四十話 フューレンへ再び
宴の夜も過ぎ朝日が昇り始めた頃、【ウルの町】の門の近くには多くの人が集まっていた。集まってきた者達の多くは誰もが名残り惜しそうな表情だ。
理由は簡単で、本来のウィル・クデタの捜索依頼を達成したハジメ達はウルの町から発としていたからである。行きよりも人数が多いことから二輪の〝シュタイフ〟ではなく魔力駆動四輪〝ブリーゼ〟を宝物庫を取り出すハジメ。
しかし、ウィルだけならばシュタイフに取り付け可能なサイドカーを使えばいいのだが、増えたのはウィルだけではなくティオが正式にハジメ達の旅の仲間入りした為でもあった。
昨夜、新たに清水や愛子を連れて宴に戻ってきた際、ハジメはティオに話し掛けられた。
『おや、ご主人様? 友人と色々と話すことは終わったかの?』
『あ、ティオか? まぁな……でも、〝怪物氾濫〟の前にも聞いたが本当に俺達の旅に着いて来るのかよ?』
『うむ。当初の妾の目的は王国──いや、教会が異界から喚び寄せた者達と新たに現れた勇者の調査なんじゃが……』
『おい、そんな重要な事を俺に言っても良いのか?』
『別に減るもんでないしのぅ……それに其の目的の調査対象はすぐ傍におるようじゃしのぅ〜』
そんな呑気に聞こえる彼女の言葉の裏側にはっきりとした事実を理解したハジメは溜息を一つ。
『そうかい。それで、ティオはどう思う?異世界から喚ばれた俺達の存在は現時点から見て?』
ユエから嘗て亜人最強の種族と呼ばれる竜人族である彼女の目から見てハジメ達〝神の使徒〟はどう映ったのかと聞くと、のほほんとしていたティオの表情に真剣味が帯びる。
『そうじゃな。一言申すのなら
その言葉を皮切りにティオは語る。
『まず、お主等の天職。聞けばほぼ全員が戦闘職と聞く。それだけでも凄まじい。加えて非戦闘職でも愛子は稀有な〝作農師〟と聞く。それなら魔人族が狙わないはずはなかろう』
他に挙げるなら、技能、ステータスもこの世界の者達よりも極めて高いものだろうと口にするティオ。勿論、正解であるが、彼女が最も警戒していたのは〝勇者〟らしい。
『三十年ほど前にも〝勇者〟の天職を持って生まれた者がいたんじゃがな。その時に
『!……本当かそれは?』
ティオの言葉に驚きを示すハジメ。三十年前にも勇者がいたのは驚もいたが、続いて彼女が言った〝天の者共〟。それはつまり……
『
『わからん。その時は大きな魔力の乱れと天からの高濃度の魔力の感知したあとに其の勇者が死を確認したぐらいじゃからな』
『そうか……じゃあ、お前達が警戒してんのは勇者ではなく、神々ということ、か?』
『うむ。余り詳しくは語れないのじゃが、彼奴らとは多少因縁があるのでな』
そう言い切るティオの瞳に若干、黒く濁って湧き上がる怒りを抑えているように見えたのだが、ハジメは敢えて見ないことにして流すことにした。すると、其のハジメの気遣いに気付いたティオがポツリと問う。
『……聞かぬのか?』
『聞いて欲しいのなら聞くが、そうでもないだろ? なら、話せる時が来たのなら待つし、ずっと言わなくてもいい』
『………ご主人様は優しいのじゃな』
あの時もそうだったが、ハジメの優しさにティオは自然と笑みを零す。
『そうでもねぇよ。ま、長い付き合いになるか分からねぇがこれから宜しく頼むよティオ』
『うむ。コチラも宜しく頼むのじゃ!』
そうしてティオことティオ・クラルスはハジメ達の仲間入りを果たしたのであった。
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そんなことで旅する仲間が増えたハジメはユエ、シア、ティオ、ウィルの四人が乗車するのを確認すると共に、町を代表して大量の荷物を抱えて現れたニールスと話をしていた。
「むう、しかしハジメ殿。随分とお早いご出立ですな」
「ああ、すまない。こっちもそろそろウィルの無事な姿を見せないといけなくてな」
ニールスとしては町を救った英雄方にもう少しおもてなしをしたかったのだろう。しかし、ハジメもハジメでイルワからの依頼をさっさと終えて迷宮攻略を再開したかった。
その為に朝早くからの出立を選んだ。
そんなハジメの言葉を理解しニールスや重鎮達は町の危機を救ってくれたハジメ達に口々と感謝を伝える。
「なら、ハジメ殿にこれを。私達の感謝の印です」
そう言ったニールスから贈られたのは袋一杯に包まれた大量の食料と香辛料だった。これには少しは驚くハジメは本当に貰ってもういいのかと返してしまう。
「おい、こんなに貰ってもいいのか?香辛料とかも貴重だろ?」
「いいんです、ハジメ殿。これは私からの個人的な礼なので」
「そうかい。なら、有り難く貰っとくよ」
ハジメはそう言って貰った食料を〝宝物庫〟へ収納する。
「じゃ、また近くに寄ったら邪魔するよ」
「ええ、またいらして下さい。我々も盛大に歓迎するので」
そう言ってハジメとニールスは握手する。ハジメは事が終えたら、今度は優花と共にまた行こうと思うのであった。
そして、ニールスや町の重鎮達が去ると、今度は愛子を先頭に奈々と妙子、清水達が来ていたのを見て向き直るハジメ。
「南雲君、もう行くんですね」
