ウルトラマンゼローザ・リリカルユニバースー   作:日々野未来

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 皆さんお久しぶりです。完成はしていたのですが次回が出来上がらないため投稿は控えていました。長く空きましたが前回の続きとなります。


Record.07『それは魂の絆、なの?』

 三年前……TDF航空基地。

 

 

 

 

 

「ウルトラ警備隊か……最新機に乗れるのワクワクするね!」

「その事しか頭にないのかよ」

 夕焼けに染まる空の下で自分達の機体を整備する二人の男女の姿があった。

「だってガッツイーグルに乗れるんだよ?楽しみでしょ?」

「まぁ解るけどな。α号なんて僕ら向けの機体だからな」

「そうそう。速く飛ぶのがアタシ達だからね」

 ニコニコする赤毛の女性。空色の髪の青年はまったくと思いながらもその女性の笑顔を見つめていた。

「なーにー?アタシの顔じろじろ見ちゃって~アオってそういう所あるよね。ヤった後なんて特に」

「おいおまっ! 寝てたんじゃないのかよ!?」

「なんのこと~?」

「おい美夕!」

「追い付いてごらんアオ~」

 そんなやり取りが日常だったこの基地。だが、すぐにその光景は失われる事となってしまうのだった……

 

 

 

 

 

 現在。ヘイレン再来から翌日。TDFは三年前の事件を教訓に民間の航空会社に旅客機の運行を禁止させていた。

 

 

 

 

 

 ここは太平洋に浮かぶ無人島『スフラン島』。その周辺海域をTDF海上防衛隊に所属するイージス艦と航空母艦の艦隊がパトロールを行っていた。この島には沢山の凶暴性が高い怪獣が生息しており、島を越えて本土に上陸しないように監視を行っている。

「聞いたか?三年前に現れたヘイレンがまた出現したってよ」

「聞きました聞きました。あのエースで編成された部隊が全滅したあの事件の怪獣が出てくるなんて」

 甲板で監視を行っている隊員二人が世間話をしていた。

「それも遭遇したのがウルトラ警備隊の新条隊員だとよ」

「新条ってあの事件の生き残りの?」

「そう! 皮肉だよな、機体トラブルで出動できなくて生き残ったのに同じ怪獣と出会すなんて」

「ホントですね」

 そんな話をしていると空母の方からジェット音が響いてくる。

「お、定期パトロールの時間か」

 空母の方を向くと三機のマットアロー1号が出動したのが見えた。定期的なパトロールが行われているためいつもの光景だった。

「そろそろ交代の時間だ。飯は………」

 その時、真上で爆発音が轟き、見上げると三つの炎が上がり、黒い破片が飛び散るのが見えた。

「パトロール機が!?」

 隊員達は双眼鏡で襲撃者を探した。

「まさか」

 先ほどの話で思い出す。今、何が空に居るのかを。その状況でパトロール機を出動させるのは自殺行為だという事を。それでも襲撃者を迎え撃つべく空母からマットアロー1号がスクランブル発進してしまい、その編隊に黒い影が接近、通り過ぎただけでマットアロー1号は次々と吹き飛び、爆発四散していく。

「こちらレーダー室! 3時の方向に艦隊に接近する反応を確認!」

「こちらブリッジ! 接近する物体を肉眼で確認! 超音速怪獣ヘイレンです!」

 サイレンが鳴り響く艦隊。襲撃者がヘイレンである事が判明すると居る方向に向けて艦砲射撃を行うが砲弾は海上に落下し、水飛沫を上げるだけ。ヘイレンは翼を展開したり閉じたりして加速と減速を繰り返して砲撃を回避、そして、翼を閉じて背中の推進器官を一気に噴射させると爆音のような大きな音を立てて一瞬で姿を消した。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?」

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?」

 そして、艦隊を凄まじい衝撃波が襲い悲鳴が上がる。甲板のありとあらゆる物が衝撃波により吹き飛ばされ、次々と爆発していった。

 

 

 

 

 

「ホント気を付けてくれよ海上隊さんよ」

 ウルトラ警備隊の司令室でぼやく嵐隊長。スフラン島沖合いの海上に戦艦や戦闘機の残骸が漂流、他の海上防衛隊が生存者の救助と残骸の回収を行っている映像がスクリーンに流れていた。

