ありふれた職業で世界最強if優花   作:白San

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六十六話 王都侵攻

 

薄暗く明かり一つ無い部屋の中に、格子の嵌った小さな窓から月明かりだけが差し込んで黒と白のコントラストを作り出していた。

 

部屋の中は酷く簡素な作りになっている。鋼鉄造りの六畳一間、木製のベッドにイス、小さな机、そしてむき出しのトイレ。地球の刑務所の方がまだましな空間を提供してくれそうだ。

 

そんなどう見ても牢獄にしか思えない部屋のベッドの上で壁際に寄りながら三角座りをし、自らの膝に顔を埋めているのは畑山愛子その人だ。

 

愛子が、この部屋に連れて来られて三日が経とうとしている。愛子の手首にはブレスレット型のアーティファクトが付けられており、その効果として愛子は現在、全く魔法が使えない状況に陥っていた。それでも当初は何とか脱出しようと試みたのだが、物理的な力では鋼鉄の扉を開けることなど出来るはずもなく、また唯一の窓にも格子が嵌っていて、せいぜい腕を出すくらいが限界であった。

 

もっとも、仮に格子がなくとも部屋のある場所が高い塔の天辺なうえに、ここが【神山】である以上、聖教教会関係者達の目を掻い潜って地上に降りるなど不可能に近く、生徒達の身を案じることしか出来ない愛子は悄然と項垂れ、ベッドの上で唯でさえ小さい体を更に小さくしているのである。

 

「……私の生徒がしようとしていること……一体何が……」

 

僅かに顔を上げた愛子が呟いたのは、攫われる前に銀髪の修道女が口にしたことだ。愛子が、ハジメから聞いた話を光輝達に話すことで与えてしまう影響は不都合だと、彼女の言う〝主〟と〝母〟とやらは思っているらしい。そして、生徒の誰かがしようとしていることの方が面白そうだとも。

 

愛子の胸中に言い知れぬ不安が渦巻く。こうして何もない部屋で監禁されて、出来る事と言えば考えることだけ。そうして落ち着いて振り返ってみれば、帰還後の王宮は余りに不自然で違和感だらけの場所だったと感じる。愛子の脳裏に、強硬な姿勢を崩さない、どこか危うげな雰囲気のエリヒド国王や重鎮達のことが思い出される。

 

きっと、あの銀髪の修道女が何かをしたのだと愛子は推測した。彼女が言っていた、〝魅了〟という言葉がそのままの意味なら、きっと、洗脳かそれに類する何かをされているのだ。

 

しかし同時に、会議の後で話した雫やリリアーナについては、そのような違和感を覚えなかった。その事に安堵すると共に、自分が監禁されている間に何かされるのではないかと強烈な不安が込み上げる。

 

どうか無事でいて欲しいと祈りながら思い出す、もう一つの懸念。それは、〝イレギュラーの排除〟という言葉。意識を失う寸前に聞いたその言葉で、愛子は何故か一人の生徒を思い出した。

 

命の恩人にして、圧倒的な強さと強い意志を秘めながら、愛子の言葉に耳を傾け真剣に考えてくれた男の子。そして……色々と思うところがあるが信念が真っ直ぐな人。

 

ハジメの安否を憂慮する気持ちでポロリと零すように彼の名を呟いた。

 

「…………南雲君」

 

「おぅ? 何だ、先生?」

 

「ふぇ!?」

 

愛子はハジメの返事で思わず素っ頓狂な声を上げ、部屋の中をキョロキョロと見回してるので、気付いてないのか? と思いハジメはまた声をかけた。

 

「こっちだ、先生」

 

「えっ?」

 

愛子は、体をビクッと震わせながら、ハジメのいる方、格子の嵌った小さな窓にやっと視線を向けた。

 

「えっ? えっ? 南雲君ですか? えっ? ここ最上階で…本山で…えっ?」

 

「あ~、うん。取り敢えず、落ち着け先生。もうちょっとでトラップがないか確認し終わるから……」

 

混乱する愛子を尻目に、ハジメは魔眼石で部屋にトラップの類がないか確かめると、紅いスパークを迸らせながら〝錬成〟を行い、人一人通れるだけの穴を壁に開けて中に侵入を果たした。外壁に穴を開けて登場したハジメに、先生は目を白黒させているがハジメは愛子が無事だと分かり小さく笑みを浮かべながら歩み寄った。

 

