ありふれた職業で世界最強if優花   作:白San

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四十六話 紅雷の無双

 

「へ? ハジメ? って南雲くん? えっ? なに? どういうこと?」

 

優花の歓喜に満ちた叫びに、隣の雫が混乱しながら優花とハジメを交互に見やる。どうやら、優花は一発でハジメだと看破したようだが、雫にはまだ認識が及ばないらしい。

 

しかし、それでも肩越しに振り返って自分達を苦笑い気味に見ている少年の顔立ちが、記憶にある南雲ハジメと重なりだすと、雫は大きく目を見開いて驚愕の声を上げた。

 

「えっ? えっ? ホントに? ホントに南雲くんなの? えっ? なに? ホントどういうこと?」

 

「いや、落ち着けよ八重樫。お前の売りは冷静沈着さだろ?」

 

優花と同じく死を覚悟した直後の一連の出来事に、流石の雫も混乱が収まらないようで痛みも忘れて言葉をこぼす。そんな彼女の名を呼びながら諌めるハジメは、ふと気配を感じて頭上を見上げた。そして、落下してきた金髪の女の子ユエをお姫様抱っこで受け止めると恭しく脇に降ろし、ついで飛び降りてきたウサミミ少女シアも同じように抱きとめて脇に降ろす。

 

最後に浩介も降り立った。

 

「おいっハジメっ! おまっ! 余波でぶっ飛ばされただろ! ていうか今の何だよ! いきなり迷宮をパイルバンカーで地面ぶち抜くとか……てか、なんでパイルバンカー!?」

 

「俺の自作」

 

「何そんなヤバイの作ってんだよ!……ったく」

 

文句を言いながら周囲を見渡した浩介は、そこに優花と仲間達と魔物の群れがいて、硬直しながら自分達を見ていることに気がつき「ぬおっ!」などと奇怪な悲鳴を上げた。そんな浩介に、再会の喜びの声がかかる。

 

「「遠藤!」」

 

「おっ、お前等!凄く頼れる最強の奴を呼んできたからな!」

 

〝助けを呼んできた〟その言葉に反応して、光輝達も魔人族の男もようやく我を取り戻した。そして、改めてハジメとユエ達を凝視する。だが、そんな周囲の者達の視線などはお構いなしといった様子で、ハジメはユエとシアに手早く指示を出した。

 

「ユエ、悪いがあそこで固まっている奴等の守りを頼む。シア、向こうで倒れている瀕死の騎士甲冑の男、容態を見てやってくれ」

 

「ん……任せて」

 

「了解ですぅ!」

 

ユエは周囲の魔物をまるで気にした様子もなく悠然と歩みを進め、シアは驚異的な跳躍力で魔物の群れの頭上を一気に飛び越えて倒れ伏すメルドの傍に着地した。

 

「ハ、ハジメ……」

 

優花が、再度、ハジメの名を声を震わせながら呼んだ。その声音には、再会できた喜びを多分に含んではいたが、同じくらい悲痛さが含まれていた。それは、この死地にハジメが来てしまったが故だろう。

 

ハジメは、チラリと優花を見返すと肩を竦めながら笑みを浮かべ「安心しろ、絶対守る」と短く伝えた。そして、即座に〝瞬光〟を発動し知覚能力を爆発的に引き上げると、〝宝物庫〟からクロスビットを三機取り出し、それを優花と雫の周りに盾のように配置した。

 

突然、虚空に現れた十字架型の浮遊する物体に、目を白黒させる優花と雫。そんな二人に背を向けると、元凶たる魔人族の男がハジメに話しかけてきた。

 

「そこの君は、何者かな?」

 

「……何、通りすがりの錬成師(・・・)だ」

 

「……(…この肌から感じる重圧、彼は相当な実力者なのは間違いない)ククッ、何が通りすがりの錬成師ですか……」

 

ハジメから伝わる尋常のない圧に魔人族の男は暫し黙る。ハジメも視線の先にいる魔人族はこれまで会ったユエ達以外の人物の中で一番強いと悟る。

 

両者睨み合う中、ハジメを見て不意に苦笑い浮かべながら腰の軍剣を引き抜きハジメに話し掛ける。

 

「私は〝強者〟には敬意を払いたい性格でね。君には名乗っておこう。私は魔族軍──軍曹。そして〝剣聖〟の称号の保持者ウィリス・アルクと申します」

 

「……〝剣聖〟?」

 

「はい、魔人族の中で一番強い剣士ということです」

 

「魔人族で一番強い剣士ねぇ。クハッ……良いぜ、なら、さっそく殺り合おうか?」

 

「是非、こちらこそ宜しく頼みます……では、まず小手調べからいきましょうか………〝殺れ〟」

 

笑みを浮かべなが魔人族の男、改めウィリスは軍剣をハジメに向け〝殺れ〟と魔物に命令を下した、が……

ハジメは左側から襲いかかってきたキメラを意にも介さず左手の義手で鷲掴みにすると苦もなく宙に持ち上げた。

キメラが、驚愕しながらも拘束を逃れようと暴れているようで空間が激しく揺らめく。それを見て、ハジメはキメラはどんな固有魔法かを察した。

 

