雷の電流が波紋のように水面で広がり、呑み込まれた魔物達に約一億ボルトの電撃を喰らい感電死したり、肉体が焼き焦げ死に絶える。
まさに、魔法の大パレード。全属性の魔法を扱い、熟練なユエだからこそ可能な魔法による波状攻撃。
たったの四人なのに、六万もいた多くいた魔物の数が約二万弱まで減らしていた。だが、限界も訪れる。
ハジメは横目でガトリング砲の薬室内の玉が尽きかけているのを確認すると、左にいるシアのところもロケットランチャーの弾頭が残り僅かしかないことを見る。
「(ちっ、そろそろ弾切れか)……ユエ、ティオ!デカイのを頼む!」
「……ん!」
「わかったのじゃ!」
ハジメは魔法で敵を殲滅していたユエとティオに広域範囲がデカイ魔法を放つことを頼み、二人はそれを了承した。
ティオはハジメから受け取った魔晶石のネックレスにストックされた最後の魔力を取り出すと最後にドデカイ一撃を放つ。
「吹き荒べ天なる嵐 燃え盛れ紅蓮の炎 果てしなき我が炎嵐は尽くを焼き尽くす 放ち給え大嵐の炎──〝
激しい魔力消費、敢えて詠唱し集中力を高める。そうして解き放たれた魔法は紅蓮の如き炎纏うの強大な竜巻だった。渦巻く炎が魔物の群へと爆進し、周囲の魔物達をまとめて巻き上げた。宙へと放り出され足掻くすべを持たない魔物達は、そのまま火炎に自ら飛び込むように巻き込まれていく。
そして、紅蓮の竜巻から放り出された時にはただの灰燼に変わり果て灰色の雪のように舞い散るのだった。そのまま全てを灰燼と帰す竜巻は、主であるタイラント・タラテクトすらも飲み込み鋼鉄の糸すら吐き出すこともなく全てを焼き尽くした。
【サールス遺跡】の主──タイラント・タラテクト討伐。
ティオが詠唱していた頃、此方は瞑目したまま静かに佇むユエ。右側の攻撃が薄いと悟ったのか配下の魔物達を引き連れ戦場に飛び出した主──オルトロスが大地を踏み砕いて駆ける。それに続いてハジメやシアからの攻撃から逃れるように集まり、右翼から攻め込もうと流れ出す。既に進軍にすら影響が出そうなほど密集して突進して来る魔物達。そして、遂に彼我の距離が五百メートルを切ったその瞬間、ユエは、スっと目を開きおもむろに右手を掲げた。
そして、一言、囁くように、されど世界へ宣言するように力強く魔法名を唱えた。
「──〝壊劫〟」
それは神代魔法を発動させるトリガーだ。ミレディ・ライセンにより授けられた世界の法則の一つに干渉する魔法〝重力操作〟。魔法に関しては天性の才能を持つ吸血姫を以てして、魔力の練り上げとイメージの固定に長い〝タメ〟を必要とし即時発動は未だ困難な魔法。
ユエの詠唱と同時にオルトロスを先頭にして迫る魔物達の頭上に、対黒竜戦で見たのと同じ渦巻く闇色の球体が出現する。
しかし、以前と違うのは、その球体が形を変化させたことだ。薄く薄く引き伸ばされていく球体は魔物達の頭上で四方五百メートルの正四角形を形作る。そして、太陽の光を遮る闇色の天井は、一瞬の間のあと眼下の魔物達目掛けて一気に落下した。
次の瞬間、起こったことを端的に説明するなら〝大地ごと魔物が消滅した〟というものになるのだろう。事実、ハジメ達の蹂躙劇を唖然として見ていた【ウルの町】の人々には、そうとしか見えなかった。
彼等にそう見えたタネは実に簡単なことである。闇色の天井が魔物の群れに落下し、そのまま魔物ごと大地を陥没させて五百メートル四方、深さ十メートルのクレーターを作り上げた。
密集して突進していたオルトロス含めた魔物達は、何が起きたのか理解する暇もなく体の全てを均等に押し潰され、地の底で大地のシミとなった。その様相は、まるで魔物の死体集積場のようである。ユエの放った一撃で、一度に二千体近い魔物が一瞬で圧殺され、運悪く、術の境界線上にいた魔物達は体を寸断され臓物を撒き散らすことになった。
【リリガノ遺跡】の主──オルトロス討伐。