「状況からしてヘイレンに襲われたんだな。スケジュールを見ると定期パトロールの時間でアローを発進させたらしいから」

「そのジェット音に反応して」

「それに加えて攻撃までするもんだから完全に敵として認識したんだろうな。まぁ青羽がヘイレンと遭遇した海域からは離れてたから飛行禁止令が出てなかったんだろうが………ちょい気を付けてくれよ。三年前の事件で無理なフライトしたせいで航空会社の幹部が総辞職してるんだから」

 溜め息を吐く嵐隊長。今回の件で何人の幹部の首が飛ぶのだろうかと。下手したら自分もあり得る、ヘイレンを取り逃した部隊でもあるため。

「海上防衛隊がブラックボックスの回収に成功したと報告が入りました。すぐに解析に移るそうです」

「了解。解析できたらデータをすぐに回してって指示しておいて」

「了解。青羽さんには?」

「まだ謹慎してて貰おう。まだ心の整理は付いてないだろうからな」

 いくら腕がよくても心に迷いがあるままでは足手まといになってしまう。最悪、懸念している自殺願望を実行されてしまうとも考えられた。

「けど、ブラックボックスの解析が終わる頃にヘイレンが本土に入っていたら元も子もないからな……助言は聞いておきたいな」

 嵐隊長は左腕の腕時計型通信機『ビデオシーバー』のカバーを開き、中のキーボードを操作するとある場所に通信を繋げ、連動していた投影モニターにその相手が映し出される。

「こちら情報特務隊の………嵐隊長?」

 モニターに映るのは美しい黒髪に目元にほくろを付けた女性だった。

「めんごめんご法子ちゃん」

「法子って………情報特務隊のベテランオペレーターの法子参謀!?」

 あまりの有名人に驚く令子。

「仕事中なんだから法子ちゃんって呼ばない。参謀付けてちょうだい、一応私の方は階級上なのよ?」

「解ってるよ」

 全然解っていない様子に『法子』は深く溜め息を吐いた。

「解ったわよ一郎さん。そろそろ連絡してくると思ってたし、それで聞きたいのは次のヘイレンの出現場所?」

「さすが法子ちゃん。俺の奥さん」

「へっ?法子参謀って嵐隊長の奥さんだったんですか!?」

 美人で敏腕とTDF内では名が知れる情報特務隊参謀はなんとウルトラ警備隊隊長の妻でもあった。

「こんなんだからあまり知られたくないのよね。あの大英雄ストーム1の面影はどこへやら」

 残念がる『嵐法子』。ニコニコする嵐隊長。性格が真逆だと思えたがだからこそやっていられるのだろう。

「こっちでもヘイレンの進路を予測しているわ。幸い、三年前の事もあってどこの航空会社も協力的で、便の運行を停止してる」

「ここで出して被害に遭ったらバッシング待ったなしだからね」

「だけど航空機のジェット音に反応しているわ絶対に。新条隊員のα号にアローのジェット音、三年前もそうだったわ」

「旅客機や航空機が飛んでない。一応船会社にも航海を控えるように言ってある。次にヘイレンが襲うとしたら………あそこしかないかな?」

「そうね、あそこの業務を停止させるには無理があるわ」

 ヘイレンの次の出現場所は予想されていた。その場所の事を考えると嵐隊長と法子参謀は頭を抱えた。

「また海鳴市を戦場にするのか………それも生命線の次元港の真上で」

 

 

 

 

 

 その頃、謹慎中の青羽は翠屋のテラス席に座っていた。

「謹慎中じゃないのか?」

「あまり出ない方がいいってだけだからな」

 恭也と積もる話をしていた。

「日用品や食材の買い出しとかしないといけないからな」

「ネットスーパーがあるだろ?」

「揚げ足取るなよ」

 言い訳を論破され、ジト目となる青羽。

「少しはましになったみたいだと思ったらまた逆戻りか」

「何が?」

「お前、三年前の時と同じ顔をしてるぞ?」

 恭也も三年前の事件は知っていた。よく青羽から恋人との付き合い方等の相談を受けていたため、美夕とも顔見知りだった。

「あの怪獣が出た事はこの前のニュースで見た。謹慎の理由はそれだろ?」

「…………暴走した、それで残念ながら死に損なった」

「冗談でも言うな」

 青羽を睨み付ける恭也。似たような経験は過去に妹でしている、その時どれだけ苦しく、辛いのか、思い出すだけでも嫌になる。そして、その事で弟が今も引きずっているのも知っている。