「おいおい、何だ?この半端な固有魔法は。大道芸か何かか?」

 

コイツは気配や姿を消す固有魔法だろうに動いたら空間が揺らめいてしまうなど意味がないにも程があり、思わずツッコミを入れた。奈落の魔物にも、気配や姿を消せる魔物はいたが、どいつもこいつも厄介極まりない隠蔽能力だったしそれらに比べれば、動くだけで崩れる隠蔽はただの大道芸だと思えてしまった。

数百キロはある巨体を片手で持ち上げ、キメラ自身も空中で身を捻り大暴れしているというのに微動だにしないハジメに、ウィリスは笑みを浮かべ、優花達が唖然とした表情をする。ハジメは、そんな彼等を尻目に、観察する価値もないと言わんばかりに〝豪腕〟を以てキメラを地面に叩きつけた。

 

ズバンッ!!

 

ドグシャ!

 

そんな生々しい音を立てて、地面にクレーターを作りながらキメラの頭部が粉砕される。そして、ついでにとばかりにドンナーを抜き、一見、何もない空間に向かってレールガンを続けざまに撃ち放った。

 

ドパンッ! ドパンッ!

 

乾いた破裂音を響かせながら、二条の閃光が空を切り裂き目標を違わず問答無用に貫く。すると、空間が一瞬揺ぎ、そこから頭部を爆散させたキメラと心臓を撃ち抜かれたブルタールモドキが現れ、僅かな停滞のあとぐらりと揺れて地面に崩れ落ちていく。

ハジメからすれば、例え動いていなくても、風の流れ、空気や地面の震動、視線、殺意、魔力の流れ、体温などがまるで隠蔽できていない彼等は、ただそこに佇むだけの的でしかなかったのである。瞬殺した魔物には目もくれず、戦場へと、いや、処刑場へと一歩を踏み出す。これより始まるのは、殺し合いですらない。敵に回してはいけない化け物による、一方的な処刑だ。

あまりにあっさり殺られた魔物を見て唖然とするウィリスや、この世界にあるはずのない兵器に度肝を抜かれて立ち尽くしているクラスメイト達。そんな硬直する者達をおいて、魔物達は、ウィリスの命令を忠実に実行するべく次々にハジメへと襲いかかった。

黒猫が背後より忍び寄り触手を伸ばそうとするが、ハジメは、振り向きもせずダランと下げた手に持つドンナーを手首の返しだけで後ろに向けて発砲。音速を優に超えた弾丸は、あっさり黒猫の頭蓋を食い破った。弾けとんだ仲間の魔物には目もくれず、左右から同時に四つ目狼が飛びかかる。が、いつの間にか抜かれていたシュラークが左の敵を、ドンナーが右の敵をほぼゼロ距離から吹き飛ばす。

 

その一瞬で、絶命した四つ目狼の真後ろに潜んでいた黒猫が、背後から迫るキメラと連携して触手を射出するが、その場で数メートルも跳躍して空中で反転し上下逆さとなった世界で、標的を見失い宙を泳ぐ黒猫二体とキメラ一体をレールガンの餌食となる。

 

血肉が花吹雪のように舞い散る中で、着地の瞬間を狙おうとでも言うのか、踏み込んで来たブルタールモドキ二体がメイスを振りかぶる。しかし、そんな在り来りな未来予想が俺に通じるはずもなく、ハジメは〝空力〟を使って空中で更に跳躍すると、独楽のように回りながら左足に纏わせた雷魔法を虚空を蹴ると共にトリガーを引いた。

 

「──〝轟雷爪〟」

 

解き放たれた三つの赤雷の伸びる爪が、待ち構えていたブルタールモドキ二体だけでなく、その後ろから迫っていたキメラと四つ目狼を殲滅した。それぞれ血肉を撒き散らす魔物達が、慣性の法則に従いハジメの眼下で交差し、少し先で力を失って倒れこんだ。

 

ハジメは、四方に死骸が横たわり血肉で彩られた交差点の真ん中に音もなく着地し、虚空に取り出した弾丸をガンスピンさせながらリロードしていく。

 

と、その時、「キュワァアア!」という奇怪な音が突如発生した。ハジメがそちらを向くと、アブソドが口を大きく開いてハジメの方を向いており、その口の中には純白の光が輝きながら猛烈な勢いで圧縮されているところだった。

 

「あの魔力量は……」

 

ハジメは、アブソドから周囲数メートルという限定範囲ではあるが、人一人消滅させるには十分以上の威力がある魔力量を感じ取った。そんな強大な魔力が限界まで圧縮され、次の瞬間、ハジメを標的に砲撃となって発射された。射線上の地面を抉り飛ばしながら迫る死の光に、しかし、ハジメは冷静に柩型の大盾を虚空に取り出すと左腕に装着、同時に〝金剛〟を発動しながらどっしりとかざした。

 

「このまま耐える……いや」

 

魔力の砲撃が直撃した瞬間、凄まじい轟音が響き渡り、空気がビリビリと震え、その威力の絶大さを物語る。しかし、直撃を受けたハジメは、いたずらっぽい笑みを口元に浮かべると盾に角度をつけて砲撃を受け流し逸らされた砲撃を感知した場所に向かわせた、

