ハジメと優花が見上げる帆船は、地球でもそうそうお目にかかれない規模の本当に巨大な船だった。
全長三百メートル以上、地上に見える部分だけでも十階建て構造になっている。そこかしこに荘厳な装飾が施してあり、朽ちて尚、見るものに感動を与えるほどだ。木造の船で、よくもまぁ、これほどの船を仕上げたものだと、同じく物造りを得意とするハジメは、当時の職人達には尊敬の念を抱かずにはいられなかった。
ハジメは、優花を抱えると〝空力〟を使って飛び上がり、豪華客船の最上部にあるテラスへと降り立った。すると、案の定、周囲の空間が歪み始めた。
「またか……優花、気をしっかりもてよ。どうせ碌な光景じゃない」
「うん。大丈夫」
ハジメの呼びかけに優花は「大丈夫」と返事したが微かに手が震えるてるのを感じ、手をギュッと優しく握って安心させると、優花はハジメの行動の意思に気付いたのか、嬉しそうに笑みを浮かべていた。
そうこうしている内に周囲の景色は完全に変わり、今度は海上に浮かぶ豪華客船の上にいた。
時刻は夜で、満月が夜天に輝いている。豪華客船は光に溢れキラキラと輝き、甲板には様々な飾り付けと立食式の料理が所狭しと並んでいて、多くの人々が豪華な料理を片手に楽しげに談笑をしている光景だった。
「パーティー……よね?」
「ああ。随分と煌びやかだが……メルジーネのコンセプトは勘違いだったか?」
ハジメは予想していた凄惨な光景とは程遠い光景で、なんか肩透かしを喰ったような顔をする。その煌びやかな光景を、優花とおそらく船員用の一際高い場所にあるテラスから、巨大な甲板を見下ろす形で眺めていた。
すると、ハジメ達の背後の扉が開いて船員が数名現れ、少し離れたところで一服しながら談笑を始めた。休憩にでも来たのだろう。
その彼等の話に聞き耳を立ててみたところ、どうやら、この海上パーティーは、終戦を祝う為のものらしい。長年続いていた戦争が、敵国の殲滅や侵略という形ではなく、和平条約を結ぶという形で終わらせることが出来たのだという。船員達も嬉しそうだ。よく見れば、甲板にいるのは人間族だけでなく、魔人族や亜人族も多くいる。その誰もが、種族の区別なく談笑をしていた。
「こんな時代があったのね……」
「終戦のために奔走した人達の、まさに偉業だな。終戦からどれくらい経っているのか分からないが……全てのわだかまりが消えたわけでもないだろうに……あれだけ笑い合えるなんてな……」
「きっと、あそこに居るのは、その頑張った人達なんじゃない? 皆が皆、直ぐに笑い合えるわけじゃないだろうしね……」
「そうだな……」
楽しげで晴れやかな人々の表情を見ていると、ハジメと優花も自然と頬が緩んだがハジメは少なからず疑問を抱いていた。それは、おかしい?という疑問だ。 こんな時代の記録は王国の図書館にはなかったとハジメは記憶していた。だから、疑問を感じたハジメは、腕を組んで目の前の光景を眺めていく内にある結論に至った。
「記録………いや、歴史からの抹消か」
ハジメの推測はこうだった。昔に、人間族は魔人族と亜人族と手を取り合ったことがあると歴史に残ると、人間至上主義である聖教教会などにとっては不都合であろう。だから、歴史から抹消したとなると納得がいく。
ハジメが優花に聞こえない程度の声音で呟いてから、しばらく眺めていると、甲板に用意されていた壇上に初老の男が登り、周囲に手を振り始めた。それに気がついた人々が、即座におしゃべりを止めて男に注目する。彼等の目には一様に敬意のようなものが含まれていた。
初老の男の傍には側近らしき男と何故かフードをかぶった人物が控えている。時と場合を考えれば失礼に当たると思うわれるが誰もフードについては注意しないことにハジメは目を細めながらフードの人物を見る。
