ハジメは、着地する直前にドンナー&シュラークで引き金を引いて紅の閃光を放ち十体の魔物の頭を正確に射抜き絶命させる。
そして着地と同時に〝縮地〟で大地を疾走しながらドンナー・シュラークを連射した。
その眼には、群れの隙間から僅かに見えるリーダー格の魔物の姿が捉えられており、撃ち放たれた死の閃光は、その僅かな隙間を縫うようにして目標に到達、急所を容赦なく爆散させる。
前線の魔物には目もくれず、何故か背後のリーダー格ばかりが次々と爆ぜる奇怪さに、周囲の魔物が浮き足立った。
と、不意に一体の魔物の頭上に影が差す。咄嗟に、天を仰ぎ見た魔物の眼には、ウサ耳をなびかせ巨大な戦鎚を肩に担いだ少女が文字通り空から降ってくる光景が飛び込んできた。
その少女──シアは、魔物の頭を踏み台に、ウサギらしくぴょんぴょんと群れの頭上を飛び越えていき、最後に踏み台にした魔物の頭を圧殺させる勢いで踏み込むと、自身の体重を重力魔法により軽くして一気に天高く舞い上がった。
そして、天頂まで上がると空中でくるりと反転し、今度は体重を一気に数倍まで引き上げ猛烈な勢いで落下する。
目標地点は、もちろんリーダー格が数体で固まっている場所だ。自由落下の速度をドリュッケンの引き金を引き激発の反動を利用して更に加速させ、最大限の身体強化をも加えて一撃の威力を最高にまで引き上げる。
そして、全く勢いを減じることなく破壊の権化ともいうべき鉄槌を振り下ろした。
「りゃぁああああ!!!」
可愛らしい雄叫びと共に繰り出されたその一撃は、さながら隕石の如く。
直撃を受けたブルタール型の魔物のリーダー格は、頭から真っ直ぐ地面へと圧殺され、凄絶な衝撃に肉と血を爆ぜさせた。
血肉は衝撃により吹き飛んだ大量の土石に紛れて大地に還る。そして、その末路は、密集していた周囲の魔物にも等しく訪れる。
「どっ、せいぃいですぅぅぅ!!」
ドリュッケンのもたらした圧倒的な衝撃で周囲の魔物を吹き飛ばし、砕け散った土石に対してドリュッケンを持って
そして、周囲にいる魔物が全員が地に還るとシアは自らの作り出したクレーターから飛び出して各群れのリーダーと思しき魔物へと襲いかかった。
『グラァアアア!!』
流石に、懐に取り込まれて好き勝手させるほど魔物も甘くないようで、数で圧殺すように肉の壁でシアを取り囲もうとする。
「その程度ぉ、舐めんなですぅ!!」
シアはドリュッケンに搭載されたギミックを展開して柄を更に一メートルほど伸ばし、激発を利用して独楽のように高速回転を行った。先程よりも遠心力をたっぷり乗せたドリュッケンで迫り来る肉の壁を一緒くたに吹き飛ばす。
放射状に吹き飛び宙を舞うブルタール。見た目華奢な少女が、自分の数倍の巨躯を誇る魔物をピンポン玉のように軽々と吹き飛ばす。まるで冗談のような光景だ。
シアは、回転運動から流れるように体勢を戻し、吹き飛んだブルタール達の隙間から見えた目標のリーダー格を潰そうと踏み込みの体勢に入った。
と、その瞬間、右後方より新手が高速で接近する音をウサミミが捉える。シアは、慌てずドリュッケンを最適のタイミングで体ごと回転させ迎撃しようとした。
「グルゥァァァアアアっ」
「むむ、新手ですかっ!?」
彼女の目に映ったその新手は、黒い体毛に四つの紅玉のような眼を持った狼型の魔物は、それを予期していたように寸前で急激に減速すると、見事にシアの一撃を躱してみせた。
通常の魔物なら、武器がふりきられて死に体となったところを襲うのがセオリーだろう。実際、シアも眼前の魔物もそうしてくるだろうと〝身体強化〟を足に集中し、踏み込んだ瞬間に頭部を蹴り上げてやるつもりだった。
しかし、シアのその予想は裏切られる。
「えっ、わわっ?!」
蹴り上げようとした瞬間、四ツ目の狼は、シアではなくドリュッケンに飛びかかり、その強靭な顎と全体重で地に押し付けるようにして封じたのである。
もちろん、たかだか魔物の一体くらい、シアの身体強化を施された膂力ならどうということはない。しかし、それでも意表を突かれた事と、一瞬であれ動きを封じられたことに変わりはなかった。
