本当にこの作品を読んでありがとうございます(*^^*)
これからも投稿を頑張っていくのでこれからも【ありふれた職業で世界最強if優花】を楽しみにしたいてぐたさい!(´▽`)
では本編をどうぞ(^ω^)
何の前触れもなく、突如、天より放たれた白き極光。
その光は、今まさに最後のマグマ蛇に止めを刺そうとしていたハジメに絶妙なタイミングで襲い掛かり、凄絶な熱量と衝撃を以てハジメを破壊の嵐の中へと呑み込んだ。
「ハ、ハジメぇ!!!」
ユエの絶叫が響き渡る。ハジメが極光に飲み込まれる光景を、少し離れた場所から呆然と見ていることしか出来なかったシアとティオだったが、出会ってこの方一度も聞いたことのないユエの悲痛な叫び声に、ハッと我を取り戻した。
轟音と共にハジメの真上から降り注いだ極光は、そのまま最後のマグマ蛇をも呑み込んで灼熱の海に着弾し、盛大に周囲を吹き飛ばしながら一時的に海の底をさらけ出す。極光は、しばらくマグマの海を穿ち続けたが、次第に細くなっていき、遂にはスっと虚空の中へと溶け込むように消えていった。
必死にハジメのもとへ飛んでいくユエの目に、消えた光の中から、ハジメの姿は無かった。
「えっ……ハ、ハジメ?」
ユエは極光が消えた後にハジメの姿は無く、其の光景を前に呆然と立ち尽くしていた。
と、その時、
「馬鹿者! 上じゃ!!」
ティオの警告と同時に無数の閃光が豪雨の如く降り注いだ。それは、縮小版の極光だ。先程の一撃に比べれば十分の一程度の威力と規模、されど一発一発が確実にその身を滅ぼす死の光だ。
ユエは、ハジメを探す事に気を取られすぎて上空から降り注ぐ数多の閃光に気が付いておらず、警告によって天を仰いだ時には魔法の発動がユエを以てして間に合わない状況だった。あと三秒、いや、一秒あれば……引き伸ばされた時間の中で、ユエは必死に防御魔法を頭の中で構築する。
「させんのじゃ!───〝嵐空〟!」
その数秒を、駆けつけたティオが稼ぐ。発動させたのは風系統の中級防御魔法〝嵐空〟。圧縮された空気の壁が死の雨を受け止める。直撃を受けた瞬間、大きくたわむ風の結界は、本来ならそのまま攻撃を跳ね返すことも出来るはずだったが、そのような余裕など微塵もなく、次々と着弾する小極光に早くも悲鳴を上げている。防げた時間は、やはりほんの数秒だった。
しかし、それで十分。
「──〝聖絶〟!」
ユエの防御魔法が発動する。本来なら〝絶禍〟を展開したかったが、いくら熟練度が上がり発動時間を短く出来るようになってきたとは言え、重力魔法の構築・発動は、他の属性魔法の比ではない。咄嗟に発動出来る上級レベルの防御魔法としては〝聖絶〟が適当だった。
ユエが、掲げた手の先に燦然と輝く光の障壁が出現し、半球状にユエを覆う。直後、ティオの展開していた〝嵐空〟が、遂に小極光の嵐に耐え切れず空気が破裂するような音と共に消滅し、同時に、その衰えぬ破壊の奔流が、その下に展開されていた光の障壁に殺到した。
ドドドドドドドドドドッ!!!