「悪い。なのはちゃんの事か」

「ああ。あの時みたいな苦しみは沢山だからな」

 解ればいいと怒りを沈める恭也。

「それに、お前の同居人、一人にさせるつもりか?」

 店内で接客するムジナ。彼女を見て少し冷静となる。

「この前さ、私達の関係って、なに?って聞かれたんだよ、後見人か同居人って答えれば良かったのに何も言えなかった」

「で、どんな関係になりたいんだ?」

「言わせるなよ」

「言わないと認識しないだろ?いや、認識してるのにずっと誤魔化してるだろ?」

「チッ」

 ズバズバと言ってくる親友に舌打ちを鳴らした。

「お前の苦しみを考えたら割り切れる物じゃないか」

「今でもアイツの影追ってるからな……この前も夢にまで出てきて……」

 ふと思い出す夢の内容。そして、目覚めた後に握られていた短剣。一体何を意味しているのだろうか。

「とりあえず。行為した後に他の女の名前を出すのはやめておけ」

「なんでお前が言うと説得力あるのかな?忍一筋のはずなのに」

 どこかの世界線でハーレムやらギャルゲーの主人公をしていたのではないかとたまに思ってしまう。

「せっかくだ。どこかに出掛けてきたらどうだ?俺も居る訳だし大丈夫だろう」

「そうさせて貰おうかな?」

 

 

 

 

 

 恭也が居るため早上がりが可能となり、ムジナは仕事を切り上げた。青羽は彼女を連れて海沿いを歩く。

「潮風が気持ちいい。やっぱり海鳴の海は最高だな」

 風に乗り飛ぶ鳥。それに合わせて掌を動かしていく。

「それは同意。それにここの人達は優しい」

 それがこの街で暮らしたムジナの感想だった。無論、青羽も同意だ。

「それに強い。怪獣に襲われてもめげずに復興させてる」

「怪獣災害が多いからね日本は。慣れてるんだよ」

「………私は怪獣側だったから」

「怪獣使いの話?」

 頷くムジナ。ムジナは元々の世界では怪獣使いだった。そこの地球から五千年ほど前、ある国に支えていたがその国に裏切られようとしていたが逆に裏切り、国を滅ぼそうとするも怪獣使いの仲間の一人が反逆し、自分含めて仲間は全滅、そこで死んだはずだったが五千年後に蘇った。

「私は何も見付けられなくて、この能力しかなくて、これしかないと思って怪獣優生思想として世界を滅茶苦茶にしようとした。それに怪獣と繋がってないと生きてられないのが怪獣使いだったし。それでもアイツは私達を裏切った」

「だけどそんな素振り、ないよね?」

「うん、もう怪獣使いとしての能力は残ってるはずだけど………まぁこの世界の怪獣は私が知る怪獣とは違うし」

 ムジナが知る怪獣は人々の感情の高ぶりで生み出され、暴れる存在。生物としての怪獣自身に感情があるため操るのは難しい。怪獣を操る装置を直接埋め込んだり、飼育すれば話は別だが。

「私は怪獣を使って沢山奪ってきた。大きい命も小さい命も、それしかないと思って。だけど最近自覚した、怪獣に襲われるってどういう物なのかって」

 ギーストロン事件は自分がしてきた事を逆にされる事となった。

「それしかないから奪うってかなり理不尽よね」

「解らなくはないかな。それしかないって思うと思考が回らなくなるから」

 青羽はムジナがしてきた事を責めなかった。自分の世界じゃないからとかではない、気持ちが解ってしまうため。

「僕には美夕しか居なかったと思いたかった。その思いを抱えたまま死にたかった」

「アオ………」

「そのはずなんだけど………」

 言葉が詰まる青羽。青羽は横を向きムジナと向き合った。

「この前、家に帰って誰か居ると嬉しいって話したよね?」

「うん」

「もう答えを言ってたんだよね。美夕しか居ないと思い込んでいたはずなのに別の誰かが居て嬉しくなったり安心してるのってさ………僕は君の事を」

 ムジナは予想できた、彼が何を言うのかを、だが、その言葉を受け入れていいのか解らなかった。

「いいの?私、許されないこと沢山してきたのに」

「屁理屈になるけどそれはムジナが元々居た世界での話でしょ?ここでは何もしてない、この世界の不自由な日常に溶け込もうとしてる一人の女の子。それでも謝って許して貰える物ではないのは僕も承知してる、それでもね」