そして、黒い四ツ目狼の頭には、それで十分だった。完璧なタイミングでシアの後方から同じ魔物が鋭い牙の並ぶ顎門を開いて眼前まで迫っていたからだ。シアは目を見開き、そして咄嗟に足に集中させてた〝身体強化〟を解いて、全身に施した。それは攻撃を喰らうことを覚悟したからだ。
あわや、その鋭い牙がシアを血濡れにさせるかというその瞬間、なにかがシアと四ツ目狼の間に割り込んできた。
それは、縦六十センチ横四十センチ、中心部分にラウンドシールドの様なものが取り付けられている金属製の十字架だった。その十字架が顎門に挟まりシアに喰いつくのを阻止していた。
「ふぇ? な、なんなんですか、これぇ!」
驚愕の言葉をもらすシアを尻目に、ギリギリと音を立て、魔物が必死に突如飛び込んできた異物を噛み砕こうと力を入れるが、薄く紅色に発光する十字架はビクともしない。
そして次の瞬間、轟音と共に魔物の下顎が爆ぜて吹き飛んだ。
「グゥルァアア!!!」
悲鳴を上げてのたうち回る魔物の頭上にスっと音もなく移動した十字架は、再度轟音と共に弾丸を吐き出し魔物の頭部を粉砕する。
更にズドンッ!!と腹の底に響くような発砲音が聞こえたと思うと、シアのドリュッケンを握る手が軽くなった。シアが視線を転じれば、相棒を一時的に封じていた四ツ目狼が腹部と頭部を空中に浮遊する二つの十字架に撃ち抜かれ崩れ落ちていた。
〝シア、油断するな。魔物の中に、明らかに毛色の違うやつがいる。洗脳支配されているわけでも、どこかの魔物の配下というわけでもなさそうだ。
シアが、やや自らのピンチとそれを脱した事に意識を囚われていると、ハジメから〝念話〟が届いた。それにハッと我を取り戻したシアは気を引き締め直し、首元のチョーカーの念話石を通して返事をする。
〝了解です! それと、助かりました。有難うございます!〟
〝おう、気をつけてな〟
「……ふふ、やっぱりハジメさんは優しくて強くて……本当に、カッコイイですぅ!!」
シアは、通信が切れた事を確認すると、まるで自分を守るように周囲を浮遊する〝クロスビット〟に頬を綻ばせて、そんな独り言を呟いた。そして、気合を入れ直してドリュッケンを構え、先程の毛色の違う魔物に注意しながらリーダー格の殲滅に乗り出した。
「ふぅ、危なっかしいシアだが、クロスビットとなら安心だな。だが、流石にカッコイイは照れるな……」
少し照れながらそんな事を呟く反面、猛烈な勢いで数百を超える魔物を駆逐していく。そんなハジメの周囲にも四機の十字架が浮遊している。
──重力制御式オールレンジ攻撃兵器〝クロスビット〟
ハジメがそう呼ぶ浮遊する十字架は、無人偵察機と同じ原理で動く攻撃特化タイプだ。内部にライフル弾や散弾が装填されており、感応石が七つ取り付けられた腕輪で操作する。また、表面を覆う鉱石には生成魔法により〝金剛〟を付与しており、感応石の魔力に反応して強固なシールドにもなる。
ハジメは、ガン=カタでドンナー&シュラークを縦横無尽に操りながら、雷魔法、クロスビットと己の持つ能力を総て併用して、隙のない嵐のような攻撃をたった一人で繰り広げる。既に、リーダー格の魔物を四十体近く屠り、全開の〝威圧〟により怯んでいる魔物も出始めている。
「粗方、片付いたが………やっぱ、アイツを倒さねぇと逃げねぇな」
ハジメは視線を転じ、逃走しようとする魔物達の逃げ道を塞ぐように後ろで鎮座する魔物【ハクロニア遺跡】の主──ミツマタノヅチを視界に捉える。
やはり、【遺跡】の主という地位に格付けされる魔物は、他の魔物達にとっても別格らしく群れのリーダーの魔物を殺し、〝威圧〟などをぶつけるところで、あのノヅチがいる限り他の魔物は山脈へと逃げず前線へ突進している。
「(此処からシュラーゲンで撃ち抜くか? いや、あの野郎、ティオのブレスで頭が一つ吹き飛んでから俺達のことを余程、警戒してやがる)」
そう、主の魔物は知能も高いらしくティオのブレスによって頭を一つ消されてからノヅチはハジメ達を余程、警戒しているのが分かる。
だが、このままでは埒があかないハジメはミヅチを討伐しようと乗り出した矢先だった。