「あぁ、スマンな先生。こっちもそろそろウィルを連れて帰らないいけないしな」
「本当に、戻るつもりは無いんですね……」
「あぁ、昨日にも言った通りまだ戻るつもりはない」
「ハジメ……」
「ハジメっち…」
やっぱりハジメが皆の所に戻らないと口にすると、全員が少し寂しそうに俯く二人。男子組も少し残念そうだ。
幼なじみの二人は特に暗い表情で、困ったハジメは頬を片手でポリポリ掻きながら二人に話しかけた。
「あー、奈々、妙子、お前達に渡す物がある」
「ん、私達に?」
「えっ何?」
ハジメはそう言って〝宝物庫〟から二つのアーティファクトを取り出し、二人に投げ渡した。
「これって」
「妙子のソレは取っ手に刻まれた魔法陣に魔力を流すと硬質化と風の斬撃を飛ばせるといった魔力鞭。名は〝トルネーグ〟。操鞭師のお前なら柔軟に扱えるだろ」
「すっ、凄……。ありがとっ、ハジメ」
突然、渡されたアーティファクトの性能に少しばかり驚愕する妙子であるが嬉しそうに渡されたトルネーグを摩る。
「そして、奈々のは使い手の魔力で形を変える杖。名前は〝ティアリスロッド〟。持ち手の先端には神結晶を加工した魔力タンクを取り付けてるから氷術師の奈々にうってつけの代物だ?」
「わぁ〜綺麗…。ありがとっ、ハジメっち!」
「二人が喜んでくれたなら何よりだ。それと清水はコレをやるよ」
嬉しそうにティアリスロッドを振るう奈々を微笑ましく感じながら清水にも専用に作ったアーティファクトを取り出す。
「これは?」
「それは最近獲得した〝対魔力〟を付与して防具だ。まだ試作品だが初級魔法程度なら完全無効化できる代物だ」
そう言ってハジメから渡されたのはローブを羽織る清水にとって動き易いように作られた
「いや、滅茶苦茶軽いし、初級だけでも魔法の完全無効化はスゲェよ。でも、こんなモノ受け取っていいのかよ。それなら宮崎さんと菅原さんの方がいいんじゃないか?」
「いや、それも考えたが……二人と後、先生にはコレだ」
そう言ってハジメは三人に腕輪を渡す。
「ハジメっち、コレは?」
「魔力を充填させないといけないがユエの障壁魔法を込めた腕輪だ」
「トンデモナイ代物ないじゃないですか?!」
「俺のよりもスゲェ奴じゃん!?」
あのミツマタノヅチの
「ま、そんな訳で安心しろ。なんなら清水も貰っとくか?」
「いや、流石に遠慮しとく。この鎧だけでも充分だ」
「そうか。喜んでくれてなによりだ」
「「「……………………」」」
そんなやり取りをしてると傍から物欲しそうな目でこちらを見ている男子三人組。ハジメも視線を感じてか男子生徒達の方へ視線を転じる。
「……何だよ、お前等?」
「南雲っ! 」
「南雲さん!お願いしますっ!!」
「俺達にも何か渡して欲しいな〜」
「……ハァ」
視線からして男子組の考はあるていど見当がついていたので、適当に試作品や鍛錬の時に制作していた折に出来がまぁ良かっモノをポイポイっと投げ渡した。
すると、男子生徒の玉井が声を上げる。
「おい、南雲。絶対これ適当だろ!」
「そうだぞ!」
「流石に投げやりすぎるって!」
ブーブーと抗議する男子組を無視してハジメは、さっさとブリーゼに乗り込んだ。そして、窓を開けてハジメは最後に別れの言葉と共に愛子に真剣な表情で告げた。
「……先生、世界が変わっても俺達の先生であろうとしてくれている事は嬉しく思う……。出来れば、これからも何があっても例え、生徒の死があったとしても折れないでくれ」
「───分かりました。南雲くんも、お気を付けて!」
「早く優花にも顔を見せてあげてよね」
「ハジメっちも皆もまたねー!」
ハジメの言葉を真摯に受け止め愛子は頷きがてらに別れを告げ、それに続き妙子と奈々。清水達も手を振る。
「ああ、そっちも元気でな」
片手を挙げながら愛子達に別れを告げたハジメはアクセルペダルを踏み、ブリーゼを走らせる。そして、愛子達に手を振られながらハジメ達一行は【ウルの町】を後にするのであった……。
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フューレンの商業区の中でも外壁に近く、観光区からも職人区からも離れた人気のない一角に建つ大きな建物がそこにあった。
そんな建物内は外の異様な静けさとは真逆だった。
「なにチンタラしてやがるんだ!!」
「ヒィっ!ス、スミマセン!!」
建物の最上階の部屋から空気が震えるほどの怒鳴り声を上げる男の前で土下座する商人の格好を姿をした男。彼の後ろに控えるチンピラ達も男の怒気に呑まれ顔を真っ青になっている。
そんなことも露知らず怒鳴り声を上げた男こと裏世界三大組織の一つ人身売買の総元締をしている裏組織──〝フリートホーフ〟の頭であるハンセンは土下座して謝る男の胸倉を掴み力任せに男を起こす。
「目を離した隙にイチオシの
「スミマセン、スミマセン、スミマセン!」
「王国が保護するせいで取り引きされることが滅多にねぇ海人族のガキなんだぞ! 他の亜人とは比べられないほど値が張るんだぞ!!承知してんのかテメェは!?」
「り、理解してます!なので、今も下の奴等を総動員して捜索に回っておりやす!!」