 ムジナの両肩に手を乗せ、真っ直ぐ向き合う青羽。

「僕は君の事を好きになっていたんだ。だから家で待っていて欲しい、僕がこの空から帰ってくるのを」

「青羽……」

 あだ名ではなく青羽と呼んでしまうムジナ。顔に熱い物が流れてくるように感じた。

「おい! アレはなんだ!?」

 その時、人々が空に指を向けてざわつき始める。二人もその空を見上げると黒い影が見えた。高速で飛ぶ姿は戦闘機のようだが違う。

「ヘイレン………まさか」

 青羽はなぜヘイレンがこの海鳴市に飛来したのかすぐに解った。この海鳴市にあるジェット音が響く施設、それは沖合いにある次元港だ。そこの次元航行船のエンジン音に引き寄せられてしまったのだ。

「こちら青羽」

 青羽はビデオシーバーで嵐隊長と通信を試みる。

「よう青羽。謹慎中なのに外出中かぁ?」

 軽口を叩く嵐隊長だがそんな雰囲気ではないのはその顔を見れば解っている。

「海鳴市上空にヘイレン出現、狙いは恐らく次元港です」

「思ったより早かったな………了解、すぐに出動する」

「本土には手を出さないでしょうが次元港を襲えばその燃料で二次被害が起きる可能性があります。海上に叩き落とすかもしくは」

「奴の得意な空で倒すしかない、か」

「はい」

 緊張感が漂う中、青羽の目にムジナが映る。

「すぐに向かうから現場で合流する。そこでお前の謹慎は解除だ」

「了解」

 ビデオシーバーのカバーを閉じ、通信を終えた。

「ごめんムジナ。話の続きはこれが」

 終わってからと言おうとしたがムジナはそのつもりがない様子だった。

「これだけは言わせて。私はあなたが元カノと一緒に空に行く事を許さないから。ずっとアオを縛り付けて地上に引きずり下ろすから」

 ムジナは青羽の唇に自分の唇を重ね、すぐに離れた。

「そうなったとしても謝っても許さないから。あなたも私にそれしかないって気付かせたんだから」

 そこに、ガッツイーグルスペリオルが飛来するのが見える。襲われてしまうのではないかと不安にもなるが今のヘイレンには次元港しか見えていないため襲われる事はなかった。

「行ってくる」

「行ってらっしゃい」

 駆け出す青羽。青羽が走った方向にガッツイーグルスペリオルが垂直に高度を落としていくのが見えた。

 

 

 

 

 

「青羽も隅に置けないな~あんな美人にチューして貰えるなんて」

「羨ましいでしょ?」

 αスペリオルに乗り込む青羽。隊員服に着替え、準備万端で嵐隊長の軽口に返していた。

「なるほど、どうやら吹っ切れたみたいだな」

「なかなか死なせてくれない隊長のお陰でもありますね」

「なら心配要らないな、オペ子ちゃん」

「は、はい!」

 突然話し掛けられて驚く令子。その顔は赤かった。あの一部始終を見ていたための反応だった。

「航空司令部と海上防衛隊に連絡。これよりヘイレン撃滅作戦を行うため応援されたしと」

「はい!」

 離陸するガッツイーグルスペリオルはゆっくりと分離する。

「青羽。この中で奴に追い付けるのはスペリオルだけだ」

「スペック上ならマッハ11ですからね。ヘイレンはマッハ10。必ず追い付けますよ青羽さんなら」

 1の差であるため何が起こるか解らない、だが、それを補える技量があると令子は信じていた。

「その差はテクニックと勇気で埋めろ、俺達もサポートする」

「了解!」

 スロットルを引き機体を加速させてヘイレンに向かって突撃する青羽。ヘイレンに向けて攻撃、ヘイレンもαスペリオルの存在に気付くと次元港から狙いを変える。火炎を放たれるが青羽は冷静にそれを避け、ネオジーグで攻撃、赤い閃光はヘイレンに命中した。

「ギシャァァァァァア!!」

 咆哮を上げるヘイレン。口には無数の鋭い牙が並んでいた。αスペリオルに狙いを付け、翼を畳み、背中の推進器官を噴射させて高速で飛行する。αスペリオルはその追撃を躱しつつ背後に回り込んで攻撃をしていくが避けられてしまうというのを繰り返し、どんどん上昇していく。