大瀑布の如き圧力がユエを消滅させんと間断なく襲い掛かり、ユエの〝聖絶〟を軋ませる。ユエは、想像以上の威力にこのままでは押し切られると判断し、展開中の〝聖絶〟を、全体を覆うバリア状から頭上のみを守るシールド状に変形させた。守護する範囲が狭くなった分、頑丈さが増す。周囲は、小極光の余波で荒れ狂い破壊し尽くされ、既にユエのいる場所以外の足場は粉微塵にされてマグマの海へと沈んでいった。
この小極光は、どうやら集中的にユエを狙っているらしく、少し離れたところの足場にいるシアとティオには足止め程度にしか降り注いでいないようだ。それでも、シアとティオの二人が足止めされる程度には、威力も密度もある弾幕であり、尋常な攻撃でないことは確かである。
「ユエさん! ユエさぁん!」
「落ち着くのじゃ、シア! 今、妾の守りから出てはお主でも死ぬぞ!」
「でもぉ! ユエさんが!それにハジメさんも……き、消えて…」
泣きそうな表情で小極光の豪雨の中に飛び出そうとするシアを、渦巻く風のシールドでその軌道を逸らしながら、ティオが必死に諌める。
ティオとて、ユエと消えたハジメが心配でならない。シアの気持ちは痛いほどわかる。しかし、縮小版とはいえ、ハジメが消えた挙句、あの破壊力の極光の雨の中へ無防備で飛び出させるわけには行かない。片手でシアの首根っこを掴みながら、必死に光の暴威を逸らし続ける。
十秒か、それとも一分か……永遠に続くかと思われた極光の嵐は最後に一際激しく降り注いだあと、ようやく終わりを見せた。周囲は、見るも無残な状態になっており、あちこちから白煙が上がっている。
ユエもティオも魔力を使いきり、肩で息をしながら魔晶石にストックしてあった魔力を取り出して充填したと、同時に、上空から男の声が聞こえた。
「……看過できない実力だ。やはり、ここで待ち伏せていて正解だった。お前達はこの世界に於いて強過ぎる。男の方は残念だったが……」
「……!」
ユエ達は、その声がした天井付近に視線を向ける。そして驚愕に目を見開いた。なぜなら、いつの間にか、そこにはおびただしい数の灰色の竜とそれらの竜とは比べ物にならないくらいの巨体を誇る純白の竜が飛んでおり、その白竜の背に赤髪で浅黒い肌、僅かに尖った耳を持つ魔人族の男。
「へぇ……誰が残念だって?」
「っ?!」
そんな男の言葉を遮るようにドパァァンと、銃撃音がする共に幾つかの紅い閃光が男の元に向かう。男は咄嗟に白竜を体を大きく傾けさせて回避するも数体の灰色の竜が撃ち抜かれ撃墜されていく。其の光景を見たユエ達と男は閃光の発生場所に視線を向けた。
「ハァハァ……」
其処には、〝空力〟を使って上空に佇むハジメがおり、身体中が傷だらけで息を切らしている。
「ハジメェ!」
「ご主人様!」
「ハジメさん!」
下から聞こえたのはユエ達の声。三人はハジメの生存を知り、感嘆の声をあげたており、ハジメは三人に不敵な笑みを浮かべ「俺は大丈夫だ」と伝える。魔人族の男は目を見開き驚愕してたが誰にも気付かれないように微かに笑みを浮かべた。
「……まさか、私のウラノスのブレスを直撃させても殺しきれんとはな。おまけに報告にあった強力にして未知の武器、女達もだ。まさか灰竜達の掃射を耐えきり反撃するなど有り得んことだ。流石は〝
その言葉の通り、ハジメは極光が降り注ぐ瞬間、咄嗟に〝紅狼〟・〝限界突破〟を発動し、巨大な極光の直撃をまともに受けずに避けたのだが完壁とはいかず、少なからずダメージを受けていたのだった。
その後も縮小版の極光を回避していくが上手く回避出来ず、コートも服もボロボロで義手も半ば融解し、眼帯は取れ、額から血が流れ魔人族の男が言っていたように極光による毒素が体に回って身体が重く感じている状態だ。
「はぁ…はぁ、それが何だってんだ? それより魔人族は礼儀がある種族かと思ったが違うようだな」
ハジメは不敵な笑みを浮かべ魔人族の男を煽ると、魔人族の男は、それに眉を一瞬ピクリと動かし、「そうか、やはりウィリスは……」と誰にも聞こえない程度の声音で呟いた後、後方をチラりと視線を向け、すぐにハジメ達に方へ向き直ると全体に聞こえる声音で答えた。
「私の名はフリード・バグアー。異教徒共に神罰を下す忠実なる………〝神の使徒〟である」
「神の使徒……ね。大仰だな。神代魔法を手に入れて、そう名乗ることが許されたってところか?」
「如何にも」