「なに、そんなに驚いているんだよ。俺が来ていることに気がついてたんだろ? 気配は完全に遮断してたはずなんだが……ちょっと、自信無くすぞ」

 

「へっ? 気づいて? えっ?」

 

「いや、だって、俺の名前呼んだじゃないか。俺が窓の外にいるのを察知したんだろ?」

 

「そ、それよりも、なぜここに……」

 

「もちろん、先生を助けにきただけだ」

 

「わざわざ助けに来てくれたんですか?でも南雲君はまだ旅の途中ですよね?」

 

愛子はハジメのきた事に驚き、旅はどうしたのかと聞いてきた。

 

「あぁ……旅の途中にリリィに出会ってな、先生が攫われたと聞いたんだ」

 

「リリィ? あっ、リリアーナ姫ですか?」

 

「ああ。先生が攫われるところを目撃してたんだよ。それで、王宮内は監視されているだろうから掻い潜って天之河達に知らせることは出来ないと踏んで、一人王都を抜け出したんだ。俺達に助けを求めるためにな」

 

「リリアーナ姫が……南雲君はそれに応えてくれたんですね」

 

「まぁな……それに先生が攫われたのは俺が話した件が関係してると思ってな……って先生? その手に着いてるブレスレットは何だ?」

 

ハジメはこれまでの経緯を先生に話してると先生が前に会った時に着けていなかったブレスレットが目に入り聞く事にした。

 

「あっ……これは魔力封じのアーティファクトで魔法を出せないんです」

 

「魔力封じ型ね……わかった。先生、今外すから手を出してくれ」

 

「は、はいっ」

 

ハジメはベッドに腰掛ける愛子の元に歩み寄り、手を取った。そして、錬成をして先生に着いてる魔力封じのアーティファクトを取り除く。

 

「あ、ありがとうごさいます南雲君」

 

「良いってことよ」

 

愛子を無傷で救出できたのは良いが、ハジメは嫌な予感がしてならない。だから、ハジメは喜ぶ愛子に笑って返し、ここから早く離脱することにし、愛子を促す。

 

「それより先生、そろそろ行こう。天之河達のところにはリリィ達が向かってるはずだ。合流してから、これからどうするか話し合えばいい」

 

「わかりました。……南雲君、気を付けて下さい。教会は、頑なに君を異端者認定しました。それに、私を攫った相手は、もしかしたら君を……」

 

「わかってる。どっちにしろ、先生を送り届けたら、俺は俺の用事を済ませる必要があるし、多分、その時、教会連中とやり合う事になる。……もとより覚悟の上だ」

 

ハジメは強靭な意志を秘めた眼差しで愛子に頷く。その眼差しに愛子は再び憂慮の言葉をかけようとした。と、その時、遠くから何かが砕けるような轟音が微かに響き、僅かではあるが大気が震えた。

 

「……っ! まさかっ」

 

「ふぇっ?!」

 

何事かと緊張に身を強ばらせた愛子がハジメに視線を向けるがハジメは無視して遠くを見る目をして何かに集中し現在、地上にいるユエ達から念話で情報を貰った。

 

「ちっ、なんてタイミングだよ。……まぁ、ある意味好都合かもしれないが……」

 

ハジメは舌打ちしながら視線を愛子に戻す。愛子は、ハジメが念話を使えることを知らないが、何か情報を掴んだのだろうと察し、視線で説明を求めてきた。

 

「先生、魔人族の襲撃だ。さっきのは王都を覆う大結界が破られた音らしい」

 

「魔人族の襲撃!? それって……」

 

「ああ、今、ハイリヒ王国は侵略を受けている。仲間から〝念話〟で知らせが来た。魔人族と魔物の大軍だそうだ。完全な不意打ちだな」

 

ハジメの状況説明に愛子は顔面を蒼白にして「有り得ないです」と呟き、ふるふると頭を振った。

 

それもそうだろう。王都を侵略できるほどの戦力を気づかれずに侵攻させるなどまず不可能だし、王都を覆う大結界とて並大抵の攻撃ではこゆるぎもしないほど頑強だ。その二つの至難をあっさりクリアしたなどそう簡単に信じられないのは当然だ。

 

ハジメはそんな愛子を落ち着かせながら口を開く。

 

「先生、取り敢えず天之河達と合流しな。話はそれからだ」

 

「は、はい」

 

緊張と焦燥に顔を強ばらせた愛子を、ハジメは片腕に座らせるような形で抱っこする。「うひゃ!」と再び奇怪な声を上げながらも、愛子は咄嗟に、ハジメの首元に掴まった。

 

と、その瞬間……

 

カッ!!

