Rest In Peace   作:砂糖ノ塊

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新章開幕です。


悪魔の行進編
11:聖なる光と悪魔の行進


「いい? よく見てなさいよ?」

 

 僕を含めたクローバーさんや教会の子供たちが、息を飲んでパキラちゃんを見守る。

 

「〖天使の回転式拳銃(エンジェリックリボルバー)〗!」

 

 空中に放り投げられたのは一個の真っ赤なリンゴ。

 

 それに照準を合わせ、パキラちゃんは拳銃の引き金を引いた。

 

 銃声とともに光り輝く弾丸が銃口から発射され、寸分狂わずリンゴの真ん中を撃ち抜いた。

 

「まだまだ!!」

 

 流れるように左手に持ち替え、続けざまに二発。

 

 二発とも一発目に空いた穴に通す、とてつもない正確性。

 

「まっ、ざっとこんなもんね」

「おぉ……!」

 

 穴の空いたリンゴをキャッチし、こちらへ自慢げに掲げる。

 

「な! パキラねぇちゃんかっけぇだろ!?」

「はい! カッコイイです!」

「当然、姉さんだから」

 

 どうやら子供たちはもれなく全員パキラちゃんのファンのようで、皆目を輝かせていた。

 

 かくゆう僕もその一人である。

 

「でも、一体どうなってるんですか? 普通リンゴを拳銃で撃ち抜いたら、こうバーンって弾け飛ぶ気がするんですけど」

 

 パキラちゃんの手にあるリンゴは真ん中に綺麗な空洞ができている以外は、元のリンゴと何ら変わらない。

 

「それはアタシの加護の力のおかげかもね」

「パキラちゃんの加護の力は確か……銃弾に光の力を乗せて放つ、でしたっけ?」

「赤頭巾から聞いたのね。まぁそれで大体は合ってるわ」

「あの城壁で七匹目の鳥の悪魔を撃ったのって……」

「え? あぁ、〘天泪(ヘブンズクライ)〙のことね」

 

 パキラちゃんは持っていた白い拳銃から銀色に光る銃弾を取り出した。

 

「〘天使の回転式拳銃(エンジェリックリボルバー)〙ってのは、この銀製の弾丸の威力と速度を加護の力で底上げするものなの」

 

「でも〘天泪(ヘブンズクライ)〙は銀の弾丸を必要としない。100%加護の力だけで作った光の弾丸を放つ」

 

「威力も段違いだけどその代わりに生命力の消費が多いの。気軽にバンバン撃てるようなものじゃないわ」

「へー!」

 

 なるほど、レフさんの言っていたようにあの技はパキラちゃんの『奥の手』のようだ。

 

「他にももう一つ技があってね」

 

 するとパキラちゃんの黄色の瞳が光を持ち始めた。

 

「〖天眼(キューピットアイズ)〗。悪魔の位置や核の場所が分かるの。まぁこれも結構生命力使うからだいぶ疲れるんだけどねぇ……」

「パキラちゃん、その"生命力"ってなんですか?」

「そういえばアンタ、加護の力について何にも知らないのね……せっかくだしアタシが軽く教えてあげる!」

「本当ですか!?」

 

 実はものすごく気になっていた。それが今やっと分かる……!

 

「と言っても加護の力については分からないことだらけらしいから、分かってない所も多いけど」

「構いません! 教えてください!」

「そんな目をキラキラさせちゃって…………あんまり期待されても困るのだけれど」

 

 そんな前置きを置いてからパキラちゃんは説明を始めた。

 

 

 

 

 

「まず、"加護の力"というのは名前の通り神から授かった聖なる光の力のことよ」

 

「銀製の武器と同じ、人間が悪魔を殺せる数少ない手段の一つ……だけど銀製の武器と違うところもあるわ」

 

「一つはその威力」

 

「銀製の武器とは段違いの火力で悪魔を屠れるのが加護の力の一つの利点ね」

 

「次に扱える人間が限られているところ」

 

「銀製の武器は使おうと思ったら誰でも使えるけど、加護の力は基本的にアタシたち聖職者、その中でも限られた人間にしか使えないわ」

 

「一つの教会で加護持ちが一人二人いれば、そこはいわゆる大教会ね。……うち(ブロッサム教会)は相当異常だけど」

 

「…………あぁ、そう。なんで聖職者にしか使えないのかってのが加護の力について分かってないことの一つよ」

 