やがて、全ての人々が静まり注目が集まると、初老の男の演説が始まった。
「諸君、平和を願い、そのために身命を賭して戦乱を駆け抜けた勇猛なる諸君、平和の使者達よ。今日、この場所で、一同に会す事が出来たことを誠に嬉しく思う。この長きに渡る戦争を、私の代で、しかも和平を結ぶという形で終わらせる事が出来たこと、そして、この夢のような光景を目に出来たこと……私の心は震えるばかりだ」
どうやら初老の男は、人間族のとある国の王らしいな人間族の中でも、相当初期から和平のために裏で動いていたようで人々が敬意を示すのも頷ける。演説も遂に終盤のようで、どこか熱に浮かされたように盛り上がる国王。場の雰囲気も盛り上がる。
しかし、あの表情何処かで……
ハジメは、そんな国王の表情を何処かで見たことがあるような気がして、途端に嫌な予感に襲われた。
「――こうして和平条約を結び終え、一年経って思うのだ………………
国王の言葉に、一瞬、その場にいた人々が頭上に〝?〟を浮かべる。聞き間違いかと、隣にいる者同士で顔を見合わせる。その間も、国王の熱に浮かされた演説は続く。
「そう、実に愚かだった。獣風情と杯を交わすことも、異教徒共と未来を語ることも……愚かの極みだった。わかるかね、諸君。そう、君達のことだ」
「い、一体、何を言っているのだ! アレイストよ! 一体、どうしたと言うッがはっ!?」
国王アレイストの豹変に、一人の魔人族が動揺したような声音で前に進み出た。そして、アレイスト王に問い詰めようとして……結果、胸から剣を生やすことになった。
刺された魔人族の男は、肩越しに振り返り、そこにいた人間族を見て驚愕に表情を歪めた。その表情を見れば、彼等が浅はかならぬ関係であることが分かる。本当に、信じられないと言った表情で魔人族の男は崩れ落ち、場が騒然とし「陛下ぁ!」と悲鳴が上がり、倒れた魔人族の男に数人の男女が駆け寄った。
「さて、諸君、最初に言った通り、私は、諸君が一同に会してくれ本当に嬉しい。我が神々から見放された悪しき種族ごときが国を作り、我ら人間と対等のつもりでいるという耐え難い状況も、創世神にして最高神たる〝ラーゼン様〟に背を向け、下らぬ異教の神を崇める愚か者共を放置せねばならん苦痛も、今日この日に終わる! 全てを滅ぼす以外に平和などありえんのだ! それ故に、各国の重鎮を一度に片付けられる今日この日が、私は、堪らなく嬉しいのだよ! さぁ、神々の忠実な下僕達よ! 聖母神〝エクストラ様〟の力を持って獣共と異教徒共に裁きの鉄槌を下せぇ! ああ、ラーゼン様、エクストラ様! 見ておられますかぁ!!!」
膝を付き天を仰いで哄笑を上げるアレイスト王。彼が合図すると同時に、パーティー会場である甲板を完全に包囲する形で船員に扮した兵士達が現れた。
甲板は、前後を十階建ての建物と巨大なマストに挟まれる形で船の中央に備え付けられている。なので、テラスやマストの足場に陣取る兵士達から見れば、眼下に標的を見据えることなる。海の上で逃げ場もない以上、地の利は完全に兵士達側にあるのだ。それに気がついたのだろう。各国の重鎮達の表情は絶望一色に染まった。
次の瞬間、遂に甲板目掛けて一斉に魔法が撃ち込まれた。下という不利な位置にいる乗客達は必死に応戦するものの……一方的な暴威に晒され抵抗虚しく次々と倒れていった。
何とか、船内に逃げ込んだ者達もいるようだが、ほとんどの者達が息絶え、甲板は一瞬で血の海に様変わりした。ほんの数分前までの煌びやかさが嘘のようだ。海に飛び込んだ者もいるようだが、そこにも小舟に乗った船員が無数に控えており、やはり直ぐに殺されて海が鮮血に染まっていく。