「……てめぇの持つ神代魔法。魔物を使役する魔法じゃねぇよな? これ程の極光を放てるような魔物が、うじゃうじゃいて堪るかってんだ。おそらく、魔物を作る類の魔法。強力無比な軍隊を作れるなら、そりゃあ神の使徒くらい名乗れるだろうよ」
「……その通りだ。この神代の力を手に入れた私に〝アルヴ様〟は直接語りかけて下さった。〝我が使徒〟と。故に、私は己の全てを賭けて主の望みを叶える。その障碍と成りうる貴様等の存在を、私は全力で否定しよう」
「……?」
ハジメは魔人族の男──改めフリードの話し方とその自分の立場を嫌悪しているような表情に疑問に感じるが……今は関係ないと思考から切り捨てる。
──俺の目的の邪魔、敵対をするのなら……
ハジメは自分の信念を脳裏を過ぎらせると、不敵に笑い。回復は遅いが、〝魔力変換〟の派生〝治癒力〟で魔力を治癒力に変えているので、止血だけは出来ている。左腕は義手が融解しているも使えないことはない。、右手も骨が見えていても折れてはいないから使える。「俺は、まだ戦える!」とハジメは、そう気合を入れ直した。
「それは、俺のセリフだ。どんな奴でも俺の前に立ちはだかったなら、お前は敵だ。敵は……ただ殺すだけだ!」
ハジメは、そう雄叫びを上げながら、激痛を堪えてドンナーをフリードに向け引き金を引いた。激発の反動に右腕と体が悲鳴を上げるが全て敵への殺意で捩じ伏せる。更に、〝瞬光〟を発動してクロスビットも取り出し突撃させ、雷魔法〝雷槍〟を二本放った。
それと同時に、ユエが〝雷龍〟を、ティオがブレスを、シアが炸裂スラッグ弾を放つ。しかし、〝灰竜〟と呼ばれた体長三、四メートル程の竜が数頭ひらりと射線上に入ると、直後、正三角形が無数に組み合わさった赤黒い障壁が出現し、攻撃を全て受け止めてしまった。
その障壁は、攻撃力が絶大であるために数秒程で直ぐに亀裂が入って砕けそうになるのだが、後から更に他の灰竜が射線上に入ると同じように障壁が何重にも展開されていき、思ったように突破が出来ない。よく見れば、竜の背中には亀型の魔物が張り付いているようだ。甲羅が赤黒く発光しているので、おそらく、障壁は亀型の魔物の固有魔法なのだろう。
「私の連れている魔物が竜だけだと思ったか? この守りはそう簡単には抜けんよ。さぁ、見せてやろう。私が手にしたもう一つの力を。神代の力を!」
そう言うと、フリードは極度の集中状態に入り、微動だにせずにブツブツと詠唱を唱え始めた。手には、何やら大きな布が持たれており、複雑怪奇な魔法陣が描かれているようだ。
新たに手に入れた神代の力と言っていた事から、おそらく、この【グリューエン大火山】で手に入れた神代魔法なのだとハジメ達は察し、それ故、 神代魔法の絶大な効果を知っているハジメ達は、詠唱などさせるものかと、更に苛烈に攻撃を加え始めた。
しかし、灰竜達は障壁を突破されて消し飛んでも、直ぐに後続が詰めて新たな障壁を展開し、ハジメ達の攻撃をフリードに届かせない。本来なら、ユエ達に援護を任せて、〝空力〟で直接叩きに行くのだが、今はまだ回復しきっておらず、灰竜の群れに叩き落とされるのが関の山だと思いハジメは歯噛みした。
ドンナーをしまい、反動の少ないオルカンを取り出し全弾ぶっ放すが、数頭の灰竜を障壁ごと吹き飛ばして終わりだった。フリードには届いていない。クロスビットも、威力が足りず障壁を破壊しきるには至らない。
と、その時点でタイムアップだったようだ。フリードの詠唱が完成してしまった。
「──〝界穿〟!」
「ッ!後ろです! ハジメさん!」
最後の魔法名が唱えられると同時に――フリードと白竜──改めウラノスの姿が消えた。正確には、光り輝く膜のようなものが出現し、それに飛び込んだのだ。ハジメ達は、フリードが魔法名を唱えると同時に叫んだシアの警告に従い、驚愕に目を見開く暇もなく背後へ振り返った。
そこには、眼前で大口を開けたウラノスとその背に乗ってハジメを睨むフリードがいた。ウラノスの口内には、既に膨大な熱量と魔力が臨界状態まで集束・圧縮されている。
「……ッ!(空間移動系の魔法?!)」
ハジメは咄嗟にオルカンを盾にするが、ゼロ距離で放たれる極光も同時だった。
「ぐぅう!! あぁああ!!」
轟音と共に、かざしたオルカンに極光が直撃しハジメを水平に吹き飛ばした。凄絶な衝撃に、ただでさえダメージを受けていた肉体が悲鳴を上げ、食いしばった口から苦悶の呻き声が上がる。
「ハジメ!」
極光に押され吹き飛ぶハジメを助けようと、ユエ達が咄嗟に、ウラノスに向かって攻撃を放とうとするが、それを読んでいたように灰竜からの掃射が彼女達に襲いかかり、その場に釘付けにされてしまった。
