Rest In Peace   作:砂糖ノ塊

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8:骸ノ修道女と銃天使

「わぁぁ…………!!」

 

 街中に溢れる活気。老若男女、様々な人たちが行き来していた。

 

 建物の造りからなにからセルトグラヘとは比べ物にもならない。というかあのレフさんのギルドがあったホリーの街よりも発展しているように思えた。

 

「シスター! お城がありますよ! お城が!」

「王都ですから」

「城壁? って言うんですかあれ! 街を囲むみたいにぐるーっと!!」

「王都ですから」

「はわあああ……」

 

 これが王都……! これがブルーティカス……!!

 

「ブロッサム教会って中も広かったけど、外から見たらこんなに大きかったんだ! お城くらいある!」

「あの悪魔神父が国の連中にメチャクチャ言って作らせたらしいな。孤児院もあるからもっとデカくしろだとか言って……いや、"脅して"か?」

「人も沢山います! 見たことないお店がいっぱい!!」

「……おい、グリ坊?」

「見たことない服も見たことないアクセサリーも見たことない人たちもいっぱいですっ!!!」

「グリ坊??」

「わああ!!! 石畳!!!」

「グリ坊落ち着けッ! それはホリーにも普通にあっただろ!!」

「はっ……! 僕は今何を……」

 

 ついつい興奮しすぎて暴走してしまった……

 

「ったく、大人しいやつだと思ってたがそうでも無いらしいな」

「ごめんなさい……」

「グリフは新しいものに目が無いんですね」

「本当にごめんなさい…………」

「チッ……ほらさっさと迎え行くぞ!」

 

 早足で歩くレフさんの後ろをついて行く。

 

 向かう先はブルーティカスの東門。

 

「そういえば神父様に聞くのを忘れたんですけど、そのパキラさんってどんな人なんですか? 容姿とか分からないと困ると思うんですけど」

「年はグリ坊と同じくらいだな」

「私の昔の記憶では、金色の髪をこう二つ、横に結んでいました」

 

 シスターが手でツインテールを実演してると、なんかちょっとシュールだ。

 

 あとちょっとかわいい。

 

「どうかしました?」

「あ! なんでもないです!」

「ってことは今のあいつは昔から変わってねぇってことだな」

「じゃあ見ればすぐ分かるってことですね!」

 

 そうこうしている内に目的地に到着した僕ら。

 

「でっか……」

 

 シスターが呼び出す、あの黒い骸骨が楽々通れるくらいの門だ。

 

「……なんか街の連中がやけに騒がしいな」

「何かあったんでしょうか?」

「行ってみましょう」

 

 小さかった周囲のざわめきは門に近づけば近づくほど大きくなっていく。

 

 街中の明るいざわめきではなく、不安や恐怖がにじみ出るような……

 

「おい! 空を見ろ!」

 

 そんな誰かの声が聞こえ、僕らは自然と視線を城壁の向こうを見上げる。

 

「……鳥?」

 

 青空の中に羽の生えた生き物が数匹、こちらへ接近してくる。

 

「いや、ただの鳥じゃねぇ。この嫌な感じは……」

「悪魔憑きです」

「っ!」

 

 悪魔憑き……!!

 

 身体が強ばり、頭の中をセルトグラヘでの皆の姿が駆け巡る。

 

 キャンベラおばさん……ミゲルさん……

 

「しゃあねぇ、ぶっ殺すか」

「城壁に辿り着く前に全て落とします」

「……っ!」

 

 今さら何やってるんだ僕は! どれだけ後悔したってキャンベラおばさんもミゲルさんも帰っては来ないんだぞ!!