 

そこには……

 

「ッ!? そうきますかっ!」

 

ウィリスだ。ハジメがあっさり魔物を殺し始めた瞬間から、軍剣を握り攻撃の瞬間を伺っており、アブソドの砲撃がチャンスだと思い俺に突撃しようしていたが、それに気がついていたハジメが、アブソドの砲撃を指示したであろうウィリスに砲撃を流したのだ。

 

予想外の事態に、慌てて回避行動を取るウィリスに、ハジメは盾の角度を調整して追いかけるように砲撃を逸らしていく。壁を破壊しながら迫る光の奔流に、壁際を必死に走るウィリス。その表情に余裕は一切ないのに笑みを浮かべていた。

 

「(……アイツ、戦いを楽しんでやがるな)」

 

しかし、いよいよ逸らされた砲撃が直ぐ背後まで迫り、ウィリスが、自分の指示した攻撃に薙ぎ払われるのかと思われた直後、アブソドが蓄えた魔力が底を尽き砲撃が終ってしまった。

 

「チッ……」

 

ハジメの舌打ちに反応する余裕もなく、冷や汗を流しながら更に笑みを浮かべるウィリスだったが、次の瞬間には凍りついた。

 

ドパァンッ!

 

「なっ!」

 

炸裂音が轟くと同時に右頬を衝撃と熱波が通り過ぎ、パッと白い何かが飛び散ったからだ。その何かは、先程までウィリスの肩に止まっていた白鴉の魔物の残骸だった。思惑通りにいかなかったハジメが、腹いせにドンナーをアブソドに、シュラークを白鴉に向けて発砲したのである。

 

アブソドは、音すら軽く置き去りにする超速の弾丸を避けることも耐えることも、それどころか認識することもできずに、開けっ放しだった口内から蹂躙され、意識を永遠の闇に落とした。

 

白鴉の方も、胴体を破裂させて一瞬で絶命し、その白い羽を血肉と共に撒き散らした。レールガンの余波を受けたウィリスは、衝撃にバランスを崩し尻餅を付きながらもすぐに体勢を戻し、そっと自分の頬を撫でる。そこには、白鴉の血肉がべっとりと付着しており、同時に、熱波によって酷い火傷が出来ていた。

 

「今でも私を殺せる範囲内と言うことですか」

 

ウィリスは、長年戦ってきたのだが、戦いで久しぶりの高揚感に、それに手を震えも止まらないことに嬉しくて堪らなくて口角を吊り上げた。

 

「ククッ……ホントに、面白いっ!」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

その光景を見ていた、光輝達は恐怖していた。彼等は、白髪眼帯の少年の正体を直ぐさまハジメとは見抜けず、正体不明の何者かが突然、自分達を散々苦しめた魔物を歯牙にもかけず駆逐しているとしかわからなかったのだ。

 

「何なんだ……彼は一体、何者なんだ!?」

 

光輝が動かない体を横たわらせながら、そんな事を呟く。今、周りにいる全員が思っていることだった。その答えをもたらしたのは、先に逃がし、けれど自らの意志で戻ってきた仲間、浩介だった。

 

「はは、お前等は信じられないだろうけど……あいつはハジメだよっ!」

 

「「「「「「は?」」」」」」

 

嬉しそうに喋る浩介に、光輝達が一斉に間の抜けた声を出す。浩介を見て「頭大丈夫か、こいつ?」と思っているのが手に取るようにわかる。浩介は、何、信じてないだとぉ?!と思いながら、語気を強めて話しだす。

 

「だーかーらっ、ハジメだよ。あの日、俺達を守る為にベヒモスと戦って橋から落ちたハジメだ。迷宮の底で生き延びて、自力で這い上がってきたらしいぜ。ここに来るまでも、迷宮の魔物が完全に雑魚扱いだった。まぁ、俺と園部達は生きてるのを信じてたけど……あぁ、また泣きそう」

 

「南雲って、え? 南雲が生きていたのか!?」

 

光輝が驚愕の声を漏らす。そして、他の皆も一斉に、現在進行形で殲滅戦を行っている化け物じみた強さの少年を見つめ直し……一部の者は「まぁ、あの時にベヒモスと渡り合っていたしな…」と信じる者。そして、「どこをどう見たら南雲なんだ?」と。そんな心情もやはり、手に取るようにわかる浩介は、「いや、本当だ。めっちゃ変わってるけど、ステータスプレートも見たし」と乾いた笑みを浮かべながら、彼が南雲ハジメであることを再度伝える。

 

皆が、信じられない思いで、ハジメの無双ぶりを茫然と眺めていると、ひどく狼狽した声で浩介に喰ってかかる二人の人物が現れた。

 

「う、うそだ。南雲は死んだんだ。そうだろ?みんな見てたじゃんか。生きてるわけない! 適当なこと言ってんじゃねぇよ!」

 

「そうだよっ! 本当にハジメ君なのかな、かな?!」

 