「まったく、野郎は女の子が絡むと本気度が違うな」

「隊長も法子参謀が絡んだら本気度が違うんですか?」

「当たり前だろ?惚れた女の子にいいとこ見せたくなるのが男の性ってもんさ」

 

 

 

 

 

「通信聞こえてるのよ……!」

 本部の管制室で赤くした顔を隠そうと下を向く法子参謀は文句を口にするも内心は嬉しくて仕方なかったとか。

 

 

 

 

 

 機体をくるくる回転させながら上昇していくαスペリオル。その光景は地上からも見えていた。

「アオ………楽しそう」

 戦いは楽しくないが空でダンスを踊るかのように飛び回るαスペリオルを見てムジナは楽しそうと呟いた。

「これこれ、この操縦桿と一体となった感覚。加速する度に跳ね上がるG。瞬間的に流れていく景色と雲、これだよ、これが僕の飛び方だ!」

 自由を感じさせる飛び方だが不自由もある、地上で待つ大切な人に縛られ、いつでも引きずり下ろされる準備ができていた。戻れば不自由な生活、だが、青羽はその不自由に早く戻りたかった。

「悪いけど、まだ天使を拝むには早いみたい」

 そう言うとディスプレイの照準がヘイレンの左胸の傷にロックオンしていた。カバーが展開してネオデキサス砲が起動する。

「スパークボンバー!」

 トリガーを引くとスパークボンバーが放たれ、ヘイレンに直撃。そのダメージに墜落を始めるヘイレン。このまま海面に叩き付けられれば勝機が見えると考えられたが、ヘイレンはすぐに体勢を立て直し、翼を広げて減速し、海面すれすれでまた飛翔してしまった。

「それなら!」

 再びヘイレンとのドッグファイトが始まる。これ以上の高速戦闘は青羽が持たないと考えられたがそれでも本人は続ける。

「アイツ、次元港から遠ざけてる」

 嵐隊長は青羽がヘイレンを次元港から遠ざけようとしている事に気付いていた。この騒ぎで次元港の方も船を停止させていたためもう敵として認識する音がαスペリオルだけとなっていた。

「青羽! これ以上の戦闘はお前が持たない! すぐに離脱しろ!」

 嵐隊長が叫ぶ、だが、αスペリオルは飛び続ける、すると、一瞬だけ減速してしまった。

「はっ!?」

 気が付く青羽。この負担が掛かる戦闘により一時的に意識を失ってしまっていた。そして、後ろから爆発音が聞こえ、機体が大きく揺れた瞬間、眩しい光が広がった。

 

 

 

 

 

ードガァァァァァァァン!!ー

 

 

 

 

 

(僕は死んだのか?)

 攻撃が被弾してαスペリオルもろとも吹き飛んだと考えていたがなぜ思考が回っているのか解らなかった。

「ちょっと起きたら?まだ死んでないぞー?」

 懐かしい声に呼ばれた気がした。青羽はゆっくりと目を開けると夕暮れの空が広がっており、自分を覗き込む顔があった。

「み、美夕!?」

 死んだはずの恋人が目の前に居て、それも話し掛けている事に驚きを隠せず、そのまま勢いよく起き上がってしまった。

「痛っ!?」

 そして、美夕の頭とぶつかってしまい二人は痛みで悶える事となってしまった。

「痛いな~! 死んでも痛いんだからね~?」

「死んでもって事はあの世なのかここ?」

「ん~そうとも言えるしそうとも言えないかな?ここはあの世とこの世の狭間の世界」

 物語の設定にしか聞こえないが次元世界や並行世界があるのだ、そういう特殊な空間があっても不思議ではないと納得した。

「因みにアオはまだ生きてるよ?まぁキャノピーが吹っ飛んで機体から投げ出されて絶賛、海に向かって落下してる最中だけど」

 それはある意味死にかけである。このまま死んで彼女と共に天使に会うのも悪くないとは………思えなかった。

「今、生きたいって思ったでしょ?」

「………ああ、せっかく美夕と会えたのにね」

「一緒に逝きたいなんて言ったらブッ飛ばしてたけど………アオには待ってる人が居るんだからね?」

 頷く青羽。

「ところで、なんで君は僕の前に現れたんだ?」

「んー?まぁなんとなくというか……光に導かれて?私とアオは魂で繋がってる所もあるから会わせやすかったみたい」

 誰かが自分と彼女を邂逅させてくれた、一体誰なのか?