 

「(ここにいる人たちが、村の皆みたいにならないように頑張るんだ……!)」

 

 悪魔退治はシスターとレフさんに任せて、僕はここにいる人たちの避難誘導に専念しよう。

 

 そんな決意をしたのもつかの間、僕の誘導の声は大衆の歓声にかき消された。

 

「おい来たぞ!」

「すげぇ本物だ!!」

「天使様……!」

 

 城壁の上に、見覚えのある修道服。

 

 一瞬シスターかと思ったけれど、隣で僕と一緒に見上げるシスターと、風にたなびく金色の二つ結びの髪を見て、すぐに違うと気づいた。

 

「あれが……」

「アホ天使、もとい『銃天使』パキラ・ブロッサムだ」

「銃天使……ってもしかしてひとりで退治するつもりですか!?」

「まぁ落ち着け。面白ぇもんが見れるかもよ……っと!」

「ちょ! レフさん!?」

 

 レフさんが僕の下に潜り込み、そのまま肩車の体勢に持ち込まれる。

 

「この方が見やすいだろ?」

「もう……」

 

 でもレフさんがそこまで言うなら、きっと相当すごい人なんだろう。

 

「見逃すなよグリ坊。あれが"神の加護"を持ってるやつの、本来の戦い方ってやつだ」

 

 

 

 

 

 〜【ブルーティカス東門・城壁上】〜

 

 ブルーティカスに帰ってきて早々これとか、本当についてないなアタシ……早く帰ってシスター・ガーデンのクッキーが食べたい……

 

「本当にお一人で大丈夫ですか?」

 

 は? 何を言っているのかしらこの衛兵は?

 

「ご心配どうもありがとう。けど無駄な心配ね。アタシを誰だと思っているの?」

「はっ、失礼しました。銃天使様」

「分かればよろしい!」

「本当に大丈夫か……? あんな小さい女の子が……」

「さぁ……」

「やっぱり教会のちゃんとした聖職者を呼んできた方が……」

 

 はぁ……全部聞こえてんのよ衛兵どもが……

 

 まぁいいわ、面と向かって言う勇気もないウジ虫なんて気にするだけ時間の無駄よ。

 

「〖天眼(キューピットアイズ)〗」

 

 数は七匹、しかももれなく全員核までもってる。

 

「偉そうな鳥ね。捕まえて教会の皆で食べてやろうかしら」

 

 なんて、どうせ悪魔憑きは持ち主の魂が死んだ時点で、身体が死ねば勝手に灰になるんだけど。

 

「さてと……さっさと終わらせましょうか」

 

 アタシの問いかけに答えるように、太陽の光に反射して、相棒が今日も白く輝いた。

 

「〖天使の回転式拳銃(エンジェリックリボルバー)〗!」

 

 核に照準を合わせ、引き金を引く。

 

 引く。

 

 引く。

 

 引く。

 

 引く。

 

 引く。

 

「ふぅ……」

「あ、あの? まだ六発しか撃ってないのでは……?」

「え? えぇそうよ、私の相棒の装填数は六発だもの」

「まだ一匹残っていますけどおおお!!??」

「うるさいわね! 知ってるわよそんなこと!!」

「もうすぐそこまで来てますッ!!!」

 

 あら、案外速いのね。

 

「墜ちなさい」

 

 全く関係ないけれど。

 

「〖天泪(ヘブンズクライ)〙〗!」

 

 この距離じゃ外しようがないわね。

 

「アタシの勝ち」

 

 

 

 

 

 〜【ブルーティカス東門】〜

 

「な…………」

 

 言葉が出なかった。

 

 あの修道女(シスター)が持っているのは……白い拳銃? あそこから放たれた光は何だ?

 

「あれがあのアホ天使の加護の力、天使の回転式拳銃(エンジェリックリボルバー)。装填してある銀の弾丸に光の力を乗せて撃つ」

「あの拳銃で……?」

「それ以外ねぇだろ」

 

 シスター以外の人の神の加護を初めて見た。

 

 まさに光の弾丸、神々しさすら感じる。

 

 あれが普通なら、確かにシスターの加護の力は禍々しいかも……?

 

「でもあんなに離れてる鳥を……そんなことが出来るんですか?」

「不可能な事象を可能にする。それが神の加護の力です」

「じ、じゃあ最後の七発目の弾丸は!? あれだけ弾が強く光っていたように見えたのは僕の気のせいですか!?」

「気のせいじゃねぇよ。あれはアイツの……まぁ奥の手みたいなもんらしい。詳しくはオレも知らねぇ」

 

 あれだけ遠く離れた標的を、ただの拳銃で正確に撃ち落とす。人には到底できない芸当だ。

 

 レフさんが彼女を『天使』と呼ぶ理由が何となく分かった気がする。

 

 正確無比な高速射撃と、そしてあの眩い光の弾丸。

 

 風にたなびく金色の髪と、光に反射してキラキラと煌めく硝煙を纏う彼女の姿は、どこか人間離れした高貴な存在を想起させた。

 

 あれが『銃天使』パキラ・ブロッサム……!

