ハジメが暴力騒動を起こしてから約2ヶ月が経った。
季節はもう秋が終わり冬を感じさせるような風が吹いている11月になっていた。
そして園部優花は今、
「見つけたよハジメ君」
「……優花」
驚いた表情で公園のベンチに居座る南雲ハジメと向かい合っていた。
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あの騒動が起こってから優花に対するイジメは、嘘のようになくなった。
それは、ハジメに脅されているのか、それともあの騒動が原因で頭から抜け落ちて忘れているのか、次は自分が標的になるかもしれないと恐れているのか。理由は分からないままだ。
あの騒動の後、そこにはハジメおらず奈々と妙子、浩介が優花の元へと焦った表情で駆けつけてくれた。
『『ユウカ(っち)!』』
『園部!』
『三人共……』
優花は三人の声が聞こえて振り向くが、その表情は誰でも分かるほど元気がなさそうであった。
『……』
三人が私の元へ来ると、妙子が怒りに満ちた顔をしながら更に前に出た。
『このバカッ!!』
パンッ!と、破裂音のような乾いた音がしたと同時に頬に痛みを感じる。それは、妙子が優花に平手打ちをしていたからだった。
『『……!』』
後ろにいた二人は妙子のいきなりの行動に驚いてしまって、時が止まったように固まった。
『……ッ』
『なんで……?』
私は叩かれた頬を抑えながらも妙子は私を睨みながら怒気を孕んだ声で口を開いた。
『……妙子』
『なんで!私達やハジメに相談しなかったの?!』
『そっ、それは……』
『何?』
優花の返事を待つ中、妙子は睨みを増していく。それは、周りから見てもその怒りは怖気つく程であった。
優花は妙子の怒りに口を噤んでしまうも、こんな事になるとも思っておらず優花自身も今、混乱しており自分の心の奥底の本音を晒け出すように叫んだ。
『それはっ! 皆に迷惑を掛けたくなかった! もし、相談して私以外に妙子やハジメ君が標的になるかもしれないと思って怖かった!』
『でも!そのせいで、ハジメは優花のために自分を犠牲にするような馬鹿な事をしたんだよ!』
『……ッ』
妙子の言葉に優花は口を噤んでしまった。そうである。妙子の言う通りハジメは優花を助けるために自分にヘイトを向けるような行為をしたのだ。
その事に重く受け止め、深刻そうな表情の優花が俯いてると後ろから浩介の声をかかる。
『遠藤くん』
『園部、あいつは……南雲は、お前にそんな顔してほしくねぇと思う』
『……え』
浩介は昨日のハジメとの電話の内容を三人に説明をしだす。
『俺、前日にあいつから連絡があって、お前らを支えてやってくれって頼まれんたんだよ。あ〜、くっそ!俺も手助けしたかったけどよっ。真実の看病はどうすんだとか言われて言い返せなかったんだよ。あ〜ホントに南雲の奴』
『ウソ……』
浩介はそう言いながら自分の頭をくしゃくしゃとしている。相当、後悔しているのがわかった。そして、優花は浩介から聞いたことに驚いて両手で口元を覆う。それは、妙子も奈々も聞いてなかったらしく、二人も優花と同じように目を見開いていて驚いてるのが分かった。
だが、そんな私達を無視して彼は更に言葉を続ける。
『後な、あいつ言ってたんだよ。前にな……「優花ちゃんの悲しい顔をしてると胸が苦しくなる、だから僕は彼女を心から笑顔にしたいんだ。その為なら僕はなんでもするよ」ってな』
『……ッ』
その言葉を聞いた途端、優花は後先考えずに彼のいるかもしれない場所へと向かって走り出した。
『おい、園部!』
『ユウカっち?!』
『ちょっ、優花!授業があっ……あー、もうっ!ウチの幼なじみ達はなんで頑固者が多いのよ!』
学校があるのに、走り出した優花に、妙子達は止めに入るもそれを無視してハジメを探しに行ってしまって妙子は悪態を吐いたのだった。
学校を出た優花は走る。
『ハジメ君っ』
早く彼と話したい。
隠していたことを謝りたい。
そんな想いが優花を突き動かす。
授業など放ったらかして優花は、いるかもしれない彼の家へと直行した。
『ハァ…ハァ、着いた』
彼の家に着いた優花は家のアラームを鳴らした。
ピンポーンとチャイム音が鳴ると、数秒ほどで家の中から足音が聞こえた。