「うわっ、なんだよ!ステータスプレートも見たし、この俺が親友を断じて見間違える筈ない!」

 

「うそだ! 何か細工でもしたんだろ! それか、なりすまして何か企んでるんだ!」

 

「いや、何言ってんだよ? そんなことする意味、何にもないじゃないし……檜山てめぇ、それに白崎さんも何か思うことがあんのかよ?」

 

「「……っ!」」

 

浩介の胸ぐらを掴んで無茶苦茶なことを言うのは檜山と顔が少し青ざめてる香織。檜山は顔を青ざめさせ尋常ではない様子でハジメの生存を否定する。周りにいる近藤達も檜山と香織の様子に何事かと若干引いてしまっているようだ。そんな錯乱気味の檜山と香織に、比喩ではなくそのままの意味で冷水が浴びせかけられた。二人の頭上に突如発生した大量の水が小規模な滝となって降り注いだのだ。呼吸のタイミングが悪かったようで若干溺れかける二人。水浸しになりながらゲホッゲホッと咳き込む。一体何が!? と混乱する檜山と香織に、冷水以上に冷ややかな声がかけられる。

 

「……ハジメの邪魔になる大人しくして。鬱陶しい」

 

その物言いに再び激高しそうになった二人だったが、声のする方へ視線を向けた途端、思わず言葉を呑み込んだ。なぜなら、その声の主、ユエの二人を見る眼差しが、まるで虫けらでも見るかのような余りに冷たいものだったからだ。同時に、その理想の少女を模した最高級のビスクドールの如き美貌に状況も忘れて見蕩れてしまったというのも少なからずある。

 

と、その時、ウィリスが指示を出したのか、魔物が数体、光輝達へ襲いかかった。メルドの時と同じく、人質にでもしようと考えたのだろう。普通に挑んでも、ハジメを攻略できる未来がまるで見えない以上、常套手段だ。

 

鈴が、咄嗟にシールドを発動させようとする。度重なる魔法の行使に、唯でさえ絶不調の体が悲鳴を上げる。ブラックアウトしそうな意識を唇を噛んで堪えようとするが……そんな鈴をユエの優しい手つきが制止した。頭をそっと撫でたユエに、鈴が「ほぇ?」と思わず緩んだ声を漏らして詠唱を止めてしまう。

 

「……大丈夫」

 

ただ一言そう呟いたユエに、鈴は、何の根拠もないというのに「ああ、もう大丈夫なんだ」と体から力を抜いた。自分でも、なぜそうも簡単にユエの言葉を受け入れたのかは分からなかったが、まるで頼りになる姉にでも守られているような気がしたのだ。

 

ユエが、視線を鈴から外し、今まさにその爪牙を、触手を、メイスを振るわんとしている魔物達を睥睨する。そして、ただ一言、魔法のトリガーを引いた。

 

「──〝蒼龍〟」

 

その瞬間、ユエ達の頭上に直径一メートル程の青白い球体が発生した。それは、炎系の魔法を扱うものなら知っている最上級魔法の一つ、あらゆる物を焼滅させる蒼炎の魔法〝蒼天〟だ。それを詠唱もせずにノータイムで発動など尋常ではない。特に、後衛組は、何が起こったのか分からず呆然と頭上の蒼く燃え盛る太陽を仰ぎ見た。

 

しかし、彼等が本当に驚くべきはここからだった。なぜなら、燦然と燃え盛る蒼炎が突如うねりながら形を蛇のように変えて、今まさにメイスを振り降ろそうとしていたブルタールモドキ達に襲いかかるとそのまま呑み込み、一瞬で灰も残さず滅殺したからだ。

 

宙を泳ぐように形を変えていく蒼炎は、やがてその姿を明確にしていく。それは蒼く燃え盛る龍だ。全長三十メートル程の蒼龍はユエを中心に光輝達を守るようにとぐろを巻くと鎌首をもたげた。そして、全てを滅する蒼き灼滅の業火に阻まれて接近すら出来ずに立ち往生していた魔物達に向かって、その顎門をガバッっと開く。

 

ゴァアアアアア!!!

 

爆ぜる咆哮が轟く。と、その直後、たじろぐ魔物達の体が突如重力を感じさせず宙に浮いたかと思うと、次々に蒼龍の顎門へと向けて飛び込んでいった。突然の事態にパニックになりながらも必死に空中でもがき逃げようとする様子から自殺ではないとわかるが、一直線に飛び込んで灰すら残さず焼滅していく姿は身投げのようで、タチの悪い冗談にしか見えない。

 

「なに、この魔法……」

 

それは誰の呟きか。周囲の魔物を余さず引き寄せ勝手に焼滅させていく知識にない魔法に、もう光輝達は空いた口が塞がらない。それも仕方のないことだ。なにせ、この魔法は、〝雷龍〟と同じく、炎系最上級魔法〝蒼天〟と神代魔法の一つ重力魔法の複合魔法でユエのオリジナルなのだから。

 