「私もアオに対して未練あったし。そんなアオを心配してたら光が現れた、そして私はあなたを助けてとお願いした」

 その時、青羽の右手が光るとあの白銀の短剣が握られていた。

「その剣を、エボルトラスターを抜いて。そうすればアオはまた飛べる、この広い大空を」

 見上げる美夕。青羽はゆっくりと立ち上がる。

「死んでも心配させてごめんね美夕」

「まぁ逆の立場ったら私も同じ事思っただろうしね。だけど良かったよ、アオに新しい彼女ができて」

 安心した美夕は両手を挙げて背伸びをする。

「けどな~今回の彼女、私と違ってボン、キュッ、ボンなんだよな~そこは妬いちゃう」

 自分の体を見て不満げに口にする美夕。両手で胸を持ち上げてみるが軽かった。

「おいおい、僕は君をそれで選んだりとかしてないけど?」

「もちろん解ってるけど~元カノとしてはそこも評価の一つだから」

「なんの評価だよ」

 苦笑してしまう青羽。あの頃と変わらない会話だった、嬉しくもあったがこのまま話している訳にもいかない。

「さて、アオ。そろそろ起きてね。起きたら絶賛パラシュートなしのスカイダイビングの真っ最中だから。それに私もそろそろ」

 体が透け始める美夕。

「そろそろ時間って事?」

「そうみたい。魂の存在を可視化させるのかなりエネルギーが要るみたいだから」

「一体どんな奴なんだよ」

 短剣『エボルトラスター』を見る青羽。緑色の宝石が淡く輝く。

「そんじゃあアオ。幸せにね、私はこの空から見守ってるから」

「ああ。じゃあね美夕」

 エボルトラスターから眩しい光が放たれ、周囲を包み込んだ。

 

 

 

 

 

「ホントに落下してるな」

 目を開けるとそこは空で、下は海で、海に向かって落下している最中だった。だが、そこ手にはエボルトラスターが握られていた。恐怖はなかった、自分はここで死ぬ事はないという確信があった。

「僕は生きる………生きて、この空を飛んで、飛びきって帰るんだ!」

 エボルトラスターの先端を強く握り締めた。

「うおぉぉぉぉぉぉぉお!!!!!!」

 気合いを込めた大きな叫びと共にエボルトラスターを鞘から引き抜いた瞬間、剣先から大量の赤い光が解放された。

 

 

 

 

 

「アオ………」

 αスペリオルが爆発し、ヘイレンの咆哮が轟く空を見てムジナは呆然としてしまっていた。許さないと言ったのにと、だが、その空に赤い光が現れた。

「光………」

 その光には見覚えがあった。ゼロから感じた光と似てる気がしていた。

 

 

 

 

 

「隊長、アレはもしかして」

「ああ」

 その光景は嵐隊長も間近で目撃しており、光が消えるとそこには銀色の巨人が宙を浮いていた。胸にY字型の赤いクリスタルを埋め込み、両腕には金色のエッジが付いた手甲を嵌め、まるで鎧を纏ったような姿をした銀色のウルトラマンがそこに居た。

「ネクサス……!」

「ネクサス?」

 嵐隊長はそのウルトラマンを見て叫んだ。

「ああ、ギャラクシークライシスの時にも現れたウルトラマンだ。まさか」

 そして予感した。あのウルトラマンが誰なのかを。

(青羽をデュナミストとして選んだのかネクサス)

 口には出さないが正体を理解した嵐隊長。『ウルトラマンネクサス』は両手を見ていた、今の自分の姿に驚いているようだったが真上から鳴き声が聞こえ、見上げるとヘイレンが急降下してくるのが見え、それを避けるのだがソニックブームで吹き飛んでしまう。

『グッ………シェアッ!』

 ネクサスは右腕の手甲『アームドネクサス』を胸の『エナジーコア』の前に添えるとその姿が揺らぐ、そして、青い光が広がると姿が変わる。銀がベースだった体は青がベースとなり、腹部に銀色のラインが流れ、エナジーコアにはカラータイマーのような青いクリスタル『コアゲージ』が付き、右腕のアームドネクサスの形状が変化し、『アローアームドネクサス』となる。基本形態『アンファンス』から強化形態『ジュネッスブルー』へとスタイルチェンジをしたのだ。

