ありふれた職業で世界最強if優花   作:白San

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四十三話 懐かしきホルアド、親友との再会

 

ハジメ達は、現在、宿場町ホルアドにいた。

 

本来なら素通りしてもよかったのだが、フューレンのギルド支部長イルワから頼まれごとをされたので、それを果たすために寄り道したのだ。といっても、もともと【グリューエン大砂漠】へ行く途中で通ることになるので大した手間ではない。

 

ハジメは、懐かしげに目を細めて町のメインストリートをホルアドのギルドを目指して歩いた。ハジメに肩車してもらっているミュウが、そんなハジメの様子に気がついたようで、不思議そうな表情をしながらハジメのおでこを紅葉のような小さな掌でペシペシと叩く。

 

「パパ? どうしたの?」

 

「ん? あ~、いや、前に来たことがあってな……まだ四ヶ月程度しか経ってないのに、もう何年も前のような気がしてな……」

 

「……ハジメ、大丈夫?」

 

複雑な表情をするハジメの腕にそっと自らの手を添えて心配そうな眼差しを向けるユエ。ハジメは、肩を竦めると、次の瞬間にはいつも通りの雰囲気に戻っていた。

 

「ああ、問題ない。ちょっとな、えらく濃密な時間を過ごしたもんだと思って感慨に耽っちまった。思えば、ここから始まったんだよなって……優花との想いを交わした次の日に迷宮に潜って……そして、大切な人を守る為に奈落に落ちた」

 

「……」

 

ある意味運命の日とも言うべきあの日のことを思い出し独白をするハジメの言葉を、神妙な雰囲気で聞くユエ達。ユエは、ジッと見つめている。ティオが、興味深げにハジメに尋ねた。

 

「ふむ。ご主人様は、やり直したいとは思わんのか? 元々の仲間…そして、恋人がおるのじゃろ?」

 

ティオは、まだハジメ達と付き合いが浅いため、時折、今のようにハジメ達の心の内を知ろうと、客観的に見ればかなりストレートな、普通なら気を遣ってしないような質問をする。それは、単なる旅の同行者ではなく、ティオ自身がきちんと仲間になりたいと思っているが故の彼女なりの努力だ。其の在り方はハジメの好みだった。

 

なので、特に気を悪くすることもなく、ハジメはティオの質問を受け止める。そして、ふと、月明かりに照らされた真夜中で想いを伝え合って抱き締め合い、キスまでした彼女の姿を思い浮かべる……。

 

不意に、自分の腕に触れる手に力が込められるのを感じてハッと我を取り戻す。見れば、ユエが揺らがぬ強い眼差しで真っ直ぐにハジメを見つめており、触れている手はギュッとハジメの袖を握りしめていた。

 

ハジメは、そんなユエと目を合わせると、ふっと目元を和らげて優しい眼差しで同じくジッと見つめ返した。

 

「確かに、戻りたいと思う。幼なじみ達と優花と一緒にいたい……でも、もし仮にあの日に戻ったとしても、俺は何度でも同じ道を辿ってしまうかもな……」

 

「ほぅ、なぜじゃ?」

 

ハジメの答えが以外だったらしく、ティオは、少し目を丸くした表情で聞いた。ハジメは、ユエ達から目を離さないまま、自分を掴むユエ、そして傍にいるシア、ティオをユエが掴んでいない方の手で頭を撫でていった。ユエ達の表情が僅かに綻ぶ。頬も少し赤く染まっている。

 

「もちろん……お前達に会いたいからだ」

 

「……ハジメ」

 

「ハジメさん」

 

「ご主人様……」

 

ホルアドの町は、直ぐ傍にレベル上げにも魔石回収による金稼ぎにも安全マージンを取りながら行える【オルクス大迷宮】があるため、冒険者や傭兵、国の兵士がこぞって集まり、そして彼等を相手に商売するため多くの商人も集まっていることから、常時、大変な賑わいを見せている。当然、町のメインストリートといったら、その賑わいもひとしおだ。

 