ちなみに、なぜ〝雷龍〟ではなく〝蒼龍〟なのかというと、単にユエの鍛錬を兼ねているからという理由だったりする。雷龍は、風系の上級である雷系と重力魔法の複合なので、難易度や単純な威力では〝蒼龍〟の方が上なのだ。最近、ようやく最上級の複合も出来るようになってきたのでお披露目してみたのである。

 

当然、そんな事情を知らない光輝達は、術者であるユエに説明を求めようと〝蒼龍〟から視線を戻した。しかし、背筋を伸ばして悠然と佇み蒼き龍の炎に照らされる、いっそ神々しくすら見えるユエの姿に息を呑み、説明を求める言葉を発することが出来なかった。そんなユエに早くも心奪われている者が数人……特に鈴の中の小さなおっさんが歓喜の声を上げているようだ。

 

一方、ウィリスは、遠くから〝蒼龍〟 の異様を目にして、内心「これ程の複合魔法を………」と冷や汗を殴流すも笑みを浮かべていた。しかし、次々と駆逐されていく魔物達に焦燥感をあらわにして、先程致命傷を負わせたメルドの傍らにいる兎人族の少女と離れたところで寄り添っている二人の少女に狙いを変更することにした。

 

しかし、ウィリスは、これより更なる理不尽に晒されることになる。

 

シアに襲いかかったブルタールモドキは、振り向きざまのドリュッケンの一撃で頭部をピンボールのように吹き飛ばされ、逆方向から襲いかかった四つ目狼も最初の一撃を放った勢いのまま体を独楽のように回転させた、遠心力のたっぷり乗った一撃を頭部に受けて頭蓋を粉砕されあっさり絶命した。

 

また、優花と雫を狙ってキメラや黒猫が襲いかかった。殺意を撒き散らしながら迫り来る魔物に歯噛みしながら半ばから折れた剣を構えようとする雫だったが、それを制止するように、周囲で浮遊していたクロスビットがスっと雫とキメラの間に入る。

 

自分を守るように動いた謎の十字架に雫が若干動揺していると、突然、十字架が長い方の先端をキメラに向けて轟音を響かせた。雫が「ホントに何なの!?」と内心絶叫していると、その頬を掠めるように何かがくるくると飛び、カランカランという金属音を響かせて地面に落ちた。優花の側でも同じく轟音が響き、やはり同じように金属音が響き渡る。

 

二人が、混乱しつつも、とにかく迫り来る魔物に注意を戻すと、そこには頭部を爆砕させた魔物達の姿が……唖然としつつ、先程の金属音の元に視線を転じてその正体を確かめる。

 

「これって……薬莢?」

 

「薬莢って……銃の?」

 

二人が、馴染みのない知識を引っ張り出し顔を見合わせる。そして、俺が両手に銃をもって大暴れしている姿を見やって確信する。自分達を守るように浮遊する十字架は、オールレンジ兵器なのだと。

 

「ふふ、やっぱりハジメはいつでも守ってくれるわね」

 

「彼、ホントに凄いわね……」

 

周囲の魔物が一瞬で駆逐されたことで多少の余裕を取り戻し、優花はクロスビットを見ながら「やっぱ守ってくれてるんだ」と呟きながら嬉しそうに笑みを浮かべ、雫は、驚きを隠せずにいられなかった、実はそれがクロスビットを通して俺に伝わっており、優花の安心を確認して安堵していた。

 

その一連の光景を目にしたウィリスは剣を構えながらも眼前にいるハジメを賞賛した。

 

「(魂魄はあの時、勇者に致命傷を負わされたおかげで戻りましたが、まだ体は自由に効きませんね……ですが)ククッ、まさかここまでの実力とは。君はもしかしたらこれで、彼との野望(約束)の為ならば、この身命を落とせる」

ウィリスは少し光輝に感謝の念を抱きながら、ハジメとの最後の一騎討ちに臨むためにハジメを拍手で笑みを浮かべた表情で称賛しながら話し掛ける。

 

「素晴らしいですねアナタ方の実力は……これに関しては私の敗北でしょう。確実に……」

 

「……なんだ、投降か?」

 

「ええ、負けはしました。ですが、私は強き貴方に一矢報いててみたくなりました。ですので、錬成師殿、私との一騎討ちを臨みたい。これは魔人族と人間族とは関係なく一人の武人としての願いです」

 

ハジメは投降するのかと思い、ドンナーを下げようとしたががウィリスの誘いを聞いてやめた。同時にウィリスの誘いに乗ることにし、ハジメは戦闘体勢に入り不敵な笑みを見せる。

 

「良いぜ、やってみろよ?」

 

「ありがとうございます。では………」

 

乗ってくれたハジメに感謝しながらウィリスは軍剣を両手で握る。

 

「〝一刀修羅〟!!」

 

その言葉を皮切りにウィリスの限界のタガが外れ魔力量共に全てのステータスが跳ね上がる。

 

技能〝一刀修羅〟

身体のリミッターを外し、限界を越えた力を出す事で、強化倍率を数十倍にまで跳ね上げる剣士限定の限界突破。

ただし、1日1回の制限があり、1度使うと止める事も出来ない諸刃の剣でもある。その上、「余力も残さず使い切る」という特性上、使用後にそのまま継続しての戦闘は困難という弱点もある。