 

外から強烈な光が降り注いだ。

 

「ッ!?」

 

部屋に差し込んでいた月の光をそのまま強くしたような銀色の光に、ハジメの本能がけたたましく警鐘を鳴らす。

 

「先生っ、落ちんなよっ!」

 

「えっ……っ?!」

 

ハジメは愛子に言う事だけ言って脇目も振らず咄嗟に外壁の穴から飛び出した。急激な動きに愛子が耳元で悲鳴を上げギュッと抱きついてくるが、今は気にしている場合ではない。ハジメが、隔離塔の天辺から飛び出したのと銀光がついさっきまで愛子を捕えていた部屋を丸ごと吹き飛ばすのは同時だった。

 

ボバッ!!

 

物が粉砕される轟音などなく、莫大な熱量により消失したわけでもなく、ただ砕けて粒子を撒き散らす破壊。人を捕えるための鋼鉄の塔の天辺は、砂より細かい粒子となり、夜風に吹かれて空へと舞い上がりながら消えていった。

 

余りに特異な現象に、ハジメは〝空力〟で空中に留まりながら、目を見開き思わずといった感じで呟く。

 

「あれはただの破壊じゃねぇ……〝分解〟か?」

 

「ご名答です、イレギュラー」

 

返答を期待したわけではない独り言に、鈴の鳴るような、しかし、冷たく感情を感じさせない声音が返ってくる。

 

ハジメは声のした方へ鋭い視線を向けると、そこには、隣の尖塔の屋根から睥睨する銀髪碧眼の女がいた。ハジメはあれがアレスの言っていた使徒と確信する。

 

もっとも、リリアーナが言っていたのと異なり修道服は着ておらず、代わりに白を基調としたドレス甲冑のようなものを纏っていた。ノースリーブの膝下まであるワンピースのドレスに、腕と足、そして頭に金属製の防具を身に付け、腰から両サイドに金属プレートを吊るしている。どう見ても戦闘服でまるで戦乙女(ワルキューレ)のようであった。

 

銀髪の女は、その場で重さを感じさせずに跳び上がった。そして、天頂に輝く月を背後にくるりと一回転すると、その背中から銀色に光り輝く一対の翼を広げた。

 

バサァと音を立てて広がったそれは、銀光だけで出来た魔法の翼のようだ。背後に月を背負い、煌く銀髪を風に流すその姿は神秘的で神々しく、この世のものとは思えない美しさと魅力を放つ。だが、惜しむらくはその瞳だ。彼女の纏う全てが美しく輝いているにも関わらず、その瞳だけが氷の如き冷たさを放っていた。その冷たさは相手を嫌悪するが故のものではない。ただただ、ひたすらに無感情で機械的。人形のような瞳だった。

 

銀色の女は、先生を背負いながら鋭い眼光を飛ばす俺を見返しながら、おもむろに両手を左右へ水平に伸ばした。すると、ガントレットが一瞬輝き、次の瞬間には、その女の周りには銀の柱の様な物が出現していた。それは銀色の魔力光を纏った二メートル近い柱のような物を周りに浮かせている銀色の女は、やはり感情を感じさせない声音でハジメに告げる。

 

「ノイントと申します。〝神の使徒〟として、我が母の願いにより貴方を排除します」

 

「チッ……よりによって〝ネームド〟か」

 

それは宣戦布告だった。ノイントと名乗った女は、神共が送り出した本当の意味での〝神の使徒〟なのだろう。いよいよ、ハジメが邪魔と判断し、直接、〝神の遊戯〟から排除する気のようでアレスが言っていた使徒の中でも実力のある使徒〝ネームド〟を送らせたのだろう。

 

ハジメは自分の相手が〝ネームド〟と知ると眉を顰めながら悪態をつく。すると、ノイントから噴き出した銀色の魔力が周囲の空間を軋ませる。大瀑布の水圧を受けたかのような絶大なプレッシャーがハジメと愛子に襲いかかった。

 

「クハッ……面白れぇ」

 

愛子は必死に歯を食いしばって耐えようとするものの、表情は青を通り越して白くなり、体の震えは大きくなる。「もうダメだ」と意識を喪失する寸前だと確認してすぐさま先生をハジメの紅い魔力で包み込み、守るようにノイントの放つ銀のプレッシャーの一切を寄せ付けないようにした。