そんな多くの人々で賑わうメインストリートのど真ん中で、突如立ち止まり見つめ合い出すハジメ達。周囲のことなど知ったことかと自分達の世界を作っていた。好奇心や嫉妬の眼差しがこれでもかと注がれ、若干、人垣まで出来そうになっているのを気付いたハジメは咳払いをした。

 

「んんっ、それに、この世界は……いや、ここの神共は性根が腐ってる。あの時の強さのままじゃ、優花達を守れない。 だから俺の選択は変わらないと思う」

 

「「「……」」」

 

────これは自分の(エゴ)だ。自覚している。 でも、だからこそ、大事な人を守る為には必要だと思い続けるんだ。

 

ハジメは自分の拳を握り締め、前をみながら口を開いた。

 

「まぁ、そういう訳だ、じゃギルドに向かうぞ」

「……ん」

 

「はいですぅ〜」

 

「のじゃ」

 

「パパ、ミュウにもナデナデしてなの〜」

 

「はいはい」

 

そしてハジメはミュウの頭を撫でながらギルドに向かった。道中、美女、美少女に囲まれているハジメに羨望と嫉妬の目が突き刺さるのだが……ハジメは睨みを利かして視線を黙らせたのだった。

 

ハジメ達は、周囲の人々の視線を無視しながら、ようやく冒険者ギルドのホルアド支部に到着した。相変わらずミュウを肩車したまま、ハジメはギルドの扉を開ける。他の町のギルドと違って、ホルアド支部の扉は金属製だった。重苦しい音が響き、それが人が入ってきた合図になっているようだ。

 

前回、ホルアドに来たときは、冒険者ギルドに行く必要も暇もなかったので中に入るのは今回が初めてだ。ホルアド支部の内装や雰囲気は、最初、抱いていた冒険者ギルドそのままだった。

 

壁や床は、ところどころ壊れていたり大雑把に修復した跡があり、泥や何かのシミがあちこちに付いていて不衛生な印象を持つ。内部の作り自体は他の支部と同じで入って正面がカウンター、左手側に食事処がある。しかし、他の支部と異なり、普通に酒も出しているようで、昼間から飲んだくれたおっさん達がたむろしていた。二階部分にも座席があるようで、手すり越しに階下を見下ろしている冒険者らしき者達もいる。二階にいる者は総じて強者の雰囲気を出しており、そういう制度なのか暗黙の了解かはわからないが、高ランク冒険者は基本的に二階に行くのかもしれない。

 

冒険者自体の雰囲気も他の町とは違うようだ。誰も彼も目がギラついていて、ブルックのようなほのぼのした雰囲気は皆無である。冒険者や傭兵など、魔物との戦闘を専門とする戦闘者達が自ら望んで迷宮に潜りに来ているのだから気概に満ちているのは当然といえば当然なのだろう。

 

しかし、それを差し引いてもギルドの雰囲気はピリピリしており、尋常ではない様子だった。明らかに、歴戦の冒険者をして深刻な表情をさせる何かが起きているようだ。

 

ハジメ達がギルドに足を踏み入れた瞬間、冒険者達の視線が一斉に捉えた。その眼光のあまりの鋭さに、俺に肩車されるミュウが「ひぅ!」と悲鳴を上げ、ヒシ! とハジメの頭にしがみついた。冒険者達は、美女・美少女に囲まれた挙句、幼女を肩車して現れたハジメに、色んな意味を込めて殺気を叩きつけ始める。ますます、震えるミュウを肩から降ろしハジメは、片腕抱っこに切り替えた。ミュウは、胸元に顔をうずめ外界のあれこれを完全シャットアウトした。

 

「……」

 

ドンッ!

 

そんな音が聞こえてきそうなほど濃密にして巨大かつ凶悪なプレッシャーが、睨みつけていた冒険者達に情け容赦一切なく叩きつけられた。先程、冒険者達から送られた殺気が、まるで子供の癇癪に思えるほど絶大な圧力。既に物理的な力すらもっていそうなそれは、未熟な冒険者達の意識を瞬時に刈り取り、立ち上がっていた冒険者達の全てを触れることなく再び座席につかせる。

 

ハジメの尋常ではないプレッシャー〝威圧〟と〝魔力放射〟を受けながら意識を辛うじて失っていない者も、大半がガクガクと震えながら必死に意識と体を支え、滝のような汗を流して顔を青ざめさせている。

