〜【商業都市ホリー】〜
レフさんの案内で森を抜け、商業都市ホリーへとたどり着いた僕とシスター。
「着いたぜ。ここがオレのギルドだ」
「大きいですね」
「はぁ…………」
「どうしたグリ坊、元気ねぇじゃねぇか」
「だって僕の荷物が…………というか何ですかその"グリ坊"って?」
「テメェの名前だよ」
「僕の名前はグリフです!」
「どっちも変わんねぇだろ」
……これがレフさん流のコミュニケーションの取り方なのだろうか。
「それにしても……この街には人がたくさんいますねシスター」
「そうですね」
「僕のいたセルトグラヘとは比べ物になりませんよ!」
「この街は商業都市ですから、人の通りも多くて活気があります」
周りを見渡せば、村じゃ見たことないようなお店が多く並んで、そこを更に多くの人々が行き来している。
そして何より目を引くのが街の中心にそびえ立つこの建物。
レフさんが言うには
「シスター、
「名前の通り、悪魔を祓うことを生業とする人間たちのことです」
「……?
「いや、
「基本的に悪魔ってのは不死身の化け物だ。普通の武器じゃ絶対殺せねぇ」
「不死身の悪魔を殺せる力、それが
シスターが呼び出していた、あの黒い骸骨のことか……
「"加護"ってのは悪魔が使う"魔法"みたいなもんだな。でもオレたち
「え? でも
「あぁ。だからオレたちはコレで悪魔をぶっ殺すんだよ」
そう言って、レフさんは銀の斧を自慢気に僕の目の前に差し出した。
「悪魔の弱点は"神の加護"ともう一つ、それが銀だ」
「彼女たち
「普通の武器じゃ刺そうが切ろうが奴らは殺せねぇ」
レフさんが斧を振り回す。危ない。
「けどコレで殺せば奴らは死ぬ。まぁ上級の悪魔とかになると核をぶっ壊さなきゃ死なねぇけどな」
「核……あの森にいた悪魔が持ってたっていうやつですか?」
「そうです」
「そういえば僕、悪魔について全然知らないんですけど……」
「おい、さっさと入るぞ!」
「え!」
「知りてぇなら中で話してやるよ!」
レフさんに腕を引っ張られ、僕とシスターはギルドの中へと足を踏み入れた。
「
「ちょ、引っ張らないでください!」
「骨女の説明で基本的には間違いねぇよ」
「そんでもってようこそ! オレたちのギルド、『
鼻をツンとさすお酒の匂い、いかにも屈強そうな人たちの豪快な笑い声、そして人々の活気に溢れた空間。
ここが……
「歓迎するぜ? グリ坊、骨女」
〜【
「『赤頭巾』! どうよ調子は?」
「まぁまぁだな」
「お、『赤頭巾』そっちのチビとべっぴんの姉ちゃんはなんだ?」
「オレの客だよ、テメェら手出すんじゃねぇぞ!」
「ガッハッハ!!」
自分よりも遥かに大きい男の人たちに、物怖じすることなく堂々と話しをしているレフさん。
「よぉ姉ちゃん、子連れかい?」
「いえ、グリフは私の子供ではありません」
「姉ちゃん中々にイイ体してんじゃねぇか……」
「ありがとうございます」
僕、というかシスターは既に怖そうな人たちに囲まれてます。
「おい! 手出すなつったろうが!」
「分かってるよ。この姉ちゃん
「あぁ、全くだ」
「……?」
まるで思い出したくないことを思い出したような苦々しい顔をして、なぜか男の人たちはシスターから距離を取った。
この人たちもレフさんと同じで、怖そうだけど悪い人じゃないのかな……?
