優花は、何もない。全てが黒だけの世界に閉じ込められていた。痛み、苦しさもなく、浮遊感だけあった。
その時、何かが聞こえた。
『──!』
〝誰か……呼んでる?〟
『─花!』
〝誰だろう?……でも落ち着く声〟
『優──!』
〝もしかして、この声は……〟
『優花!』
〝ハジメ。そうだっ。ハジメの声だ!ハジメっ、ハジメっ!〟
優花は、思い出す。そして、目を見開いて手を伸ばした。
〝ハジメっ!〟
その瞬間、目の前が真っ白になった。
ハジメに呼ばれた気がして、手を伸ばした優花。そして、景色が真っ白になった後、其処は自分がいた場所の景色と異なっていた。
〝あれ、此処って何処なの? 私、確か大迷宮の住処で神代魔法を貰った瞬間……意識が飛んで……ってアレ、私、喋れないんだけど?!〟
優花は今の状況の整理をおこなっていると、自分が喋れない事に気付いて焦りだす。
〝嘘……マジで声が出ない……あっ、そうだ。ハジメ達は?!〟
優花は意識が飛ぶ前まで傍に居たハジメ達を探そうと立ち上がった。
その時……
ドガァァァァァァァァン!
ズドンッ!
〝キャッ!〟
優花の目の前に大きな音と共に、何か〝黒い何かが〟落ちてきて一瞬にして彼女の周りには粉塵が立った。
〝……っ何が落ちたの?〟
優花は自分の目の前に落ちてきたモノは何か気になり、傍に行って見てみる事にした。
其処には……
『……グッゥ』
〝……っ! 人?〟
其処には全身機械のようなものを纏い、紅い電流が流れている人の様な何かだった。しかし、体のあちこちから血のようなモノを流しており、機械の部分も少し融解されてあったりと破損部分が多く見られた。
〝大丈夫ですか?!───っ!〟
声は出せないが行動ならと思い、優花は回復魔法の詠唱をしながら近付き容態を確認しようと機械を纏う人に触れようとしたが……
〝えっ……〟
優花が触ろうとしたら手がすり抜けた。そのことに唖然としながら驚きのあまり自然と言葉が漏らした。
〝嘘。もしかして、これってあの夢と関係……っ?!〟
優花はもしかしてこれはティオの背に乗ってる時に見たあの夢のようなものと関係あるのかと考えた時だった。
それは空から凄まじい圧が優花を襲った。
そして………
『流石は
〝誰?!……それに、何この圧……うっ〟
それは凛とした男の人の声だった。しかし、その男の圧は凄まじい重圧だった。それは、ハジメと同等もしくはそれ以上の圧だった。優花に向けられてもないのに寒気がする程だった。
優花はその重圧と声の正体を知るべく上を見上げ、いたのは……
『だが、我等
それは白いモヤ達であった。ちゃんとした姿形は分からない。しかし優花は断言できた。モヤがあっても、あの重圧、そして何故か神々しく見えるアレは自分達の敵である〝神々〟だと……
優花が空を見上げながら唖然としてると真ん中ののモヤが喋りだした。
『しかしな───貴様は何故、我等に歯向かう?我等に叛逆する?』
『黙レ……ラーゼン、お前達はマ、間違ッてル、人間、亜人、魔人は自由の意思で在るべきダ』
〝!ラーゼンって〟
優花は機械を纏った人の話の中に〝ラーゼン〟という神の名に覚えがあった。それは、メルジーネ海底遺跡の大迷宮で過去の幻影で見た狂信者達が口にしていたことだったからだ。真ん中にいるモヤが〝ラーゼン〟……ハジメが言っていたこの神の遊戯の元凶だと確信した。
〝なら、あの真ん中の白いモヤが最高神ラーゼン……姿を見たいけど…やっぱり姿ははっきり見えないわね〟
ラーゼンは機械を纏った人の電子音のような声音の言葉に首を傾げながら少し考えてるように見え、少しした後、呆れたような感情が含まれた話をしだした。
『ふむ、自由の意思、ね。……くだらんないな───。それじゃ我が退屈してしまうだろう? 我が求めているモノは知ってるだろ? 我が求めるのは