「ん?……あれは、まさか!」
ハジメの視界の端に遠くの方で何やら複数の魔物に襲われている人影を捉えた。そして、〝遠目〟を発動してその人影の正体が分かるとすぐに駆け出した。
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清水は
「──っ(やはり、アイツの顔や目的を知る俺を消すために魔物を遣わせて来やがったな!)」
そう自分をアーティファクトで従わせた存在が今回の〝
走る清水は自分を追いかけて来る十を超える四ツ目狼から逃げながら振り返り様にて攻撃も行っていた。
王宮より譲り受けたアーティファクト【黒杖】をかざして詠唱を唱え始める。
「惑え 狂乱せよ 混乱せよ──〝怪光〟!」
───闇属性中級魔法〝怪光〟
怪しく光る光球を出して光を見た者を混乱させる魔法。
しかし、四ツ目狼の群れは清水の魔法を発動するのを知ってるかのように横に飛び退いて光の直視を避ける。
「っ、嘘だろ!? ──っ、ぐぅ!」
まさか、この魔法を回避するとは思わなかった清水は驚愕のあまり地面に躓いて転んでしまう。
「ぐぅ………っつ!!」
そして、立ち上がろうとしたその瞬間、背中から激痛がはしり、四ツ目狼の爪によって背中を引っ掻かれたのだと理解する。
「っ……もんか」
背中から大量の血が流れ、痛みと恐怖で体が思うように動けないが、清水は憧れの人物のように、その目には諦めはない。
「まだ、負けるもんか!」
そう声を張り上げた瞬間に四ツ目狼も一気に清水へと飛びかかる。清水も手に持つ杖を振ろうとした瞬間、彼等の間に一筋の紅の閃光が走るのだった。
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少し前、近付くにつれハジメはその光景を鮮明に見えた。黒いローブの男──清水幸利に向かって黒い四目の狼型魔物が一斉に襲いかかろうとしていた。
「清水っ!」
やはり清水はティオのように操られていたか、もしくは脅されていたのだと確信する。だが、彼が攻撃を受けそうになっている以上、今は、余計な思考だと切り捨てハジメは主の討伐よりも先に清水を守る事を優先する。
ハジメは即座に〝紅狼〟を発動。紅の雷がハジメに纏わりハジメの敏捷が倍加する。そして、ハジメは次の一歩を勢いよく地を踏んでから力を溜めるかのように膝を限界まで曲げてから一気に伸ばした。
瞬間、一筋の閃光がウルの平野を駆け抜ける。
そして、一秒足らずで清水と四ツ目狼達の間まで駆け付けたハジメは襲ってくる一体を蹴り飛ばす。
「──〝
そして、雷魔法〝紅雷玉〟を発動。周囲に沢山の複数の紅雷が凝縮された宝玉が現れ、蹴り飛ばした狼の後に続いていた数体の四ツ目狼に狙いを定めて放つ。
たとえ素早かろうが雷よりも早いはずもなく宝玉に内包された雷が直撃し肉体すら跡形もなく消し去った。
その光景を清水幸利は見た。自分と四ツ目狼達の間から一筋の閃光が現れ、四ツ目狼を吹き飛ばし守ってくれたのだから。
やがて、閃光は目の前に留まったと思えば人が現れた。白髪に、黒コートを羽織り、燃えるように紅い雷を纏う少年が清水の目の前に立っていた。
清水は目の前の人物を見て不思議に親近感を感じた。この人生で彼に一度も会ったこともないのにだ。しかし、纏う紅雷を解除させた彼から発せられた声でその疑問は変わる。
「よぉ、清水。生きてるかぁ?」
その声に覚えのある清水は顔を思いっきり上げてその人物をマジマジと見て言葉が詰まり詰まりながらも彼に問う。
「も、もしかして南雲なのか?」
その問にその人物は振り向いて顔を見せるとに不敵に笑って肯定した。
「ああ、正真正銘、南雲ハジメ本人だよ」
「────」
望んだ回答に清水は言葉を失うも涙を流してハジメに駆け寄ると彼のコートを掴んで
「……よ、良かった、生きててっ!」
自身をそんなに心配してくれていた清水を見て申し訳なさを感じたハジメ。そして、清水の肩に手を置いて笑みを浮かながら彼の首に嵌められた首輪を見て、やっぱりかと確信すると清水に話しかける。
