ありふれた職業で世界最強if優花   作:白San

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七十一話 〝ネームド〟使徒ノイントとの決着

 

初撃はシュラーゲンと雷魔法〝轟雷〟による一撃だった。

 

紅いスパークが迸り、見るからに凶悪なフォルムの怪物兵器から凄絶な破壊力を宿らせた超速の弾丸と激しい紅の閃光が一直線に目標へと迫る。ティオのブレスすら正面から貫いた貫通特化の砲撃に、流石の銀翼でも分解する前に貫かれると判断したのか、ノイントは二つの聖槍を前に出して指示をだした。

 

「形状変化──〝聖盾っ〟」

 

そう口にした瞬間、聖槍が輝きだしたとのと同時に聖槍が変形していき、盾の形になって、ハジメの放った超速の弾丸と激しい紅の閃光を真っ正面から受け止めるが……

 

ガァァァァァァァァン!

 

「くっ!……聖盾で防いでもこのぐらい余波がっ」

 

激しい音と共に膨大な魔力の余波に盾で防いでいたノイントはその膨大な魔力余波に歯噛みする。

 

「……次はコチラからですっ。形状変化──〝聖槌〟!」

 

弾丸と雷撃を防いだ後、ノイントは盾から槌に形状変化させ、恐るべき速度でハジメに突進する。

 

しかし、それを読んでいたのか、そこには既にクロスビットが配置されており、炸裂スラッグ弾が回避不能の近さで轟音と共にぶっ放された。

 

「ッ!?」

 

ノイントは紅い波紋を広げる炸裂スラッグ弾を見て、銀翼での防御も間に合わないと見たのか、その手に持つ一之大剣で迎撃に打って出た。

 

神速で振り抜かれた大剣は、まるでバターを切り取るようにスッと弾丸に入り込みそのまま縦に両断する。内包する魔力を分解された炸裂スラッグ弾だったが、大剣の一撃もその全てを散らすことは出来ず、ノイントの左右に分かれた弾丸が両側から衝撃波を放つが追従する聖槌がノイントを守る。

 

衝撃を防ぐが、炸裂スラッグ弾の煙により一瞬動きが止まるノイント。

 

そんな彼女の懐に、意識の間隙を突くようにいつの間にか踏み込んできたのはハジメだ。〝空力〟を使った空中での震脚によって、踏み込みの力を余すことなく左腕に集束し、ギミックの〝振動破砕〟と〝炸裂ショットガン〟、そして〝豪腕〟と膨大な魔力を注ぎ込んだ〝衝撃変換〟による絶大な威力の拳撃を放った。

 

ノイントは咄嗟に大剣を盾にした。体と着弾寸前の拳との間に大剣を割り込ませる。その試みはギリギリのところで間に合い、ハジメの鋼鉄の拳をせき止めたが、ノイントは二つの聖槌でハジメを狙うように突撃させる。

 

しかし、ハジメそれも読んでいたかのようにすぐさま離脱した後、雷魔法を発動させる。

 

「───〝轟雷爆〟」

 

ハジメが魔法を発動した瞬間、ノイントの目の前に紅のスパークを放った雷の球体が現れ、勢いよく爆発した。その威力ま衝突する凄まじい音を轟かせながら、ノイントは猛烈な爆風で吹き飛ばされた。

 

ドパァアアンッ! ドパァアアンッ!

 

ハジメは追撃の手を緩めない。即座にドンナー・シュラークを抜くと最大威力で連射する。轟く炸裂音は二発分。夜闇を切り裂く紅い閃光も二条。されど、吹き飛びながらも聖槌を聖盾に形状変化させ、防御姿勢をとるノイントを襲ったのは十二回分の衝撃だった。

 

「くぅうううっ!!」

 

ドンナー・シュラークそれぞれにつき、一発分しか聞こえない程の早撃ちと、全く同じ軌道を通り着弾地点も同じという超精密射撃。ノイントの呻き声と同時に、彼女の周りに浮かぶ聖盾が衝撃に震え、僅かにピキッと嫌な音を立てる。

 

更に吹き飛び、再び、背後にあった教会の荘厳な装飾が施された何らかの施設を破壊しながら埋もれるノイント。ハジメは、オルカンを〝宝物庫〟から取り出し、ダメ押しとばかりにと雷魔法と共に全弾発射した。

 

「──〝紅雷玉〟」

 

バシュウウウウウッ!!