「じゃあなんで見つかってないんだ!あぁ!?」
「ヒィィィっ!」
ハンセンが怒っているのは次のオークションで目玉となる
その商品は凄く希少性が高く下手したら数千万ルタ程の価値があるため、フリートホーフは大々的に告知していた。
しかし、オークション前日にこの様だ。
「クソが!」
「──ブべっ!?」
ハンセンは怒りのままに掴んでいた男を投げやりに床に放り投げる。男は突然のことで上手く受け身できずに床に倒れ込む。対してハンセンは多少、溜飲が下がったのか不機嫌ながらもソファーに腰掛け低い声で話し出す。
「必ず明日のオークションが始まるまでになにがなんでも海人族のガキを探し出せ。でないとどうなるか分かってるな?」
「ハ、ハイ!承知してます!」
床に転がってた男はすぐに立ち上がってハンセンの言葉に何度も首を縦に振る。ハンセンは怯える男に向かってとある商品を見つけだすためにとあるモノを部屋から連れてくる。
「なんならコイツを使ってもいい」
そう言って奥の部屋から現れたのは二足歩行の
突然の魔物の登場に男はおろか控えていたチンピラ達までも恐怖して腰を抜かしてしまってる。
「ボ、ボス。ソイツはま、魔物ですかい?」
男の質問にハンセンは不機嫌ながらも淡々と答えた。
「ああ、コイツの名はゾクトニア。魔人族領でしか生息していない通称魔法殺しの二つ名を持つ魔物だ」
「術法殺し? それにま、魔人族領ですかい? しかしなんでそんな魔物を?」
突然のワードの連発に戸惑いを見せる部下達にハンセンは少し眉を顰めるも答えた。
「ちっ、
「二十って………しかも計画って、アレのことですかい?!」
ハンセンの言葉に、周りのチンピラ達のなんのことか分からず困惑してるが、商人服の男は幹部の一人であり計画を知っていたのか驚愕している。そんな驚愕してる男にハンセンは鋭い視線をぶつけながら怒りを顕にさせる。
「いいから、テメェはとっとと商品を探しに行ってこい!!」
「へ、へい! 行くぞ、お前達っ」
『は、はい!』
男も流石にこれ以上、怒られたくなかったのか急いで部下達を連れて部屋から逃げ去るように出ていく。
「チッ、ノロマ共め」
ハンセンは逃げるように出ていく部下達に苛立ちながら机に置かれた酒を飲み干すとソファーに寝転がる。そして、傍に立つゾクトニアを見る。
ハンセンは目の前の一体をはじめ今回の取り引きで受け取った全てのゾクトニアの制御権を持っており、この強力は魔物達を自分が支配しているという事実に怪しい笑みを浮かばせる。
「ああ、俺がこのフューレンを手に入れるためにお前等には役立って貰おうか」
こうして、フューレンの潜む闇が密かに動き始めるのであった……。
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北の山脈地帯を背にブリーゼが砂埃を上げながら南へと街道を疾走する。何年もの間、何千何万という人々が踏み固めただけの道であるが、ウルの町から北の山脈地帯へと続く道に比べれば遥かにマシだ。サスペンション付きの四輪は、振動を最小限に抑えながら快調にフューレンへと向かって進んでいた。
その道中、車内で運転しながらハジメは清水と愛子の件でシアに感謝を口にする。
「シア、清水の件は助かった。お前の〝未来視〟がなかったら先生までも危なかった」
「いえいえ、それ程でも〜」
ハジメの純粋な感謝の気持ちが伝わったシアは頬を赤らめ嬉しそうにウサ耳をピコピコしていた。
「だから、なにかお礼がしたいし、シア何か要望があったら言ってくれ。 でも、出来る範囲の奴で頼むよ」
「へっ!?」
その言葉に少し戸惑いを見せキョドりだすシア。仲間として当然の事をしたと考えていたので、少々大げさではないかと思う。その間に「う、う~ん」と唸りながらシアは、少し考えた後、何か思いついたのかにへら~と笑い、ハジメに視線を転じた。
「では、私の初めてをもらっ「却下だ」……じょ、冗談ですよ〜。私、そんなことしたら優花さんに出会った瞬間、ボコボコにされるかもしれませんし〜」
「はぁ……冗談も程々にしとけよ。それに、お前は優花を何だと思ってるんだ?」
シアのお願いに頭を痛めるハジメ。彼女は冗談と言っているが、本心は分からない。それに優花に対するイメージが少しアレじゃないかと思う。対して、シアは軽快な笑みを見せるが顔が真っ赤になってるのは車内にいる誰もが分かっていた。
「アハハ……。では、ハジメさん私とデートして欲しいです。なので、フューレンに着いたら、観光区に連れて行って下さいね?」
「ああ、わかったよ」
笑みから一転して少し恥ずかしそうにお願いするシアに少し可愛いと感じながら彼女のお願いを了承するハジメ。すると、隣の席のユエと後ろの席に座るティオが羨ましそうな視線をシアに送りつつ一言。
「……良いな、シア。私もハジメとデートしたい」
「そうじゃなぁ〜、新参者であるがご主人様との逢い引きは少し羨ましいのぅ」
「や、やめてください。そんな視線を私に向けないでください恐いですぅ……」
二人の視線にビクビクするシアを見て、ハジメは溜息一つしてから助け舟を出す。