「あぁ、俺もお前と再会できて嬉しいよ。後、安心しろ。その首輪を外してやる。大概、一定範囲内にいれば体を支配させる系のアーティファクトの類いだろ?」
「で、出来るのか? でも、これ無闇に外そうとしたら爆発する仕組みなんだぞ」
「クハッ、清水。俺を誰だと思ってる俺の天職は〝錬成師〟だぜ? こんなの朝飯前だ」
ハジメはそう言って清水に着けられてる首輪に触れると、脳内設計で新たな派生技能[+構造把握]で首輪の原理を構造を瞬時に理解したハジメは錬成を発動。
まず、ハジメ自身の魔力で清水とアーティファクトの繋がれた魔力パスをパッキングして一時的に切り離す。
切り離せたら、再び、再接続がされるまでに拘束を外すだけの単純作業だ。
たった三秒ほどで魔力的拘束を解除したハジメは清水に嵌められていた首輪を取り外し、それを投げ捨て終わらせた。
「よし、成功」
「嘘だろ……外れた」
自身を縛り付けていた首輪があっさりと外れたことに実感が湧かない清水は自由の身となった首を触っている。
「よし、清水。少し下がってろ」
「え、でも……いや、わかった」
これで清水は大丈夫だろうとハジメは清水を少し下がるように指示する。清水は少し心配するが、先程まで魔物大群を相手をしていたのがハジメだと理解すると素直に下がる。
そして、清水を下がらせ、二機のクロスビットを護衛として周りに浮かせたハジメは振り返り、残りの十数の四目狼達を見る。
一方、四ツ目狼達もハジメを殺さなければ清水を殺せないと判断したのか標的をハジメに変えて唸り声を上げている。
「来いよ、雑魚共」
『グルルゥゥゥア!!』
笑うハジメの挑発の直後、激しく吠えて四ツ目狼達は一斉に飛び出して襲いかかる。やはり、周囲の魔物とは比べものにならないポテンシャルと連携能力を持っている。かつての奈落の魔物──〝二尾狼〟を彷彿とさせる。
実際、戦ったのなら二尾狼といい勝負をするだろうとハジメは感じており、先程から四ツ目狼達は、まるでハジメの先の動きを読んでいるかのような動きをしている。
「〝先読〟の類の固有魔法か?」
先読系の固有魔法ならば、先を読んでいるかのように攻撃を躱しているのが納得がいく。戦闘能力では二尾狼に及ばないものの同等な連携能力といい固有魔法の能力で低層とはいえ奈落にいても可笑しくない魔物であるとハジメは結論付ける。
「(最低でも大迷宮か上位の遺跡産の魔物……だが、有り得ない)」
奈落を経験したハジメの抱く疑問は正しい。
今回の〝
今、相対している四ツ目狼だとユエが倒したオルトロスが主である【リリガノ遺跡】から産まれたと言えば納得できるものの【リリガノ遺跡】は推定レベルが35。つまり、オルクス表層の低層から中層手前ていどの魔物。そんな低レベルの遺跡から奈落レベルの魔物が産まれるわけがない。
「(考えるられのは、清水を利用していた存在が持ち込んだ魔物……順当に考えれば魔人族だろうが)」
前足を突き出して襲いかかる四目狼の眉間を難なくドンナーで撃ち抜きつつ、この魔物達はハジメは噂に聞く魔人族の仕業だと推測する。
「(狙いは分からないが清水を殺そうとしてるのは目的と顔が割れてるためだろうな)」
前後左右、更には波状攻撃を仕掛けてくる四ツ目狼に、向けてドンナー&シュラークを連射。〝先読〟で回避するだろう位置を、ハジメもまた〝先読〟を使いながら未来位置へ撃ち込む。
それでも、なお回避する個体がいることに少し驚くが〝二尾狼〟と同じような〝念話〟の類を〝先読〟と併用して戦場をある程度俯瞰的に見られるのかもしれない。
ハジメの銃撃を掻い潜り、空中リロードの僅かな隙を突いて踏み込んできた四ツ目狼を、ギロチンの如く上方に展開させたクロスビットの一機で大地に沈めつつ、その死体を踏み台にして飛び込んできた別の四ツ目狼を、即座に移動させたクロスビットを盾にして防ぎ、雷の斬撃で真っ二つに切り裂いた。
血肉が大地を赤で染める中、包囲しようとする四ツ目狼の一角に二機のクロスビットで集中砲火し、無理やり包囲をこじ開けると〝縮地〟の勢いを利用したスライディングの要領で突破し、そのまま滑りながらのけ反るように背後へ発砲して撃滅。