「一度神父様に聞いたことがあったけど、"神への祈り"がどうとか……正直よく分かんなかったわ」

 

「そして最後に……力の代償」

 

「神の加護を使う、それは言い換えれば神から力を借りてるのよ」

 

「強い力にはそれ相応の対価が必要になる。神もタダで力を貸すほど心が広くないってことよね」

 

「でもそんなもんよ。『何かを欲するのなら、それと同等の何かを支払わなければならない』昔、神父様によく言われたわ」

 

「アタシたちは自分の生命力を代償に、悪魔を殺せるこの力を神から借りてるわけ」

 

「……もしも生命力を使い切ったらどうなるのかって?」

 

「すぐに死ぬ…………訳じゃないらしいわ」

 

「アタシたちだって生命力を使えば普通に疲れるけど、限界まで生命力を消費しきると体が全く動かなくなるらしいの。生命力は文字通り人間の命の源だから当然よね」

 

「もちろん加護の力も使えなくなる。……でも仮に、限界を超えて力を使い(支払い)続けると」

 

「病気になるんだって」

 

 

 

神へと至る病(ニルヴァーナ)

 

 

 

「神の力を使いすぎた人間は、やがて人間を超え、そして神になる」

 

 

 

 

 

「はい、これがアタシの知ってること全部よ。どう? 満足した?」

 

 ……思わず聞き入ってしまった。

 

「は、はい。ありがとうございました。とても分かりやすかったです」

「そっ、なら良かったわ」

 

 神から借りた加護の力。その取得方法は不明。悪魔への特攻を持つ代わりに、使いすぎると己の命そのものを削り、やがて神になる……

 

 『神になる』とはどういう事なのか、どうやらパキラちゃんにもよく分かっていないらしい。

 

「あの、一つ質問いいですか?」

「アタシに答えられることなら」

「加護の力を得るためには"神への祈り"が必要だって言ってましたけど、それは聖職者になって、祈れば誰でも力が手に入るってことですか?」

 

 もしそうなら僕にも……

 

「詳しいことは神父様に聞いてちょうだい。でもそうね……」

 

 少し考える素振りを見せた後、パキラちゃんは続けた。

 

「確か、三十年間毎日祈り続けても加護の力が得られない人もいれば、アタシやシスター・ガーデンみたいに若い頃から力を授かった人もいるって話よ」

「ガーデンさんもですか?」

「そうですよ」

 

 振り向くとガーデンさんが後ろに立っていた。

 

「あ、ガーデンさん。こんにちは」

「はい、こんにちは」

 

 気づくと誰かが後ろに立っている、という状況に慣れてしまった自分がいる。

 

「お庭の手入れ中ですか?」

「えぇ、そうですよ。後は加護の力を無闇に発砲する修道女(シスター)への説教……でしょうか?」

 

 ギラりとガーデンさんの目が光る。

 

 その視線の先にいるパキラちゃんは、顔から滝のような冷や汗を流しながらクローバーさんの背中に隠れていた。

 

「いや! パキラちゃんは僕に加護の力について説明してくれただけで!」

「知ってますよ。冗談です」

 

 全く目が笑ってないんですけど……

 

「しかし実際に使用するのは頂けませんね。貴方の〖天使の回転式拳銃(エンジェリックリボルバー)〗は実弾を消耗します。聖教会から支給されるとはいえ、銀の弾丸もタダじゃないんですよ」

「ごめんなさい……」

「実演なら私が引き受けましょう。グリフさんには一度見せたことがあるはずです」

 

 そう言うとガーデンさんの周囲から植物のツタが生えてきた。

 

 植物がまるで生きた動物のように動いている。これがガーデンさんの加護の力?