『ハ〜イ』
家から声が聞こえ、出てきたのは彼の母親の菫さんだった。
『あら……優花ちゃん、学校はどうしたの?』
菫は扉を開けると、目の前に優花がいることに少し驚きながらも首を傾げた。すると、優花はハジメに会いたいが故に声を上げる。
『あの、菫さん!ハ、ハジメ君はいますか?!』
そんな必死めいた言葉に菫はやっと謎が解けたような顔になると、片手で頭を痛そうに抑えながら溜息を吐いた。
『ハァ……あの子があんな事をしでかした理由、やっとわかったわ。優花ちゃんの為に起こしたんでしょう?あの暴力行為を起こしたのは?』
『……っ、はい。ホントにごめんなさい!!私のせいでっ』
『優花ちゃん、大丈夫よ。私は全然、怒ってないから』
優花は菫に頭を下げながら謝っるが、菫さんは怒っていいと笑みを見せるが、優花自身はやるせなく、
『……でもっ!』
『優花ちゃん』
『!』
言葉を続ける優花に菫はギュッと自分の子供のように優しく抱きしめた。
『大丈夫よ。でも、私としては相談でもいいから頼って欲しかった。でもね、優花ちゃん私も旦那もだけど、私達はあなたに対して怒りも恨みも抱いてない。
菫は優花をそう言って励ましながら、優しく頭を撫でる。優花はその抱きしめられた温かさを感じ緊張が緩む。
『菫さん……』
菫に優しくされ優花は少し落ち着きを取り戻していると、菫さんは抱きしめるのをやめて、少し溜息をしてから話しだした。
『でも、優花ちゃんごめんなさいね。ここにハジメはいないわ。……あの子ね帰ってきてからすぐにどっかに行っちゃったのよ。先生から今日は家に待機してなさいって言われてるのに…… ホントあの子は……』
菫さんは、はぁっと溜息を吐きながら呆れたように話す。しかし、大体の事はわかった優花は菫から離れる。
『分かりました菫さん。ハジメ君は私なりに探してみるので』
『いいの、いいの』
そう言って、優花は菫さんと別れまた彼の捜索を始めたが、何時間探してもハジメの姿は見つからなかった。
『もうっ、何処にいるの!……もしかして』
優花はハジメの姿が何処を探しても見つからず地団駄を踏むが、もしかしたらと思い自分の家へ向かった。
『ただいま!』
『えっ優花!』
『こんなに早くにどうしたんだい? 学校は?』
声を上げながら勢いよく扉を開けると、父の博之と母の優里が奥の部屋から出てくる。
二人は優花が何故ここにいるのかと驚いた表情だ。
『そんなことより、お父さん、お母さん、ハジメ君は此処に来たっ!?』
博之に学校のことを聞かれるが、そんなことは今はどうでもいい優花はハジメが来たかと聞くと、両親は少し重たい空気を漂わせながら告げた。
『来たよ……』
『じゃあ、ハジメ君が何処いったか知ってる?!』
『いや、分からない。……彼は、ただ言いに来ただけだ』
───彼はもう此処に来ないと。
その後も、優花は彼に連絡したり、また彼が居そうな場所へと探したりしたが失敗に終わった。
しかし……
『諦めるもんかっ……』
優花は諦めず、瞳に炎を宿して決意した。そして、その日から優花の奮闘期が始まった。
『ハジメ君っ、一緒に……?』
朝、家に行って 一緒に登校しようとしても、既に学校へと行っていたり……
『ハジメ君!』
『……』
『待っ……って何処に行ったの?!』
校内で会っても自分を避けるように動き、追いかけても、彼の身体能力の差で追い付けなかったり……
『居ないんですか?』
『そうなの〜、あの子……最近、あの子ったら、いつも帰って来たら何処かに行ってるのよね〜』
『……そうですか』
彼の家に行っても菫曰くハジメ君はお手伝いをやめてから最近はハジメの行きつけの道場に行っても彼の師範である李からも居ないと告げられて肩をガクリと落とした。
でも、気になること聞いた彼が道場に居ない日に家に帰ると生々しい傷などをして帰って来るようになったと菫から聞いた。そして、学校で最近聞いたことで町にいる不良の人達の数が減っていると聞いたが、優花には関係なかった。
しかし、そんなことが続いて二ヶ月も経っていた。
「うぅ……」
未だにも成果を出せていない優花は呻き声を上げながら机に突っ伏していた。因みにハジメは学校をサボっていて今日は彼の姿を見ていない。
