ありふれた職業で世界最強if優花   作:白San

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大変長らくお待たせしましたm(_ _)m


幕間 〝怪物氾濫(スタンピード)〟後

 

ハジメ達が〝怪物氾濫(スタンピード)〟を退けてから後日、ウルの町冒険者ギルド支部の支部長ヒョロ・ガリから主要な都市や国、各地のギルド支部、ギルド本部に向けて正式な一つの報告書が通達された。

 

──報告書──

歴代最多とも言える総勢六万を超える数の魔物が侵攻してきた今回の〝怪物氾濫(スタンピード)〟についての詳細と顛末。

 

今回、二年ぶり起きた怪物氾濫(スタンピード)の発生原因は、北の山脈地帯の計五つの【遺跡】から同時に魔力暴走が起き、加えて山脈地帯に棲う魔物達も呑み込んでいった結果、六万を超える数となったと考えられる。

そして、この〝怪物氾濫〟は人為的に引き起こされた可能性が高い。

これは神の使徒──清水幸利(シミズユキトシ)からの証言、そして数多くの人物が逃走を図る魔人族らしき人影を確認した為、〝怪物氾濫〟を引き起こしたのは魔人族であると推測される。

しかし、まだ物的な証拠は得ていないと同時に〝怪物氾濫〟を意図的に引き起こさせるナニカがないか調べる必要があるため、ギルド本部には調査隊の派遣を要請を望む。

 

──調査対象の【遺跡】

・【ブルータル遺跡】

・【リリガノ遺跡】

・【アラクオ遺跡】

・【サルース遺跡】

・【ハクロニア遺跡】

中でも【ハクロニア遺跡】のランクは銀。第一級相当であるため派遣する調査隊には金ランクの冒険者を要する必要有り。

 

加えて、【ハクロニア遺跡】の主のミツマタノヅチが異例の存在進化を果たすという異例中の異例が起きた。

【遺跡】の主である魔物の存在進化。それは正に厄災のそのものであり、その脅威はEXランク相当の【遺跡】の主と同等といえるほど天災へと変貌していた。

 

だが、懸念することが一つある。ミツマタノヅチは最初は存在進化していなかった。なのに突然と進化を果たした。それも我等の陣営が優勢に傾いた頃に都合よく進化を果たした。

進化の原因は、死んだ魔物の残滓を取り込んだのか、〝怪物氾濫〟による影響なのかは不明である

そして、これは可能性であるが先に挙げていた魔人族が関与してる可能性がある。そして、それが事実ならば魔人族側は魔物を意図的に存在進化させる術を持っていることになる。

もし、それが事実となれば事態の対策を早急に立てる必要がある。

 

──顛末

本来ならば町の一つや二つ、下手したら国家や都市すらも滅びかねないほどの今回の〝怪物氾濫〟。

これには発生地付近の【ウルの町】を含め多くの都市が魔物達に蹂躙されることを覚悟していたのだが、其処に居合わせた四人の人物達のお陰で事のをなきに終えた。

戦闘の一部始終しか見ることしかできなかったが、たった一人で数万の魔物を薙ぎ払い、見たこともない魔法で蹂躙し、複数の【遺跡】の主達でさえ歯牙にも掛けない圧倒的な光景だった。

その四人は詳細は不明。判明しているのは最近になって冒険者登録をしているハジメ・ナグモのみ。

年齢は十七。

冒険者ランクは青の初級冒険者。

天職は戦闘職ではない〝錬成師〟。

冒険者になる前の彼の経歴は不明。

出身地も極東の方だと詳しくは不明。

服装も冒険者や貴族にも見慣れない服装。

身体的特徴も怪我をしているのか右目に眼帯、左腕には籠手(ガントレット)のような装備に加え、見た事も聞いた事もない武器及びアーティファクトを所持。

冒険者になる以前から持ち込んだ品に第二級冒険者すら立ち入ることは厳しいハルツィナ樹海に棲息する魔物の素材の持ち込み。

【ブルリア遺跡】を歴代最短記録での単身攻略を果たす。

などと異常な経歴を持つ人物である。

今回もこの町には【商業都市フューレン】のギルド支部長のイルワ・チャング殿の指名依頼で来たと証言し、虚偽ではないことも確認済み。

 

そして、残る三人はステータスプレートを持っていなかった為、詳しい詳細は確認できなかったが、名前と実力だけでも記しておく。

 

──ユエ(本人は南雲ユエと呼称)

種族は人間

戦闘スタイルは魔法を主に扱っており、天職は魔法系統の戦闘職だろう。その強さは埒外で、見た限り複数の魔法適性、見た事も聞いた事もない魔法、しかも複合魔法も行使可能なことも確認済み。

かの英雄級冒険者の1人である【沈黙の魔女】と同格、もしくはそれ以上の魔法を行使できると思われる。

──シア・ハウリア

種族は亜人族(兎人族)

本来、兎人族とは非力でか弱い亜人種でも最弱と呼ばれているが、彼女は他と違った。

戦闘スタイルは大槌と思われる武器を扱う近接。そして、魔物の頭などを軽々と吹き飛ばす姿は兎人族とは思えない膂力と瞬発力を見せており身体強化系の固有魔法を保持してる可能性有り。

もしかしたら、彼女は〝魔力持ち〟の亜人〝先祖返り〟の可能性が極めて高いと思われる。

──ティオ・クラルス

種族は人間

あまり見かけられない衣服(神の使徒からは着物という名の衣服らしい)を身に纏っている。

戦闘スタイルは火と風属性の魔法と複合魔法の適性を持つ魔法職と思われ、その威力は【遺跡の主】を焼き尽くすほど。

 