 

「植物を自在に操る。そんな人智を超えたことも加護の力なら可能です」

 

 ガーデンさんの声に反応するように、植物のツタから色とりどりの花が咲きみだれる。

 

「もしかして、この教会の庭も……」

 

 ここブロッサム教会は植物に囲まれた教会だ。

 

 入口(エントランス)を抜け、大聖堂へと続く道の途中に広大な庭園が広がっている。僕たちが今いるのもそこである。

 

「全てが私の加護の力ではありません。入口にある花壇は子供たちが植えたものですよ」

 

 庭で思い思いに遊ぶ子供たちを、とても優しい目で見守るガーデンさん。

 

「それより何故加護の力について聞いたんですか? ……もしや我々の仕事に興味を持ったとか?」

「ただ単に僕が気になっただけですよ。僕、好奇心が抑えられない質みたいで……」

「ふーん? 何でもいいけど、あんまり余計なことに首を突っ込んで死なないようにね!」

 

 なんだろう……同じことをどこかの誰かさんに言われたような……

 

「パキラ、言い方というものがあるでしょう」

「本当のことです! それに……なーんか見てて危なっかしい気がするんだよねアンタ」

「え?」

「アタシの直感だけどさ。意外と当たるのよ」

 

 僕が危なっかしい……か。

 

「他にも質問があったら何でも聞いてください。ロゼの……シスター・スオンの友人は丁重にもてなさなければなりませんから」

「…………じゃあ」

 

 これを口に出すのは躊躇われたが、どうしても聞かずにはいられなかった。

 

「シスター・マリーゴールドって、誰なんですか?」

「っ……」

 

 パキラちゃんが「アンタ言ったそばから」という目で見ている。

 

「シスターが確かに言っていたんです。シスター・マリーゴールドは()()()に死んだと」

「もしかしたらシスターの感情が奪われたのに何か関係があるかもって……あと、僕の記憶が無いのも」

「アンタの記憶?」

 

 僕はクローバーさんとパキラちゃんとガーデンさんの三人に、僕が七年より昔の記憶を全て失っていること、僕とシスターが出会った経緯を軽く説明した。

 

「なるほど、そんなことが……」

「村人全員が悪魔憑きってだいぶヤバい状況だったわね。それを一人で殲滅するなんて流石はお姉様!」

「姉さん、そういうこと、じゃないと思う」

「そ、そうよね、ごめんなさい……」

「いいんですよ、シスターは確かに凄かったですし……悪魔に魂を殺された皆を、シスターは救ってくれました」

 

 そして僕も救ってくれた。

 

「辛い目に会いましたね」

「確かに悲しいことでしたけど、いつまでも泣いてばかりじゃいられませんから」

 

 だから僕はシスターと共にここまで来たんだ。

 

 僕がセルトグラヘに棄てられた理由を、僕が生まれてきた理由を、記憶の全てを、取り戻すために。

 

「なるほどねぇ……その時にお姉様には感情が無いって話を聞いたわけか……」

「グリフさん、シスター・スオンはその時に感情を失った経緯については説明したのですか?」

「『悪魔に奪われた』とだけ……」

「なら私たちも話す訳にはいきませんね」

「え……」

「あの子がぼかしたことを、私たちが勝手に話していいわけはないんですよ」

「そう……ですよね」

 

 僕は馬鹿か。他人の過去を詮索するなんて普通に考えれば駄目に決まっている。

 

 例えそれが僕の記憶を取り戻すために必要なことでも…………

 

「そのうちお姉様に教えてもらう機会もあるんじゃない? それを待つしかないでしょ」

「……はい、そうします」

 

 修道女(シスター)について、悪魔について、色々な知識を得てきたけどまだまだ知らないことも多い。

 

 かと言って別に焦る必要はない。これからもっと色んなことを知っていけばいいんだ。

 

「パキラ、これを」

 

 話も一段落ついたところで、ガーデンさんは持っていたものをパキラちゃんに渡した。

 

「パキラちゃんそれは……弾丸ですか?」

「ただの弾丸じゃなくて悪魔を殺せる銀の弾丸よ。聖教会からの特注なんだから!」

「それが分かっているのなら今後は無闇に発砲しないように」

「はーい」

 

 受け取った銀の弾丸を慣れた手つきで銃に込めていく。

 

「銃弾ってそうやって交換したりするんですね」

「みたいね。アタシのは神父様が作ったから普通のは分からないけど」

「へー神父様が作ってええええ!!!???」

「きゅ、急に大声出さないでちょうだい! ビックリするでしょ!」

 

 神父様が手作り……!? というか拳銃ってまず作れるの!?

 

「確かにイメージとは少し違うかもしれないですね」

「少しじゃないですよ!」

「グリフ、落ち着いて」

 

 そっと肩にクローバーさんの手が添えられる。

 

「えっと……それじゃ神父様は、神父だけじゃなくて鍛冶屋みたいなことも出来るんですか?」

「神父様は、趣味、って言ってた」

「趣味!?」

 

 趣味で銃作っちゃうのあの人!?