「うっ」
「優花」
ハジメは咄嗟に吐き気を堪えるように、手すりに身を預け片手で口元を抑えた優花を支える。
ハジメは優花を支えているとアレイスト王は、部下を伴って船内へと戻っていった。幾人かは咄嗟に船内へ逃げ込んだようなので、あるいは、狩りでも行う気なのかもしれない。
彼に追従する男とフードの人物も船内に消える。と、その時、ふと、フードの人物が甲板を振り返った。
「銀髪?」
その拍子に、フードの裾から月の光を反射してキラキラと光る銀髪が一房、ハジメには見えた気がした。周囲の景色がぐにゃりと歪む。どうやら、先程の映像を見せたかっただけらしく、ハジメと優花は元の朽ちた豪華客船の上に戻っていた。
「優花、少し休め」
「ううん、大丈夫。ちょっと、キツかったけど……それより、あれで終わり? 私達、何もしてないけど……」
「この船の墓場は、ここが終着点だ。結界を超えて海中を探索して行くことは出来るが……普通に考えれば、深部に進みたければ船内に進めという意味なんじゃないか? あの光景は、見せることそのものが目的だったのかもな。神々の凄惨さを記憶に焼き付けて、その上でこの船を探索させる……中々、嫌らしい趣向だよ。特に、この世界の連中にとってはな」
「そうね……私達よりここの世界の人達の方が酷ね」
「あぁ……」
この世界の連中は、そのほとんどが信仰心を持っているはずだし、その信仰心の行き着く果ての惨たらしさを見せつけられては、相当精神を苛むだろう。この迷宮は精神状態に作用されやすい魔法の力が攻略の要である意味、【ライセン大迷宮】の逆で異世界人であるハジメ達だからこそ、精神的圧迫もこの程度に済んでいる。
ハジメと優花は甲板を見下ろし、意を決して甲板に飛び降り、アレイスト王達が入って言った扉から船内へと足を踏み入れた。船内は完全に闇に閉ざされていた。外は明るいので、朽ちた木の隙間から光が差し込んでいてもおかしくないのだが、何故か全く光が届いていない。ハジメは〝宝物庫〟から緑光石を使ったライトを取り出し闇を払う。
「さっきの光景……終戦したのに、あの王様が裏切ったってこと?」
「そうみたいだな……ただ、不自然過ぎる。壇上に登った時は、随分と敬意と親愛の篭った眼差しを向けられていたのに……内心で亜人族や魔人族を嫌悪していたのだとしたら、本当に、あんなに慕われるとは俺は思えない」
「……そうよね。あの人の口ぶりからすると、まるで終戦して一年の間に何かがあって豹変した……と考えるのが妥当ね……問題は何があったのかということだけど」
「まぁ、神々絡みなのは間違いないな。めっちゃ叫んでたし。危ない感じで」
「うん、イシュタルさんみたい……トリップ中の。痛々しいよね」
どうやらイシュタルは女子高生からイタイ人と思われていたらしい。ハジメは少しだけ同情してしまうが、ハジメから見てもアレはキモかった。
それから二人で先程の光景を考察しながら進んでいると、前方に向けられたハジメのライトが何かを照らし出した。白くヒラヒラしたものだ。ハジメと優花は足を止めて、ライトの光を少しずつ上に上げていく。その正体は女の子だった。白いドレスを着た女の子が俯いてゆらゆらと揺れながら廊下の先に立っていたのだ。
猛烈に嫌な予感がするハジメと優花。特に優花は大のホラー嫌いなので表情は引き攣りまくっている。ハジメは、こんなところに女の子がいるはずないので取り敢えず撃ち殺そうとドンナーの銃口を向けた。
その瞬間、女の子がペシャと廊下に倒れ込み、手足の関節を有り得ない角度で曲げると、まるで蜘蛛のように手足を動かし、真っ直ぐハジメ達に突っ込んで来た!
ケタケタケタケタケタケタケタッ!