吹き飛ぶハジメは、直撃こそ受けていないものの極光の衝撃により傷口が開いてしまい盛大に血飛沫を撒き散らすが、必死に傷ついた右腕のみでオルカンを支え、〝空力〟で踏ん張りつつも、このままでは煮え滾る海に叩き落とされると悟ったハジメは、二度目の〝限界突破〟・〝紅狼〟を発動した。
「───〝限界、突破ァ〟!〝紅狼〟!」
傷ついた体に加えて二度目の〝限界突破〟を使うのは非常に危険な賭けだ。普段なら、〝限界突破〟を使っても、ひどい倦怠感に襲われるだけで済むが、今の状態で使えば、おそらく使用後に身動きがとれなくなるだろう。それでも、状況の打開に必要だと判断した。そして、ハジメの体を紅い光の奔流が包み込み、紅き雷が纏っていき、力が爆発的に膨れ上がる。
「らぁあああ!!──〝天雷牙狼〟!」
「なっ!」
雄叫びを上げながらハジメはオルカンを跳ね上げてから自分の最大威力の魔法を放ち、紅い巨大な狼がウラノスの極光とぶつかり合い消し去ったのを目撃したフリードの表情に驚愕が満ちる。
「まさか……人間の魔法でウラノスの極光を消すとは……ではこれならどうだイレギュラー!」
フリードはハジメの魔法に驚愕と共に少し笑みを見せた表情をするがすぐに真顔に戻り、ウラノスに指示して無数の光弾を放つ。
ハジメはフリードが乗るウラノスの放つ極光はオルクスの最下層にいる
「クロスビットぉ!」
ハジメは、襲い来る光弾を極限の集中によりスローになった世界で、紅い閃光のように動きながらかわしていく。そして、極光により融解して使い物にならなくなったオルカンをしまうと、ドンナーを連射しながら、同時にクロスビットを飛ばしてフリードを強襲していく。
「フッ……何というしぶとさだっ!紙一重で決定打を打てないとはなっ!」
フリード不敵な笑みを浮かべながら、再び、亀型の魔物が張る障壁の中に包まれながら、重傷を負っているはずのハジメのしぶとさに感嘆すると、ウラノスを高速で飛ばしながら、再び、詠唱を唱え始めようとした。
しかし……
〝そうはさせんよ!〟
クロスビットの猛攻に耐え、光弾を掻い潜りながら距離を詰めてくるハジメから後退して時間を稼ごうとするフリードとウラノスに、突如、空間全体に響くような不可思議な声が届く。と、同時に、横合いから凄まじい衝撃が襲いかかった。
吹き飛ばされ、ウラノスにしがみつきながら思わず詠唱を中断してしまったフリードが、体長十メートルの白竜を吹き飛ばした原因に目を向けた。直後、驚愕にその目を見開く。
「純粋な黒竜だとっ!? まさか、竜人族っ!」
〝紛い物の分際で随分と調子に乗るのぉ! もう、ご主人様は傷つけさせんぞ!〟
フリードとウラノスを吹き飛ばしたのは、フリードの言葉通り〝竜化〟したティオだ。竜人族であることを魔人族に知られることによるリスクを承知の上で、その姿をあらわにしたのだ。ウラノスより一回り小さいサイズではあるが、纏う威圧感はウラノスを遥かに凌でいた。
〝…………〟
ティオが、何故ハジメ達の旅に同行する決断をしたのは、ハジメを気に入ったからというのもあるが、異世界からやって来た者達の確認、そして行く末を確かめるためという理由もあった。
しかし、それよりも大きな理由が一つある。
───
その前提として、ティオが竜人族であることは、極力隠したいと思っていた。それは掟なのだから当然のことだ。いくら強力な種族であっても、数の暴力には敵わない。その事は、五百年前の迫害で身に染みていた。
───それが、あの時に身に付いた生きる為の術だから……。
しかし、無敵だと、傷つくはずがないと思い込んでいたハジメが重傷を負った。天より降り注ぐ極光に焼かれ、直撃は避そして、けていたがボロボロのハジメを見たとき、ティオの胸中は激しい動揺に襲われた。
───何百年振りだった。あんなに激しい動揺に襲われることなんて……。
そして、気が付く。自分は何を勘違いしていたのか。ハジメとて人。傷つくこともあれば、一瞬の油断であっさり死ぬことも有り得る。そんな当たり前のことをようやく思い出したティオは、長く生きておきながら常識を忘れるほどハジメに傾倒していた事を、今この時にこそ明確に自覚した。単なる興味の対象でも、自分を救ってくれた恩人でも、■■の為の道具でも。ご主人様でもない。
───ご主人様……いや、ハジメは、一人の女として失いたくない〝男〟なのだと自覚したのじゃ!