「……ユエ、ティオ。時間があったならお前達ともデートくらいするから今回はシアに譲ってやってくれないか?」
「……ホント?」
「ホントかの?」
「ホントだ、約束する」
「「ん、分かった(のじゃ)」」
そんな会話を車内でしながら一行は中立商業都市フューレンへと向かった。ちなみに同乗していたウィルは会話に着いて来れず顔を真っ赤にさせて「大人な会話だなー」と、窓から景色を眺めるのであった。
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世界最大の商業都市【フューレン】は相変わらず盛大な活気に満ち満ちていた。都市の周囲を丸ごと囲む高く巨大な壁の向こうからは、まだ相当距離があるというのに町中の喧騒が外野まで伝わってくる。
これまた門前に出来た相変わらずの長蛇の列、唯の観光客から商人など仕事関係で訪れた者達まであらゆる人々が気怠そうに、あるいは苛ついたように順番が来るのを待っていた。
しかし、人々の耳に聞き慣れない音が聞こえ始めた。
キィイイイイイイイ!!!という甲高い音が微かに聞こえ始め列の後方に並んでいた者達が振り返ると見たこともない黒い箱型の物体が猛烈な勢いで砂埃を巻き上げながら街道を爆走してくる光景を目撃して、「おへぇ?!」と奇妙な声を上げながらギョッと目を剥いた。
にわかに騒がしくなる人々。すわっ魔物か!と逃げ出そうとするが、箱型の物体の速度は想像以上のものであり、気がついたときには直ぐそこまで迫っていた。
そして箱型の物体はギャリギャリギャリと尻を振りながら半回転し砂埃を盛大に巻き上げながら急停止した。
停止した物体、魔力駆動四輪──〝ブリーゼ〟を凝視する人々。一体何なんだと混乱が広がる中、四輪のドアが開いた。
「相も変わらず長い行列だなぁ」
「……ん。仕方ない」
ビクッとする人々の事など知ったことじゃないと気にした風もなく降りてきたのは当然、ハジメ達だ。ユエとシア、ティオも人々の視線など気にした様子はない。だが、最後に降りたウィルだけは、微妙に顔を引き攣らせながら周りの人達に、お騒がせしてすみません!と頻りに頭を下げている。
ハジメはというと、四輪のボンネットに腰掛けながら、門までの距離を見て「あと一時間くらいかかりそうだなぁ~」と目を細めた。ずっと車中にいて体が凝りそうだったので門に着くまで外で伸び伸びするつもりだ。
ブリーゼは、ハジメが魔力を直接操作して動かしているので、実は運転席に座らなくても操作難度が上がるだけで動かそうと思えば動かせるので列に並ぶ間、車体をベンチ代わりにしつつ徐行ていどの操作なら運転席にいなくても問題はない。
ハジメが肩の凝りを解すように首をコキコキしていると、続いてボンネットに腰掛けたユエが背後に回って肩をモミモミ始めた。どうやらマッサージをしてくれるらしくハジメは、頬を緩め「ありがとな」と感謝を告げると彼女は嬉しそうに頷いた。
ユエに続きティオとシアもボンネットに腰掛けティオは手に持つ扇子を開いてパタパタと仰ぎ、シアは困った笑みを浮かべながらハジメに尋ねる。
「あの、ハジメさん。ブリーゼで乗りつけて良かったんですか? できる限り隠すつもりだったのでは……」
「もう、今更だろ? あんだけ派手に暴れたんだ。一週間もすれば、よほど辺境でもない限り俺達のことも、俺のアーティファクトのことも広まっているさ。いつかこういう日は来るだろうとは思っていたし……予想よりちょっと早まっただけのことだ」
「……ん、ホントの意味で自重なし」
シアの疑問に、ハジメは肩を竦めて答えた。今までは、僅かな労力で避けられる面倒なら避けるべきという方針だったが、【ウルの町】での戦いは瞬く間に各方面に伝播するはずなので、そのような考えはもう無駄だろう。なので、ユエの言う通り、アーティファクト類をできる限り見せないというやり方は止めて、自重なしで行くことにしたのだ。
「う~ん、そうですか。まぁ、教会とかお国からは確実にアクションがありそうですし、確かに今更ですね。愛子さんとか、イルワさんとかが上手く味方してくれればいいですけど……」
「まぁ、先生達とかはあくまで保険だ。それに俺にはそういう後ろ盾は必要ねぇし、最初から、何とだって戦う覚悟はあるんだ。何かあれば薙ぎ払って進むさ。そういうわけで、シア。お前も、もう奴隷のフリとかしなくていいぞ?その首輪を外したらどうだ?」
先生の〝豊穣の女神〟は使徒側の発言権──つまり愛子の地位を押し上げる為にしただけでハジメからしては少し恩恵があれば良い程度しか考えておらず気にした様子を見せていない。
故に、話を早々に切り上げ、ハジメはシアにも奴隷のフリは止めていいと、首輪をチョンチョンとつつきながら言う。手を出されたらその場で返り討ちにしてやれ、もう面倒事を避けるために遠慮する必要はないと暗に伝える。
しかし、シアは、そっと自分の首輪に手を触れて撫でると、若干頬を染めてイヤイヤと首を振った。
「いえ、これはこのままで。ハジメさんから初めて頂いたものですし……それにハジメさんのものという証でもありますし……最近は結構気に入っていて……だから、このままで」