奇怪な笑い声が廊下に響き渡る。前髪の隙間から炯々と光る眼でハジメ達を射抜きながら迫ってきた。
「いやぁあああああああああああ!!ハジメェェェェェ!!」
「うおっ!? 落ち着け優花! 今は腕を掴むな!」
「無理ィィィィィ!」
「(クソッ……照準が定まらねぇっ)」
優花が盛大に悲鳴を上げてハジメにしがみついた。ケタケタ笑って迫る化け物をドンナーで撃とうとしていたハジメは、優花がしがみついたせいで照準をずらしてしまった。
「ケギャ!!」
瞬く間に足元まで這い寄った化け物は、奇怪な雄叫びと共に俺の顔面に向かって飛びかかってきた。
「チッ…気持ち悪りぃんだよ〝雷脚〟!」
ハジメは仕方なく銃撃を諦めて、ケタケタ笑う化け物の腹部にヤクザキックをぶち当てた。念のため〝紅雷〟を纏わせた上で〝豪脚〟も発動させている。
ハジメの紅雷付きのヤクザキックが腹にヒットした瞬間、少女は盛大に吹き飛び壁や廊下に数回バウンドしたあと、廊下の奥で手足を更におかしな方向に曲げて停止し、そのまま溶けるように消えていった。
「ふぅ……」
ハジメは溜息を吐くと、未だにふるふると震えながらしがみつく優花の頭を軽く小突く。ビクッとしたあと、優花は恐る恐るという感じでハジメを見上げた。既に目尻には涙が溜まっており、口元はキュッと一文字に結ばれている。
「(あっ…ヤバイ、可愛い)」
ハジメは優花の可愛いさにノックアウトしそうになりそうだったので、理性を保つ為に深呼吸してから優花に話しかけた。
「優花…お前のビビり具合、前より上がってねぇか?」
「……ウルサイ」
「まぁ、良いか……って優花、お前、腰抜けてね?」
「……ハジメ、おんぶ」
「クハッ……ハイハイ、分かったよ」
優花は今さっきので腰が抜けたらしく、ハジメはおんぶする事になる。ハジメは何年振りに優花をおんぶした。優花は腕を首に回して、これでもかというくらいギュッと背中にしがみつく。何がとは言わないが、ハジメは背中に感じる凄く柔らかい感触を極力無視して精神統一しながら歩き出した。
「……でも、やっぱ昔からビビりは変わらないなぁ〜っギブギブッ!」
「……なんかムカつく」
「……サーセンした」
ハジメの言葉にイラッとした優花は、おんぶされながらハジメの首まわりに力を入れられ、首がしまりそうになり、取り敢えず謝った。
そのままハジメは優花をおんぶしながら霧の中を戦い続けて進んでいくと、やがて霧が晴れていき、奥にある倉庫の一番奥で輝き始めた魔法陣を見つけた。
「優花……魔法陣見つかったから降りて良いぞ?」
「……」
「優花サーン?」
ハジメがそう呼び掛けると、優花の甘い声音がハジメの耳元に響く。ほとんど触れるような近さで、優花の唇が震え、熱い吐息と共に言葉が囁やかれた。
「……まだ、ハジメに甘えたい」
「……それは、反則だろ……」
ハジメは顔を上げて天を仰いだ。そして、優花の要望通りおんぶをしたまま魔法陣に入ることにした。
「……魔法陣を通った後は降りろよ」
「うん、次は何処に行くんだろ?」
「さぁな……出来ればユエ達と合流したいが……入らないと分かんねぇな」
「じゃっ、レッツゴ〜」
「いや、歩くの俺だからな」
迷宮攻略中なのにこんなにイチャついてて良いのか?とハジメは迷宮側に悪いと思ったがどうでも良いと思えてきたので優花を背負ったままスタスタと進み、躊躇いなく魔法陣へと足を踏み入れた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
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「此処は……」
ハジメ達は魔法陣に踏み込み、ある空間に出た。
そこには中央に神殿のような建造物があって四本の巨大な支柱に支えられていた。支柱の間に壁はなく、吹き抜けになっている。神殿の中央の祭壇らしき場所には精緻で複雑な魔法陣が描かれていた。また、周囲を海水で満たされたその神殿からは、海面に浮かぶ通路が四方に伸びており、その先端は円形になっている。そして、その円形の足場にも魔法陣が描かれていた。そして、その四つある魔法陣の内の一つがハジメ達である。
しかし、ハジメは中心の魔法陣の場所を見つめながら疑問を抱いた。