 

「なんか昔友達から教えてもらったらしいわ」

「それ、どんな友達なんですか……」

「さぁ? 神父様は謎が多いから。シスター・ガーデンなら何か知ってますか?」

「そういえば、シスター・ガーデンは、神父様と古くからの付き合いだって、聞いたことが、ある」

「…………えぇ、確かに彼は器用でした」

「「……?」」

 

 一瞬、ガーデンさんの目が教会の子供たちを見る時と同じようなものになった気がした。

 

「それよりパキラ、奥の聖堂でロザリオとレフが待っていますよ」

「赤頭巾がぁあ???」

「うわすごい顔」

 

 本当にレフさんが嫌いなんだな……というか、二人は何でここまで仲が悪いんだ?

 

「そうですか……ロゼがパキラを呼んだ方がいいと言っていたのですが、嫌なら仕方ないですね」

「聖堂ですね! すぐに行きます!!」

 

 土煙と「お姉様」とギリギリ聞き取れる奇声をを上げながらパキラちゃんは走り去っていった。

 

 本当にシスターが大好きなんだな……二人が仲がいい理由もあるのだろうか?

 

「行っちゃいましたね」

「まったくあの子は……単純すぎると言うかなんと言うか」

「それが、姉さんの、いいところ」

「お姉様大好き度なら貴方もパキラに負けてはいませんよ」

「あはは……」

 

 さっきの話でのガーデンさんの違和感、上手く流されちゃったな。

 

 それについても別に焦る必要はない、か……

 

「っ!」

「ガーデンさん? どうかしましたか?」

 

 ガーデンさんの纏う空気が一気に張りつめたものへと変わる。

 

「何かがこちらへ向かってきます。クローバー、子供たちを連れて聖堂へと避難を」

「分かった」

「ガーデンさん、その何かって……」

「少なくとも人では無いようです」

「グリフ、行くよ」

「は、はい!」

 

 クローバーさんと一緒に、外に出ていた子供たちを聖堂へと避難させる。

 

 こっちに向かってる、しかも人じゃない何かって……

 

「ちょっと! 何の騒ぎ!?」

「どうやら外で何かあったみたいだね」

「おいグリ坊、説明しろ!」

「僕にも分かんないですよ!」

 

 聖堂の中にはガーデンさんを除く、教会の全ての人が集まっていた。

 

「私達も行きましょう」

「ちょ、お姉様!?」

「しゃあねぇ……オレらも行くぞ!」

 

 シスターに続いてレフさんとパキラちゃんが外へ出ていく。

 

「ぼ、僕も……」

「待った」

「うぐっ」

 

 僕も皆に続こうとしたが、やはり神父様に止められてしまった。

 

 当たり前だ。皆と違って力の無い僕が行っても足でまt

 

「僕も一緒に連れていきたまえよ」

「……え?」

 

 

 

 

 

 なぜか神父様の手を引いて中庭へと駆けていく。

 

 中庭では先に向かった四人と知らない人が対峙していた。

 

 いや、知らない"人"と呼ぶべきではないだろう。

 

 僕の知る限り、羽の生えた人間なんてものはこの世に存在しない。

 

「あ……れは……」

「見ての通り悪魔さ」

 

 その異形を見慣れているからか、何食わぬ顔で平然と言ってのける。

 

「ギャヒャヒャヒャア!!! 愚カナ人間ドモォ!! コレカラ言ウコトヲ!! 一語一句漏ラサズ聞キヤガレェ!!!!!」

 

 爆音で叫び散らす悪魔に、僕を含めたこの場にいる全員が不快感を覚えた。

 

「……るっせぇな、ぶっ殺すぞ」

「ねぇシスター・ガーデン、こいつ撃っていいですよね?」

「待ちなさい。彼はどうやらただの伝達係のようです。情報を全て吐くまでは殺してはいけません」

「どうやらブルーティカス中に同じような悪魔が出現しているようですね」

 

 教会の外からも、悪魔の不快な叫び声と街の人々の叫び声が混じった声が聞こえる。

 

「ワレラガ主ハ! ココ二『悪魔の行進(スタンピード)』ヲ宣言サレタ!!」

 

「ワレワレハ今ヨリ二時間後!! コノ街ヘト進行スルッ!!」

 

「恐レ! 逃ゲ惑イ! 蹂躙サレヨ!!!」

 