 

「お見事です、流石は銃天使様」

「ふん! 当然よ!」

 

 衛兵と何やら話をしながら、城壁の上にいた彼女が降りてくる。

 

 すると途端に歓声が湧き上がった。

 

「銃天使様が降りてきたぞ!」

「我々を悪魔から救ってくださったのだ!」

「すごい……かっこいい…………」

 

 僕はと言うと、何も言えずにただボーッと彼女の姿を眺めていた。

 

 おもむろに彼女が右手を上げると、あれだけ人々の歓声に包まれていた周囲が一気に静まり返った。

 

 誰もが彼女の言葉を待っている。

 

 僕も彼女が何を言うのか、期待で鼓動が速くなる。

 

「すぅぅ…………」

 

「アンタたち!! いつまでボサっとしてるわけ!? 悪魔はアタシが退治してあげたから!!」

 

「さっさと仕事に戻りなさあああいッ!!」

 

「…………へ?」

 

 なんか……想像していたのとは大分違うような……?

 

 豆鉄砲食らったのはどうやら僕だけだったらしく、街の人たちは素直に彼女の言ったことに従って帰って行った。

 

「流石銃天使様だぜ!」

「あぁ! 悪魔を退治してくれただけじゃなく、俺たちのことを元気づけてくれるんだからな!」

「いやーあんな可愛い銃天使様に激励されると、自然とやる気も出るってもんよ!」

「午後からの仕事もいっちょ頑張るか!」

 

 え、えぇぇ…………?

 

「ほらよグリ坊、そろそろ降りろ」

「え、あ、はい。ありがとうございました……」

 

 あれが『銃天使』パキラ・ブロッサム……?

 

「はぁ……やっぱり天泪(ヘブンズクライ)を撃つと疲れるわね…………ん?」

 

 少し疲れた顔色の彼女が、僕らに気づいて、

 

「げっ……」

「チッ……」

 

 そして一気に空気が最悪になった。

 

 やっぱり本人が言ってたみたいに『赤頭巾』と『銃天使』は仲が悪いのか……

 

「最悪……なんでアンタがここにいるのよ『赤頭巾』」

「テメェんとこのクソ神父に頼まれたんだよ」

「相変わらず下品な口調ね」

「黙れ『アホ天使』」

「うるさいわよ『バカ頭巾』」

 

『久しぶりの再開だし……てか君たち互いにあーだこーだ言ってるけど、実は結構仲良いでしょ』

 

 神父様。この二人、普通に仲悪いです。

 

「あら? アンタ見ない顔ね」

「あ、はい。グリフといいます」

「ふーん………………」

 

 なんでジロジロ見られてるんだ僕は?

 

「背はアタシがほんの少しだけ勝ったわね」

「あの……何か……?」

「アンタ、年はいくつ?」

「え……十二です。多分」

「勝ったわね」

「何が!?」

「アタシはパキラ・ブロッサム! アタシの方が年上よ!」

 

 やっぱり想像していた人と違う!!

 

「で? わざわざ迎えに来たのには何か理由があるんでしょ?」

「あ? あぁ、そいつとテメェを合わせてぇんだろ?」

「そいつ?」

 

 パキラさんとシスターの目が合う。

 

「久しぶりですね、パキラ」

「………………

「……やはり覚えてな──」

 

「ロゼおねえさまあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

 

 僕はシスターに物凄いスピードでタックルをかます彼女の姿を見て、『銃天使』の本当の姿が分かり始めてきたのだった。




【パキラ】
性別:女 推定年齢:14歳
金髪金眼ツインテール美少女。
ブロッサム教会の修道女であり、武器は拳銃。通称「銃天使」。
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