そして、この三人よりも件のハジメ・ナグモの実力は常軌を逸脱していた。

功績を挙げるならば以下の通りに綴る。

・依頼であった貴族の救出。

・北の山脈に棲みついていたらしい黒竜の討伐。

・初撃で二体の【遺跡の主】を同時討伐。

・一人で万を超える数の魔物を撃退。

・魔人族の支配下に置かれていた神の使徒の救出。

・存在進化を果たしたミツマタノヅチの討伐。

・町の被害は一つも無し。

と言った数々の偉業を成した。

 

これは、私見であるが彼の偉業は【戦姫】、【沈黙の魔女】、【戦眼】の現代の英雄達でも短期間で成し遂げることは極めて難しいと思える。

 

故に私ことヒョロ・ガリは彼を四人目の白金(プラチナ)ランク──英雄級冒険者に推薦したいと思う。

 

そう彼は正に天から駆け抜けて現れた新星の英雄……

 

天狼(シリウス)】と。

 

───【ウルの町】ギルド支部長ヒョロ・ガリ───

 

 

================================

 

 

本来ならイルワからの依頼を終えたい為にウィルを連れ、休みなくフューレンに向かおうと予定していたハジメであったが、そこへ【ウルの町】の町長のニールスが待ったを掛けた。

 

理由は単純でこの町を危機から救ってくれた人達をなんも恩も返せず行かれるのは忍びないらしい。

そして、そんなニールスの待ったを発端にウィルや愛子達も声を上げ始め収拾が付かなくなり、最終的にはユエ達から「一日ぐらいいいんじゃない?」と言われたためハジメは肩を竦め今夜だけウルの町に留まるのであった。

 

そんな事もあって、一行は魔力枯渇で動けないティオを回収してから【ウルの町】に戻ると共に町民達からの物凄い歓声で迎えられるのであった……。

 

まず、町に戻ってからニールスに宴の準備をしたいと、その間にしっかり休んで欲しいと言われたハジメ達は〝水妖精の宿〟へ向かうとオーナーのフォスが出迎えて来ており「この度はこのウルの町を救って頂きありがとうございます」と感謝を述べ、ハジメ達に頭を下げていた。

それから、服や体が魔物の返り血で汚れていたのでシャワーを使わせて貰い、着替えた後、提供された部屋でしっかり英気を養うことにしたハジメ。そこへユエやシアが添い寝しようとベッドに侵入しようとしてきたがなんとか説得して追い出した(その間、ティオは爆睡中)。

 

数時間後、町の重鎮の一人が迎えに来てくれたのでハジメ達は彼の案内の元、町の中心に敷かれた宴会場の招かれるのであった。

 

そして、すっかり夜となった現在、月明かりと宴の明かりが照らす中、お祭り騒ぎになっている宴会場の席に腰を下ろすハジメは手に持っていた果実水の入った木製のコップを揺らしながら目の前にズラリと並んだ沢山の料理の一つを摘み舌鼓を打つ。

 

「うん、美味い」

 

焼いた白身魚の上にホワイトソースが掛けられ、柔らかい魚の白身はホワイトソースのお陰で旨みが増し、口の中で溶けてくような柔らかさに自然と笑みが零れてしまう。

そんな魚料理を堪能しつつ、ふと周りを見る。ユエは妙子や奈々達と一緒に仲良く談笑しており、ティオはウルの町特産の米で作られた醸造酒を嗜み、シアもウルの町の人達と楽しく交流している。

 

その光景にハジメは顔に出さずとも少しの安堵が見せる。

 

「(ウィルの奴も……流石は貴族というべきか……)」

 

ウィルは流石は貴族の子息らしく町の重鎮や町民達の相手を卒なくこなしている。しかし、話してる内容がハジメへの称賛と、まるで物語の英雄のように語るのは少しやめて欲しいのだが……

 

「(ま、ウィルのお陰で先生が看護に専念できてるし)」

 

現在、この場には愛子は居らず魔力切れで眠る清水の看病をしている。本来ならば、ハジメの熱い演説(演説という名の押し付け)で魔物達から【ウルの町】を守った〝豊穣の女神〟として祭り上げられているが、大切な生徒である清水を教師である彼女が放っとける筈がなく、なんとかニールスを説得して清水の看病に付きっきりになっている。

そして、空いた主役の穴をウィルが語るハジメの英雄劇で埋めている感じで調整を取っているため止めたくても止めれない状況なのだ。

 

そして、愛子の他にデビッド含めた神殿騎士達も宴に参加しておらず、今回の〝怪物氾濫(スタンピード)〟で何も出来なかったことに負い目を感じていたのか町の周辺警備に自ら進みでて意欲的に行っているらしい。

やはり、教会の神殿騎士に選ばれるぐらいには律義な性格なのだろう。ただ、あの癪に障るような言動やシアに対する態度で好感は持つことはないが……。

 

それでも、後に、シアに対して頭を下げていたことは評価していいと思えるのだった。

 

 

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宴の賑やかさが続く中、魚料理を食べ終え、空腹を満たせたハジメは今回の〝怪物氾濫〟で魔人族の動きが予想以上にキナ臭くなってることが分かったのは少しばかりの幸いだった。

 