 

火花の尾を引いて殺到した絶大な暴力の群れと紅の宝玉達は崩れかけた建物に致命傷をプレゼントする。大爆発と紅い雷と共に完全に崩壊した建物は、そのままオルカンから放たれたロケット弾と内部に搭載されていた大量のタールによって摂氏三千度の業火に包まれた。

 

夜空を赤く染め上げる大火を眺めながら、ハジメは追撃の手をまだ緩めない。〝宝物庫〟から取り出したミサイルをオルカンに装填すると、再度、燃え盛る瓦礫の山に向かって狙いを定めた。

 

と、その瞬間、

 

「っ! 下かっ」

 

ハジメが眼下に視線を向け直すと同時に直下の地面が爆発したように弾け飛び、その中から銀翼をはためかせたノイントが飛び出てきた。どうやら、魔法を使って地中に退避し、そのまま強襲を掛けてきたらしい。

 

おびただしい数の銀羽が掃射され、銀の砲撃と二つの聖槍が撃ち放たれる。ハジメは、それらを風に吹かれる木の葉のようにゆらりゆらりと揺れながらかわし、交差する一瞬で振り抜かれた双大剣と聖槍をレールガンによって受け流しつつ僅かな剣撃の隙間を側宙するように通りぬけ、突き刺すように向かう聖槍を〝豪脚〟を使って振り払う。そして、通り過ぎるノイントに向かってミサイルと紅い雷撃を発射する。

 

オルカンとハジメの雷魔法の威力をその身で理解したノイントは、銀の光を弾きながら高速飛行し、追尾してくるミサイルと雷撃から距離をとる。そして背後に向けて聖槍を飛ばして迎撃しつつ、作り出した魔法陣から怒涛の魔法攻撃をハジメに向けて放った。

 

夜天に撃墜されたミサイル群の爆炎が無数に咲き誇っているのを尻目に、ハジメはオルカンをしまうと、再びドンナー・シュラークを抜いた。そして、急迫する魔法の核を撃ち抜き、ノイント同様に全て迎撃する。

 

壮絶な空中戦の合間に訪れた僅かな静寂。空中でノイントとハジメが対峙する。

 

「なぁ、ちょっと聞きたいんだが俺に構っていていいのか?」

 

「……何のことです?」

 

教会関係者が地上で起きている魔人族による王都侵攻を知らないわけがない。問答無用に襲われていたので聞く暇もなかったのだが、一時の間が出来た上に、ノイントが会話に乗ってきたので、ハジメは、ちょうどいいと話を続ける。

 

「下で起きていることだ。このままじゃ王国は滅びるぞ? 次は当然、この【神山】だ。俺なんかに構ってないで、魔人族達と戦った方がいいんじゃないのか?」

 

言い直されたハジメのもっともな質問に、しかし、ノイントはくだらない事を聞かれたとでも言うような素振りで鼻を鳴らす。

 

「そうなったのなら、それがこの時代の結末という事になるのでしょう」

 

「結末ねぇ。……やっぱり、クソ神共にとって〝人〟は所詮〝人〟でしかなく、暇つぶしの駒でしかないということか。……この時代は、たまたま人間族側についてみただけってわけだ? 性根が腐ってるよホントに……」

 

「……だったら何だというのです?」

 

「いや、クソ神共はクソ野郎達の集まりだったって再確認出来ただけだ」

 

主達と敬愛する母をクソ共呼ばわりされたせいか眉がピクリと反応するノイント。しかし、ハジメは気にした風もなくにこやかに告げる。

 

「なぁ、ラーゼンは強い奴と戦いたい戦闘狂なんだろ? なら、何故俺を排除しようとするんだ? それに、戦闘狂なら勇者共は大したことねぇから世界に返したらどうだ?」

 