それ故に、人前での〝竜化〟の決断をした。仲間の危機に出し惜しみをするのであれば、もう胸を張って仲間を名乗れない。なにより、竜人族ティオ・クラルスの誇りにかけて、掟と大切な者の命を天秤にかけるような真似は出来なかったし、するつもりもなかった。
〝若いのぉ!覚えておくのじゃな! これが〝竜〟のブレスよぉ!〟
轟音と共に黒色の閃光がウラノスもろともフリードを呑み込もうと急迫する。ウラノスは身をひねり迫るブレスに向けて同じように極光のブレスを放った。黒と白の閃光が両者の間で激突し、凄絶な衝撃波を撒き散らす。直下にあるマグマの海は衝突地点を中心に盛大に荒れ狂いマグマの津波を発生させた。
最初は拮抗していたティオとウラノスのブレスだが、次第に、ティオのブレスが押し始める。
「くっ、まさか、このような場所で竜人族の生き残りに合間見えるは……仕方あるまい。未だ危険を伴うが、この魔法で空間ごと…!」
竜人族については報告がされていなかったのか、フリードは本気で驚いているようで、まさかの事態に何故か笑みをこぼす。
そして、自分の背後に控えるデカイ一つ目の翼が生えた魔物を睨みつけてから懐から新たな布を取り出し、再び正体不明の神代魔法を詠唱しようとしたが……
「させねぇよ」
「ッ!?」
傷口から血を噴き出しながらも、いつの間にかフリードの背後に回っていたハジメはドンナーを連射、一発の銃声と共に放たれた弾丸は六発。その全てが、ほぼ同時に、一ミリのズレもなく同じ場所へピンポイントに着弾した。
フリードの傍にいた亀型の魔物が、フリードが反応するより早く障壁を展開していたのだが、赤黒く輝く障壁はほぼゼロ距離から放たれた閃光と衝撃により、あっさり喰い破られた。焦燥感をあらわにしたフリードの懐へ潜り込む。
そして、〝紅狼〟で顕にしている〝紅雷〟の爪を纏わせた右腕に〝風爪〟を発動させながら、一気に振り抜いた。
「──〝
「ぐぁあ!?」
ハジメの放つ紅い紅雷と旋風を纏った爪をフリードに目掛けて横に切り刻もうとするも、フリードは間一髪、避け両断されることは免れたが胸に横一文字の切創が刻まれる。
「逃がさねぇぞ!」
ハジメは声を上げながら攻撃の手を緩めず、フリードを切り裂いた勢いそのままに、くるりと回転すると〝魔力変換〟による〝魔衝波〟を発動させながら〝紅雷〟を纏った足で後ろ回し蹴りを放った。
「がぁああ!!」
フリード辛うじて左腕でガードしたのだろうが、勢いを殺すことなど出来るはずもなく、不快な音と共に左腕が粉砕され、内臓にもダメージを受けながら、フリードはウラノスの上から水平に吹き飛んでいった。
主がいなくなったことに気がついたのか、気を逸らしたウラノスに黒きブレスが一気に迫ってくる。
「任せた」
ハジメがそう呟いでウラノスの上から飛び退いた直後、ティオのブレスがウラノスを極光ごと盛大に吹き飛ばした。
「ルァアアアアン!!」
悲鳴を上げて吹き飛んだウラノスは、ティオのブレスの直撃を受けた腹を大きく損傷しながらも空中で何とか体勢を立て直し、天井付近へと一気に飛翔する。そこには、いつの間にか灰竜に乗ったフリードがいた。上空で合流すると、フリードは再びウラノスに乗り込んだ。
「逃がすかっ! 」
ハジメはフリードを逃がさない為に、〝空力〟で追撃を仕掛けようとするが……
「ぐっ!? ガハッ!!」
ハジメを包んでいた紅色の光と紅雷が急速に消えて行き、傷口からだけでなく、口からも盛大に血を吐き出してしまった。〝限界突破〟と〝紅狼〟のタイムリミットだ。傷を負った状態で、更に限界越えと身体と魔力の強化などしたものだからダメージは深まり、リミットも早かったらしい。〝空力〟が解除されて、マグマの海に落ちる。
〝ご主人様よ! しっかりするのじゃ!〟
「ぐっ、ティ、ティオ……」
落下していたハジメを、飛翔してきたティオが自分の背に乗せる。ハジメは、〝限界突破〟と〝紅狼〟の二つの副作用と深刻になったダメージに倒れそうになるが、何とか片膝立ちで堪え、ギラギラと光る眼光で上空のフリードを睨みつけた。
見れば、フリードの周囲に、ユエ達を襲っていた灰竜達も集まっている。
「ハジメ!」
「ハジメさん!」
ユエとシアが、ハジメの名を叫びながら駆けつけてきた。ティオは、近くにあった足場に着地する。 今のハジメでは、攻撃を受けたときのティオの戦闘機動に耐えられず落下するおそれが高いからだ。同じ足場に飛び移ってきたユエとシアは、直ぐにハジメの傍に寄り添いその体を支えた。
「……恐るべき戦闘力だ。侍らしている女共も尋常ではない。絶滅したと思われていた竜人族に、無詠唱無陣の魔法の使い手、未来予知らしき力と人外の膂力をもつ兎人族……よもや、神代の力を使って、なお、ここまで追い詰められるとは……最初の一撃を当てられていなければ、蹴散らされていたのは私の方だな」
何かの感情を押し殺したような声音で語りながら、ハジメと火花散る視線を交わすフリード。肩で息をしながら、無事な右手で刻まれた胸の傷口を押さえている。
「なに既に勝ったこと前提で話してんだ? 俺は、まだまだ戦えるぞ」
ハジメは、フリードの言葉に不快げに表情を歪めると、身体はボロボロだがそれでも殺意で眼をギラギラと光らせながら戦闘続行を宣言する。
「……だろうな。貴様から溢れ出る殺意の奔流は、どれだけ体が傷つこうと些かの衰えもない。真に恐るべきはその戦闘力ではなく、敵に喰らいつく殺意……いや、大切なものを守ろうとする執念か。私も殺意を向けなければ対応出来なかった」
フリードは、何かを決断するように、一度目を伏せると決然とした表情で再びハジメ達を見る。
「この手は使いたくはなかったのだがな……貴様等ほどの強敵を殺せるなら必要な対価だったと割り切ろう」
「なにを言ってる?」
フリードは、ハジメの質問には応えず、いつの間にか肩に止まっていた小鳥の魔物に何かを伝えた。
その直後、
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!! ゴバッ!!! ズドォン!!