まぁ、自分達がこの世界に召喚されたのは魔人族の勢いが強したせいではあるのだが、それでも北の山脈地帯にまで魔人族の手が伸びてきているとは思わなかった。

地理的に魔人族が人間族領へ侵攻するにはあのライセン大渓谷を超えるか、唯一の陸が繋がっている【防衛都市キオン】を攻め入るしか方法は無い。

 

「(キオンの防衛機能は……いや、有り得ないな)」

 

ライセンを超えての侵攻は魔法戦闘を得意とする魔人族にとっては自殺行為に等しい為、それはないだろう。

故に、魔人族達の侵攻の壁となる役割を持つ都市【防衛都市キオン】に何かあったと考えたが、それはないだろうと直ぐにこの考えも切り捨てる。

もし、キオンの防衛機能が停止するほどの事態が起きたのなら今回のような策略じゃなくとも軍で攻めればいいし、食料の補給ラインの一つであるウルの町を攻めなくとももう一つの物資補給を担う大都市【ガラテア】を攻めればいいのだ。

ならば、侵入できた理由は一つしかない。

 

「(空、か………)」

 

魔人族は飛行型の魔物に騎乗していた。つまり、空から侵入してきたのだろう。

例え、防衛都市であっても、魔力を霧散させる大渓谷があったとしても空からの侵攻は今の人間族達には対処する手立てがない。

 

それに今回の件で魔人族側は飛行型の魔物を使役してることが明らかになった。今まで耳にしていた話では獣型や人型の魔物を使役してることは分かっていたのだが、飛行型まで手に付けていたのは知らなかった。いや、隠していたのが明らかになったといった方が正しいだろう。

あの魔人族がどれほどの地位に属するかは分からないが、あれほどの機動性の持つ魔物の騎乗に慣れていたのはハジメから見ても直ぐに理解できた。

つまり、魔人族には既に飛行型の魔物を中心にした飛行部隊が既にあるのだろうと推測できる。

 

やはり、魔人族は侮れない。人数的不利であっても千年以上の間、人間族と争い続けているのだから。まぁ、そこには神々が適度に干渉している理由もあるだろうが……。

 

「(そういや確かメルド団長が言っていたな。魔人族にも相当な強者がいるって言ってたな)」

 

ふと、思い出したのは嘗てホルアドに向かう道中、ふと思い付いたのか龍太郎が「魔人族の側にもやっぱ強い奴がいるんすか?」という質問をしたときだった。

龍太郎の質問に傍にいた光輝や雫、クラスメイト達は勿論、ハジメも気になった。そして聞いた際、穏やかな表情をやめ真剣な顔付きになる。その変わり様にクラスメイトの一部が怯えだしたがメルドは龍太郎の質問の答えは「いる」だった。

 

その数は三。少し前までは四人であったらしいが七、八年ほど前に起きた【キオン】の襲撃の際に其の一人の魔人は白金級冒険者【戦眼】によって倒されたらしい。曰く、その魔人族の二つ名は【紫電】という特殊な雷属性魔法を併用した近接戦闘を得意としていたらしく人間族達にとっては脅威な存在だったらしい。

残る三人は一人は、約百年近くまで戦いに身を投じる呪いや闇魔法を扱う老将【邪翁】と呼ばているが後の二人には見劣りするらしい。

そして、残る二人はメルドが「残りの二人は俺では到底、勝てないだろう正真正銘の化け物達だ」と断言するほどの強者らしい。

一人は【剣聖】。魔人族らしくない二つ名であるが四年ほど前に起こった大きな小競り合いの際、百を優に超える帝国の兵士を単独で切り伏せた化け物。その中には当時の七色騎士(セブンス・ナイツ)の二人も含まれており、一時、帝国の武力を低下させてみせた化け物。

そんな魔人の戦う姿を目撃した兵士の話では、あれこそが剣の到達点と言われるほど卓越した剣技だったらしく、故に【剣聖】と名付けられ人間族から畏怖されているらしい。

そして、最後の一人はそこまで表舞台には立ってはないが魔人族の勢いが強まった最大の原因とまで言われている。其奴は魔人族領内で起こったらしい大規模な〝怪物氾濫〟をほぼ単独で鎮圧してみせらしく、もし、この人物が戦争に参加したならば都市一つは必ず失うだろうと確実視されてる最強の魔人。

其の魔人の二つ名は【魔天将】と。

 

そう締め括るメルドの言葉にクラスメイト達の大半は顔を真っ青にしていたが、質問した龍太郎は「おもしれぇ!」と好戦的な笑みを浮かべ両拳を合わせ、雫は剣聖の存在に興味を持ち、光輝はというと「大丈夫だ! 俺達が一丸となれば絶対に勝てる!」と自信満々にクラスメイト達に宣っていたのをハジメは覚えている。

 

「(やはり、【魔天将】って奴が魔物使役の術を得た人物だろう。それも俺と同じ大迷宮攻略者)」

 

魔人族領にもシュネー雪原に大迷宮がある。其れが魔物使役に関する神代魔法であり、そして、【魔天将】なる人物が大迷宮を攻略し魔物使役を可能にした。

これが、魔人族達の勢いが強まった最大の理由だろうと今は推測の域でしかないが、間違いないだろう。故に、ハジメが懸念するのは……

 

「(大迷宮攻略者なら俺と同等……いや、それ以上の可能性もある。チッ、情報が少くて精査できねぇ……)」

 

明らかに【魔天将】の情報が少ないことだ。あるのは、〝怪物氾濫〟を単独で鎮圧できる強大な力と魔物使役の術を持っているだろうぐらいしかなくメルドが他の三人と比べて詳細が不明と言っていた理由がよく分かる。