「……却下です、イレギュラー」

 

「理由を聞いても?」

 

「イレギュラー、我が母と三柱の神々はあなたを危険視しています。あらゆる困難を撥ね退け、巨大な力と心強い仲間を手に入れて、この勢いだとホントに我等と戦うことになってしまいます。主は、あなたの戦いをお望みなのですが、我が母は貴方のことはお嫌いそうなのでこの世界から消しておきたいと……。ああ、それと勇者達は……中々面白い趣向を凝らしているとのことで、主は大変興味を持たれております。故に、まだまだ主を楽しませる駒として踊って頂きます」

 

ハジメは、概ね予想通りの回答だったので特に気にした風もなく肩を竦めると、かつて聞いたミレディの言葉に、内心で深く同意した。しかし、自分の事はともかく、最後の言葉はハジメとしても気になるところだ。

 

「……面白い趣向?」

 

「これから死ぬあなたにとって知る必要のないことです」

 

話は終わりだと、ノイントは無数の魔法と銀羽と聖槍を放ち、戦闘再開を行動で示した。

 

「……聖杭、形状変化──〝聖剣〟」

 

ノイントの言葉で聖槍の形から光輝の持っている聖剣と酷似した剣へと変化した。そして、先程までとは威力も桁も別次元と思える程の銀羽の一枚一枚がレールガンに迫ろうかという威力を持ち、放たれる魔法は全て限りなく最上級に近いレベルである。よく見れば、ノイントの体全体が銀色の魔力で覆われており、感じる威圧感が跳ね上がっていた。まるで、ハジメや光輝が使う〝限界突破〟のような姿だ。

 

「──ッ(限界突破かっ)!」

 

その圧倒的な物量からなる怒涛の攻撃に息を呑みながら、ハジメは右手にメツェライを、左手にシュラーゲンを持って応戦する。メツェライが咆哮を上げ、毎分一万二千発の破壊を撒き散らして銀羽と魔法を相殺し、シュラーゲンが射線上の全てを打ち砕いて直進しノイントを狙うが……

 

「聖剣──〝神威〟の発動を執行」

 

「なっ?!」

 

ノイントの指示で二つの聖剣が輝き出すと光輝が発動するより高い威力と思われる二つの極大の大きさの〝神威〟がハジメへと迫る。

 

「……っ!───〝雷壁〟!」

 

ハジメは咄嗟に雷の壁を展開して紅の雷の壁を形成させて、二つの神威から紙一重で回避すると、すぐにシュラーゲンで紅い砲撃を放つ。しかし、銀光を纏うノイントの動きもまた、先程までとは比べ物にならなかった。シュラーゲンの紅い砲撃が確かにノイントを撃ち抜いたと思われた瞬間、彼女の姿は霞のように消え去り、数メートルも離れた場所に現れたのだ。

 

自らが放つ弾幕を追い越す勢いで進撃するノイントの姿は、余りの速度に残像が発生し、常にその姿を二重三重にブレさせる。

 

ハジメが〝先読〟で配置したクロスビットから炸裂スラッグ弾を放つが、やはり撃ち抜くのは残像のみ。フッと姿を消したノイントは、次の瞬間にはズザザザザーと残像を引き連れてハジメの背後に回り込んでいた。そして、独楽のようにクルクルと物凄い勢いで回転しながら遠心力をたっぷり乗せた双大剣を振るった。

 

「ッ!?」

 

ノイントの最後の動きは、ハジメの〝瞬光〟状態での知覚能力をも上回り、完全な不意打ちとなった。辛うじて身を仰け反らせ直撃を避けたものの、咄嗟に盾にしたシュラーゲンを真っ二つに両断されてしまう。内蔵されたエネルギーが暴発し、ハジメとノイントの間で大爆発が起こった。

 

「ぐっ!……〝紅狼ォ〟!」

 

それが、ほんの一瞬ではあるがノイントの追撃を遅らせる。ハジメが反撃に出るための時間としてはそれで十分だった。ハジメの全身から紅色の魔力が噴き上がり、紅いスパークが体を覆っていく。〝限界突破〟と〝紅狼〟だ。