そんな事を言うシア。彼女のウサ耳が恥ずかしそうにそっぽを向いてピコピコと動いている。目を伏せて、俯き加減に恥じらうシアの姿を、ハジメ以外の周りの男達が凝視している。
そんな邪な視線に対して少し不機嫌そうに眉を顰めたハジメは
「じゃあ、もう少しオシャレじゃないとな」
「え?」
微笑を浮かべたハジメは、首を傾げるシアの顎に手を当てるとそっと上を向かせた。その行為に、ますますシアの頬が紅く染まる。ハジメはそんなのを気にせず〝宝物庫〟からいくつか色合いの綺麗な水晶を取り出しつつ、シアの着けている首輪、正確には取り付けられている水晶に手を触れて〝錬成〟をしていった。
結果、黒の生地に白と青の装飾が幾何学的に入っており、かつ、正面には神結晶の欠片を加工した僅かに淡青色に発光する小さなクロスが取り付けられた神秘的な首輪……というより地球でも売っていそうなファッション的なチョーカーが出来上がった。
「……まぁまぁな出来だな」
ハジメは、そう呟いてから、出来栄えに満足の表情を浮かべている。時折、首を時折撫でるハジメの指の感触にうっとりしていたシアは、ハジメから鏡を渡されてハッと我に返った。そして、いそいそと鏡で首元のチョーカーを確かめる。そこには、神秘的で美しい装飾が施されたチョーカーが確かにあった。神結晶のクロスが、シアの蒼穹の瞳と合っていて実に美しい。
「ほぁ〜。私、こんなに綺麗な装飾品を身に着けたのは、初めてですぅ」
シアは、指先でクロスをツンツンと弄りながら、ニマニマと口元を緩ませた。樹海から出たことはないどころか、集落からさえほとんど出なかったシアにとって、宝飾の類というのは無縁の存在だ。しかし、シアとて年頃の女の子。遠くから見た、【フェアベルゲン】の同性が、樹海で採れる水晶などを加工した装飾品で着飾ったりしているのを見て、羨ましいという想いを抱いたのは一度や二度ではない。
故に、初めて身に着けた煌めく宝飾に、自然、心が踊る。しかも、贈り手は自分の懸想する相手なのだ。ウサ耳は既にわっさわっさと喜びを顕にしている。
「ありがとうごさいますぅ! ハジメさぁん!」
シアは、その踊る心のままにハジメの腕に抱きつくと、にへら~と実に幸せそうな笑みを浮かべながら額をぐりぐりと擦りつけつつ礼を言った。ついでに、ウサ耳もスリスリと擦り寄る。
そんなシアの幸せそうな表情にハジメは肩を竦め、背中のユエも傍にいるティオは僅かに口元を緩めながら擦り寄るウサ耳をナデナデしている。
「…ん?」
そんな事をしていると簡易の鎧を着て馬に乗った門番であろう男が三人、近くの商人達に事情聴取しながらハジメ達の方へやって来た。ハジメも門番達に気づき視線を転じる。
門番の方もハジメ達の方へ視線を転じ向かってくる。その時、二人の若い門番はハジメ達の様子(ほぼハーレム状態)を目にして若干、目つきを険しくさせている。職務的なものではなく……嫉妬的な意味で。
「おい、お前! その黒い箱?は何なのか説明しろ!」
少し高圧的に門番の一人が話しかけるが、ハジメはこのことも予想していた展開なので門番の男に視線を向けると淡々と答える。
「これは俺のアーティファクトだ。移動用のな。馬が引かなくても走る代物で珍しいのは分かる」
「む、そうか。だが、門番としてはやはり見慣れないモノには警戒心。抱いてしまう。念の為、中を見させて貰うがいいか」
「ああ、構わない」
門番の言い分にハジメは納得した表情で素直に要求を応える。と、その時、後ろにいた二人の内の一人がハジメ達を見て首をかしげると、「あっ」となにかを思い出したように隣の門番に小声で確認する。何かを言われた門番が同じように「そう言えばたしか……」と呟きながらハジメ達をマジマジと見つめた。
「……君達、君達はもしかしてハジメ、ユエ、シアという名前だったりするか?」
「ん? ああ、確かにそうだが……」
「そうか。それじゃあ、ギルド支部長殿の依頼からの帰りということか?」
「ああ、そうだが……もしかして支部長から通達でも来てるのか?」
ハジメの予想通りだったようで門番の男が頷く。門番は、直ぐに通せと言われているようで順番待ちを飛ばして入場させてくれるようだ。車内の確認も「支部長殿が直々に依頼する人物だから問題ない」ということであっさり尋問は終わり、ハジメはブリーゼを走らせ門番の後を着いて行く。列に並ぶ人々の何事かという好奇の視線を尻目に悠々と進み、再び【フューレン】へと足を踏み入れた。
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【フューレン】に入ってすぐハジメ達は冒険者ギルドにある応接室に通されていた。
差し出された如何にも高級そうなお茶と茶菓子をバリボリ、ゴクゴクと遠慮なく貪りながら待つこと五分。部屋の扉を蹴破らん勢いで開け放ち飛び込んできたのは、ハジメ達にウィル救出の依頼をしたイルワ・チャングだ。
「ウィル! 無事かい!? 怪我はないかい!?」
以前の落ち着いた雰囲気などかなぐり捨てて、視界にウィルを収めると挨拶もなく安否を確認するイルワ。なにより〝怪物氾濫〟も起きたのだ。それだけ心配だったのだろう。