それに察するに、今までの小競り合いにも出ていないのも敢えてなのだろうとハジメは思う。

 

しかし、考えていく内に【魔将】の狙いが全く分からない。

 

「(【魔将】は相当なキレ者だろう。だが、狙いはなんだ? 何を待っている?)」

 

そう思考を巡らせながら他の料理にも手を付けようとした時、横から声を掛けられ|る。

 

「隣に座ってもいいですかな?」

 

「……確か、司祭のコリオさんだったか?」

 

声のする方向へハジメが視線を移すと、そこにはウルの町に配属された教会の司祭コリオがいた。普通なら教会関係者なら面倒なので断るが、この人物は少し教会の奴等とは何か違うと感じ取っていたハジメはこれも良い機会だと思って了承する。

 

「ああ、構わないぜ」

 

「感謝します」

 

了承を得たことでハジメの隣に座ったコリオは両手を握り祈りをしてからテーブルに並べられた料理を自分の手元へ運ぶ。

その洗練された所作にハジメは感心しながらも口にはせず黙々と料理に手を付ける。

すると、クロワッサンのようなパンを食べ終えたコリオが口を開く。

 

「ハジメ殿。不躾な質問だと思うが……君はエヒト様が召喚された神の使徒の一人だね。それも大迷宮で命を落としたと言われてる〝錬成師〟の───」

 

「………」

 

コリオの言った言葉に対してハジメは彼に向ける視線を鋭くなるが、〝威圧〟や〝殺気〟も加えてない単なる圧を感じさせる睨みなのでコリオは全く動じてない様子に観念したのかハジメは答える。

 

「ああ、そうだ。アンタの言う通り俺は別世界から召喚された神の使徒の一人だ」

 

「やはり、そうですか」

 

「イシュタルのジジィ共に言うか?」

 

「いえ、まさか。この町の英雄にそんな真似はしませんよ」

 

ハジメの正体に納得するコリオ。そして、この事を上の奴等に言うのかと聞いてみたらその答えにハジメは正直、驚いた。そんなハジメの表情を見てコリオは苦笑して言葉を続ける。

 

「本来なら貴方の存在は報告するべきことでしょう。しかし、貴方の態度から見て教会とは余り関わりたくないように見える。まぁ、理由としては貴方が連れてる兎人族の少女のことあるのだと思いますが、それ以上の厄介事も持っているように見受けられますな」

 

「(そこまでお見通しか……)」

 

恩を仇で返すつもりはないと述べる共に己の事情を薄々、勘づいているような言動をするコリオにハジメはクハッと笑みを零す。

 

「ま、アンタじゃなくとも先生達の護衛に付いてきていた騎士達は言うだろうけどな」

 

「私から伏せるように言っておきましょうか?」

 

「いや、いい。流石に〝怪物氾濫(スタンピード)〟を退けた奴が素性が不明な人間なんて言われてしまえば余計に上の奴等が騒ぎ立てるだろうしな」

 

「ほう、そこまでお考えになっているとは」

 

今回のことが報告されればイシュタルなどの教会の上層部はハジメが生きていたことを認識するだろう。更に過去最大とも呼ばれる〝怪物氾濫〟を退けるほどの力を有してるほど。

もしかしたら、教会へお呼ばれされると思われるが無視すればいいし、相手が強引にきたら捩じ伏せればいいだけだ。

 

「ま、そんな事よりも俺はアンタのことを知りてぇと思ってたんだ」

 

「上の方々よりも私の方を知りたいと? 面白い方だ」

 

教会の話を切り上げ次の話題に変えるハジメ。コリオは少しばかり目を見開いて驚いた顔を見せるも直ぐに和やかな笑みを見せる。

 

「まぁな、俺が知る教会関係者でアンタは毛色が違う過ぎる。なんだろうな……イシュタルの変態とも言えるほどの神への執着がそこまで無さそうに見えてな」

 

「……ふ、流石にあの狂信者のような連中ばかりだと思われるのは少し心外ですけどな……。まぁ、概ね貴方の言う通り私はそこまで神に対する信仰心はありません。いえ、薄れた言いましょうか」

 

コリオは俯きがてら手に持つコップに入った水を飲んで一息吐くと、ハジメに話し出した。

 

「……少し昔のことを話しましようか。私は以前はこの町ではなくて本部の上層部に在籍しておりました。しかし、上層部にいるとなると見たくなくても醜悪な部分を見てしまうのです。そして、共に研鑽を積んできていた友が、教皇イシュタルの私情によって枢機卿の地位を剥奪されたりと、私の神に対する信仰は薄れてしまったのです」

 

コリオの話を聞いてハジメはこの世界の宗教もやはりロクでもないと思いつつ、彼の友人が元は枢機卿と聞いて彼自身もそれなりの立場にいた人物だろうと察する。

 

「それで、教会というか上層部を信用できなくなったアンタはその立場を捨てこの町の司祭になったと?」

 

「えぇ、本当は聖教教会の組織自体やめようとは思いましたが……」

 

「聖教を信じてる信徒のためか?」

 

「……はい。魔物や魔人族の恐怖から守られる、或いは立ち向かう為に神に祈りを捧げてる信徒は多い。そんな彼等のためならばと儂は今までの地位を捨て司祭としてこの町に赴任したのです」

 

「ハッ、御大層な理由だな……俺には決して無理な生き方だ」

 