『ハッ!』

 ネクサスは高く飛翔。急加速したため爆発音のような轟音が轟き、その速度を物語る。

『すごい! 飛んでる……! 僕はこの空を自由に!』

 ネクサスは、青羽は戦っている途中だったがこの事に感動を覚えていた。機体の中からでは感じられない直に受ける風や衝撃、普通ならあり得ないこの経験に飛行機乗りとして感動を覚えていたのだ。

『だけど今は!』

 青い火炎が上から飛んでくるがそれを左右に飛んで躱し、ヘイレンを追跡する。ヘイレンも追い付かれまいと高速飛行のために翼を畳んで推進器官を噴射させる。

「速い……!」

「ありゃもう追い付けねーな」

 嵐隊長は静観を選択した。自分達のスピードではネクサスの、青羽の足手まといとなってしまうため。

(けど、楽しそうに飛んでるじゃねーか青羽)

 ネクサスの舞いを見てそう感じる嵐隊長。ヘイレンは雲海に突入すると衝撃で風穴を空け、ネクサスもその風穴に飛び込み、穴を大きくする。

『シェアッ!』

 両手を一瞬だけ交差させ、それから広げるように振るい手先から三日月状の光線パーティクル・フェザーを連続で発射し、ヘイレンを撃ち落とそうするも、それをヘイレンは急旋回をして避け、頭をネクサスの方に向けて火炎弾を放つ。

『ハッ!』

 ネクサスも瞬時に横に飛んで火炎弾を避け、直撃コースの火炎弾はパーティクル・フェザーで撃ち落として直撃を回避する。

 このままドッグファイトを繰り広げても埒か明かないと悟ったヘイレンはネクサスの周りを超高速で飛び回る。衝突を逃れるべく静止するネクサスはそれに戸惑い目で追い続けていると異変に気付く。

『空気に締め付けられてる?』

 ヘイレンが高速で飛び回る事で衝撃が発生し、その感じ方が締め付けられているように感じられた。

『まさか』

 空気を圧縮させると熱が発生する。それが超高速で急激に行われたらどうなるか、簡単だ、爆発する。ヘイレンはネクサスを空気の檻に閉じ込め、爆発に巻き込もうとしていた。

『それなら!』

 両手を広げると手先から今度は青白い光の帯を放つ。光の帯は左右に広がり、ヘイレンに直撃せず、逆にヘイレンはそれを避けながら飛行を続けるもネクサスは締め付けられている感覚が薄れていた。そう、空気の檻に隙間が空いたのだ。ネクサスが放つセービングシュートを避けながら飛行するヘイレン、二ヶ所に穴が空き、そこから空気が入っていたのだ。なぜ二ヶ所だというと一ヶ所だと空気が急激に侵入し、バックドラフト現象を引き起こしかねないと懸念さたからだ。

 なかなか技が決まらない事に焦りを覚えるヘイレン。その焦りにより不注意となり、セービングシュートが体に絡まり、動きを止めた。もう一本のセービングシュートも巻き付けると帯を切り離し、ヘイレンは飛べずに落下を始める。

『これで終わりだ!』

 アローアームドネクサスを付けた右腕をエナジーコアの前に添えると、クリスタルが光り、そこから放たれた同じ形の光の矢が右腕にセットされる。ネクサスは右腕を落下すふヘイレンに向けて左手を弓を引くようにゆっくりと動かしていく。

『ハァァァァァァ………! ヘアッ!!!!!!』

 そして一気に左手を引くと矢は放たれた。必殺技アローレイ・シュトロームは一直線にヘイレンへと飛んでいき、そして、その体を貫く。ヘイレンの体は半分に離れ、そして、二つの爆発が起こる。

『終わったよ美夕』

 ネクサスは彼方へと飛んでいく。

 

 

 

 

 

「ウルトラマン」

 飛び去るネクサスをムジナは見ており、その姿が重なって見える。

「アオ、なの?」

 空の彼方へと消えていくネクサス。まるで誘われたかのようにも感じるが。

「なんで解ったの?」

 そこに、青羽が現れた。

「アオ!」

 駆け寄るムジナを抱き止める青羽。

「ただいま、ムジナ」

「お帰りアオ」

 

 

 

 

 

 青年は帰ってくる。この空を飛ぶためも、待っている者のためにも。

 

 

 

 

 

『なんだ?今、イージスが』

 次元空間を移動するゼロ。ウルティメイトイージスが何かに反応した様子で、首を傾げていた。

『………まさかな、ノア、アンタもこの時空に来てるのか?』




 次回は再びゼロ視点に戻ります。
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