「イルワさん……すみません。私が無理を言ったせいで、色々迷惑を……」
「……何を言うんだ……私の方こそ、危険な依頼を紹介してしまった……本当によく無事で……ウィルに何かあったらグレイルやサリアに合わせる顔がなくなるところだ。二人も随分心配していた。早く顔を見せて安心させてあげるといい。君の無事は既に連絡してある。数日前からフューレンに来ているんだ」
「父上とママが……わかりました。直ぐに会いに行きます」
イルワは、ウィルに両親が滞在している場所を伝えると会いに行くよう促した。
ウィルは、イルワに改めて捜索に骨を折ってもらったことを感謝し、ついで、ハジメ達に改めて挨拶に行くと約束して部屋を出て行った。ハジメとしては、これっきりで良かったのだが、きちんと礼をしないと気が済まないらしい。
ウィルが出て行った後、改めてイルワとハジメが向き合う。イルワは、穏やかな表情で微笑むと、深々と頭を下げた。
「ハジメ君、今回は本当にありがとう。まさか、本当にウィルを生きて連れ戻してくれるとは思わなかった。感謝してもしきれないよ」
「まぁ、生き残っていたのはウィルの運が良かったからだろ」
「ふふ、そうかな? 確かに、それもあるだろうが……〝怪物氾濫〟をたったの四人で退けた新星の英雄殿?」
にこやかに笑いながら、ハジメが〝怪物氾濫〟を退けたことを知っているような物言いにハジメはため息を一つ。【ウルの町】から出る前に支部長のヒョロから今回の騒動については長距離連絡用アーティファクトで各所へ通達したと言ってはいたことを思い出す。
「【ウルの町】の支部長のヒョロだったか今回の事で色々と各所に報告したと言っていたが……どこまで情報がいってるんだ?」
「そうだね。まず、依頼主でありギルドの中でも上位に位置する幹部の一人である私は当然として、他にギルド本部に、各所の都市部のギルド支部長、幹部陣には既に伝わっているはずだよ」
そう言って苦笑いするイルワ。どうにもハジメ達が〝怪物氾濫〟を四人で蹴散らしたことはギルド上位陣には周知の事実らしい。
「それにしても、大変だったね。まさか、北の山脈地帯の異変が〝
「ああ、構わねぇよ。だが、その前にユエとシアのステータスプレートを頼むよ……ティオは──」
「ふむ、二人の分を人前に用意する、か。……それがご主人様の判断でならば妾の分も頼めるかの?」
「……ということだ」
「ふむ、確かに、プレートを見たほうが信憑性も高まるか……わかったよ」
「助かる」
イルワは、ユエとシアの他に、新しくハジメ一行に加わっているティオについても〝何か〟あるのだと察して、若干、表情を変えつつ、職員を呼んで真新しいステータスプレートを三枚持ってこさせた。
結果、ユエ達のステータスは以下の通りだった。
================================
ユエ 323歳 女 レベル:80
天職:神子
筋力:120
体力:300
耐性:80
敏捷:120
魔力:8000
魔耐:7120
技能:自動再生[+痛覚操作]・全属性適性・複合魔法・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇][+魔素吸収]・想像構成[+イメージ補強力上昇][+複数同時構成][+遅延発動][+構成改変]・血力変換[+身体強化][+魔力変換][+体力変換][+魔力強化][+血盟契約]・高速魔力回復・生成魔法・重力魔法
================================❈想像構成──魔法陣を完全にイメージによって構成することを可能にする。
❈構成改変──魔法陣の構成を改変することを可能にする。
❈血盟契約──唯一と定めた相手からの吸血による血力変換の効果の上昇率を大幅に上げる。
================================
シア・ハウリア 16歳 女 レベル:52
天職:占術師
筋力:60 [+最大6860]
体力:80 [+最大6880]
耐性:60 [+最大6860]
敏捷:85 [+最大6885]
魔力:3400
魔耐:3560
技能:未来視[+自動発動][+仮定未来]・魔力操作[+身体強化][+部分強化][+変換効率上昇Ⅱ] [+集中強化]・重力魔法
================================
❈変換効率上昇Ⅱ──魔力1に対して、身体能力のスペックを2上昇させることが可能。
❈部分強化──部分的な身体強化を可能にする。
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ティオ・クラルス 563歳 女 レベル:98
天職:守護者
筋力:960 [+竜化状態5000]
体力:1300 [+竜化状態6600]
耐性:2000 [+最大7890] [+竜化状態6600]
敏捷:700 [+竜化状態4000]
魔力:5890
魔耐:7900 [+最大13790]