本当に聖人気質なコリオにハジメは嫌ではないがその生き方は受け入れ難い気持ちだ。そんなハジメの言葉にコリオは笑って言った。

 

「えぇ、そうでしょうな。儂の生き方は少々、窮屈です。しかし、それでもこの生き方を是として選んだ。この世が自由の意志の下にあらんことを(・・・・・・・・・・・・・・)願うばかりです」

 

「………!」

 

その言葉にハジメは目を見開き手に持っていたコップを落としそうになるほど驚愕した顔でコリオを見る。それに対してコリオも含んだ笑みを見せる。

 

「コリオさん……アンタは………」

 

「この言葉は友の受け売りです。儂は詳しい事情は分かりませんが、ハジメ殿は知っているらしい。いや、大迷宮を攻略したからこそ知ったのでしょうな」

 

「……まぁな、詳しいことはこの場では話せないが俺は大迷宮を攻略してその言葉の意味を知り、事情を知った」

 

オスカー・オルクスから真の歴史と彼等の神への反抗の理由をその重要さを教えて貰った。

ミレディ・ライセンと話し、彼等の想いを知った。

 

今は二人のことしか分からないが、他の解放者達も同じ思いを抱き理不尽な戦いでも諦めず抗い続けたのだろう。

 

ならば、己は何を抱いて戦うのか?

 

それは勿論、既に決まっている。

 

そうハジメはこの世界で出会った吸血鬼の少女とウサ耳の少女を、長年共にいてくれた幼馴染の二人、そして、夜空に浮かぶ星々を眺めつつ、今は離れてしまっている親友と愛しの恋人の姿を夜空へ移しながら手を伸ばすハジメは己の決意を語る。

 

「──俺は、俺にとって大切な人達を守る為ならば神だって殺してみせる。それが大迷宮を攻略して俺が得た答えだ」

 

決して揺らぐことはないだろうハジメの決意を聞いてコリオは一瞬、目を見開くがすぐに穏やかな笑みを浮かべた。

 

「比喩だとしても神を、ですか。ふふ、それは物凄い強く鋭い信念だ」

 

「思ったよりキレねぇな。一応、聖職者の前でヤバイことを言ったんだが………」

 

「それはそれですよ」

 

そう穏やかに笑うコリオにハジメは目の前の人物は相当な変わり者だろうと再確認した。

 

そうコリオとの談笑を続けていると声が掛かる。

 

「あ、南雲くん!」

 

振り超えるとそこには清水を看病してるはずの愛子がいた。

 

「先生? どうしたんだ?」

 

「清水くんが目を覚ましたので呼びに来ましたっ」

 

「!」

 

愛子の言葉にハジメは目を見開いて席から立ち上がる。すると、隣にいたコリオが笑って答えた。

 

「行ってあげなさい。ニールスさんには私から言っておきます」

 

「──感謝します」

 

コリオの気遣いにハジメは言葉を改めて感謝の意を口にしながら頭を下げる。そして、愛子と共に清水のいる宿へと向かうのであった。

 

「南雲ハジメ、か…………」

 

離れていくハジメの姿を暖かな目で見送りながらポツリと独りごちる。

 

「『神々が動いた瞬間、時代は必ず動く。そして、自分達にとっては反撃の刻である』でしたか……はてさて世界はどうなることやら……」

 

嘗て、友が連れていた神官の青年の言葉をふと思い出す。そして、懐かしむ顔で星々が煌めく夜空を見上げるのであった……。

 

 

================================

 

 

愛子に連れられ、清水の休む宿に向かったハジメは彼のいる部屋の扉を二、三回ほど軽くノックする。すると、扉の向こうから清水の声が聞こえだす。

 

「ん? 先生すか?」

 

清水は先程まで自分を看てくれていた愛子が戻ってきたのだと思ったのだろう。

 

「俺だ清水。先生も隣にいるが今、部屋に入っても大丈夫か?」

 

「! 南雲?!おお、構わない」

 

ハジメの訪問に少しばかり驚きの声を上げる清水だが、すぐに平静を取り直しハジメの言葉に応える。ハジメも清水からの了承を得たのでドアノブを回して部屋に入る。

部屋に入るとベッドに座る清水が元気そうに入ってきたハジメと愛子に出迎えていた。

 

「よす、南雲。後、先生も」

 

まだ表情は魔力が戻ってきてないのか疲れが見えるが元気そうな声で話しかける清水にハジメは安堵の息を漏らす。

 

「容態はどうだ?」

 

「おう、なんとか。ほら、傷すらないし」

 

ハジメの心配の声に清水は平気だと上着を脱いで数時間前までレーザーで貫通されて風穴になっていたはずの胸元を見せる。

 

「本当だな」

 

元通りとなっている胸元を見てハジメは、あの白ローブを起こした奇跡の光景が鮮明に蘇る。風穴を空けられ死の寸前だった清水を一瞬にして回復……いや、元通りにまで再生させたのだ。

 

──神代魔法の一つ〝再生魔法〟

樹海の大迷宮の鍵でもあるこの魔法は何処で獲得したのかを問い質したかったが事態が事態だった為、次に会った時は必ずとっ捕まえてやろうと心の中で意気込んでいると、何か言いたそうな雰囲気で愛子がハジメを見ていた。

 

鬱陶しさはないが視線をコロコロ動かす愛子の様子にハジメは首をは傾げる。すると、意を決したのか愛子はハジメの方へ向き直ると口を開き質問する。

 