 

踏み込んできたノイントに対して、ハジメもまた一歩を踏み込む。その手には既にメツェライはなく、代わりにドンナー・シュラークが握られていた。そこからは超接近戦だ。

 

「つぁああッ!!」

 

「はぁああッ!!」

 

一之大剣による唐竹の斬撃を半身になってかわしたハジメに、絶妙なタイミングで弐之大剣が胴を狙って横薙ぎに振るわれ、ノイントに追従する二つの聖剣がハジメの肩を狙って飛び回る。

 

「チマチマ狙って、うぜぇんだよっ!」

 

バリバリバリッ!

 

「なっ、聖剣をっ?!」

 

ハジメは、その一撃をシュラークの銃身でカチ上げながらレールガンの一撃を剣の腹に当てて上方に弾き飛ばし、右のドンナーでノイントの心臓を狙った。撃ち放たれた紅の閃光を、残像を残しながら回転することでかわしたノイントは、その勢いのまま一之大剣を下方より跳ね上げ、自分の魔力を一時的に上げ、体に纏う紅いスパークで二つの聖剣を弾いて軌道を逸らすとノイントから驚愕の声を上げる。

 

ハジメはその隙にシュラークに〝金剛〟の〝集中強化〟を大剣の刃が当たるほんの僅かな場所に通常時の数倍の密度でかけて分解に対抗し、大剣の勢いに逆らわずシュラークを跳ね上げて、その軌道だけを逸らすもノイントは一つの聖剣を聖槍に形状変化させておりハジメの胴を狙って撃ち放つ。

 

「っらあ!」

 

しかし、ハジメは咄嗟に全身を動かして身体を逸らし、スパークが纏った足に〝金剛〟の〝集中強化〟を纏わせて蹴り上げる。そして、水平に切り込んできた弐之大剣も、同じく〝金剛〟の超〝集中強化〟をかけて銃口で刃を受けて、そのまま発砲する。炸裂音と共に放たれた閃光が弐之大剣を弾き飛ばし、また、飛び回る聖剣から〝神威〟が飛ばされるも〝雷華〟で〝神威〟を相殺する。

 

互いに至近距離で、相手の武器、魔法をかわし、逸らし、弾きながら致命の一撃を与えんと呼吸も忘れて攻撃を繰り出し続ける。

 

「おぉおおおおおおおっ!!!」

 

「はぁあああああああっ!!!」

 

ハジメとノイントは何時しか互いに雄叫びを上げていた。

 

筋一本、神経一筋、扱いを間違えただけで、次の瞬間には死が確定する。互いの攻撃を判断する時間などあるわけもなく、ただ本能と経験だけを頼りに神速の剣撃と銃撃が互いの命を僅かでも削り取ろうと飛び交った。

 

銀色の剣線と聖武器が夜の闇に幾条もの軌跡を残し、紅の閃光が血飛沫のように四方八方へと飛び散る。銀と紅に輝く二人を太陽に例えるなら、二人が放つ攻撃の嵐はさながらフレアだろう。一秒、一手を掻い潜り互いが生き残る度に、際限なく速度は上がっていく。

 

比例して、僅かにヒットする攻撃が互いを血染めに変えていった。ハジメはいたるところを浅く切り裂かれ、ノイントは抉るように穿たれた箇所から血を滴らせる。

 

ハジメとノイントの技量は互角。このまま、永遠に続くかと思われた攻防だが、実際に追い詰められているのはハジメの方だった。

 

「ハァハァ……クハッ(アレスからは聞いてはいたが、本当に無限(・・)なんだな魔力……)」

 

ハジメはアレスから神の使徒の話を聞いており、言うまでもなく、〝限界突破〟は制限時間付きだ。それを過ぎれば強制的に解除され、しばらくの間弱体化を余儀なくされる。魔力が膨大であるハジメとは言え、いつまでも発動し続けられる訳ではなく、それに対してノイント達神の使徒達の場合、どうやら何処からか魔力の供給を常に受けているようで実質無制限に強化状態を維持できるらしい。ハジメの魔眼石には、やたらと強く輝き、全く衰える様子のない魔石に似た何かがノイントの心臓部分にあるのを捉えていた。

 

「勝負にかけるか……吹き飛べやがれっ!!」

 

ドドドドドドッ!!!!