技能:竜化[+竜鱗硬化][+魔力効率上昇][+身体能力上昇][+咆哮Ⅱ][+風纏][+痛覚変換]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮]・火属性適性[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]・風属性適性[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]・扇術[+舞扇術]・反攻戦技[+流水]・魔力生成[+生成速度上昇]・節制・堅牢[+異常耐性]・複合魔法
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❈咆哮Ⅱ──竜化状態のブレスに加え、竜化前の状態でもブレスの使用を可能にする。
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❈痛覚変換──受けた痛みを任意のエネルギーに変換できる能力。
❈扇術──扇子を使った戦闘技能。
❈反攻戦技──カウンターに特化した戦技。その中でティオが習得してるのは流れる水の如く相手の攻撃を受け流す戦技〝流水〟。
❈魔力生成──魔力の生成が常人よりも早い。
❈節制──レベルの上昇率を大幅に下げる代わりにレベルが上がった際の全ステータスの上昇率を底上げする(ティオのレベルが低い理由はこの固有魔法が原因)。
❈堅牢──魔力1に対して、耐力と魔耐を1上昇させる。
三人のステータスは、ハジメには及ばないものの、召喚されたチート集団ですら少人数では相手にならないレベルのステータスだ。例え、光輝が〝限界突破〟を使用したとしても及ばないレベルだ。
何より、ユエ達の本質を示す固有魔法や技能が冒険者ギルド最上級幹部であるイルワをして、その口をあんぐりと開けて言葉も出ない様子。
「ほぅ………」
ハジメもハジメで、ユエ達のステータスを初めて見るのは初めてであるのでステータスプレートに写し出され技能欄に興味を示している。
しかし、二人の反応も無理もない話だ。なにせ、ユエとティオは既に何百年前に滅んだとされる種族の固有魔法である〝血力変換〟と〝竜化〟を持っている上に、ステータスが特異に過ぎる。特にティオは聖教の伝説に伝えられられる、神敵たる種族の証なのだから。
加えて、前の二人ほどのインパクトはなくとも種族の常識を完全に無視しているシアについても、驚くなという方がどうかしている。
「いやはや……なにかあるとは思っていましたが、これほどとは……」
冷や汗を流しながら、何時もの微笑みが引き攣っているイルワに、ハジメはお構いなしに事の顛末を語って聞かせた。普通に聞いただけなら、そんな馬鹿なと一笑に付しそうな内容でも、先にステータスプレートで裏付けるような数値や技能を見てしまっているので信じざるを得ない。イルワは、すべての話を聞き終えると、一気に十歳くらい年をとったような疲れた表情でソファーに深く座り直した。
「……道理でキャサリン先生の目に留まるわけだ。ハジメ君が異世界人の一人だということは予想していたが……実際は、遥か斜め上をいったね……」
「……それで、支部長さんよ。あんたはどうするんだ? 危険分子だと教会にでも突き出すか?」
イルワは、ハジメの質問に非難するような眼差しを向けると居住まいを正した。
「冗談がキツいよ。出来るわけないだろう? 君達を敵に回すようなこと、個人的にもギルド幹部としても有り得ない選択肢だよ……大体、見くびらないで欲しい。君達は私の恩人なんだ。そのことを私が忘れることは生涯ないよ」
「……そうか。そいつは良かった」
ハジメは、肩を竦めて、試して悪かったと視線で謝意を示した。
「私としては、約束通り可能な限り君達の後ろ盾になろうと思う。ギルド幹部としても、個人としてもね。まぁ、あれだけの力を見せたんだ。当分は、上の方も議論が紛糾して君達に下手なことはしないと思うよ。一応、後ろ盾になりやすいように、冒険者ランクをハジメ君
「「「は?」」」
イルワのその言葉にハジメは一瞬、呆けた表情をしたが、イルワの言葉の意味を察したのか「まさか……」と口にする中、イルワの言葉にハジメ以外の三人の纏う雰囲気が変わる。特にユエなんて非難がましい目で全身に黄金の魔力を漂わせてしまっている。
「はぁ、ユエもだが、シアとティオも落ち着け」
「……ハジメだって」
「そうですよ!今回の依頼で大活躍したのはハジメさんじゃないですか!?」
「うむ。流石に妾も納得のいく説明が欲しいのじゃが……」
怒る三人にハジメは自分の為に怒ってくれるのは嬉しいのは山々だが、イルワの言いたいことを理解してるハジメは彼は自分を貶めての言葉ではないと説明する。
「三人共、イルワが言いたいのは俺の功績は金ランクでは収まる器じゃないってことだ」
「なら」と、声をあげそうになる三人だが、次のハジメから出る言葉がそれをやめさせた。
「ほら、この世界には三人いるんだろ? 金ランクより上の称号を持つ冒険者がな」
「「「!」」」
その言葉を聞いてハッとなる三人はイルワの方へ向き直る。ユエの怒りの魔力に当てられ、少し冗談が過ぎたね反省しつつ、威厳のある表情になったイルワが首を縦に振って答えた。