「その、南雲くん………清水くんを救ったあの魔法こそが貴方が言っていた〝神代魔法〟なんですね?」

 

「………ああ、その通りだ先生。あれこそが〝神代魔法〟だ」

 

「そ、そうなんですね………アレが神代魔法……」

 

有識者であるハジメの言葉を聞いて、自分達が使っている魔法以上の奇跡。その言葉にも表せない凄まじさに愛子はなんとも言い難い顔をする。

すると、今度は傍で聞いていた清水が首を傾げた。

 

「神代魔法?なんだそれ?」

 

「あー………」

 

「……そうえば清水くんには話してなかったですね。清水くんにも話しても大丈夫ですか南雲くん?」

 

一応、事情を知らない清水にも話してもいいかと聞く愛子に対してハジメは自分の顎に手を付けてから暫し考えてから頷いた。

 

「まぁ、清水なら信頼できるだろうし……大丈夫だろう」

 

「ありがとうございます。では、清水くん、今から私が話すことは他言無用です」

 

「え、あ、はい」

 

ハジメから許可を貰うと愛子の話は再開する。その様子に、まだ少し困惑気味な清水だが、しっかりと彼女の言葉に従い耳を傾ける。

 

「清水くん、今から話すことは南雲くんが大迷宮を攻略して得たこの世界の真実です」

 

「世界の、真実………それはまた……」

 

大仰な。と、ハジメが大迷宮を攻略していたことにも驚きだが、それ以上に〝世界の真実〟という余りにもスケールのデカい内容に圧倒される清水。しかし、次の愛子の口から語られる話の内容は想像以上のものだった。

神々、解放者、神代魔法、七大迷宮、数千年以上続く歴史の真実を突きつけられた清水は驚愕のあまり頭を痛める様子。

 

「つまり、この世界は神……いや、神々にとって遊戯の盤上。そして、南雲はその神々を倒すために大迷宮を攻略して〝神代魔法〟を集めてる旅をしている、と……」

 

「……信じられねぇか?」

 

「いや、信じるよ。ただ、神なんていう存在が本当にいたんだなーって思ってな……」

 

やはり、いきなり自分達をこの世界に招き入れたのは本当に〝神〟なのだと知っても微妙な表情をする清水を見てハジメが悟られせるのように言う。

 

「それについては俺も驚いたが、逆に考えれば異世界への転移もそうだが、魔法とか摩訶不思議な力を使えるように俺達に改造(・・)を施したのは神という高次元存在なら納得できる」

 

魔法……というよりも人が魔力を生み出し、全身に魔力を生き渡させるのに必要な〝魔力回路〟と魔力を生成、外の空気に入り混じる魔力を蓄積する役割を持つ〝魔力機関〟という疑似神経と疑似臓器。

そんなモノを己の肉体に拒否反応もださせず定着させるという神業を成せる存在は神以外いないだろう。

そうハジメが現段階で行き着いた仮説にハッとする清水と愛子。

 

「確かに、そうですね。元々、私達にとって魔法は空想やファンタジーな類いのもので、それを扱うための疑似神経や臓器など元々ありませんでしたし……」

「それなのにこの世界に来た瞬間に俺達は、その力をまるで分かってるかのように扱えるようになった……そこにまで考えつくことはなかった。流石、南雲だな」

 

納得といった表情を見せる二人。だが、ハジメはまだこの仮説で伝えてないことがある。

 

「(そもそも、俺達には魔力回路と魔力機関が既に元々あって(・・・・・)、それを使えるように神の野郎が使えるように鍵を開けたのか……まぁ、どっちにしろ改造された事実には変わりねぇがな)」

 

しかし、もしこの仮説が本当であれば自分達の世界もファンタジーかもしれないと苦笑を漏らすハジメ。すると、腕を組んで何かを考えていた清水がハジメに質問する。

 

「けどよ南雲。神なんていう化け物を殺せるか分かんねぇ存在と戦うよりも地球に向けての帰還だけを目的にはしないのか?」

 

清水のハジメの話を聞いた上での意見。それは、神なんて化け物と戦うよりも神代魔法を集めて自分達の世界へ帰還した方が楽だという意見。それを聞いて愛子は少しばかり苦い顔をする。

 

「清水くん。そ、それは………」

 

「先生。貴女の言いたいことは分かってる。確かに俺の言い分は冷たい。だが、神も魔人族も其れはこの世界の事情だ。違う世界から勝手に召喚されて年端もいかないガキな俺達に戦いを強要する世界に思うところは、俺にはあまりないです」

 

「………っ」

 

清水の言葉に否定できない愛子。確かに子供達を守るべきである教師としては清水の言い分には賛成だ。しかし、数ヶ月の間でもこの世界の人達と交流し仲を深めて情が湧いてしまい、それを許容できない自分がいる。

そんな何も言えずに萎縮する愛子を見た清水は今度はハジメにも同じように問い掛けた。

 

「南雲はどうなんだ?」

 

そう問い掛ける清水の質問にハジメはあっさりと返す。

 

「俺の方針は変わらない。神代魔法を全部集めてから神共をぶっ殺してから優花達と共に地球へ帰る。それだけだ」

 

「……死ぬかもしれないぞ?」

 

「そんな心配はもうオルクスで捨てたさ」

 

「でも、神を殺す必要があるのか? 聞いた限り、神はこの世界だけを盤上の遊戯にしてるらしいが……」

 

「それでもだ」

 

清水の反論に歯牙にもかけないハジメは口を開く。

 