「ソシテ覚エテオクガイイ!! 貴様ラ人間ドモヲ踏ミ潰ス、コノ偉大ナ名ヲ!!!」

 

「魔帝ヘルズゲート!!! ソレガ──」

 

 ヘルズゲート。

 

 聞き覚えがある名前をその悪魔が発した瞬間、悪魔の身体に無数の穴が空いた。

 

「〖天使の回転式拳銃(エンジェリックリボルバー)〗」

 

 全身空洞だらけになった悪魔は、黒い灰となって空中に消えていった。

 

「ヘルズゲート……」

 

 あの悪魔は確かにそう言った。

 

 その名前を聞いただけで、身体の芯から震え上がってしまう。

 

 あの白髪の悪魔。

 

 恐怖の塊と言うべき存在。

 

『俺の名はフィア・ヘルズゲート。俺の存在は恐怖によって確立される』

 

 まさかあの悪魔が……

 

「さて! 面倒くさいお客さんも来るみたいだし、僕らは僕らでおもてなしの準備をしようか!」

「そうですね」

「相手の戦力も聞いておきたかったのですが……パキラ、貴方という子は……」

「ごめんなさい……シスター・ガーデン」

「ハッ、テメェは後先考えねぇならいつまで経ってもアホ天使なんだよ」

「眉間に穴ぶち空けて欲しいのかしら?」

「あ、あの!」

 

 いつも通りといった様子で聖堂へ戻ろうとする皆を呼び止めた。

 

「さっきの悪魔、『ヘルズゲート』って言ってましたよね……?」

「うん、言ってたね。それがどうかした?」

「その悪魔、僕たち知ってるんです! ブルーティカスに来る直前に僕たちを襲った悪魔で!」

 

 もしシスターにもレフさんにも倒せなかったあの悪魔がやって来たら……

 

「あぁ、なんだそういう事か」

「え?」

「安心するといいグリフくん、今やって来たのは君たち三人が出会った悪魔の使いなんかじゃないよ」

 

 あの白髪のフィア・ヘルズゲートじゃない……?

 

「完全なる偽物さ」

「に、偽物?」

「うん、偽物」

「偽物です」

「偽物よね」

「偽物だな」

 

 皆が僕の方を見て頷く。

 

「もし奴らが本物のヘルズゲートの軍勢なら、あんな馬鹿げた宣戦布告なんかしてこないさ」

「ハッキリ言って茶番でしたね。パキラが早々に切り上げようとするくらいの」

「ごめんなさい……ついイライラして……」

 

 気まずそうに顔を伏せるパキラちゃん。慰めるシスターにも尋ねてみた。

 

「シスターも気づいてたんですか?」

「はい。なんとなくですが」

「あの胸糞悪い気配も近くにないみたいだしな。あんなもんが来たらすぐに分かるぜ」

 

 自嘲と恐怖が混ざったような複雑な顔でレフさんが笑う。

 

「ブルーティカスに攻め込むって言ったその悪魔が、どうして『ヘルズゲート』なんて名前を名乗っているかは知らないけど、僕たちを舐めてかかるのは賢い行いとは言えないね」

「ブロッサム教会に対して戦いを挑むのならなら、一匹残らず全力で灰にしてあげましょう」

 

 いつものレフさんの笑顔と同じ、不敵な笑みを浮かべる神父様とガーデンさん。

 

 ……悪魔より恐ろしい神父と修道女(シスター)だ。

 

「とりあえずは作戦会議をしようか。この街全土に悪魔が進行するとなると市民にも被害が及ぶだろうね」

「教会を開放しましょう。クローバーと加護の力を持っていない一般の修道女(シスター)で怪我人の治療を」

「そうしようか。じゃあパキラ、皆を聖堂に集めてくれ」

「了解しました」

「レフィリアちゃん。悪いけど悪魔退治に付き合ってくれるかい? 報酬は出すよ。……国が

「悪魔をぶっ殺すのがオレの仕事だ。それにちょうどあの白髪野郎にやられてムシャクシャしてたとこだぜ。協力してやるよ」

「そいつは頼もしい! それじゃあレフィリアちゃんも準備してくれ」

「だからその名前……っあぁもういい! 好きに呼びやがれクソ神父!!」

 

 そんな捨て台詞を残してレフさんは聖堂の中へと消えていった。




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