 

そんな彼等にハジメはニッコリ笑いながら話しかけた。

 

「おい、今、こっちを睨んだやつ」

 

「「「「「「「!」」」」」」」

 

ハジメの声にビクッと体を震わせる冒険者達。おそるおそるといった感じでハジメの方を見るその眼には、化け物を見たような恐怖が張り付いていた。

 

「何、そんなに怯えんなよ。いきなり〝威圧〟をしたのは謝る。が、こっちには小さい子がいるんだ。だから、変に睨むのをやめてくれないか?」

 

「おっ、おう……こっちこそすまねぇ」

 

冒険者達はハジメハジメに何かせれると怯えたが、以外の言葉に肩の力が抜いて、すんなりとハジメの指示に従い、睨むのをやめた。ハジメは満足そうに頷くと胸元に顔を埋めるミュウの耳元にそっと話しかけた。

 

「ミュウ、もう大丈夫だぞ」

 

ミュウはおずおずと顔を上げると、ハジメを潤んだ瞳で見上げる。そして、ハジメの視線に誘われてゆっくり振り向き冒険者達をジッと見つめ、何かに納得したのかニヘラ~と笑うと小さく手を振り返した。その笑顔と仕草が余りに可愛かったので、状況も忘れてこわもて軍団も思わず和む。ハジメは再びミュウを肩車すると、もう冒険者達に興味はないとカウンターへと歩いて行った。

 

ハジメ達が、カウンターに向かった瞬間、ドサドサと崩れ落ちる音があちこちから響いたがサクッと無視して、たどり着いたカウンターの受付嬢に要件を伝える。

 

「支部長はいるか? フューレンのギルド支部長から手紙を預かっているんだが……本人に直接渡せと言われているんだ」

 

ハジメは、そう言いながら自分のステータスプレートを受付嬢に差し出す。受付嬢は、緊張しながらもプロらしく居住まいを正してステータスプレートを受け取った。

 

「は、はい。お預かりします。え、えっと、フューレン支部のギルド支部長様からの依頼……ですか?」

 

普通、一介の冒険者がギルド支部長から依頼を受けるなどということはありえないので、少し訝しそうな表情になる受付嬢。しかし、渡されたステータスプレートに表示されている情報を見て目を見開いた。

 

「き〝金〟ランク!?」

 

冒険者において〝金〟のランクを持つ者は全体の一割に満たない。そして、〝金〟のランク認定を受けた者についてはギルド職員に対して伝えられるので、当然、この受付嬢も全ての〝金〟ランク冒険者を把握しており、ハジメのこと等知らなかったので思わず驚愕の声を漏らしてしまった。その声に、ギルド内の冒険者も職員も含めた全ての人が、受付嬢と同じように驚愕に目を見開いて凝視する。建物内がにわかに騒がしくなった。

 

受付嬢は、自分が個人情報を大声で晒してしまったことに気がついてサッと表情を青ざめさせる。そして、ものすごい勢いで頭を下げ始めた。

 

「も、申し訳ありません! 本当に、申し訳ありません!」

 

「あ~、いや。別にいい。取り敢えず、支部長に取り次ぎしてくれないか?」

 

「は、はい! 少々お待ちください!」

 

放っておけばいつまでも謝り続けそうな受付嬢に、ハジメとしては、ウルで軽く戦争し、フューレンで一つの巨大裏組織を壊滅させてきた以上、身分の秘匿など今更だと思っているので、あそこまで謝らなくて良いと困ったように苦笑いをして、支部長を呼んでくれと頼むと、すぐさま受付嬢は、支部長を呼びに向かった。

 

やがて、と言っても五分も経たないうち、ギルドの奥からズダダダッ! と何者かが猛ダッシュしてくる音が聞こえだした。何事だと、ハジメ達が音の方を注目していると、カウンター横の通路から全身黒装束の少年がズザザザザザーと床を滑りながら猛烈な勢いで飛び出てきて、誰かを探すようにキョロキョロと辺りを見渡し始めた。

 