「そもそも、俺は神々が気に入らねぇんだ。まるで、その積み重ねた歩みを、紡いだ歴史を、築いた関係をまるで破り捨てるようなゲスい真似をして天上で嗤ってやがる奴等を許せねぇ」

 

その言葉と同時にハジメの目つきが鋭くなる。

この世界は簡単に言い表せば鳥籠だ。神々によって〝造られた幸せ〟を興じる世界。しかし、それは本当の自由ではなく偽りの自由の元、人も、亜人も魔人も生きている。

そう考えると魔人族と人間族の戦争もコレも唯の舞台装置に過ぎない。数千年続ける目的は分からないが、それでも神々は何らかの干渉でこの種族間の戦争を永遠に続けさせられている。

多くの血が流れているのに止まることはない……できないことにハジメは許せなかった。

 

「それに、俺達が此処に喚ばれた理由も気に食わねぇ」

 

オスカー・オルクス、ミレディ・ライセンといった解放者達から得られた情報から自分達がこの世界に喚ばれた理由も理解できた。

自分達の役割は単なる火付け役なのだろう。何か大きな事態を引き起こさせる為に大事な大事な起爆剤なのだと。

故に、神の使徒と呼ばれ教会や王国に丁重に扱われ、神輿に挙げられている。

それにハジメは良しとしない。

 

そして、ハジメにとって最も許し難いことは………

 

「奴等が好き勝手に動く俺に干渉してこないという道理はない。だが、それで狙いを俺に定めず優花になにかしてくるのならば、俺は絶対に容赦しねぇ……」

 

大切な恋人である優花が誰かの駒のように扱われることだけはハジメにとって到底、許し難い行為であり、万死に値すること。想像するだけで壮絶な怒りと殺意が湧いてしまいハジメから無意識に放たれた尋常じゃない圧を肌で感じ取った清水と愛子は顔が蒼白に染まる。

 

「「っっ!?」」

 

突然の重圧に息が詰まる二人。無意識に殺意を漏らしたことに直ぐに気付いたハジメがヤッべと少し焦りながら圧を解くと共に謝罪する。

 

「いや……本当にすまない先生、清水。つい感情的になっちまった」

 

「い、いや構わない。南雲が園部さんが大事なのはよく、まじでよく分かっていたしな」

 

「そ、そうですねー。お二人の仲の良さは教師の間でも有名でしたから……ま、私的にはあまりああいうスキンシップは控えて欲しいところですけど………」

 

転移前からハジメと優花のイチャイチャを見てきた(見たくなくても視界に入る)清水はハジメがそんな反応はするのは仕方ないと思いつつもゲンナリし、愛子も転移前から二人の仲の良さを知っているし応援している。たが、教師としては校内で砂糖吐き出す甘々空間を作らないで欲しい気持ちであったが……。

 

そう言って、意味ありげな視線を送る二人に、少し気まずそうに目線を逸らしながらハジメは話題を元に戻す。

 

「ま、俺も清水の言う通りに神々の野郎を無視して元の世界に帰ろうという案は考えたんだが……それだと十中八九の割合で神々が邪魔に入るだろうと予想できちまってな」

 

「どうしてだ?」

 

「だって、俺達を召喚した存在だ。帰還を邪魔できる術は幾らでも持ち合わせてるのは確実だろうしな」

 

そんなハジメの的確な指摘に、あっとなる二人は安全に元の世界に帰るれるという選択肢はないと理解し目を伏せる。

 

「そっか……それは盲点だった」

 

「私も、帰れるかもしれないという事実に少し楽観的に捉えてました。教師として面目ないです」

 

そんな二人の反応につい苦笑いをこぼすハジメは安心させる為にかまだ計画段階中のモノを二人に教える。

 

「俺も、クラスメイト達が安全に元の世界へ帰れる方法を模索はしているが、まだ神代魔法も集まりきってないしな。帰還についてはまだ少し待っててくれないか」

 

「本当に、戻るつもりは無いんですね……」

 

「あぁ、まだ戻るつもりはない」

 

やっぱりハジメが皆の所に戻らないと口にすると、二人は少し寂しそうに俯いた。しかし、申し訳ないと感じるがハジメは突き進むしか道はなく、立ち止まってはいられないのだ。

 

「だから、清水。頼みがある」

 

「ん、なんだ?」

 

突然のハジメの頼みという言葉に少し驚きつつも清水は応える。

 

「今回の〝怪物氾濫(スタンピード)〟で俺の冒険者ランクは金ランク以上の昇格は確定らしい」

 

「「!」」

 

ハジメの言葉に二人は驚愕を浮かべる。

 

冒険者ランク金以上の昇格。つまり、ハジメは第一級冒険者の仲間入りになるということ。愛子も清水でも冒険者ランクのことは頭に入っており、第一級冒険者ならば国でも騎士団長クラス……つまり、メルドと同格の強さを持つということだ。

 

「それと同時に先生も今回の件で〝豊穣の女神〟の名は確実に広まるだろう」

 

「ふぇっ?!」

 

「豊穣の女神ぃ?」

 

続くハジメの言葉に愛子は突然の自分の二つ名に赤面し、事情を知らない清水は首を傾げる。だが、事情を知る愛子は少し動揺しながらもハジメに問うた。

 

「そ、その南雲くん? それはどう意味でしょうか?」

 

「ん、言葉の通りだ。〝豊穣の女神〟が世界各地で広まり、先生の名声が高まる。以上」

 

「以上じゃありませよ! もう少し詳しく説明してください!!」

 