「ああ、ハジメ君の言う通りだ。君が、この短期間で挙げた功績の数々は唯の金ランクでは収まりきれないというのが私とギルド上層部大半の見解だ。故に、私ことイルワ・チャングは、【フューレン】支部長兼冒険者ギルド最上級幹部に席を置く身として冒険者南雲ハジメ君の四人目の最高ランク〝白金〟……英雄級冒険者への昇格を認めるものとする」
──
其のランクはあるようで無いものに等しいランクである。金ランクでも天性の才能と戦闘の才覚が求められるというのに白金はそれ以上の力を必要とする正に英雄の領域。
其処の領域に辿り着いた者も【沈黙の魔女】、【戦姫】、【戦眼】の三人しか居なかった中、今回の件で一人の新星が加わった。
「まぁ、普通は、〝金〟もそうだけど〝白金〟を付けるには色々面倒な手続きがいるのだけど……皆のことは上が認知してるから事後承諾でも何とかなるよ。キャサリン先生と僕の推薦に上層部の決定、それに歴代最大の〝怪物氾濫〟を退けたという決して揺るがない実績があるからね」
イルワの大盤振る舞いにより、他にも【フューレン】にいる間はギルド直営の宿のVIPルームを使わせてくれたり、イルワの家紋入りの手紙を用意してくれたりした。今回の礼もあるが、それ以上に、ハジメ達とは交友関係を作っておきたいということらしい。
「そうか……感謝するよ。手札は多いことにこしたことはないが、まさか、冒険者になって半年もなってねぇのにランクいきなり最高ランクになったことにまぁ、自分でも驚いてるが……」
「………ハジメなら当然っ」
突然の最低ランクから最高ランクの昇格に苦笑いを零すハジメに対して、ユエ達は当然といった顔で本人以上に喜色を顕にしている。すると、イルワが話しかける。
「そう言ってもらえると嬉しいね。……そしてハジメ君の白金ランクへの到達の件だが、全体に伝わるのはまだ先だね。私のところのような大手のギルド支部は通達済みだが、他の支部はまだまだだし、一般への公表もギルド本部は大々的に行うつもりらしい。因みに君の二つ名なんだが【
「……天翔ける狼と新星を掛けて【天狼】か。ああ、それで構わない。下手なモノよりもシンプルでいい」
「了解した。ではハジメ君、いや改めて【天狼】。私は君達の後ろ盾としてなんとか頑張るが……君達の正体が露見することは時間の問題だ。正直、私程度の援護ではたかが知れている」
カリカリと頬を掻きながら苦笑いを見せるイルワに、ハジメはカップに口をつけながら肩を竦める。
「それでも使い道はある。俺の天職は錬成師。どんなモノでも有効的かつ効率に活用していくこそ本分だ。あんたの後ろ盾と厚意は、十分に活用させて貰うよ」
「そうかい?」
イルワの言葉に対してハジメは犬歯を剥き不敵な笑みを浮かべながら答えた。
「ああ、最初っから、全て覚悟の上さ」
「………なるほど。君らしい」
後ろ盾も、称号もあろうがなかろうが、そんなことは関係ないのだ。あればあったで有効的に活用するだけであり、なくともハジメの歩みは止まることはない。それがどうしたと瞳をギラつかせ、犬歯を剥き、不敵に笑いながら、立ち塞がる全ての障害を真っ正面から粉砕するのだ。
ハジメの決意と、それに寄り添う、不安も心配も欠片も抱いてない様子のユエ達を見て、イルワは口元に浮かび上がる笑みを堪えることはできなかった。訳もなく、気分が高揚するのが分かる。
「(まさか、私もここまで彼に期待するとはね……。本当に君は彼と似ている)」
きっと、目の前にいる彼も同じなのだ。彼等なら世界を変えるかもしれない偉業を成し遂げれるかもしれないという予感を世界の真実を知る一人として、イルワは期待せずにはいられない。
「君達の旅路に厄介で素敵な冒険となることを祈ってるよ」
「………礼を言うべきか、迷う言葉だな」
イルワ的には最高の贈り言葉でも、ハジメにとっては何とも微妙だったらしい。ただ、なんとなく冒険者ギルド幹部らしい言葉だと思い苦笑いが漏れる。それはユエ達も同じようで顔を見合せて微妙な表情をしている。
そんなハジメ達を見て、イルワはここ数年多忙に呑まれて見せることのなかった。心からの快活な笑い声を上げるのであった……。
冒険者のランク間の人数。
白金ランク……現在、四人。
金ランク……新たにユエ達を含めても百人を超えるか超えないぐらいの人数で、実質、最高ランク。
銀ランク……期待の新星が多く三百人ほど。
黒ランク……ベテランなどが多くいて五百人ほど。
白ランク……若手騎士や貴族の子息などが多くいるレベルで二千人ほど。
緑ランク……一番冒険者の数がいるランクで八千人弱ほど。
紫ランク……ベテランより新人の割合が高く、緑の次に人数がいるランクで六千人ほど。
黄ランク……冒険者を始めて一年経つぐらいの人間が多く四千人ぐらいの人数。
赤ランク……青とそこまで変わらず二千ちょいの人数。
青ランク……新人が多くいるランクで二千~三千の間ぐらい。
愛子はハーレムに入れるか入れないか
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いる
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いらない