空間全体、いや、【グリューエン大火山】全体に激震が走り、凄まじい轟音と共にマグマの海が荒れ狂い始めた。
「うおっ!?」
「んぁ!?」
「きゃあ!?」
〝ぬおっ!?〟
突如、下から突き上げるような衝撃に見舞われ、四者四様の悲鳴を上げて必死にバランスをとる。激震は刻一刻と激しさを増し、既に震度で言えば確実に七はあるだろう。マグマの海からは無数の火柱、いや、マグマ柱が噴き上がり始めている。
「ハジメさん! 水位が!」
シアの言葉に、ハジメ達が足場の淵を見れば、確かにマグマの海がせり上がってきていた。
「何をした?」
ハジメが、明らかにこの異常事態を引き起こした犯人であるフリードに押し殺したような声音で聞いた。フリードは、中央の島の直上にある天井に移動しながら、その質問に応える。
「〝要石〟を破壊しただけだ」
「〝要石〟だと?」
「そうだ。このマグマを見て、おかしいとは思わなかったのか? 【グリューエン大火山】は明らかに活火山だ。にもかかわらず、今まで一度も噴火したという記録がない。それはつまり、地下のマグマ溜まりからの噴出をコントロールしている要因があるということ」
「……それが〝要石〟か……まさかっ!?」
ハジメはフリードが大迷宮自体を破壊することを察すると、フリードは淡々と説明をする。
「そうだ。マグマ溜まりを鎮めている巨大な要石を破壊させてもらった。間も無く、この大迷宮は破壊される。神代魔法を同胞にも授けられないのは痛恨だが……貴様等をここで仕留められるなら惜しくない対価だ。大迷宮の住処で籠ったりして餓死でもすればいい」
フリードは、ハジメ達を見下ろしながら、首に下げたペンダントを天井に掲げた。すると、天井に亀裂が走り、左右に開き始める。円形に開かれた天井の穴は、そのまま頂上までいくつかの扉を開いて直通した。
どうやら、【グリューエン大火山】の攻略の証で地上までのショートカットを開いたようだ。フリードは最後にもう一度、ハジメ達を見て何かを口パクで呟いた後、踵を返してウラノスと共に天井の通路へと消えていった。
「……(今さっき野郎……口パクで「生きろ」って言ったよな)……じゃあ、やっぱりアイツは、もしかして……」
「ちょっハジメさんこんな時に考え込まないで下さい!」
「!……スマン」
周囲のマグマの海は、既に、まるでハリケーンの勢力圏に入った海のように荒れ狂い、噴き上がるマグマ柱はその数を次々と増やしている、ハジメ達の足場も端からマグマが流れ込みだした。まるで終末世界のような光景であるのにハジメがフリードの口パクでの言葉が気になり考え込んでるとシアに叱られ、一旦フリードの件は置いといてこの状況をどう打開するか考える。
「此処の神代魔法はなんとかして手に入れないといけない。なら、まだテストの段階だが〝アレ〟を使うか」
ハジメは、僅かな時間でアレを使うことを決断すると、怪我を押して立ち上がる。直後、フリードとウラノスが出て行っても残っていた灰竜達が一斉に小極光を放ち始めた。そこには、大きな一つ目に翼が生えていた魔物が指揮を取ってるように見えたどうやらハジメ達をここで殺すつもりらしい。
ユエが、〝絶禍〟を発動して小極光を呑み込みながら攻撃を凌いでいる間に、ハジメは、〝宝物庫〟を手に握ると、頭上の灰竜達にブレスを放とうとしているティオの堅い竜鱗に覆われた頬に手を這わせ自分の方に顔を向けさせた。
「ティオ、よく聞け。これを持って、お前は一人であの天井から地上へ脱出しろ」
一瞬、何を言われているのか分からないという表情で目を瞬かせるティオだったが、次の瞬間には傷ついたような表情をして悲しみと怒りの混じった声を響かせた。ハジメの言葉が、まるでティオだけ生き残らせて、自分達を切り捨てろと言っているように聞こえたのだ。
〝ご主人様よ、妾は、妾だけは最後を共に過ごすに値しないというのか? 妾に切り捨てろと、そういうのか? 妾は……〟