それは、暴論だった。簡単言えば自分が強い奴と戦いたいから宗教同士の戦争をやってるという事だった。
〝じゃあ、もしかして……私達が召喚された理由って………〟
優花は何故、神は私達のを呼んだ理由を理解したしまい唖然としてしまった。
『それはッ! 貴様の欲ダ!ソンな理由で人々を彼等の意思を利用スルナ!』
機械を纏った人は電子音を流しているような声音だが、言っている事は理解出来た。
『しかし、亜人と魔人は我とエヒトルジュエが創った存在なんだぞ? 創作者側が遊んでも良いじゃないか?』
『ダガッ!』
『それに、貴様はもう負けだ。諦めろ』
『いや、負けテナイ……俺はマダ、貴様ラと戦エルッ!』
機械を纏った人は諦めていなかった。そのギラついた目は優花にとっての大切な人と似ており、その瞳に心を震わせ、彼と重ねながら見えてしまい気がついたら彼の名前を自然と呟いていた。
〝……ハジメ?〟
それと、同時にその言葉を聞いたラーゼンは心の奥底から笑い出した。
『クハハハハッ! 凄まじい執念だ。その目だけでも圧が凄まじい。だが、これを見ても貴様は戦えるか?……エクストラ、あれを』
『はい、我が主』
そう言ってラーゼンはエクストラと呼ばれる神を呼んだ。そのエクストラは何故か白いモヤではなく、ちゃんとこの目で姿を見ることが出来た。
〝あの銀髪の人がエクストラ……エクストラって確か……あの王様が言ってた聖母神? でも、凄い綺麗人形みたい……〟
優花はエクストラは海底遺跡の幻覚で人間族の王様が口にしていた聖母神と予想するが優花は寒気を覚えた。それはエクストラは白い天使の様な翼が生えており、銀髪のロングで美しい顔立ちなのだが、その表情は生きているのか怪しいと思える程の人形のような無表情だった。
エクストラはラーゼンに指示された通りにある者を引っ張り出した楔で十字で磔ながら………
『───機械仕掛けの神よ。貴方はこれを見ても戦いを続けるのですか?』
『ぅ、アッ…グ───逃げて』
そう言ってエクストラが突き出したのは磔にされたエクストラと同じような容姿の人物だった。でも、エクストラと違って翼は生えてるが戦っていたせいかボロボロで綺麗な銀髪は所々、焦げているようだった。
『クリスタッ?! っ……ラーゼン! エクストラァ! 貴様等ァ!!』
『なんだい?貴様みたいな奴を手っ取り早く処理するには恋人である彼女を使った方が効率的だろ?』
〝クズ……コイツ……本当に最高神?〟
優花はラーゼンの考えてる事に心底、嫌悪感を抱いた。そして、本当に最高神かと疑問を抱く程だった。そんな事を思ってると機械を纏った人は黙っていた。
『…………』
『さぁ、───どうする? 愛しの人を殺すか? 君の死を選ぶか?』
『駄目よっ! ───貴方は生きて! 貴方なら……いっ』
『黙りなさい、
ラーゼンは煽りをかけていく、クリスタは機械の人を守ろうと生きて欲しいと必死だがエクストラに何らかの魔法か何かの長方形の物で苦しめられる。
それを見た機械を纏った人は戦闘する意思が無くなったのか、武装を解除していき、機械でゴツゴツしていたが普通ね人みたいな姿になったその容姿は白髪でその目は……
〝嘘っ……〟
優花は彼の容姿を見て、口元を両手で抑えながら唖然としてしまった。
『……武装は解除したラーゼン。裁きも受ける。だから、早く彼女をクリスタを解放しろ』
『その答えが欲しかったよ──────。エヒト、オル──、スカー──、お前達は神域に戻りたまえ。───の裁きは我自身がしよう』
『『『はっ』』』
ラーゼンの言葉に三つのモヤが返事をした後に次第に消えていった。そして、ラーゼンは白髪の男に向かい直る。
『ではサヨナラだ。機械仕掛けの神よ。此度の戦いは面白かった。実に見事だった。だから、我も相応の返しをしよう。
キュウィィィィィィィン!