「……あの複雑な魔法陣は神代魔法の魔法陣だな……なら、俺達は攻略したのか?」
「ハジメ、何か問題あるの?」
「いや、まさかもうクリアとは思わなくてな……他の迷宮に比べると少し簡単だった気が……最後にあのクリオネモドキくらい出てくると思ったんだが……」
ちょっと他の迷宮と比べて拍子抜けだったとハジメ思った。すると、ハジメの思いを察したのか優花は、肩越しに顔を覗かせて、苦笑いしながら答えた。
「あのね、ハジメ。十分大変な場所よ此処。最初の海底洞窟だって普通は潜水艇なんて持ってないんだから、クリアするまでずっと沢山の魔力を消費し続けるし、下手をすれば、そのまま溺死よ。クリオネみたいなのは有り得ないくらい強敵だし、亡霊みたいなのは物理攻撃が効かないから、また魔力頼りになる。それで大軍と戦って突破しなきゃならないのよ? 十分、おかしな難易度よ」
「むっ、そう言われればそうなんだろうが……」
「まして、この世界の人なら信仰心が強いし……あんな狂気を見せられたら……」
「余計、精神的にキツいか……」
優花の指摘で要するにハジメが強すぎたという結論になった。そこまで言われると、確かに、【グリューエン大火山】も最後のフリードの襲撃さえなければ無傷で攻略出来ていたと納得する。
「そうえばユエ達はまだみたいね」
「ん、あぁそうだなアイツ等大丈夫か?」
そして、そう言えば、ユエ達と合流する前に到着してしまったが彼女達はどうしているだろうかと二人で考えたその時、右側にある通路の先の魔法陣が輝き出した。
「来たみたいだぞ」
爆ぜる光が収まると、そこにはユエ、シア、ティオの三人の姿があった。
「いいタイミングだな。そっちは大丈夫だったか?」
「ん……そっちは……大丈夫じゃなかった?」
「あ、優花さん大丈夫ですかっ!」
「む? 怪我でもしておるのか? 回復魔法はせんかったかの?」
「ううん安心して三人共。ただ、甘えてるだけだから」
ハジメの呼びかけに、それぞれ元気な様子を見せつつ、ハジメに背負われている優花に心配そうな視線を送ったが、それに対する優花の返事で……
「……ん、優花ズルい。私も、ハジメ」
「羨ましいですぅ〜。代わって下さいよぉ〜」
「うむ、妾もして欲しいのじゃが……」
三人共、言ってる事は違うが目的は一緒で優花とハジメに迫ってきた。
「いやいや、お前等……住処に着いたんだし魔法陣に行くぞ。なっ、優花?」
「じゃっ、交代制で」
「「「わ〜い」」」
「いや、やんねぇから」
「「「ブ〜!」」」
「ブ〜、じゃねぇわっ。ほら行くぞ。後、優花も降りろ約束だろ?」
「ブ〜!」
「お前もかいっ!」
そんな事がありながらハジメは優花を降ろしてから祭壇に到着した。ハジメ達は全員で魔法陣へと足を踏み入れる。いつもの通り、脳内を精査され、記憶が読み取られた。しかし、今回はそれだけでなく、他の者が経験したことも一緒に見させられるようだった。つまり、ユエ達が見聞きしたものをハジメと優花にも共有された。
どうやら、ユエ達は、巨大な地下空間で海底都市とも言うべき廃都にたどり着いたようだな。そこで、俺達と同じく空間が歪み、二国の軍隊と都内で戦争して来たようで、その都は人間族の都で魔人族の軍隊に侵略されているところだったらしく、結局、俺達と同じように両者から襲われたようで、都の奥には王城と思しき巨大な建築物があり、軍隊を蹴散らしながら突き進んだユエ達は、侵入した王城で重鎮達の話を聞くことになった。
何でも、魔人族が人間族の村を滅ぼした事がきっかけで、この都を首都とする人間族の国が魔人族側と戦争を始めたのだが、実は、それは和平を望まず魔人族の根絶やしを願った人間側の陰謀だったようなのだ。気がついた時には、既に収まりがつかないほど戦火は拡大し、遂に、返り討ちに合った人間側が王都まで攻め入られるという事態になってしまった……という状況だったらしい。
そして、その陰謀を図った人間とは、国と繋がりの深い光教教会の高位司祭だったらしく、この光教教会は聖教教会の前身だったようだ。更に彼等は進退窮まり暴挙に出た。困った時の神頼みと言わんばかりに、生贄を捧げて神の助力を得ようとしたのだ。その結果、都内から集められた数百人の女子供が、教会の大聖堂で虐殺されるという凄惨な事態となった。