「ティオ、そうじゃない。時間がないから一度しか言わない。俺は、何も諦めていない。神代魔法は手に入れるし、そして〝静因石〟を届けるという約束も守る。だが、一人じゃ無理なんだ。だからお前の力を貸して欲しい。お前でなければ、全てを突破して期限内にアンカジに戻ることは不可能なんだ……頼む、お前の力が必要だティオ」
ハジメは真剣な眼差しで、竜化状態のティオの瞳を見つめる。ティオの心が悲しみや怒りから一転して歓喜に震える。気に入った男から、いや、今や本気で伴侶になりたいと思っている相手から、生死のかかった瀬戸際で大切なものを〝託された〟のだ。これに応えられなければ、女ではない。
それ故に、ティオはただ一言、応えた。
〝任せよ!〟
ハジメは、ティオのウロコの内側へ〝宝物庫〟を入れる。こうすることで、竜の肉体を通して人状態のティオの手に渡るのだ。
ティオは、身の内に〝宝物庫〟が入った事を確認すると、そっと、ハジメに頭をこすりつけた。今できる、精一杯の愛情表現だ。ハジメも、優しく一撫でして目元にキスをしティオから離れた。ティオは、ユエとシアにも視線を向ける。二人共、諦めなど微塵も感じさせずに力強く頷いた。
「ティオ、優花とミュウに伝言を。〝あとで会おう絶対に戻ると約束する〟だ。頼んだぞ」
〝ふふ、委細承知じゃよ〟
ハジメの伝言を受け取り、思わず笑い声を漏らしたティオは、一拍の後、力強い風を纏って一気に飛び立った。小極光が襲いかかるが、バレルロールしながらかわし、一気に灰竜の群れへと突っ込んでいく。黒竜の特攻に危機感を抱いたのか、灰竜達の攻撃がティオに集中しだすのだった……。
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殺到する小極光をブレスで相殺しようとするが、次々と追加で放たれるので簡単にはいかない。しかし、拮抗するかと思われた瞬間、下方より極光が迸り、ティオに攻撃を加えていた灰竜が数体、そして指揮をしてたと思われる大きな一つ目の魔物が消し飛んだ。
ユエが〝絶禍〟で圧縮した小極光を解放したのだ。さらに、炸裂スラッグ弾が乱発され灰竜達を衝撃波で吹き飛ばしていく。と、その時、フリードとウラノスが外に出たのか、天井の扉が閉まり始めた。時間がないと悟り、ティオは、被弾覚悟で加速することのみに集中する。そのおかげで飛行速度は更に増加したが、灰竜からの小極光がティオの竜鱗を砕き始めた。
〝ふん、この程度の痛みぃ!ご主人様からの頼みとあらば屁でもないわ!〟
言葉通り、灰竜の攻撃がティオの体にダメージを入れるごとに調子が上がり飛行速度が増していく。〝竜化〟の派生〝痛覚変換〟の効果だ。痛みが酷ければ酷いほど任意の能力が一時的に強化されるという派生能力だ。ちなみに、ハジメと出会ってから数百年ぶりに手に入れたものである。
灰竜達ですら被弾しても怯まないティオの姿に若干恐れる中、ティオは遂に小極光の嵐を突破して閉まり切る寸前の扉をくぐり抜けた。頭上を見れば、遥か先に小さな光が見える。地上の光だ。それまでに幾つか扉があるようで、順次閉まり始めている。
ティオは、もう後先考えず、残りの魔力を〝竜化〟が維持できるギリギリを残して、全て使い切るつもりで風を操ることに注ぎ込んだ。自分の長い生を思い出しても、ここまでの速度は出したことが無いと思えるほどの速度で、文字通り、疾風と化して飛翔する。
一つ目、二つ目、三つ目と、扉をくぐり抜け、遂に最後の扉、地上へと繋がる分厚い扉のみを残すところまで上がってきた。黒い風を纏って一発の砲弾のごとく突き進むティオ。そんな彼女に、頭上から光弾が襲いかかる。
どうやら、ティオの存在に気がついて足止めの攻撃を放ってきたと思ったがその極光は既に半分以上閉まってる扉に向けて打っており、扉の速度を弱めようとしていた。
〝なっ……どういう事じゃ?!〟
ティオは動揺した。今さっきまで殺し合いしていた者に助けられる事を……しかし扉は頑丈でウラノスの極光であっても少ししか遅らせる事が出来ない。間に合わないと、思った時、ティオの脇を幾つかの影が走り抜け、ティオと迫り来る極光の間に割って入った。