「マスターはいるか? コイツらと会わせたい」
「マスターなら……」
「儂を呼んだか?」
野太い声が僕らの背後から聞こえた。
『マスター』と呼ばれたその人は、茶色い髪に、立派な髭を生やした、まるで熊のような大男だった。
「…………」
「…………」
あまりの大きさに僕もシスターも言葉を失う。
「よく帰ってきたなレフ」
「よおマスター。早速だがオレが受けた仕事なんだけどな……」
「何か問題でも起こったか?」
「『赤頭巾』が受けた仕事って言ったらよ、あの『迷いの森』の悪魔討伐だろ?」
「噂じゃ上級悪魔らしいぜ?」
「マジかよ! ……まさか仕留めそこねたのか?」
「バカ言うな! 返り血でフードが真っ赤になるまで悪魔をぶっ殺し続けたっていう、あの『赤頭巾』の異名をもつレフだぜ? 万が一にも有り得ねぇよ!」
『赤頭巾』というのはどうやらレフさんの通り名的なものらしい。
「倒したことには倒したんだけどよ、オレじゃなくてそこの骨女がやったんだ」
「ん……?」
鋭い眼光がこちらへ飛んできた。
「はじめまして。シスター・スオンと申します」
「こ、こんにちは! グリフです!」
「儂はこのギルドのマスターをやっているヴィルヘルムという者だ。ようこそ我らがギルドへ」
意外と言ったら失礼だけど、ヴィルヘルムさんは物腰柔らかく僕らに挨拶した。
「おい……あの姉ちゃんが上級の悪魔を殺ったのか……」
「何者だあの姉ちゃん……」
「だからまあ、今回の仕事の報酬はオレじゃなくてコイツらにやってくれよ」
「そうか…………だがレフ、そういうわけにもいかん」
「はぁ!? 何でだよマスター!」
「
「チッ……頭固ぇな」
「気持ちは分かる、が仕方ないことなのだ」
レフさん、悪魔にとどめを刺したのがシスターだから、シスターに自分の報酬をあげようとしてたのか……
やっぱりこの人はいい人だ。
「そういうことだ。すまないなお客人」
「私たちは元々報酬が目当てではありませんので」
「ならよ! コイツらに情報をやるってのはどうだ?」
「情報?」
「コイツら訳あって旅をしながら悪魔を狩ってるんだとよ。だからなんか情報くれ!」
「…………レフ、お前はもう少し丁寧な説明を心がけろ」
「あの……僕で良かったら説明します……けど……」
「頼む」
僕はレフさんに説明したのと同じ内容を、なるべく丁寧に説明した。
恐怖から口が回らず途中で何回か噛んだけど。
「……というわけで、僕たちはシスターから感情を奪った悪魔を探してるんです」
「なるほど。だからその悪魔についての情報が欲しいと……」
「マスター! 別にいいだろ? 情報くらいさ」
「情報というのもバカにならんぞ」
「……知ってるよ。言葉の綾ってやつだ」
身長的なこともあってか、一気にレフさんが子供っぽく見えてしまう。
「はぁ……やれやれ。まあいいだろう」
「悪魔についてはまだまだ解っていないことも多い。知っている限りの情報なら、こちらも教えることが出来る。……それでどうだ?」
「構いません。というよりこちらとしては願ったり叶ったりです」
……案外滞りなく話は進んだ。
「それで、お客人はどんな悪魔を追ってるんだ?」
「……実はよく分かっていません。なので最近起きた悪魔関連の妙な出来事などを教えてください」
「妙な出来事…………最近はやけに上級の悪魔が多く出現しているということくらいか」
「上級ですか」
「うむ。上級悪魔は個体数も少ないはずなのだがな……」
「しかもよ、その上級の悪魔も変なやつばっかで調子崩されちまうぜ」
「レフ、その"変"とは?」
「悪魔、とりわけ上級の奴らってのは基本的に調子乗ってるやつが多いんだよ」
ちょ、調子に乗ってる……?