更に、挟撃を仕掛けてきた四体の四ツ目狼を、出力を上昇させた〝纏雷〟で飛び込んで来た四体を完全に怯ませリロードの終えたドンナー&シュラークで前後左右の四体を屠る。
「グルァァァア!!」
と、そこへ四ツ目狼の一体が、撃ち抜かれた魔物に体当たりしてハジメに向かって吹き飛ばした。
ハジメは、横っ飛びに回避しながら、飛んでくる魔物の下方より発砲し、その後ろを疾駆してくる四目狼の頭部を吹き飛ばす。
受身を取りながら、即座に立ち上がる。しかし、この瞬間を待っていたと言わんばかりの四目狼が大口を開けて、その牙でハジメを噛み殺そうとする。
正に完璧なタイミングの攻撃。
傍から見れば、間違いなく四目狼の顎門がハジメの体に喰いついたように見えただろう。
「俺も待っていたぜ、このタイミングをよぉ」
しかし、それがハジメの狙いであり、その瞬間、姿がゆらりと揺れると四目狼の顎門は何もない空でガチンッ!と音を立てて閉じられた。ハジメの体はいつの間にか一歩進んだ場所におり、すれ違い様にシュラークでその四目狼の腹部を撃ち抜いた。
更に、四ツ目狼が飛びかかるが、何故か先程と同じように、一歩ズレた場所を攻撃してしまい、すれ違い様の一撃によって屠られる。
まるで、四ツ目狼達の目測を謝らせるような一連にハジメは不敵にクハッと笑った。
「初めて、〝幻踏〟を使ってみたが、使えるなこれは」
これはハジメの気配遮断の派生技能[+幻踏]の効果である。効果は、気配を遮断する際に、ほんの数秒だけ元いた位置に遮断前の気配を残していくものだ。本体の気配は遮断されているので、感覚的には一瞬前までの場所にいるように錯覚してしまう。もちろん、単に気配をズラしているだけであり、相手が感知系の技能を持たない限り、コンマ数秒が勝敗を分ける戦いにおいて、惑わされないようにするには中々に難しい。特に、優れた者ほど気配に敏感になるので有効性は増す。
当然、クロスビットを併用するのに〝瞬光〟を発動しているハジメにとって、いくら四ツ目狼達が奈落級を持つ魔物であっても、やはり相手にはならないのは当然のことであり、結局、黒幕の用意した魔物達は目的であった清水を殺せず、ハジメに攻撃を掠らせることも出来ずに、ものの一分で殲滅させられるのであった………。
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一方、ウルの平野を一望できる場所で大型の鳥型の魔物に騎乗していた黒ローブを纏う男が苦渋の表情をして叫ぶ。
「な、なぜ……何故だ!! 」
男の目的は、ある者の殺害と人間族側の食糧生産の重要な一つの都市である【ウルの町】の崩壊。
「どこで間違えた! 何を見誤った! 何がどうしてこういう結果になるのだ!!」
この作戦の二月以上前から人間達にバレないように注意して山脈の地形や【遺跡】の場所、ウルの地形など下調べし、色々と準備を行った。
そして、手筈通りに自分でも制御できる程度の【遺跡】を魔力暴走させ〝
この作戦の成功率は
そんな時だった。【遺跡】を魔力暴走させてる最中に幸運にも一人の神の使徒と偶然いた黒竜をも捕らえることが出来た男は歓喜し、この新しく出来た駒を利用して計五つの【遺跡】と山脈の魔物達を集結させた巨大な〝怪物氾濫〟を築き上げることに成功した。
これならば目的であった【ウルの町】の崩壊に加え、更に周辺の町、そして【中立商業都市フューレン】さえも崩せると確信できるほどの群勢に男は自身の地位の格上げは間違いなく、もしかしたら偉大なる御方の傍付きなれるとさえ思えた。
しかし、現実はそうは行かなかった。
目の前の情景はなんだ?本来ならこの場所で人間族達が蹂躙される様を見ながら悦に浸ろうと思っていた。
だが、五体の主を含め総勢六万もいた魔物の郡勢が既に五千を下回り、更に四体の主は討伐、処分しようとした神の使徒は生きて、
「有り得なない、認めれん!! 俺がっ、大佐になることが約束された俺がぁ!! ここで終わるなどと!」
怒り狂うように叫ぶ男はその場で蹲り、この怒りをぶつけるかの如く魔物の背中を何度も殴りつける。