 

このままだとジリ貧で負けると察してハジメは雄叫びと同時に、クロスビットから自分自身をも巻き込む最大威力の炸裂スラッグ弾が一斉に掃射された。

 

「血迷いましたかっ」

 

ノイントの無機質な瞳が、僅かに見開かれる。その瞳には、ハジメの正気を疑う色が宿っていた。

 

六機のクロスビットから一瞬で数十発の炸裂スラッグ弾を放たれ、ハジメとノイントを中心に無数の波紋を作った。咄嗟に、ノイントは銀翼で体を包み、ハジメも〝金剛〟を最大出力で発動する。

 

ズドォオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!!!

 

直後、夜天に紅の光華が満開に咲き乱れた。絶大な威力の衝撃波が、問答無用にハジメとノイントを吹き飛ばす。

 

凄まじい衝撃は、〝金剛〟を貫いてハジメの肉体にも軽くないダメージを与えた。その証拠にハジメが盛大に血飛沫を撒き散らす。見た目は満身創痍だ。対するノイントも全く無傷とはいかず、銀翼と聖盾の防御が完全には間に合わなかったようで傷口から更に血を吹き出しながら、僅かに吐血した。どうやら内臓にも衝撃が通ったようだ。

 

「……心中でもする気ですか?」

 

「ハァハァ……お前と心中? ハッ、冗談がキツい。そんなセリフは、俺の恋人達くらいいい女になってから言え」

 

無茶な攻撃に、思わず自棄でも起こしたのかと疑いの眼差しを送るノイントに、ハジメは荒い息を吐きながら軽口で返す。お前ごときが誰かと最後を共に出来ると思うなという嘲笑混じりで。

 

ハジメは、〝宝物庫〟から新たな武器を手元に取り出した。そして、トランプでも飛ばすようにスナップを効かせて高速でそれを投擲する。音もなく、そこに有るはずなのに意識しないと直ぐに見失ってしまいそうなそれを、しかし、ノイントは何でもないように聖盾から形状変化した聖剣で弾き飛ばした。

 

カキンッ! カキンッ!と硬質な音を立てて弾かれ、空中をくるくると回るそれは、直径十五センチ程のドーナツ型の円盤――俗に言う円月輪、あるいはチャクラムと呼ばれる投擲武器だった。

 

「今さら、このような。万策尽きましッ!?」

 

「いや……全然」

 

ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ!

 

原始的な武器に、ノイントが唯の悪足掻きかとより冷めた眼差しをハジメに向けた瞬間、ハジメが喋りながら自分の左右に向かってレールガンを連射した。

 

その直後、その紅き閃光はハジメと向かい合うノイントの左右から出現し、彼女の頭部を粉砕せんと強襲した。

 

「……っ?!───〝聖盾〟!」

 

ノイントが、有り得ない事態に思わず言葉を詰まらせ、咄嗟に形状変化させた聖盾を両サイドに掲げる。ドンナー・シュラークから吐き出された合計十二発の弾丸は全て炸裂弾。そして最初と同じくピンポイント射撃だ。

 

なぜ、全く明後日の方向に撃った弾丸が、ノイントを挟撃したのか。

 

それは、先程、ハジメが投擲した円月輪が原因である。この円月輪、〝気配遮断〟と〝風爪〟〝轟雷〟を生成魔法で付与した鉱石で作成されており、極めて隠密性と殺傷性の高い投擲武器なのだが、それ以上に、特殊な効果をもったアーティファクトなのだ。

 

それは、ゲート機能である。つまり、円月輪の真ん中に空いた穴は、他の円月輪と空間的に繋がっており、そこに弾丸を撃ち込めば、空間を跳び超えて別の円月輪の穴から弾丸が飛び出すのである。もちろん、クロスビットと同様に感応石で自在に動かす事も出来る。

 

頭部の位置、聖杭の位置、ノイントの反応速度など全てが計算されて空間を飛び越えた炸裂弾は、全弾、寸分のずれもなく狙った場所に着弾し、凄まじい衝撃を迸らせた。

 

次の瞬間、

 

バキンッ!!