ラーゼンが手を掲げているように見えた。そして激しい音と共に巨大な光の槍が空から出ていた。その大きさは山さえも一瞬で消し去る程の大きさだった。
『駄目やめてっ!───、───!』
クリスタは磔にされながらも彼の名を呼び泣き叫ぶ。そんなクリスタを見て彼は優しげに笑みを浮かべていた。その姿がその笑みが優花には〝彼〟の姿に見えてしまい、気がついたら彼の元へ駆け出していた。
〝駄目っ、ヤメテッ!〟
優花が手を伸ばした瞬間……
『サヨナラだ』
キュゥィィィィィン!!
その瞬間、優花の一歩目の前でここら一帯を消し去るような絶望の光の柱がたった。それと共に、優花の視界も次第に暗くなっていったのだった………。
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「優花! おい、優花!」
「優花さん!」
「………優花!」
「優花!」
優花が倒れてから十分が経過するが未だにも彼女は一向に目を覚まそうとしない。ハジメは動揺が隠し切れずに手も若干震えている。
すると……
「……んぅ、ハジメ?」
「!」
ハジメが色々と考えてると倒れていた優花が薄ら目を開けながらゆっくりと目を覚ました。
「優花!」
「……ん!」
「優花よ、大丈夫かの?!」
「優花さん良がったですぅ〜」
「ちょっハジメ?皆?どうしたの?!」
ハジメとユエは優花に抱きつき、ティオは心配し、シアは泣いている。
「どうした、じゃねぇよ。優花、お前な、此処の神代魔法を手に入れた瞬間に倒れたから焦ったんだよ」
「えっ、そうなの?……ゴメンんぅ…」
「ちょっ、優花!」
目を覚ました優花はそのまま、また力尽きたようにハジメにもたれ掛かりまた、眠りに入ってしまった。
「ハジメ、優花は?」
「……大丈夫だ、今さっきと違って、ちゃんと今度は寝てるだけだと思う」
「それは安心じゃな」
「あぁ、シア。優花をおぶっていてくれないか? 俺は証を取りに行く」
「はい、分かりましたぁ〜」
「すっかり休めよ」
ハジメは寝ている優花の額にキスをしてからゆっくりとシアに渡し、証を取りに行った。そして証を〝宝物庫〟にしまった途端、神殿が鳴動を始めた。
「はっ?」
そして、周囲の海水がいきなり水位を上げ始めた。
「うおっ!? チッ、強制排出ってかっ。全員、掴み合え!シアは絶対に優花を離すな!」
「……んっ」
「はっ、はいですぅ!」
「水責めとは……やりおるのぉ」
凄まじい勢いで増加する海水にハジメ達は潜水艇を出して乗り込む暇もなく、あっという間に水没していく。
「ハッ、次は別々に流されねぇよ!」
ハジメは咄嗟に、また別々に流されては敵わないと、全員がしっかり優花を守りながらお互いの服を掴み合ったのを確認して〝宝物庫〟から酸素ボンベ取り出して口に装着し、寝ている優花にも装着させた。
そして、その直後、天井部分が【グリューエン大火山】のショートカットのように開き、猛烈な勢いで海水が流れ込み、その竪穴に流れ込んで、下から噴水に押し出されるように、猛烈な勢いで上方へと吹き飛ばされた。
これは、おそらく、【メルジーネ海底遺跡】のショートカットなのだろうが、滅茶苦茶乱暴なショートカットだ。しかも、強制的……メイル・メルジーネはおっとり系じゃなく過激系の奴なのかもしれない。
ハジメはこのショートカットでメイル・メルジーネの評価が変わってしまったのだった。
そして、押し上げられていくハジメ達は、やがて頭上が行き止まりになっていることに気が付く。しかし、ハジメ達がぶつかるといった瞬間、天井部分が再びスライドし、ハジメ達は勢いよく遺跡の外、広大な海中へと放り出された。
それでハジメは確信した。
「(メイル・メルジーネは絶対、見た目に反して過激で大雑把な性格だろっ!)」
ハジメ達は海中に放り出されたが急いで潜水艇を〝宝物庫〟から取り出した。そして、ハッチから乗り込もうとするが、その目論見は阻止される。一番、会いたくなかった相手によって。
ズバァアアアアアアッ!!!