「奴らは他の悪魔より力を持っている分より饒舌になるんだ。人間と同じさ」
ヴィルヘルムさんからの付け足しが入る。ありがたい。
「けど、オレたちがあの森で会った、木に憑いてた悪魔は一言も喋んなかったろ?」
「あ、確かに」
「それに上級なんてのは、他の生物に取り憑くなんてまどろっこしい真似はしないで自由気ままに行動するもんなんだよ」
「人なんかの肉体に憑かなくても、奴らには十分すぎる力がある」
「レフさん、その上級の悪魔ってなんですか?」
「悪魔ってのは、簡単に言えば核を持ってるか持ってないかでランクが分けられるんだよ」
「核がねぇ奴らは下級の悪魔。ほとんどの悪魔がこれに該当するな」
「コイツらは不死性があるつっても雑魚同然だ。"魔法"も使えねぇしぶっ殺しゃ死ぬ」
殺せば……それは死ぬんじゃないのか……?
「もちろん銀製の武器か
下級と違うってことは……
「……殺しても死なない?」
「核をぶっ壊さない限りは、だ。どんな強ぇ悪魔もそれをぶっ壊しゃ灰になって消える」
「"上級"なのに
「その代わり"魔法"が使えんだよ」
「魔法……シスターの使う"神の加護"っていう力とは違ったものなんですよね?」
「ああ、まぁそうだな……」
「その"神の加護"というのは"魔法"と何が違うんですか? そもそも"神の加護"って何なんですか? 悪魔が使う"魔法"ってあの森の悪魔が使っていたのの他にどんなのが──」
「ッだあ!!! いっぺんに聞きすぎだグリ坊!! それにオレは
「ご、ごめんなさいぃ!!」
怒らせちゃった……でも『知りたいなら教える』って言ったのはレフさんなのに……
「子供相手にそう怒鳴るなレフ」
「チッ!」
「すまないな少年。この子は悪魔狩りに関しては天才なんだが、少々性格に難があってな。根はいい子なんだ。許してやってくれ」
どうやらこの人はレフさんのことを深く理解しているみたいだ。
「レフ、お前は何を子供相手にムキになっているんだ……」
「…………クソが」
「二人はとても仲がいいみたいですね」
確かに、口の悪いレフさんが、この人相手にはほとんど言い返していない気がする。
「互いが互いをよく理解している、まるで親子のようです」
「親子……」
レフさんにとってヴィルヘルムさんは、僕にとっての…………
「…………羨ましいな」
……僕にも、あんな父親がいるのだろうか?
「中々鋭いじゃねぇか
「『赤頭巾』……レフはな、昔、家族を悪魔に殺されて身寄りがなくなったところをマスターが拾ってきたんだ。だからあいつにとってマスターは父親の代わりみたいなもんなんだよ」
「おい! 余計なこと喋んな!」
「へへっ、わりぃわりぃ」
全く悪びれていない様子のおじさんは、レフさんに睨まれていち早く退散していった。
「ったく……ここの連中は……」
「話が逸れてしまったな。ここ最近の異変だったか」
「はい、上級の悪魔の数が増加しているというところまで聞きました」
「そう。ここ最近、国のあちこちで上級の悪魔の出現が報告されている」
「本来上級の悪魔は個体数が少ないものだったが……ここ最近の個体数の増加は、はっきり言って異常だ」
そう言うヴィルヘルムさんの顔は、苦虫を噛み潰したようにとても深刻そうだった。
「それに上級の中でも高度な知能を持つ個体も増えている。一体何が起こっているのか見当もつかん」
「そうですか」
「……思ったのだが、お客人は
そっか……教会も悪魔を倒す組織なんだからそっちにも当然情報は入ってくるはず。
「……残念ですが、私は既に教会を破門されました」
「「破門……!?」」
「はい。色々あって破門になりました」
絶対『色々』だけで済ませちゃいけないと思うんだけど……
「参考までに聞きたいんだが、お客人はどこの教会にいたんだ?」
「ブルーティアスにあるブロッサム教会という──」
『ブロッサム教会』
その言葉がシスターの口から出た瞬間、あれだけ賑やかだったギルド中の空気が凍りついた。
「ブロッサム……だと…………?」
「はい。そうです」
「あ……ああ…………」
なんか他の人の様子が……
「あああああああああッ!!!!