突然の主と魔物達の消滅に後続にいた魔物も止まることが出来ずにそのままクレーターへ落ちていき計数千の魔物が大穴に落ち、ユエは、魔晶石から取り出した魔力を使って再び重力に干渉。魔物の死体の上に更に魔物の死体を積み上げていく。
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一方、その頃。
大地に吹く風が、戦場から蹂躙された魔物の血の匂いを町へと運ぶ。強烈な匂いに、吐き気を抑えられない人々が続出するが、それでも人々は現実とは思えない〝圧倒的な力〟と〝蹂躙劇〟に湧き上がった。町のいたるところから歓声が上がる。
町の重鎮達、デイビッドなどのハジメ達に半信半疑だった者、ハジメを信じていた町長のニールス、司祭のコリオ、ギルド長のヒョロ、そして愛子達は同じようにハジメ達の力に呑まれてしまったかのように呆然としたままだ。しかし、クラスメイト達はハジメとの〝差〟を痛感して複雑な表情になっている。
本来、あのような脅威から町を守る役目は自分達と息巻いていたのに、いざとなれば自分達は守られる側として町の人々と同じ場所から見ていることしか出来ないことに複雑な心境を抱く。
愛子はただ、ひたすら祈っていた。ハジメ達の無事を。そして同時に、今更ながらに自分のしたことの恐ろしさを実感し表情を歪めていた。目の前の凄惨極まりない戦場が、まるで自分の甘さと矛盾に満ちた心をガツンと殴りつけるように感じたのだ。
妙子と奈々の二人は真っ直ぐと戦うハジメの姿を見ていた。勝手に無理して、自分だけが傷付くことはハジメは躊躇わない。それを昔から知るからこそ悔しさと想いが強く二人を駆り立てる。
「奈々」
「うん。分かってる」
「ハジメに並び立とう。必ずね」
「うん!」
ほんの短い会話。しかし、それでいい。会話せずとも想いは同じだ。二人は壁の上で守るために戦う彼と並んで戦えるほど強くなろう、と。
そんな誰もが別々の想いを抱く中、一人の重鎮が自然と自分が思っていたことをポツリと呟いた。
「──新たな、英雄の誕生だ」と。
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ハジメ達の蹂躙で四体の主が倒され、魔物の数が目に見えて減り、密集した大群のせいで隠れていた北の地平が見え始めた頃、遂にティオが倒れた。渡された魔晶石の魔力も使い切り、魔力枯渇で動けなくなったのだ。
「むぅ、妾はここまでのようじゃ……もう、火球一つ出せん……すまぬ」
うつ伏せに倒れながら、顔だけをハジメの方に向けて申し訳なさそうに謝罪するティオの顔色は、青を通り越して白くなっていた。文字通り、死力を尽くす意気込みで魔力を消費したのだろう。
「……十分だ。後は、俺達に任せて、そのまま休んどけ」
笑みを見せるハジメはそのまま倒れるティオの頭を優しく撫でる。
「ご主人様のあ、愛が……深い」
「深くねぇし、愛じゃねぇよ。早く寝て休め」
ティオの発言に呆れながら返答するハジメは、顔を上げて魔物の群れに視線を戻す。
「既に、一万を割って八千から九千ぐらいと言ったところか……見る限り、主共の他に一部の魔物が命令を出しているようだな」
大抵の魔物は完全に及び腰になっており、命令を出している各種族のリーダー格の魔物や後方にいる首を一つ失ってもやはり別格の強さを誇るミツマタノヅチに従い逃げ道がないために突進して来ている。数が少なくなったことにより、ハジメはそのことに気がついた。
ティオの推測混じりの説明では、各種族のリーダー格のみを洗脳し、その配下を洗脳したリーダーで従わせるという中々、効率的なやり方だと少しハジメは感心する。
もっとも……
「(清水一人でも、これほどの数を集めんのは二週間では無理だな)」
清水が行方不明なったのは二週間前。たとえチート持ちだったとしても、ティオという破格の戦力を偶然とはいえ手に入れたとしても、それでも〝怪物氾濫〟を引き起こすのを知らない清水では不可能にに近い。