ハジメ達の眼前を凄まじい勢いで半透明の触手が通り過ぎ、潜水艇が勢いよく弾き飛ばされた。
〝ユエ〟
〝凍柩!〟
ハジメが向けた視線の先には、一見妖精のような造形でありながら、全てを溶かし、無限に再生し続ける凶悪で最悪の生物――巨大クリオネがいた。わざわざ攻略が終わった後で現れたことに歯噛みしながら、ハジメはユエに〝念話〟を発動して呼びかける。
巨大クリオネは、再び無数の触手を水の抵抗などないかのように猛烈な勢いで射出した。それに対して、ユエがハジメの呼びかけに応え、阿吽の呼吸で周囲の海水を球形状に凍らせて、氷の障壁を張る。
直撃した触手の勢いで海中を勢いよく吹き飛ばされていき、氷の障壁と中で激しい衝撃に全員が障壁内でシェイクされる。
〝どうするんじゃ! ご主人様よ!〟
〝全員海上を目指せ。水中じゃあ嬲り殺しだ。時間は俺が稼ぐ!〟
念話石を使って通信してきたティオに答えてからハジメは指輪型の感応石を操って潜水艇を遠隔操作した。ハジメ達の背後から、吹き飛ばされ沈んだはずの潜水艇が猛スピードで突き進み、船体を捻りながら襲い来る無数の触手をかわしていく。そして、船底から無数の魚雷を射出した。
一度に射出された魚雷の数は十二。普通に考えれば十分な破壊力だがここで確実に隙を作らなければハジメはジリ貧だからな容赦しい。
それから合計六十の魚雷を発射した。
泡の線を引きながら殺到したそれらは、狙い違わず巨大クリオネに直撃し凄絶な破壊をもたらした。
ドォウ! ドォウ! ドォウ! ドォウ!
そんなくぐもった衝撃音が鳴り響き、海水が膨張したように膨れ上がる。海上から、巨大クリオネの直上を見ているものがいれば、海面が一瞬盛り上がり、次いで噴き上がる巨大な水柱ができる程の威力だが………
あの威力の魚雷を受けて尚、巨大クリオネは健在で、潜水艇を攻撃して船体が溶かされ始めるのを確認してハジメは歯噛みした。溶かされていく自慢の潜水艇に内心悪態を吐きながら、ハジメはユエに念話で呼びかけた。
〝ユエ、〝界穿〟を頼めるか?〟
〝……四十秒はかかる〟
〝邪魔はさせない。優花を出来るだけ安全な状況で休ませたい。それには海中から脱するしかない〟
〝んっ……任せて〟
ユエが集中のため目を瞑り、動かなくなった。優花が海流に流されないようにシアがしっかりと離さないでくれている。ユエが行使しようとしている〝界穿〟とは、【グリューエン大火山】で修得した神代魔法である空間魔法の一つで、空間の二つの地点に穴を開け、二点の空間を繋げる。要するにワープゲートを作る魔法で、まだ修得して日が浅いので、ユエをもってして、それだけの時間がかかる程の魔法だ。
襲い来る触手をティオが縮小版ブレスの連射で何とか薙ぎ払っていた。
ティオのブレスで何とかユエを守れてるがブレスは魔力消費が激しい上に、水中では威力も射程も相当落ちる上、直線的な攻撃なので触手には当てづらく殲滅力が弱く、もう数秒も持たずに突破されちまうと感じたハジメは〝宝物庫〟から鉱石を次々と取り出しては、連続して〝錬成〟していき、先程ユエが形成した氷の障壁のような、球形状の物理障壁を形成していった。
〝ご主人様よ! もう、突破されるのじゃ!〟
〝出来たぞ、全員入れ!〟
五人が十分に入れるくらいの金属製障壁が出来上がり、ティオが最後に入り込むと同時に穴が塞がって完全な金属球となった。さらに、その金属球を紅色の魔力が覆う。〝金剛〟による強化だ。一応、重力石も組み込んでいるので、沈み続けるということもない。
その直後、金属球に触手が殺到し、一気に包み込み始めた。即行で魔力そのものすら溶かす半透明ゼリーが〝金剛〟を食い破ってくる。そして、金属球の表面もみるみると溶かされていった。しかし、金属球に紅色のスパークが走ったかと思うと溶かされる端から金属が盛り上がり、その防壁を辛うじて維持する。