「優花」
「あっ……妙子」
声が聞こえ視線を移すと妙子が私の前にいたので私も名前を呼び返した。すると、妙子は優花の様子を見ては溜息を吐く。
「まだ、ハジメと話せてない感じ?」
「……うん」
妙子の質問に少し俯きながら答える優花。妙子とはあの騒動では迷惑かけてしまったが今は何時も通りの関係に戻っていた。
「やっぱ、私も奈々も遠藤も手伝うよ? 二人も話したら乗ると思うし──「それは、駄目」──優花」
「これは私だけで解決しないといけないの。それにハジメ君がああなったのは私の責任」
優花は手伝うと言う妙子の言葉を遮ると、真っ直ぐ妙子を見て自分の覚悟を伝えた。すると、妙子は納得したのか笑みを見せた。
「……ん、わかった。優花がそう言うなら手伝わない」
「ありが──「でも」──?」
妙子は優花の言葉を遮ると、今の課題点を言う。
「今のままだと、話す以前にハジメを捕まえられそうにないんでしょ?」
「……うん」
「なら、いい方法を教えてあげる」
「いい方法?」
「うん、優花。耳貸しなさい」
妙子はそう言って優花の元に顔を近付けると悪い顔をしながら耳元で囁いた。優花は妙子の話を聞いて、それはハジメ君の性格を利用するような感じの方法だった。
「えっ!……でもこれって、ハジメ君に悪いよ……」
「今はそんなことを言ってる場合じゃないでしょ? この方法が一番アイツを捕まるのに一番の方法はこれしかないわ」
「……」
妙子の言葉の言う通り、この方法が一番手っ取り早くハジメを捕まえれると思う。しかし、良心のせいでか優花は悩みに悩む。
だが……
「わかった……やってみる」
「うんうん、その意気!」
彼と話したい。その為ならばと優花は妙子の案に乗ることにしたのだった。
ハジメには悪いと思う。しかし、この方法ならば確実にハジメを捕まえれると思ったからだ。良心が痛むがけどそれよりもハジメと話せないのが優花にとって一番辛い。
だから………
「私は貴方と話したい」
園部優花は覚悟を決めた。
そして、いつもの公園で、やっとハジメを見つけ出すことが出来た優花。しかし、当のハジメは優花の姿を見て立ち止まってくれたと思った途端、走り出した。
「ハジメ君、待って!!」
ハジメの走り出したのと同時に駆け出した優花であったが、一向に追いつけず、既に縮まっていた差も開いてしまっている。
「ハァハァ……なんか前よりも速くなってるし!」
優花の推測は当たっていた。それは、ハジメは以前よりも身長も伸びていた。髪も少し伸ばして顔つきも幼さが完全に消えていた。目付きも鋭くなってワイルドになっていた。
それに相まってか身体能力も上がっている。中学生の成長は早いと聞くが、流石に成長し過ぎだと優花は思う。
これじゃ、差が開くばかりだと思った優花は妙子に教えて貰った案を実行することにした。
「……っ、イタッ!」
優花はわざとコケた。
これは彼の良心を利用した卑怯で最低なやり方だ。でも優花は彼と向き合いたい。話がしたい。
だから、躊躇いがあるけど実行した。
そして案の定、ハジメはすぐさま優花のところへ駆けつけてきた。
そして……
「おい、優花っ大じょ……っ?!」
ハジメが近付いて手を差し出した瞬間、優花は、今だ、と言わんばかりの早さでハジメのしっかりと腕を掴んだ。
「やっと、捕まえた……」
「(可愛い)」
してやったりと言った感じの笑みを向ける優花にハジメの脳内は可愛いが支配した。
だが、
「…………」
南雲ハジメは誤算していた。
一つは、自分が変わろうとしても、本質は変わらずにいた。だから、人に迷惑を掛ける奴等に、話し合いでは解決出来ない場合は力で沈めていたこと。
そして、最大の誤算は目の前の少女が自分を決して騙さないと過信していたことだった。
優花に掴まれた手を無理矢理に振り払えないハジメは、逃げることを諦めて、ワザとでもコケている優花を支えながら立ち上がらせた。
「騙したな……」
「ゴメン……」
ハジメの呟きに、優花は目を伏せながら謝る。見るからしてこの方法は彼女が考えたものではないと気付いた。そして、思い当たるのは、自分の性格を知ってるツインテールの少女を思い出す。
「まぁ、大体は察せれる……これ、妙子の入れ知恵なんだろ?」