顔を真っ赤にして喚く愛子にハジメは面倒くさそうな顔をしながらも清水にも説明が必要と感じ、先の事情についてと自分の思惑を話すと清水は人を恐ろしいモノを見るような顔付きになる。

 

「うわぁ……ひでぇな南雲。幾らで優しい愛子先生でもそんな役割を押し付けるのはどうかと思うぜ?」

 

「そうですよ!! そんな大層な役割なんて絶対に私では務まりませんですって!!」

 

「いやぁ、こうでもしないと俺はともかく教会の奴等が好き勝手する前にちゃんとクラスメイト達を守れる抑止力が必要だったし、俺の中では先生が適任だったんだよ」

 

「で、ですがっ……」

 

「俺は第一級冒険者になるが、神の使徒であることは隠すつもりだ。だから俺という存在は教会に対する抑止にはなれない。けれど、神の使徒の一人で今回の件で〝豊穣の女神〟として名声を高めつつある先生ならば教会の奴等も先生の言葉を無下にできなくなる」

 

「つまり、愛子先生には俺達が教会の道具になるのを止める……制限させる存在になって欲しいってことか」

 

「ああ、転移時にイシュタルの爺と制約を交わしたが俺が居ない今、反故にされる可能性もあるしな」

 

転移時の際に光輝(バカ)がイシュタルの話を鵜呑みにする前にハジメが割って入って交わした制約。しかし、その交わした本人であるハジメが居ない今、イシュタルはその制約を反故にする可能性は十分にある。そして、それを指摘しても教会側が光輝を言いくるめれば他のクラスメイト達の大半は光輝の言葉を信じる。

これにより、最悪のサイクルが完成してしまう。

 

「それを回避する為に私という抑止力、ですか」

 

「ああ、今の先生の言葉なら天之河は勿論、教会も強くは出ることは難しいだろう。だから、先生にしかできない頼みなんだが………」

 

ハジメの頼みに最初はそんな大層な役を押し付けられるような形で若干、眉を八の字にしていたが段々とハジメの言いたいことを理解した愛子は一転して声を上げた。

 

「分かりました。この世界の真実からしても教会に生徒達の身を預けるのは教師として看過できませんし、〝豊穣の女神〟としてあの子達の後ろ盾になってみせます!」

 

「ええ、頼りにしてます」

 

やってやります!と言わんばかりの顔でやはり、この人物はやる時はできる人なのだ。そう愛子の人柄を純粋に尊敬するハジメは彼女に感謝の言葉を告げると、続けて清水の方に顔を向けた。

 

「そして、清水には……」

 

「いや、言わなくても俺の役割は理解できたよ。俺には先生の護衛を頼みたいんだろ? 任せろって」

 

「そっか……ありがとな。清水」

 

「なに、大事な友人の頼みなんだ。断る理由がないよ」

 

それも自身が憧憬を抱く人物からの頼みを断る理由がない清水は二つ返事で頷いた。

 

「フフっ」

 

そんな様子を見ていた愛子がつい笑みをこぼす中、突如、扉からノックする音が聞こえると同時に聞き慣れた声が部屋の中にいる三人の耳に入る。

 

『おーい、ハジメっち〜、愛ちゃんセンセー、清水っちーが目を覚ましたって聞いたんだけどー!』

 

『……ハジメさぁん! 一緒にお料理食べましょうー。先生さんも清水さんもご一緒に───』

 

『奈々っ。うるさい!』

 

『……シアもうるさい』

 

『『アダっ?!』』

 

向こうの方から元気印の幼なじみとウサ耳少女の声とそれを諌める二人の少女達の声。気配を探れば玉井達男子組も居ることが分かる。

皆、清水が目を覚ましたと聞いて此処に来たのだろう。

まぁ、そんな人数で来て貰ったのはいいが愛子と清水にどうする?といった顔を向けるハジメ。

 

「そう、ですね。私もお腹が空きましたしね」

 

「俺もずっと寝てて何か食いたいしですし」

 

その言葉に対して愛子はフフと笑みを零して席を立ち、清水も腕をぐっと伸びをしてからベッドから立ち上がり支度を始める。

 

「じゃ、俺は先に行っとくよ」

 

話す事は話したし用件も済んだハジメは先に出ようとドアノブに手に掛け扉を開く。すると、

 

「……ん、ハジメっ」

 

「お?」

 

「ん♪」

 

部屋から出てきたのがハジメと分かると金髪の吸血少女が飛びかかるのを見て、ハジメは軽く彼女を抱き留めると彼女は嬉しそうに顔を綻ばせる。そして、それを羨ましく感じたのかウサ耳少女も「ユエさんだけズルいですぅ!」とハジメのもう片方の腕に抱き着いた。

その絵図に奈々が意味ありげな笑みを浮かべ、妙子がキツイ視線を向けてくるが二人が離れる様子がないのでハジメは耐えるしかない。

 

神代魔法、魔人族、神々……そして優花の事もある。まだ、多くのことは山積みなのだが、こういう日もあっても良いだろう、とハジメは、抱き着く二人の少女の頭を撫でながら軽く笑みを零すのであった……。

 





次の四章から大筋は変えませんが色々と話を変えるつもり予定です
─主な改変内容
・各キャラのステータスの変更
・ストーリーの展開の変更
・ストーリーの付け足し
といった改変を行うつもりなのでお宜しく願いします。

質問などあったら感想欄等で(*^^*)

愛子はハーレムに入れるか入れないか

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