ハジメは、その人物に見覚えがあり、こんなところで再会するとは思わなかったので思わず目を丸くして呟いた。

 

「……浩介?」

 

ハジメの呟きに反応した浩介は、ハジメを見て身体が石化したかのように固まった。

 

「おっ、お前ハジメな、のか?」

 

浩介はハジメを見て、今にも泣きそうな声で話しかけてくる。ハジメもあまりの唐突な再会に涙が出ないが、親友と再会できたことに嬉しそうに返事をした。

 

「久しぶりだな、浩介……ぅお!」

 

「ハジメぇぇぇ!」

 

ハジメが言いかける前に浩介が抱きついた。男に抱きつかれても、ただシュールな光景なのだか、相当、心配させたらしく申し訳なさを感じるハジメ。

 

「浩介、抱きつくのは良いが、絵面的に気持ち悪いから、そろそろ離せ」

 

「あっ……スマン、でも嬉しくて……って気持ち悪いはないだろっ! 親友だぞっ!」

 

「はいはい。んで、お前との再会は嬉しい、が……浩介、此処に来る前にウルで妙子達と会ってな、話を聞く限り、お前がにいるなら優花がいるはずなんだ。何処だ?」

 

妙子達から聞いた限り優花は浩介の傍にいると思いハジメは浩介に聞くが、浩介は何も言わずに俯いてしまい、ハジメは首を傾げる。

 

「……」

 

「ん? どうした浩介?」

 

「ハジメ……お前ってランク〝金〟だよな」

 

ハジメは浩介が何故、冒険者ランクのことのか疑問に思い、訝しむが素直に答えた。

 

「あぁ、そうだが……」

 

「頼むっ! 俺と一緒に迷宮に来てくれ!」

 

浩介はそう言って土下座をしてきて、ハジメは少し戸惑いながら話しかける。

 

「おいおい、浩介……突然そんなことを言われてもな上手く状況が掴めねぇ。詳しく教えろ」

 

「実は……」

 

浩介が話そうとした時、そこでしわがれた声による制止がかかった。

 

「話の続きは、奥でしてもらおうか。そっちは、俺の客らしいしな」

 

声の主は、六十歳過ぎくらいのガタイのいい左目に大きな傷が入った迫力のある男だった。その眼からは、長い年月を経て磨かれたであろう深みが見て取れ、全身から覇気が溢れている。あの人が此処のギルド長だとハジメは思った。そして、浩介の慟哭じみた叫びに再びギルドに入ってきた時の不穏な雰囲気が満ち始めた事から、この場で話をするのは相応しくないだろうと判断し大人しく従う事にした。おそらく、浩介は既にここで同じように騒いで、勇者組や騎士団に何かがあったことを晒してしまったのだろう。ギルドに入ったときの異様な雰囲気はそのせいだろうとハジメは察した。

 

ギルド支部長と思しき男は、浩介の腕を掴んで強引に立たせると有無を言わさずギルドの奥へと連れて行った。浩介は、ハジメとの突然の再会などでかなり情緒不安定なようで、今は、ぐったりと力を失っている。きっと、話の内容は碌な事じゃないんだろうなと嫌な予想をしながらハジメは優花の心配をしながら後を付いていったのだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「……魔人族……ね」

 

冒険者ギルドホルアド支部の応接室にハジメの呟きが響く。対面のソファーにホルアド支部の支部長ロア・バワビスと浩介が座っており、浩介の正面にハジメが、その両サイドにユエとシアがシアの隣にティオが座っている。ミュウは、シアの膝の上だ。

 

浩介から事の次第を聞き終わった魔人族の襲撃に遭い、勇者パーティーが窮地にあるというその話に浩介もロアも深刻な表情をしており、室内は重苦しい雰囲気で満たされていた。しかし、ハジメは勇者の光輝のことなんかどうでもよく、優花のことの方が断然、心配だった。

 

「さて、ハジメ。イルワからの手紙でお前の事は大体分かっている。随分と大暴れしたようだな?」

 

「まぁ、全部成り行きだけどな、後悔はないぞ」

 

成り行き程度の心構えで成し遂げられる事態では断じてなかったのだが、事も無げな様子で肩をすくめるハジメに、ロアは面白そうに唇の端を釣り上げた。

 