「クハッ……おもしれぇ!こっちも腐る程鉱石があるからなっ!」
ハジメは不敵な笑みを浮かべながら中から常に溶解速度に対抗して本気の〝錬成〟を繰り返し続けた。
そして、遂に待ちわびた瞬間が来た。
〝界穿!〟
ユエの空間転移魔法が発動する。金属球の中、ハジメ達の直ぐ傍に楕円形の光り輝く膜が出来上がった。空間を繋げるゲートだ。
〝全員飛び込め!〟
金属球に手を当てて〝錬成〟し続けるハジメの号令に従って、全員が一斉にゲートへと飛び込んでいく。ハジメも最後に飛び込み潜ったあと、直ぐにゲートは消滅した。
あれくらいの溶解速度なら数秒で金属球を溶かしていってるだろうと。ゲートを潜ったハジメ達は、凄まじい浮遊感に襲われた。
おそらく少しでも海から離れようと、ユエが上空百メートルに出口を設定したんだろう。でも、これならあのクリオネも追っては来ないとハジメは推測する。
ハジメがそう推測してるとすぐさまティオが〝竜化〟をし、その背にハジメ達を乗せて浮遊した。ティオの背でユエが崩れ落ちかけ、傍らのハジメが支える。
完全に魔力枯渇の状態だと分かると急いでハジメは〝宝物庫〟から魔晶石を取り出し、魔力を補充させる。
「ユエ、助かった。流石だよ。空間転移は相当難しいだろうに」
「……はぁはぁ、ん。頑張った。でも、まだまだ実戦レベルじゃない…シア、優花は大丈夫?」
「はいっ、優花さんは無事ですよ!」
「……ん、よかった」
ユエの言う通り、空間魔法は重力魔法の比ではないくらい扱いが難しく、ユエを以てして未だ実戦で使えるレベルではなかった。〝想像構成〟によるイメージでの魔法陣構築には多大な時間がかかるし、魔力効率もまだまだ悪く、百メートルの空間転移をするのに最上級魔法二回分の魔力を消費してしまう程らしい。尚、ハジメだったら数ヶ月はかかるだろう。
それでもユエが短い期間で発動に到れるまで習熟していてくれたおかげで、脱出することが出来たので、ハジメ達から称賛が送られ、若干頬を染めてユエは照れていたが、すぐさまシアに優花の様態を確認して安心していたが……
次の瞬間、全員その表情は凍りつくことになった。
ドォゴオオオオオオオ!!!
ザバァアアアアアア!!!
「なっ?!」
そんな轟音と共に、突然、ハジメ達の背後から巨大な津波が襲いかかったのだ。いや、巨大というのもおこがましいだろう。もはや、壁、そして空だ。上空百メートルほどの高さを飛ぶティオの遥か天に白波を立てながら襲い来る津波は、優に高さ五百メートルを超えているだろう。そして直径は一キロメートルくらいありそうだ。
「ッ、ティオ!」
〝承知っ!〟
ハジメの叫びにティオが我を取り戻し、翼をはためかせて一気に加速する。左右に逃げ場はない。空間転移は間に合わない。ならば、何も考えず〝前へ〟! 【グリューエン大火山】から脱出した時に匹敵するような高速で飛行する。
するとシアは、何やら集中すると次の瞬間には目を見開いて警告を発した。
「ティオさん、気をつけて! 津波の中にアレがいます! 触手、来ます!」
固有魔法〝未来視〟の派生〝仮定未来〟で見た光景を伝えたのだろう。ティオは、シアの言葉を確認することもなく、咄嗟に身をひねった。直後、津波から無数の触手が伸び、今の今までティオの居た空間を貫いていく。
上手く避けることは出来たが、そのせいで津波との差が詰まってしまった。
「これでも喰らいやがれ!」
ボォォォォー!
なお襲い来る触手を、ハジメが火炎放射器で焼き払い迎撃していくが……
「ちくしょう! 狙った獲物は逃がさないってか?」
津波は勢いを衰えることなく向かってくる。
「チッ……しぶとすぎだろっ」
ハジメは遅い来る津波を睨みつきながら歯噛みする。
「……ハジメさん」
〝……ご主人様〟
ギュッ!