 

すると愛子は目を見開いて、原因であろう間近い場所にあるハジメの顔に視線を向けるたが、直後ビクッと身体を震わせた。

 

それもその筈だ。途方もないプレッシャーを受けておきながら微塵も揺らぐことなく、ハジメは瞳をギラつかせて獰猛に歯を剥いてるからであった。ハジメは愛子の視線を尻目に、ノイントに向けて挑発的に嗤いながら同じく宣戦布告した。

 

「殺れるものなら殺ってみろ。クソ神共の木偶(人形)が」

 

その言葉を合図に、標高八千メートルの【神山】上空で、〝神の使徒〟と奈落から這い上がって来た〝化け物〟が衝突したのだった。

 

 

~〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

ハジメがノイントの襲撃を受ける少し前、優花、ユエ、シア、リリアーナの四人は夜陰に紛れて王宮の隠し通路を進んでいた。リリアーナを光輝達のもとへ送り届けるためだ。

 

優花達の目的は王国の異変解決とリリアーナと光輝達──異世界組との合流である

 

合流の目的は取り敢えず愛子の安全を確保するためには、救出後の預け先である光輝達が洗脳の類を受けていないか、彼等が安全と言えるかの確認が必要だったからだ。それに、【神山】は文字通り聖教教会の総本山であり、愛子の救出までは出来るだけ騒動を起こさないことが望ましいところ、彼等に気付かれず愛子の監禁場所の捜索と救出を行うためにもハジメ一人の方が都合がよかった為である。

 

そのため、王都に残ることになった優花達は、リリアーナと一緒に行動しているのである。

 

なお、ティオと追放されてる身であるアレスは万一に備えて王都の何処かで待機している。全体の状況を俯瞰できる者が二人くらいいた方がいいという判断だ。

 

そんな優花達が、隠し通路を通って出た場所は、何処かの客室だった。振り返ればアンティークの物置が静かに元の位置に戻り何事もなかったかのように鎮座し直す。

 

「この時間なら、皆さん自室で就寝中でしょう。……取り敢えず、雫と香織の部屋に向かおうと思います」

 

闇の中でリリアーナが声を潜める。向かう先は、雫と香織の部屋のようだ。勇者なのに光輝に頼らない辺りが、彼女の評価を如実に示している。

 

リリアーナの言葉に頷き、索敵能力が一番高いシアを先頭に一行は部屋を出た。雫達、異世界組が寝泊まりしている場所は、現在いる場所とは別棟にあるので、月明かりが差し込む廊下を小走りで進んでいく。

 

そうして、しばらく進んだ時、それは起こった。

 

ズドォオオン!!

 

パキャァアアン!!

 

砲撃でも受けたかのような轟音が響き渡り、直後、ガラスが砕け散るような破砕音が王都を駆け抜けたのだ。衝撃で大気が震え、優花達のいる廊下の窓をガタガタと揺らした。

 

「わわっ、何ですか一体!?」

 

「これはっ……まさか!?」

 

索敵のためにウサミミを最大限に澄ましていたシアが、思わずペタンと伏せさせたウサミミを両手で押さえて声を漏らす。すぐ後ろに追従していたリリアーナは、思い当たることがあったのか顔面を蒼白にして窓に駆け寄った。優花達も様子を見ようと窓に近寄る。

 

 そうして彼女達の眼に映った光景は……

 

「そんな……大結界が……砕かれた?」

 

信じられないといった表情で口元に手を当て震える声で呟くリリアーナ。彼女の言う通り、王都の夜空には、大結界の残滓たる魔力の粒子がキラキラと輝き舞い散りながら霧散していく光景が広がっていた。

 

リリアーナが呆然とその光景を眺めていると、一瞬の閃光が奔り、再び轟音が鳴り響く。そして、王都を覆う光の膜のようなものが明滅を繰り返しながら軋みを上げて姿を現した。

 

「第二結界も……どうして……こんなに脆くなっているのです? これでは、直ぐに……」

 

リリアーナの言う大結界とは、外敵から王都を守る三枚の巨大な魔法障壁のことだ。三つのポイントに障壁を生成するアーティファクトがあり、定期的に宮廷魔法師が魔力を注ぐことで間断なく展開維持している王都の守りの要だ。その強固さは折り紙つきで、数百年に渡り魔人族の侵攻から王都を守ってきた。戦争が拮抗状態にある理由の一つでもある。

 