 

続いて、ウィリスは詠唱を開始する。

 

「───地の底に眠りし金眼の蜥蜴 大地が産みし魔眼の主 宿るは暗闇見通し射抜く呪い──〝落牢・武玄〟!」

 

短絡詠唱。ウィリスの周りに灰色の霧が現れ、そして段々と集約していき幾つか剣が作り出された。

 

その一連を見たハジメは警戒しながらウィリスの能力を推測する。

 

「(魔力が上がった……〝限界突破〟の類い? いや、それよりもあの灰色の魔力が纏う魔法の剣……)」

 

ハジメが灰色の魔法の剣に注目していると後方から優花の声がした。

 

「ハジメ! あの剣はもしかしたら切られたりすると石化するかもしれない!気をつけてっ!」

 

「(……石化の類の魔法ね)……了解」

 

ハジメは優花の言葉でウィリスの使う魔法の能力を知り、〝石化耐性〟がある自分なら問題ないとスピード勝負で決める。

 

そして、ハジメ自身も五割ほど本気を出す。

 

「──〝紅狼〟」

 

ハジメがそう呟いた瞬間、ハジメに紅い雷が纏いだしていき、段々と紅い雷がハジメの手足に纏うと狼のような爪になって獣へ化していく。その光景を見ていた優花達は息を呑む。

 

「おや、貴方も準備は終わりましたか?」

 

「おお、そっちも大丈夫かよ?」

 

「ええ、準備万端ですよ」

 

ハジメとウィリスはお互いの確認を取り合い、笑みを浮かべた瞬間……

 

「「じゃあ(では)…殺ろうか!」」

 

直後、迷宮の大地を揺らすかのような轟音が鳴り響く。その瞬間、紅い閃光と灰色の霧が激突した。

 

ウィリスは忽ち、〝一刀修羅〟によって跳ね上がった肉体でハジメの行く手を塞ぎ、石化の剣でトドメを刺そうと動くが、それを予見したハジメは紅狼で上昇した敏捷力で軽々しく避けながら上手く相手の裏へと回り込み、魔法を放つ。

 

「〝雷閃〟」

 

「クッ!」

 

紅い雷の斬撃がウィリスを襲うが、十倍に跳ね上がった視覚能力と肉体、今までの戦闘経験頬を活かして頬を掠めたがギリギリのところで避けると、体を捻り体勢を持ち直したウィリスは、そのまま加速して、思いっ切り軍剣を振るって同じ斬撃を放ち反撃を開始する。

 

しかし、その斬撃をハジメは簡単に避けるが、ウィリスは其れを理解した上でハジメへ迫り己を間合いで軍剣を振り上げた。

 

「はあ!!」

 

ハジメは其の振るわれた軍剣をドンナーを盾にして防ごうとするが、ここで予想外のことが起こる。

 

「っ!(重っ!!)」

 

予想以上の銃身にかかってきた余りにも重い一撃にハジメはそのまま押され後方へ吹き飛ばされる。

 

「くっ(膂力が俺と同レベル……!アレの強化倍率ってどれほどだよ!)」

 

ハジメはウィリスの膂力が力が一万を軽く超える自分と変わらないことを理解し彼が使った〝一刀修羅〟という技能に内心、驚いた。

 

そして、ハジメが吹き飛ばされるのを狙わないことはない。

 

石化の剣達がハジメへ照準が定まると手を翳し指示を送る。

 

「行けっ、剣達をっ!」

 

その言葉に従い、十を超える石化の剣達が一斉に射出されハジメへ向かい、灰色の霧が舞う。それを見たウィリスは「やったか」と思ったが現実はそうは甘くない。

耳元のすぐ近くから男の声が聞こえた。

 

「遅ぇよ」

 

「なっ?!」

 

横を向けば石化などしていない無傷のハジメ。ウィリスは驚愕に染まる。

 

そうハジメは剣が直撃する直前にドンナーで石化の剣達の核を狙い撃ち石化を防ぎ、灰色の霧が舞った内にウィリスのところへ周り込んだのだ。

 

「今度はこっちの番だぜ?」

 

そう言って、不敵な笑みを浮かべるハジメはドンナーを向け、引き金を引く。そして、ほぼゼロ距離に近い二人の間に放たれるのは電磁加速された六発の紅の弾丸。

それを見たウィリスは直感的に、あの弾丸を受けたら死ぬと理解する。故にウィリスは次に取る行動は早かった。

 

「ハァァァァッ!」

 

迫り来る弾丸に対しウィリスは電磁加速した弾丸を見えているのか勘なのか分からないが、全て軍剣で弾丸の軌道を逸らしたり、弾丸を切り裂いたりして全てを弾く。

 

その光景を見たハジメは苦笑いをし更に距離を詰める。

 

「マジかよっ。でも、これならどうだ?──〝アスタリスク・スパーク〟」

 

ハジメがそう言って、続けて魔法を放つ。直後、ハジメを中心に階層内全体をアスタリスク状の紅いスパークが迸った。

 

「ぐっ……〝守れ〟!」

 