「……お前等」
するとシアと竜化したティオは暗そうな表情をし、ユエはハジメのコートをギュッと掴んだ。
「(クソッ、でも俺は優花をっ、そうだ俺は皆で戻るんだ。神共を殺すんだろ俺! こんなところで諦めねぇぞ!)」
ハジメは両手で自分の頬をパンッと強く叩くそれに気付いたか、ハジメに視線を向けた彼女達はビクッと体を震わせた。なぜなら、ハジメの眼が爛々と輝き眼光は鋭く、濃密で狂的なほどの殺意を宿し、歯を剥いて巨大化するクリオネモドキを睨んでいるからだった。
それを理解し、共に奈落の底で死線をくぐり抜けて来たからからこそ、ユエもまた、諦めなど一切持たずに、必死に考えを巡らす。
「(此処なら何も弊害もねぇし、気をつける事はないな)」
そしてハジメは、あの魔法を使うことを決断した。
「ティオ……少し、どでけぇ魔法を使うから止まってくれ」
〝……ご主人様、承知なのじゃ!〟
ハジメはある魔法を放つ為にティオに止まってくれと呼びかけるとティオはハジメを信頼してるのだろう。すぐさま従い移動するのを止めた。
だんだんと津波がハジメ達に迫ってくるに対してハジメは〝限界突破〟、〝紅狼〟を発動する。その瞬間、ハジメの周りに紅いスパークが纏いだしていく。
あのクリオネは高音熱で再生はしていたが再生速度は遅くなっていた。なら、あれ以上の熱をぶつければいい。とハジメは考えた。
ハジメは片手を天に掲げ、巨大な津波を睨みつける。
「喰らいやがれ!───
ハジメは天に掲げていた片腕を勢い良く雷を落とすかのように腕を振り落とした。
次の瞬間………
ドガァァァァァァァァァァン!!!!
凄まじい轟音と共に大きな紅い落雷が津波と巨大クリオネを飲み込んだ。ハジメは魔法私放った瞬間、魔力を大分消費したので片膝を着いてしまい荒く息をする。咄嗟にユエがハジメを支えた。
「流石に魔力の半分以上の消費はハァハァ……疲れるな」
「……ハジメ、大丈夫?」
「あぁ……少しフラつくが平気だ」
ハジメはユエに支えられながら津波とクリオネがどうなったか確認しに向かった……。
実践は初だが、この魔法の威力はどんなもんかとハジメは気になり、立ち上がった。
「……凄い。私でもこの威力の雷は無理」
「はわわ…凄いですぅ……海が蒸発してますぅ……っとと、ふぅ……危なかったですぅ」
〝ご主人様は流石じゃのう〜〟
それは、魔法を放ったハジメも唖然としていたが、魔法の天才のユエとユエの次に魔法に長けているティオまでも息を飲み、シアは驚き過ぎておんぶしていた優花を落としそうになっていた。
そこまで驚く程のハジメ達の見た光景とは……
そこには、津波と巨大クリオネがいた場所の水が全て蒸発しており、海中で見えなかった岩石地帯などが丸見えになっていたのだ。
「あのクリオネ……倒せましたよね?」
「あれ喰らって生きて再生されてたら神共よりもやべぇよ……」
「……ん」
〝そうじゃな〜〟
もし、この雷を喰らっても生きてたのなら神とは別で厄介過ぎる。
「(よし、魔眼石にも反応ねぇから消滅はしたな)」
しかし、ハジメはシアの発言で少し不安になり、こっそり〝魔眼石〟で反応を見たのだが、しっかりとハジメの魔法で消滅しており安堵の息を漏らした。
「よし、ティオ。優花を早く休ましてぇからエリセンに直行してくれ」
〝うむ、承知〟
そして、ハジメ達は未だに寝ている状態でいる優花を安静に休ませたい為エリセンへと直行したのだった……。
ハジメの魔法
雷霆《ケラウノス》…“紅狼”を発動状態にしとかないと反動が強過ぎて普段は扱わないようにしてる魔法である。威力は“天雷牙狼”より数倍以上の威力の雷を放てる事ができ、余波も凄い為、町などで放ってしまったら辺り完全に黒焦げか更地になる。
編集しました。十一月二十八日
愛子はハーレムに入れるか入れないか
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いる
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いらない