「手紙には、お前の〝金〟ランクへの昇格に対する賛同要請と、できる限り便宜を図ってやって欲しいという内容が書かれていた。一応、事の概要くらいは俺も掴んではいるんだがな……たった数人で六万近い魔物の殲滅、半日でフューレンに巣食う裏組織の壊滅……にわかには信じられんことばかりだが、イルワの奴が適当なことをわざわざ手紙まで寄越して伝えるとは思えん……もう、お前が実は魔王だと言われても俺は不思議に思わんぞ」

 

ロアの言葉に、浩介が大きく目を見開いて驚愕をあらわにするが「まぁ…ハジメだし」と呟きながら納得している様子を見て、ハジメは少し頬を引き攣らせる。

 

元々、浩介が冒険者ギルドにいたのは、高ランク冒険者に光輝達の救援を手伝ってもらうためだったらしい。もちろん、深層まで連れて行くことは出来ないが、せめて転移陣の守護くらいは任せたかったのである。駐屯している騎士団員もいるにはいるが、彼等は王国への報告などやらなければならないことがあるし、何より、レベルが低すぎて精々三十層の転移陣を守護するのが精一杯で七十層の転移陣を守護するには、せめて〝銀〟ランク以上の冒険者の力が必要だったてことらしい。

 

そう考えて冒険者ギルドに飛び込んだ挙句、二階のフロアで自分達の現状を大暴露し、冒険者達に協力を要請したのだが、人間族の希望たる勇者が窮地である上に騎士団の精鋭は全滅、おまけに依頼内容は七十層で転移陣の警備というとんでもないもので、誰もが目を逸らして、救助要請に応答しなかったらしい。だから、ギルドがあんな重い空気だったんだと納得しながら、ハジメとロアは話しをすすめていく。

 

「バカ言わないでくれ……魔王だなんて、俺はそこまで弱くないつもりだぞ?」

 

「ふっ、魔王を雑魚扱いか? 随分な大言を吐くやだ……だが、それが本当なら俺からの、冒険者ギルドホルアド支部長からの指名依頼を受けて欲しい」

 

「……勇者達の救出だろ?」

 

「ハジメ……」

 

「あたり前だ、行くに決まっている。優花がいるんだ俺が絶対助ける……」

────そうだ俺は優花を守る為に……。

 

「なっ、なぁハジメ。園部以外も助けるよな?」

 

浩介はハジメの返事にに嬉しく感じていたが、内容がほぼほぼ優花を第一優先事項にしてる為、光輝などを助けてくれるのか心配になっていた。

 

「あー……助けるよ、助ける」

 

「マジで助けろよっ!おいっ」

 

ハジメの棒読みの返事に浩介は叫んだ。しかし、ハジメは嫌そうな表情を隠さない。最悪、雫はいいとして香織などを助けるとなると気が進まないらしい。

 

「……なんか、ヤル気が失せるっつうかぁ〜」

 

「おいっ、ゴラァッ!」

 

ハジメの言葉に浩介はツッコミを入れるが、当のハジメは、頭をカリカリと掻きながら、傍らで自分を見つめている大切な仲間達を見やって話しかけた。

 

「三人共、これは俺の勝手の行動だ。 だから着いてこなくても良いがどうする?」

 

「……ん、ハジメのしたいように。私は、どこでも付いて行く」

 

「わ、私も! どこまでも付いて行きますよ! ハジメさん!」

 

「ふむ、妾ももちろんついて行くぞ。ご主人様」

 

「ふぇ、えっと、えっと、ミュウもなの!」

 

対面で、浩介は愕然とした表情をしながら「え? ハジメ、えっ、もうお前浮気か?……園部に殺されるぞ」と呟いている。ハジメも十分理解している。

 

「(やめてくれ浩介、それが一番の俺の悩みなんだよっ!)」

 

そんな叫びを内心で納めながら、ハジメは大切な仲間に己の意志を伝えた。

 

「ありがとな、お前等。神に選ばれた勇者になんて、わざわざ自分から関わりたくはないし、お前達を関わらせるのも全くもって嫌なんだが……優花がいるんだ。だから、助けに行こうかと思う。まぁ、優花とか八重樫がいるし、案外、自分達で何とかしそうな気もするが俺は優花を助けに行きたい」