 

バキンッ!!

 

そんな音を響かせて、ノイントの〝ネームド〟の専用武器である聖杭が破壊されたのだ。

 

「なぁっ! 我が母の聖杭がっ!この程度で、なぜっ……」

 

感情がないと言っていたにも関わらず、随分と驚きをあらわにするノイント。

 

「流石に不壊性じゃなくて安心したぜ」

 

彼女は気が付いていなかったのだろう。ハジメは、最初のピンポント射撃のあと、ずっと、あの近接戦闘の最中でさえ、アレスから聞いていた双大剣より厄介である〝聖杭〟を狙い、ノイント本人よりも聖杭に入った亀裂を狙って衝撃を与え続けていたということを。実力が拮抗しているからこそ、武器破壊によって出来るであろう一瞬の隙を狙っていたということを。

 

ハジメは、確かにできたノイントの隙を逃さず、新たなアーティファクトを〝宝物庫〟から取り出し、それを連続して投擲した。高速で投擲された十の影をノイントは隙を突かれたがために回避する事も出来ず、咄嗟に、双大剣で振り払おうとする。

 

しかし、このアーティファクトにそれは悪手だった。投擲されたそれは、両サイドに丸い鉱石の重りが付いたワイヤーだった。

 

俗に言うボーラと呼ばれる捕獲道具ないし投擲武器だ。通常は、回転させて遠心力をたっぷり乗せてから放つものだが、感応石内蔵なので、即投擲しても十分な速度を出せる。そして、当然、ハジメの作り出したものが唯のボーラなわけがなく……

 

「ッ! これはっ、動けない!?」

 

ノイントの双大剣の柄、両腕、腰、両足に絡みついたボーラは、その両サイドに付いた球状の鉱石から波紋を出しながら空中に留まった。それは、生成魔法により空間魔法が付与された効果だ。二つの錘が空間そのものに固定され、捕縛対象も合わせて固定してしまうのである。

 

もっとも、ノイントには分解能力があるので、如何に空間そのものに固定するという反則じみた効果を持っていたとしても十秒も持たないだろう。しかも、銀翼自体は、拘束されても魔法の構成を解いて再展開すればいいだけなので実質拘束は不可能だ。今まで通りの接近をしても銀翼が拘束を解くまでの時間をあっさり稼いでしまうだろう。

 

だが、その数十秒を稼ぐことがハジメの狙いだ。一撃必殺――この僅かな時間に最大最強の一発を放つのだ!

 

ハジメは紅いスパークを更に激しくバリバリバリッとスパークを纏わせながら〝宝物庫〟から一本の漆黒の大槍を取り出す。そして、一気に神速と言えるくらいの速さでノイントへと突っ込んでいく。

 

「くっ」

 

苦さを含んだ声を漏らしたノイントは、銀翼を大きく広げ自らを繭のように包み込む。分解能力を秘めた銀色の魔力が燦然と輝き、まるでもう一つの月のようだ。

 

ハジメは、そんな美しさすら感じる障壁に凄まじい程の衝撃共に大槍を突き刺そうとする。大槍はハジメの紅いスパークを取り込み、紅い雷が纏い出していく。

 

「耐えられるものなら耐えてみなっ!」

 

ハジメの口元が不敵に吊り上り、瞳が殺意にギラつく。〝限界突破〟と〝紅狼〟によって紅き魔力は益々輝きを増す。銀月を紅月に染め上げていく。

 

「〝神喰雷槍(カミグライ)〟──起動!」

 

直後、大槍から不可視の衝撃が迸った。それは、槍の先端に空間振動を起こす機能だ。空間魔法〝震天〟の簡易版であるそれは、対象に激烈な振動を与え、その結合を――耐久力を著しく弱らせる。

 

そして、重力魔法によりインパクトの瞬間、その重さを二十トンにまで増加させる漆黒の大槍が、雷霆の如き轟音と共に解き放たれた。

 

ドゴォオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!