「うん……怒ってる?」
優花の回答で、やはりと予想通りでこの方法を思いついたのはやっぱり妙子だった。昔から思っていたが妙子はこういう時に頭が回るから凄いとハジメは思う(皮肉)。
しかし、優花はハジメの単なる質問に怒ってると勘違いしてそうだったので怒ってないと伝えることにした。
「いや、怒ってねぇよ」
そう言うと、優花はパァっと笑みを浮かべた。
「やっぱ、ハジメ君は優しいね昔から……」
「……いや、俺は優しくねぇ。ただの私怨で暴行したんだぞ」
「ウソ。私を守る為にやったんだよね……」
「……っ」
痛いところを突かれハジメは口を噤んでしまう。それを見た優花は咄嗟に両手で服をギュッと掴むとハジメの顔を見る。
「ハジメ君してくれた事でイジメはなくなったよ……でも、私は全然嬉しくないっ!!」
「……!」
今はまともに優花の顔が見れずにハジメは顔を横に逸らす。しかし優花は、ハジメを見るのをやめずに言葉を続ける。
それも目にいっぱいの涙を溜めながら……
「だって、ハジメ君ががいないんだもん……グスッ、ハジメ君が傍にいないだもん!」
「ゆ、優花……」
優花の言葉の勢いのあまり、ハジメは焦ってしまう。そんな中、優花はギュッとハジメの服を離さない。
「……だから、また一緒になろ?奈々や妙子、遠藤君も一緒に……また五人で……」
目に涙を浮かべながら優花はハジメの顔を真剣に見つめる。ハジメ自身も同じように真剣に優花の顔を見つめ返した。
「だが、駄目だ。俺みたいな奴といたらお前達の印象が悪くなっちまう……」
例え、龍堂達のやっていた悪事が明るみになったとしても南雲ハジメには暴力行為という名のレッテルは貼られたままだろう。
そんな奴の近くにいれば優花達の立ち位置も印象も悪くなってしまうだから、とハジメは言おうとした。が、優花はハジメの言葉に怒りが爆発した。
「そんなの、関係ない!」
「……っ!」
「周りが何?!私達は私達! ハジメ君の──ハジメの良さは私達が知っている!」
「優、花……」
「守ってくれる!支えてくれる!家のお手伝いをしてくれる!勉強を教えてくれる!そして……私の髪留めを見つけてくれた!」
「………」
ハジメは、ただ優花の話を聞くだけで何も言い返せなかった。いや、思考がショートしてしまっている。
「だ、だがら、一緒にいよ?これからも……ずっと」
優花は耐えきれなくなったのか涙をボロボロと流し始めた。その姿を見た途端、ハジメは考えるよりも先に身体を動いていた。
「……優花」
ハジメは、優花の名前を呼びながら、流れる涙を指で拭き取った。
「……ハジメ君?」
優花は首を傾げると、そんな彼女にハジメは自然と笑みを見せ、ゆっくりと彼女を自分の胸元へと抱き寄せると本心を伝えた。
「すまない。お前がそんなに思っていたなんてな予想外だった。でも、もう大丈夫だ。これからは、また俺がお前の傍にいる。何かあっても絶対に守り抜く……だから、泣かないでくれ。俺は優花の泣く姿より笑顔を見る方が好きなんだ 」
自分でも大分、恥ずかしいことを言っているのは自覚しているハジメ。しかし、此処で自分の本音を伝えないと思い、羞恥心を押し殺している。
「……ハジメ君」
「……なんだよ優花」
ハジメは顔を上げて優花の顔を見た。
その表情はあの時、彼女と俺が出会った時のことを連想させるような美しい笑顔だった。
「……」
言葉を失い、その笑顔にハジメは見惚れてしまった。すると、優花はハジメの胸元に顔を埋めながら、伝えた。
「約束だよ」
「あぁ」
そう言って、抱き締め合いながら約束をする二人。そんな二人を見守るかのように空が紅い。それは、秋が最後の踏ん張りを見せてるかのような空が一面紅く綺麗に染まっていた。
紅い夕日が照らす空の下、笑い合っているハジメと優花の二人はこの日、また一緒になった………。
次回、エピローグ
<編集しました。十月二十四日。
雫はハーレムにいる?
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いる
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いらない