「そっちもそっちでゴミみたいな幻覚だったんだな」
「……ん、ハジメ達の方も最悪」
「だろ? って、シア大丈夫か?」
「あっ、はい、大丈夫ですぅ…少し嫌なモノがフラッシュバックしただけですから」
ユエ達も、その光景を見たときは流石にかなりキツかったようで、魔法陣による記憶の確認により強制的に思い出し、顔を青ざめさせている。特にシアは今にも吐きそうだ。ようやく記憶の確認が終わり、無事に全員攻略者と認められたようである。ハジメ達の脳内に新たな神代魔法が刻み込まれていった。
「クハッ……ここで、この魔法かよ。大陸の端と端じゃねぇか。解放者めやってくれる……まぁミレディが考えたと思うのが妥当だな」
「……ん、同意。それに見つけた〝再生の力〟」
ハジメが苦笑いしながら悪態をつく。それは、手に入れた【メルジーネ海底遺跡】の神代魔法が〝再生魔法〟だったからだ。
ハジメが解放者の嫌らしさに眉をしかめていると、魔法陣の輝きが薄くなっていくと同時に、床から直方体がせり出てきた。小さめの祭壇のようだ。その祭壇は淡く輝いたかと思うと、次の瞬間には光が形をとり、人型となった。
メイル・メルジーネはどうやら、オスカー・オルクスと同じくメッセージを残してんだな。
人型は次第に輪郭をはっきりとさせ、一人の女性となった。祭壇に腰掛ける彼女は白いゆったりとしたワンピースのようなものを着ており、エメラルドグリーンの長い髪と扇状の耳を持っていた。どうやら解放者の一人メイル・メルジーネは海人族と関係のある女性だったようだ。
彼女はオスカーと同じく、自己紹介したのち解放者の真実を語った。おっとりした女性のようで、憂いを帯びつつも柔らかな雰囲気を纏っている。やがて、オスカーの告げたのと同じ語りを終えると、最後に言葉を紡いだ。
「……どうか、神々に縋らないで。頼らないで。与えられる事に慣れないで。掴み取る為に足掻いて。己の意志で決めて、己の足で前へ進んで。どんな難題でも、答えは常に貴方の中にある。貴方の中にしかない。神々が魅せる甘い答えに惑わされないで。
そう締め括り、メイル・メルジーネは再び淡い光となって霧散した。直後、彼女が座っていた場所に小さな魔法陣が浮き出て輝き、その光が収まると、そこにはメルジーネの紋章が掘られたコインが置かれていた。
「証の数も四つですね、ハジメさん。これで、きっと樹海の迷宮にも挑戦できます。父様達どうしてるでしょう~」
シアが、懐かしそうに故郷と家族に思いを馳せた。しかし、脳裏に浮かんだの正に軍隊のような父親達だったので、「今の父様達なら元気そうですね……」と乾いた笑みを浮かべながら呟いた。
ハジメは、シアと同じようにハウリア族を思い出しながら「そうだな」と苦笑いしながら証のコインを取ろうとした時だった。
ドサッ!
「は?」
ハジメの後ろから大きな音がしたので振り向くと、やけに静かだと思っていた優花が倒れており、ハジメから間抜けな声が出た。
「…ッ!優花?! 」
「大丈夫かの?!優花っ!」
「……優花っ!」
「優花さん?!」
ハジメの叫びに三人も優花の方へ視線を向けると、優花が倒れてるのを見て目を見開き、すぐさま駆け寄った。
「……どういう事だ? 神代魔法の負荷か……いや、絶対にそれはありえねぇ……何だ?何が原因だ?!」
今の優花の状態は息はしてるのだが、目が虚ろの状態になっていた。
「おいっ、優花!優花!」
「ユエ! 回復魔法を!」
「……もう、してるっ!」
「優花さんっ!」
ハジメ達の焦った呼びかけに優花は全く眠ってるかのように反応しなかった……。
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〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
鍵が開かれた
後、少し解放される、解放される……もう少しで解けるの……天の力、始祖の力……
ー技能ー
■■■………〝
解放される、解放される、後少しで開かれる
閉じ込められし始祖の力……。
編集しました。十一月二十七日
愛子はハーレムに入れるか入れないか
-
いる
-
いらない