ウィリスは唐突なスパークに驚いたが、ギリギリの対応で落牢の剣を盾にしてその場を凌いでいくが、隙が出来上がってしまい、ハジメはそこが狙い目だと判断して先程よりも多い数のレールガンを放つ。

 

「っ!!」

 

ドパァァァン!と、聞こえたウィリスは放たれたのは一発だと思ったが、見れば十を超える無数の弾丸。

 

「ぐっ!」

 

頭が理解しても体が間に合わない。十倍に跳ね上がった肉体を以てしても回避行動が間に合わず七、八発の銃弾が被弾し、ウィリスは苦悶の声を上げながら地面に回り転がっていく。

 

そして、ハジメは「これで決める」といった勢いでウィリスに一直線に迫るがウィリスもそれは百の承知。すぐさま石化の剣を用いてハジメが近付いた瞬間に追加詠唱する。

 

「〝惑わせ〟!」

 

その言葉に、石化の剣が濃い霧となって霧散しウィリスの姿を隠した。それを見たハジメはすぐに目眩しだと理解し歯噛みする。

 

「…ッ!(ちっ目眩しかっ!だが感知を使えば)」

 

濃霧の中、感知でウィリスを探すハジメ。その時、一際強い魔力を感じその方向へ視線を転じる。

 

そこには、石化の霧を軍剣に纏わせ巨大な剣を形成させたウィリスの姿がそこにあった。

 

「これで、終わりです!〝 収束──落牢大剣〟!」

 

ここで待ってました。と言わんばかりの表情でウィリスはハジメに向かって巨大な大剣を振るう。しかし、そんな攻撃。普段ならいとも容易く避けれるハジメだが、今は違う。

 

〝一刀修羅〟によって十倍にも跳ね上がったウィリスのステータスは、ハジメが動くよりも早く間合いにつく。

 

「!……ならっ、ぶっ壊すだけだ!」

 

回避できないと悟ったハジメは右手に持つドンナーに己の魔力の五割を収束させていき、ウィリスが振るう魔法の大剣に目掛けて撃ち放った。

 

放たれた紅雷の弾丸は灰色の刀身に直撃したと同時に激しいぶつかり合いの音とウィリスの苦悶の声が上がる。

 

ウィリスは思う。己が全力がまさか、放たれた先程の弾丸一発で拮抗されるとは思って見なかった。悔しさが堪らず叫びそうになるが、今はこの弾丸を跳ね返すことだけを考えると、心の中で言いつける。

 

「ぐっ……おおおおおおお!」

 

重い、重い、重い、重い。

幾ら押しても、一ミリも進まなない。拮抗してるようにも見えても、段々とコチラが押されてきてると自覚する。

 

でも、

 

「私はまだァァァァァ!」

 

諦めるわけにはいかない。

 

これだけは、武人である自分が、〝剣聖〟と呼ばれた自分が負ける訳にいかないとっ………

だが、現実は非道だ。

 

弾丸が直撃した箇所から灰色の大剣に亀裂が生じ、数秒経たないうちに大剣は粉々と打ち砕かれた。そして、そのままウィリスの右腕を吹き飛ばした。

 

それは、一瞬のことで何も理解できなかったウィリスは、血を吹き出しながら宙に舞う己を右腕を見て悟る。

 

己の敗北を………

 

悔しさを滲ませウィリスはポツリと呟いた。

 

「ああ、悔しいです、ね…………」

 

そう言ってウィリスは敗者らしく地面に叩きつけられるのであった。

 

戦いが終わりハジメの方もドンナーの銃口に軽く息を吹き掛け、〝紅狼〟を解除する。

 

そして、頬から少し血が流れてるのに気付いたハジメは、「やるじゃねぇか」と嬉しそうに零しながら血を拭う。

 

「ま、俺の勝ちだがな」

 

ハジメはそう呟いてから、優花の方を見た。彼女は笑みを浮かべながらハジメを見ていて、内心、嬉しい感情が湧き上がったが抑えつつハジメは優花に微笑み返してから、吹き飛ばされて右腕を失ったウィリスの元へと歩み寄る。

 

ウィリスのもとへ向かうとハジメは仰向けに倒れる彼に向かいドンナーの銃口をスっと照準を頭に合わせる。眼前に突きつけられた死に対して、ウィリスは死期を悟ったような澄んだ眼差しを向けながらハジメに問いかけた。

 

「死ぬ前に一つ………貴方の、名前は?」

 

「……そうえば、言ってなかったな俺は南雲ハジメだ」

 

「南雲ハジメですか……良い名前だ」

 

そう呟くウィリス。それは満足そうな表情だった。ハジメの方はと言うと名前を伝えた後、確認の為にあることをウィリスに問う。

 

「ウィリス、お前がこんな場所で何をしていたのか……それと、あの魔物を何処で手に入れたのか……吐いてもらおうか?」

 

「ククッ……知らないような口ぶりですね南雲ハジメ。迷宮攻略者の貴方なら察しがつくでしょう?」

 

ウィリスのその言葉に、ハジメは予想していたことが当たり、そして納得したように話す。

 