その絶対守護の障壁が、一瞬の内に破られたのだ。そして、今まさに、二枚目の障壁も破られようとしている。内側に行けば行くほど展開規模は小さくなる分強度も増していくのだが、数度の攻撃で既に悲鳴を上げている二枚の障壁を見れば、全て破られるのも時間の問題だろう。結界が破られたことに気が付き、王宮内も騒がしくなり始めた。あちこちで明かりが灯され始めている。

 

「まさか、内通者が? ……でも、僅かな手勢ではむしろ……なら敵軍が? 一体どうやって……」

 

呆然としながら思考に没頭しているリリアーナに答えをもたらしたのはユエ達だった。

 

〝聞こえるかの? 妾じゃ、状況説明は必要かの?〟

 

優花達の持つそれぞれの念話石が輝き、そこから声が響いている。王都に残してきたティオの声だ。口振りから、何が起きているのか大体のところを把握しているらしい。

 

〝お願いティオ〟

 

〝心得た。王都の南方一キロメートル程の位置に魔人族と魔物の大軍じゃ。あの時の白竜もおるぞ。結界を破壊したのはもう一つの竜のブレスじゃ。しかし、白竜の主の姿が見えんの〟

 

「まさか本当に敵軍が? そんな、一体どうやってこんなところまで……」

 

ティオの報告に、リリアーナが表情を険しくしながらも疑問に眉をしかめる。

 

その疑問に対して、優花達には想像がついていた。白竜使いの魔人族、フリード・バグアーは【グリューエン大火山】で空間魔法を手に入れている。軍そのものを移動させる程の〝ゲート〟を開くなどユエでも至難の業ではあるが、何らかの補助を受ければ可能かも知れないが……。

 

するとアレスからも連絡がきた。

 

〝皆さん聞こえますか? こちらからもティオ殿と同じ南方に魔物の大軍を確認したのでこちらで食い止めます〟

 

〝一人で大丈夫ですか?〟

 

〝ハハッ……ご心配ありがとうございます。でも安心してください。一人での殲滅戦は慣れてますから〟

 

アレスは優花の心配に感謝したが、彼はこういう戦闘に慣れていると言って報告を終わった。

 

ティオとアレスの報告を受けた優花はある事を思いつく。

 

だが、そうこうしているうちに、再びガラスが砕けるような音が響き渡った。第二障壁も破られたのだ。焦燥感を滲ませた表情でリリアーナが光輝達との合流を促す。しかし、それに対して優花が首を振った。

 

「優花? どうしたんですか?」

 

「ユエ、シアはここで別れるわよ。二人は外の魔物達をお願い。それに、ハジメのあの推測が正しいか確かめてきて欲しいの」

 

「……ん、わかった」

 

「えっ、アレですか。まぁ……はい、了解ですぅ〜」

 

「なっ、ここで? 一体何を……」

 

一刻も早く光輝達と合流し態勢を整える必要があるのに、何を言い出すのかとリリアーナは訝しそうに眉をしかめた。ユエは窓を開けると瞳を剣呑に細めて端的に理由を述べる。

 

「……ハジメの頼みで白竜使いの魔人族に少し用がある」

 

「では優花さん、リリィさん。私とユエさんは、ちょっとここで失礼します」

「うん、行ってらっしゃい」

 

「……ん、優花でも……大丈夫なの?」

 

「私は大丈夫だから」

 

ユエは戦力が大分削る事を心配するが優花は「大丈夫」と笑みを浮かべユエの頭を撫でた。

 

「……ん、もう優花」

 

「お願いね、ユエ」

 

「……ん、任された」

 

そして、ユエとシアの二人は、優花の指示で窓から王都へ向かって飛び出して行ってしまった。開けっぱなしの窓から夜風と喧騒が入り込んでくる。優花は二人が行くのを確認した後、リリィと二人して進み始めた。

 

「……仲が良いんですね」

 

「うん……それに皆、ハジメの事を愛してるからね」

 

「えっ?! 優花、それ大丈夫なんですか?!」

 

「ふふっ、大丈夫。ハジメは私達四人共を愛してくれてるから」

 

そんな会話してるとリリィが「私もハジメさんに……」と顔を真っ赤にしながら呟く。優花はそれを見て「やっぱハジメは誑しだな〜」と苦笑いしながら溜息を吐く。そして二人は光輝達のもとへ急ぐのだった……。

 




編集しました。十二月一日

愛子はハーレムに入れるか入れないか

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