 

本心としては、光輝達がどうなろうと知ったことではなかったし、勇者の傍は同時に狂った神にも近そうな気がして、わざわざ近寄りたい相手ではなかった。だが、優花のことになればどうでもいい。絶対に助けに行く。 もし、優花にがケガでもしていれば其処にいた敵を皆殺し、前衛の奴らは締め上げる所存である。

 

危険度に関しては特に気にしていない。浩介の話からすれば既に戦った四つ目狼が出たようだが、キメラ等にしても奈落の迷宮でいうなら十層以下の強さだろう。何の問題もない。問題は魔人族の男だろう聞く限り、光輝の〝限界突破〟さえも容易く返り討ちにするなど相当強いと判断出来るし、もしかしたら其奴が大迷宮の攻略者の可能性があるなとハジメは判断した。

 

「南雲ハジメ。話しを聞く限り、迷宮に行ってくれるんだよな?」

 

「ああ、ロア支部長。一応、対外的には依頼という事にしておきたいんだが……」

 

「上の連中に無条件で助けてくれると思われたくないからだな?」

 

「そうだ。それともう一つ。帰ってくるまでミュウのために部屋貸しといてくれ」

 

「ああ、それくらい構わねぇよ」

 

結局、ハジメが一緒に行ってくれるということに安堵していたがユエ達を見て「大丈夫か?」と複雑そうな視線を送る浩介を無視して、ハジメはロアとさくさく話を進めていった。流石に、迷宮の深層まで子連れで行くわけにも行かないので、ミュウをギルドに預けていく事にした。

 

その際、ミュウが置いていかれることに激しい抵抗を見せたが、何とか全員で宥めすかし、ついでに子守役兼護衛役にティオも置いていく事にしたが、ティオはハジメに話しかけた。

 

「ご主人様、何故妾を? 護衛なら此処のギルドの者に任せれば良いと思うのじゃが?」

 

「いや……ギルドに向かってる最中な、ミュウやお前達に嫌な視線を送ってる奴等がいてな……」

 

「……わかったのじゃ、コチラは任せておれ」

 

「頼む」

 

「うむ」

 

ハジメとティオの話が終わりようやくハジメ達は浩介の案内で出発することが出来た。しかし、出ていく間際にティオは一緒に迷宮に向かうユエとシアに「優花への紹介の時は妾のアピールもしておいてくれるかの?」「…………任せて」「ユエよ。なんじゃ、その間は?」などと話していたが、ハジメはスルーを決め込んだ。

 

「浩介、おぶってやろうか?」

 

「いらんわ!それなりに敏捷は高いぞ俺は?! ハジメが規格外なだけだ!」

 

「そんな、化け物扱いすんなよ。それより早く優花を助けないとな……」

 

「……お前、園部を助けるのは良いが……一緒にいる美少女達をどう説明すんだ?……俺は何があっても知らないぞ?」

 

「…………」

 

「ちょっとハジメ、凄い冷や汗かいてるぞ……」

 

「……ん、任せてハジメ、大丈夫。私が上手くやって纏まるせるから」

 

「ですぅ〜」

 

「余計に心配だわっ!」

 

迷宮深層に向かって疾走しながら、ハジメ達はそんな会話をしていた……。

 

そして、ハジメは視線を迷宮に転じて呟いた。

 

「優花、待っててくれ……絶対助ける」

 

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オマケ

 

優花「!」

 

雫「どうしたの? 園部さん?」

 

優花「いや、何か良いことが起きそうかなって」

 

雫「へぇ〜、それは楽しみね」

 

優花「うん、でも…」

 

雫「でも?」

 

優花「なんか、私にとって最大の一大事が起きそうな気がする…」

 

雫「そ、それは大変ね……」

 

オルクス迷宮の八十九層の隠れ部屋で二人はそんな会話をしていたのだった。

 

その後、二人は会話していた事が本当に起こるとは思いもしなかった。




編集しました。十一月十八日

愛子はハーレムに入れるか入れないか

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