「やはり、あの魔物達は、神代魔法の産物か。魔人族側の変化は大迷宮攻略によって魔物の使役に関する神代魔法を手に入れ、そして魔人族側は勇者達の調査・勧誘と並行して大迷宮攻略に動いているわけか……」

 

「ええ、大体は合ってますよ」

 

「だが、何故俺が攻略者だと分かった?」

 

ハジメの其の質問にウィリスは少し沈黙するが、懐かしむような表情で語りだした。

 

「……似ていたからでしょうか………私の大切な親友(・・)に。自由を願い、大切なものを守る為に命を懸けてでも戦うあの瞳と……」

 

思い出に浸っているのか、和んだ笑みを浮かべるウィリス。一瞬、ハジメのドンナー持つ手が強ばってしまうも、すぐに強く握り直して返答する。

 

「親友か……まぁ、良いウィリス最後に言い遺す事は無いか?」

 

ハジメとしては神代魔法と攻略者が別にいるという情報を聞けただけで十分。その瞳に殺意を宿すことで雑念を消し、痛みに苦しむ前に早く終わらせてやろうと、殺す者としての責任を背負いながらドンナーを構える。

 

「そう、ですね。南雲ハジメ。君なら天にのうのうと居座る神共(・・)を殺してくれますか?」

 

ハジメは、ウィリスの質問に驚かずとも確信に至る。そして、その答えにギリッと悔しそうに口元を歪めた。しかし、それはウィリスを不安にさせるだろうと表情には出さず、安心させて送り出す為に笑みを浮かべて返事をした。

 

「……あぁ、殺すさ絶対に。だから、安心してくれ」

 

「……ククッ、そうですか。……君のその表情と信念と覚悟を聞けて安心しました。これ、なら彼も助かります………では、さようなら。南雲ハジメ、後を頼みます」

 

「あぁ、じゃあな……ウィリス・アルク。アンタとは早く会いたかった」

 

互いにもう話すことはないと口を閉じウィリスは笑みを浮かべていたもう思い残すことはないのだろう。

 

ハジメは、ドンナーの銃口をウィリスの頭部に向けた。

 

しかし、いざ引き金を引くという瞬間、大声で制止の声がかかる。

 

「待て!待つんだ、南雲!彼は、もう戦えないんだぞ! 殺す必要はないだろ!」

 

「……(何言ってんだ、アイツ)?」

 

光輝は、フラフラしながらも少し回復したようで何とか立ち上がると、更に声を張り上げた。

 

「捕虜に、そうだ、捕虜にすればいい。無抵抗の人を殺すなんて、絶対ダメだ。俺は勇者だ。南雲も仲間なんだから、ここは俺に免じて引いてくれ」

 

余りにツッコミどころ満載の言い分にハジメは、怒りの余り魔力が漏れ出すも、聞く価値すらないと即行で切って捨てた。

 

そして、気を取り直しハジメは無言のまま……引き金を引く。

 

「……」

─── 楽に逝けよ…ウィリス。

 

ドパンッ!と乾いた破裂音が室内に木霊する。解き放たれた殺意は、狙い違わずウィリスの額を撃ち抜き、ウィリスを一瞬で絶命させた。

 

「(フリード。私は先に逝ってしまいますが、君なら私達の大願を成し遂げれられる。私達の……魔人族のこれからが神の意思じゃなく自由の意思の下にあらんことを……そして、南雲ハジメ)───」

───ありがとう。この地獄から終わらせてくれて……

 

 

静寂が辺りを包む。クラスメイト達は、今更だと頭では分かっていても同じクラスメイトが目の前で躊躇いなく人を殺した光景に息を呑み戸惑ったようにただ佇む。

 

だが、当然、正義感の塊たる勇者の方は黙っているはずがなく、静寂の満ちる空間に押し殺したような光輝の声が響いた。

 

「なぜ、なぜ殺したんだ。殺す必要があったのか……」

 

ハジメは、絶命させたウィリスの死体の見開いた目をそっと優しく閉ざした。

 

「ウィリス、安らかに眠れよ」

 

そう言った後、ハジメはメルド団長の容態を確認するべく介抱してるシアの方へ歩みを進めながら、自分を鋭い眼光で睨みつける光輝を視界の端に捉えた。光輝がハジメを見る視線から、またも面倒事が起こりそうな気がするが、

 

「まあ、いっか……」

 

一瞬考えたがハジメはさらりと無視することにした。もっとも、そんなハジメの態度を相手が許容するかは別問題であるのだった……。




ウィリスのステータスです。
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ウィリス・アルク 25歳 男 レベル:85

天職:剣士

筋力:3900

体力:3200

耐性:2550

敏捷:3600

魔力:3000

魔耐:2100

技能:剣術[+斬撃速度上昇][+抜刀速度上昇][+一閃剣技][+絶剣の舞][+秘剣の舞][+剣豪の舞][+剣聖の舞]・縮地[+重縮地][+震脚][+無拍子]・土属性魔法適性[+魔力消費減少][+効果上昇]・身体強化・先読[+慧眼]・気配感知[+特定感知]・一刀修羅

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編集しました。十一月二十日

愛子はハーレムに入れるか入れないか

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