「うわあああああああッ!!!!
「なさまそ25pjdajpm@!!!!
「え、え? え!?」
「…………?」
僕も、そしてシスターも、一体何が起きているのかさっぱり分からなかった。
今やこの空間は阿鼻叫喚の地獄絵図と化している。
「ヴィルヘルムさん、ブロッサム教会ってそんなに怖いところなんですか……?」
「いや……そうだな……まあ……」
明らかに動揺してる……!
「『悪魔神父』があああああ!!!」
「落ち着け!! 大丈夫だ!!」
「いやだあああ殺されるうううう!!!」
「『悪魔神父』?」
「ブロッサム教会のトップだよ。人間のくせに悪魔みてぇに強ぇからそう呼ばれてる……」
こころなしかレフさんの顔が引きつっている。
「……そんなに怖い人なんですかシスター?」
「いえ、そんな人ではないはずです。むしろ可愛い部類に入るかと」
悪魔の話をしていたときよりもよほど深刻そうな顔で、ヴィルヘルムさんが事情を説明してくれた。
「昔、うちの馬鹿共がブロッサムのとこ
「オレも流石にビビったぜ……この大所帯相手に剣一本で暴れまくりやがったからな……」
「おかげでギルドは全壊。死者こそ出なかったものの向こう側に片足突っ込んだ奴は何人もいる」
「ギルド真っ二つにしやがったしな」
「……思い出させないでくれ」
この人数とこの建物を真っ二つ……? ど……どんな人なんだ……というか人なのか? 『悪魔神父』というのは……
「想像もできません」
「だろうな。儂も奴とは古い付き合いだが、あれだけ怒り狂った姿を見るのは初めてだった……」
「ま、そういうわけで『ブロッサム教会』って名前を聞けば、うちの連中はこういうふうに、この世の終わりみたいビビり上がるってわけだ」
「ギルドにいた人間全員が問答無用で叩きのめされたからな……」
「その、『悪魔神父』さん一人にですか?」
「ああ……オレもこっぴどくやられた」
『悪魔神父』……その名の通り人間じゃなさそう……
「ところでお客人、君は"ローズ"という名前に聞き覚えはないか?」
「ローズ……って確か」
『
「……それは既に捨てた名前です」
「そうか……なら君はブルーティアスに向かうといい」
「なぜですか? 先程も言いましたが私は──」
「奴も君に会いたがっていた」
「これは儂の推測だが、奴は君の欲しい情報を持っている。行く価値はあるはずだ」
何となくだけれど……シスター、あまり行きたくなさそう……
「シスターどうしますか?」
「分かりました。ブルーティアスに行ってみます」
「それがいい」
ブルーティアス、ブロッサム教会、『悪魔神父』……当たり前だけど僕の知らないことがたくさん出てくる。
それに気になるのはシスターが感情を失ったのと、僕が記憶を失くしたこと、そしてレフさんの家族が悪魔に殺されたのが、すべて7年前だということ。
その辺りの謎も、ブルーティアスに行けば分かるのだろうか?
「レフ、お客人をブルーティアスまで案内してやりなさい」
「はぁ!? 何でオレが……」
「お前はブロッサム教会の人間と何度か顔を合わせているからな。それに彼らには"借り"があるのだろう?」
「…………チッ」
「まあ、無理にとは言わん。誰か他の人間を──」
「頼む『赤頭巾』!」
「俺たちまだ死にたくねぇよ!!」
必死の形相でレフさんに縋り付くギルドの方々。
「情けねぇなテメェら……グリ坊のがまだ根性あるぜ」
「あはは……」
ギルド人たちが余り怖くなくなっていくのに比例して、『悪魔神父』さんへの怖さがどんどん増えていく。
「しゃあねぇな、送ってってやるよ」
「ありがとうございます! よろしくおねがいします!」
「言っとくが、これで貸し借りはなしだからな」
レフさんが一緒に来てくれる……なんて心強いんだ!