「クソっ、クソっ、クソォ!!」
魔物のことなど無視して殴りつけ少し落ち着きを取り戻した男は、最終手段に出る。
懐から取り出したのは、五つの宝玉。しかし、その中の四つは既に砕けており、残った一つしか残ってない。
本来なら冒険者が多くいるであろう【フューレン】でも使うのも躊躇っていた代物であるが、もう躊躇いはない。
「偉大なる我が神であり魔王──
男はそう言って、残った一つの宝玉を握り締め口を開き詠唱を唱え始めた。
「魔の巣窟の主よ 怒れ 狂え 縛られた枷を外し給え この世に破滅を 挑む者達へ絶望をっ さぁ縛られし力を解き放て遺跡の主よ!!──〝
詠唱を終えると共に握り宝玉を締められていた拳を男が上に掲げれば、握り締めているにも関わらず、指の隙間から紫色の光を放ち始めた。
直後、ミツマタノヅチが大地を轟かすほどの叫び声と共に強大な魔力余波が放たれるのであった……。
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異変が起きる前、ハジメは、魔力駆動二輪──シュタイフに清水を後ろに乗らせ、クロスビットを飛ばして怒涛の勢いでリーダー格の魔物を仕留めに回り一旦、シア達と合流に向かっていた。離れた場所にいるシアに付けたクロスビットからの情報では、向こうもあと数体で終わるようだ。町に向かって突進していた前線の魔物も、ユエの雷龍が全く寄せ付けていないようだ。
その報告を受けたハジメは清水を引き渡したあと、最後の主であるミツマタノヅチを討伐に向かうと思っていたのだが………
『『シャァァァァァァァアア!!!』』
「っ、なんだ!?」
突如、後ろに控えていたミツマタノヅチが叫び出し、膨大な魔力余波を発しており、まるで暴風の如き魔力余波にハジメはシュタイフを一旦、停めて振り返って声を張り上げる。
「清水、ありゃあなんだ!?」
「分からない!!でも、確実にわかるのは俺を操っていた奴の仕業なのは間違いない!」
清水の言葉に、やはりか、と思いつつ舌打ちするハジメは〝魔眼石〟でミツマタノヅチを見るとその異様な変化にハジメでも戸惑いを隠しきれない。
「はぁ?! 魔力の異常な上昇だと? 何処からそんな力を得てやがる!」
ハジメの〝魔眼石〟に映ったのは何処からかミツマタノヅチに異常とも呼ぶべき量の魔力供給。なにがどうすればそんな事態が起きるのか理解不能だ。
〝ハジメさん! アレはなんですか!?〟
〝ハジメ!〟
すると、シアとユエからも〝念話〟が届く。二人もミツマタノヅチから強大な魔力を感じ取ったのか焦った声でハジメに連絡をしたのだ。そして、ノヅチから目を離さないまま、ハジメも二人に〝念話〟をする。
〝二人共、注意しろ。原理は分からないがあの主から異常なまでの魔力供給が行わている〟
〝そ、それってヤバいですか!?〟
〝うん、ヤバ過ぎる。魔物に許容範囲以上の魔力を供給すれば魔物は私達と違って進化する〟
分かり易く説明するユエの言う通り、人間ならば許容範囲以上の魔力供給を行うと肉体が耐えきれず死に至らしてしまう。しかし、魔物は違う。魔物は許容範囲以上の魔力を供給されたのならその魔力に耐えうる強力な肉体へと
そう、それは、まるで
そして、ミツマタノヅチの全身に変化が訪れた。
ティオによって失った顔が元通りになり、図体は六メートルあった大きさから倍の大きさとなり、白い肉体は漆黒に染まり、赤い眼は更に深紅へと変わっていく。
『『『シュルルルルルルルル!!!』』』
そして、存在の進化を終えた三又の蛇は鋭い眼光を光らせた。
【ハクロニア遺跡】の主──ミツマタノヅチ改め……
───ミツマタノヅチ・
黒の脅威が此処に顕現されたのだった………。
脳内設計の派生技能[+構造把握]…触れた物の構造、能力を把握出来るが迷宮や大きな物や生きてる者は出来ない。
──遺跡から生まれる魔物
【遺跡】から産まれる魔物はその遺跡の主と同種の魔物が排出されるのが当たり前で、竜の魔物が主である遺跡には主よりも劣種の竜が排出される。
愛子はハーレムに入れるか入れないか
-
いる
-
いらない