「(やはり、ティオの言っていた清水の他のもう一人の奴が今回の主犯と考えるべきか)」
ティオが洗脳を受ける前に見たという清水の他にいたもう一人のローブを被った人物。種族は分からないが、あの量の魔物を引き寄せ、五つの【遺跡】から〝
一応、ハジメは感知系技能を使うも反応は感じられない。もしかしたら、この戦場が見える何処かで身を隠してるかもしれないと推測するが、一旦、その辺の推理を辞めて目の前の魔物共に集中する。
狙いは主と動きが鈍く単調なリーダー格の魔物の討伐。そうすれば配下の魔物達はハジメ達との実力差を理解してることだろうだから北の山へと帰るはずだ。
ハジメは、手元の殲滅兵器〝メツェライ〟を見やる。二つとも白煙を上げており、冷却が間に合ってないようだ。耐久限界である。これ以上撃ち続ければ、どこかにガタが来るだろう。
勿論、そうなってもハジメなら修復は可能だが、モノが繊細なだけに瞬時にその場でというわけにはいかない。時間を掛けた精密作業が必要があるため、手段を切り替える。
「……後は近接で片ずけていくか」
ハジメは攻撃方法を切り替える理由はもう一つある。清水捜索にもなる近接戦が妥当だと思い、ユエにどれくらい魔力が残ってるか聞く。
「ユエ、魔力残量は?」
「……ん、残り魔晶石二個分くらい……重力魔法の消費が予想以上。要練習」
「いや、十分だ。残りはピンポイントで殺る。援護を頼む」
「んっ」
ハジメの少ない言葉でも、委細承知と即行で頷く。阿吽の呼吸だ。そのままハジメはシアに話しかける。
「シア、魔物の違いわかるか?」
「はい。操られていた時のティオさんみたいな魔物とへっぴり腰の魔物ですよね?」
「へっぴり……うん、まぁ、そうだ。おそらく、ティオモドキの魔物が洗脳されている奴等だ今からそいつ等を直接叩くぞ」
「なるほど、私の方も残弾が心許ないですし、直接殺るんですね!」
「あ、ああ。………なんていうか逞しくなったな」
「お二人のお陰ですぅ!」
にぱっと笑みを見せるシアに、優しげな笑みを返すハジメ。だが、次の瞬間にはグッと表情を引き締めてメツェライを〝宝物庫〟にしまうと、ホルスターからドンナー・シュラークを抜いた。同時に、シアもオルカンを置き、背中のドリュッケンに手をかける。
見たところ、リーダー格と思われる魔物はおよそ百体。おそらく、突撃させて即行で殺されては、配下の魔物の統率を失うと思い、大半を後方に下げておいたのだろうとハジメは推測する。
そんな中、メツェライとオルカン、そしてティオによる攻撃がなくなってチャンスと思ったのか最後方にいたミツマタノヅチが長い舌を出しながらを声を上げる。
『『シュールルルルル!!』』
まるで、今だ進めと言わんばかりにノヅチの声に従って……いや、逆えない魔物達が息を吹き返したように突進を始める。
そして、ハジメとシアの攻撃を援護するため、ユエが魔法を発動した。
「──〝雷龍〟」
即座に立ち込めた天の暗雲から激しくスパークする雷の龍が落雷の咆哮を上げながら出現し、前線を右から左へと蹂躙する。大口を開けた黄金色の龍に、自ら飛び込むように滅却されていく魔物の群れを見て、後続の魔物が再び二の足を踏んだ。
「よし、行くぞシア!」
「あいあいさー、ですぅ!」
その隙にと、ハジメとシアが壁から飛び降りて一気に群れへと突撃する。
そして、歴代最多の〝
ハジメのアーティファクト〝魔晶石のネックレス〟
三つの魔力を注いだ魔晶石が三つ埋め込まれており、計三回の魔力の五割を回復を行える。
愛子はハーレムに入れるか入れないか
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いる
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いらない