 

ハジメの傑作であるアザンチウム製の大槍は、ゼロ距離で獲物を穿ち破壊する。

 

紅いスパークを放つ漆黒の大槍は、重ねられた銀翼二枚と双大剣をあっさり貫き、その奥にあるノイントの心臓部分を貫通して尚止まらず、背中から抜けて片翼を根元から吹き飛ばした。そして、流星の如く紅色の尾を引きながら漆黒の大槍が夜空の彼方へと飛んでいってしまった……。

 

「──」

 

「ふぅ……」

 

ハジメとノイントの戦いの後に残ったのは、魔力供給源であった場所に文字通り風穴を空けられたノイントの姿。〝轟雷〟により傷口を焼かれたためか血が噴き出すことはなく、ただポッカリと胸に穴を空けている姿は人間味を感じさせない。空気に溶け込むように霧散していく銀翼の中から覗く瞳は相変わらず機械的な冷たさをたたえたままだった。

 

ただ、それでも、どことなく恨めしそうな雰囲気が混じっているように思えたのはハジメの気のせいか……

 

そんなノイントの眼差しも、直ぐに光を失い虚ろとなり、グラリと体を傾けるとそのまま教会の建築物が密集する場所から少し離れた山腹に落下していった。黒ずんだ山肌に、ノイントの銀がやけに映えていた。

 

ビュゥゥゥゥウン!

 

「おっ、返ってきたな」

 

ハジメはノイントの死体を空から確認してると彼方へと飛んだ大槍が戻ってきたので、ホッとした表情で大槍を手にしながら眺めた。

 

「実戦使用は初めてだったが、流石の威力だな」

 

ハジメは手に持つ大槍の自己評価してから〝宝物庫〟に戻すと、ノイントの死体の確認に戻った。

 

「魔眼石と感知能力で死んだと示してるか……」

 

ハジメは、その傍らに降り立つと、開きっているノイントの目を手を使って閉ざした。

 

「敵だったが、埋葬ぐらいはさせてくれ……」

 

ハジメが、人一人入る程の穴を錬成で作っていざ、ノイントの死体を持ち上げて埋葬しようとした、その瞬間……

 

ズドォオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!

 

「なんだっ?!」

 

聞こえた感じだと大地を激震させる程の爆発音は【神山】から聞こえ、驚きの声を上げながら何事かと振り返ったハジメの目に映った光景は……巨大なキノコ雲と轟音を立てながら崩壊していく大聖堂を含む聖教教会そのものだった。

 

「……うそん」

 

思わず漏れたハジメの呟きが、やけに明瞭に木霊していたのだった……。

 




ハジメの新アーティファクト

神喰雷槍《ゴッドフィスト・ドンナースピアー》…正式名称が長い為、ハジメが使う際は「神喰《カミグライ》」と呼称している。体長二メートルを超える大槍でアザンチウム製。生成魔法で空間魔法の〝震天〟、重力魔法の〝禍天〟など合わせて創り出した雷系魔法などを吸収する鉱石・〝雷吸石〟、そして重さを変える為の重力魔法、投げて戻ってくるように〝感応石〟などで出来ている。
威力はハジメが使う魔法の「雷霆《ケラウノス》」(フルチャージ状態の場合)を一点に集中した威力を出せる。
この槍は、メルジーネ海底遺跡を攻略した後、ハジメがクリオネや今後の強敵対策の為、円月輪とボーラーと共に作成した。作成期間が随分長引いてしまったがハジメにとっての自慢の力作の一つでる。

槍のイメージはFateのランサーのカルナが宝具の際に使う槍をカラー全体を漆黒にして紅いスパークが放出している感じをイメージしてください( *°∀°* )

編集しました。十二月六日


愛子はハーレムに入れるか入れないか

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