それは、ティオにとって見覚えのあるもの。浮遊する十字架、オールレンジ兵器、そう、ハジメのクロスビットだ。ティオの直ぐ後ろに付けていたのである。
飛び出した三機のクロスビットは、紅色の輝きを放つと扉を両側を抑え閉まる速度を抑えていた更に、ティオを守るように四機のクロスビットがティオのすぐ傍を飛ぶ。
〝フフ、ご主人様よぉ、愛しておるのじゃー!〟
マグマの奔流に襲われているであろうに、ティオにクロスビットを全機付けて地下から操っているハジメに、天地に轟けと愛を叫ぶティオ。竜人族の中でも特に強者であったティオを守る男など、未だかつていなかった。いつだって、彼女は守る側だったのだ。だからこそ、極めて困難な状況において守られているという事実に、今まで感じたことのない喜びが爆発する
「グゥルゥアアア!!!」
そして、クロスビットは役目を果たしたのか一つ一つ充電が切れたように落下していき、ティオは竜の咆哮をも響かせながら、遂に最後の扉をくぐり抜けた。黒い風の塊と化したティオが垂直に飛び出し、巨大な砂嵐に囲まれながらも太陽の光が降り注ぐ天空を舞う。
〝……ム?!〟
「………」
頭上を飛び越えたティオに、ウラノスの背にに乗ったフリードはそのまま無言のままティオを見つめる。ティオは自分に視線を送るフリードに疑惑の眼差しを向けながら問い質す。
〝お主に一つ聞きたい何故、妾を助けたのじゃ?〟
「……それは、何時か説明しよう。それより竜人族の生き残りよ、貴女に伝言を頼みたい」
〝なんじゃ?〟
ティオはフリードの頼み内容次第ではブレスで焼き付くそうと考えているのだがフリードの頼みは以外なものだつた。
「あの男……ハジメであったか? その者に〝また何時か会おう〟と伝えてくれ。その時に私の事も全て話すと」
〝!……ちょっと待つのじゃ! お主はもはやっ!〟
「……竜人族の生き残りよ、今はここで与太話をしてる状況ではないだろう? すぐ、アンカジに戻り公国の人達を救わないといけないはずだ」
そう言って立ち去ろうとするフリードにティオは「彼奴はもしかして」と思い待ったをかけるがアンカジの事を問われた瞬間、フリードはうっと顔を曇らせた。
「アンカジの件とブルックの件はすまない。仕掛けたのはアルヴの派の者を止められなかった私の失態だ……故に、全てが終わったら償うつもりでいる。………ではな。──〝界穿〟」
そう言ってフリードは先程と違って無詠唱で神代魔法を発動。そのみ光の膜へ入り姿を消した。
〝(なっ、妾達と同じ無詠唱者じゃと?!彼奴、ご主人様と戦いながらも本来の実力を隠しておったのか! 侮れんな)……って、妾も急がなければっ!〟
ティオはフリードがまだ己の実力を隠していた事に驚きしばらくフリード達が消えていった場所を見つめていたが、変化がないことを確かめると視線を転じ、眼下の【グリューエン大火山】を静かな眼差しで見つめた。そして、〝信じている〟というように一つ頷くと、踵を返してアンカジの方角へと飛翔していった。
数十分後、【グリューエン大火山】を中心に激震が走った。轟音というのも生温い、大気すら軋ませる大爆発が発生し、一時的に砂嵐さえ吹き飛した。あらわになった【グリューエン大火山】はもうもう黒煙を噴き上げ、赤熱化した岩石を弾き飛ばし、火山雷のスパークを撒き散らしていた。
現存する歴史書の中で、ただの一度も記録されていない【グリューエン大火山】の大噴火。ある意味、貴重な歴史的瞬間は、どういう原理か数分後には復活した巨大な砂嵐のベールに包まれ、その偉容を隠してしまった。
それでも、まるで世界が上げた悲鳴の如き轟音も、噴き上がる黒煙も、アンカジの人々は確かに観測したのだ。不安が募る。それは、大切な人の帰りを待つ少女と幼子も同じだった……。
編集しました。十一月二十五日
愛子はハーレムに入れるか入れないか
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