「んじゃ、さっさと行くぞ。ブルーティアスまではこっから馬車で一日はかかる」
「結構遠いんですね」
「『悪魔神父』は走って半日だって話だ」
やっぱり人間じゃないよ『悪魔神父』!!
「じゃ、ちょっくらコイツら送ってくるわ」
「気をつけてな」
「おう」
「貴重な情報をありがとうございました」
「神父によろしく伝えておいてくれ」
──フ──リフ……
「グリフ」
「ん……んん……しすたー?」
「おはようございます」
心地よい馬車の揺れで目を覚ますと、僕の視界いっぱいにシスターの色白な顔が……
「近いですシスター!」
「そうでしょうか」
「もっと距離感を考えてください!!」
「朝っぱらから何やってんだテメェら……もうブルーティアスに着くぞ」
朝……そうか、だんだん思い出してきたぞ。
あの後僕らは馬車に乗って、それて僕は今の今まで寝ていたんだ。
「ってもう着くんですか!?」
「グリ坊、爆睡してやがったからな。ほら見てみろ」
レフさんが指さした先には、様々な建物が乱立する、セルトグラへとは比べ物にならないくらい大きい都市が広がっていた。
「おっきい……」
「そりゃあ王都だからな」
「王都!?」
「あ? 知らなかったのか」
「太陽に恵まれた国、サンナ王国の中心部、それが王都・ブルーティアスだ」
シスターって王都の教会の
「王都って……あの……その……王様とかがいたりするんですか!?」
「そりゃいるだろ」
「はわぁぁぁ……」
「ハハハ、いい驚きっぷりだね少年」
僕に話しかけてきたこの人は、ホリーの街から僕らをここまで送ってきてくれた馬車の御者のおじさんだ。
「あと数十分すればブルーティアスだ。楽しんでおいで」
「ありがとうございます!」
「観光じゃねぇっての」
「そ、そうでした……」
確か、そんな風に新しい街に心躍らせていたときだった。
「ん? なんだ?」
「どうかしました?」
「いや、あそこに人が……」
御者さんの言った通り馬車の進行方向に人が立っている。
たいして寒くもない……むしろ暖かい気候にも関わらず、真っ黒なマフラーとコートを羽織った白髪で長身の男。
「っとっと……おいどうした?」
突如、馬車を引っ張ってくれていた馬が進むのを止めてしまった。
「止まっちゃいましたね……」
「おかしいな……」
御者さんが馬にムチをいれるが、一向に動こうとしない。
「グリ坊……」
「レフさん?」
「下がっててください、グリフ」
レフさんに腕を引かれ、馬車の後方へと押し込まれる。
「おい骨女」
「分かってます」
二人とも、険しい顔で道に立っている男を見ている。
「骨女、顔色悪ぃぞ」
「すみません……何故か頭が…………」
「まぁいい。お前、アレが何か分かるか?」
「分かりません」
「だろうな。オレもだ」
「人……いや、悪魔でしょうか……」
「さぁ……どっちだろうな? さっぱり分からねぇ……」
「…………か」
男が一歩、また一歩とこちらへ進んでくる。
なんだ? シスターたちはあの男の人の、何をそんなに警戒しているんだ?
「…………え?」
震えてる……あの人が近づいてくるにつれ、僕の身体が……!
「な、なにが……おきて……」
「おい! 早く馬を動かせ!!」
「ダ、ダメだ! 全く動かない!」
何だこの震えは……? 僕は……怖がっているのか?
何に……僕はあの人の何をそんなに……
「あ、震えが止」
「お前が……そうか」
頭に……声が……
──パァン
──パァン
「え?」
バカに軽やかな音が二回鳴って、一瞬にして僕の視界は真っ赤に染まった。
僕がその状況を理解するには多少の時間を要することになったが、それは仕方ないことだと思う。
そんなの即座に理解出来る方がどうかしている。
【ヴィルヘルム】
性別:男 推定年齢:70歳
ボサボサの茶髪に熊のような容貌をした大男。
悪魔祓いギルド『