地球から旅立ち、エルトリアを目指すウルトラマンゼロ。その旅路は穏やかな物ではないのは言うまでもなく。
『バロバロ! バロ!』
次元空間内にて、一隻の次元貨物船が顔に渦巻きの模様が入った金色の宇宙人に襲撃されていた。背中の突起から金色の蝶のような光の羽根を広げたその宇宙人の名前は『バロッサ星人』、海賊宇宙人の別名を持つこの星人は数多くの並行宇宙で海賊行為を繰り返している種族であり、この時空でもまた数居る同族達が各世界で海賊行為を行い、DPUや管理局の悩みの種となっている。
「海賊め!」
船長と操舵士はバロッサ星人を振り切ろうと奮闘していた。
「こうなったらコンテナを切り離して!」
副長の提案、それならば船の本体だけとなって身軽になるため星人を振り切り易いが。
「ダメだ、このコンテナにはルヴェラの漁師達が汗水流して漁獲した大切な海の幸が積まれているんだ。彼らの努力を無駄にするわけにはいかない」
彼らは第23同盟世界『ルヴェラ』から出航しており、そこは新鮮な海の幸が豊富に取れる世界で、この船にはその海の幸が積まれて各世界に渡ろうとしていた。
「それに今のルヴェラの漁業の状況を考えれば尚更のはずだ……必ずこの積み荷を本局までに届けなければ……!」
船長の決意は硬く、その決意の前に副長は積み荷を捨てるという考えを捨て去った。
「科特隊には!?」
「救援要請を出しました! 3分後に到着予定と返答が有りました!」
「早くて助かる………だが3分保てるか」
バロッサ星人は右手に金属で生成された赤い槍『ペダニウムランサー』を装備し、先端から破壊光線を発射してくる。バロッサ星人は略奪した武器を自分の物として利用し、それを繰り返していく。
「何も武装がない貨物船では無理か……!」
諦め掛ける船長、その時だ、真横を白銀の光が通り過ぎ、ペダニウムランサーから放たれた破壊光線を阻み爆発を起こす。その状況に後ろを向く乗組員達、そこで目にしたのは爆炎の中から現れる白銀の鎧を纏う赤と青の巨人。
「ウルトラマンゼロ!」
「あの前の大災害で活躍した伝説の!?」
駆け付けたのはウルトラマンゼロだった。その光景はまるでギャラクシークライシスの時の再現だった。
『バロッサ星人、どこの宇宙でも海賊行為を繰り返しやがって………覚悟しな!』
ウルティメイトイージスを解除して通常形態に戻るゼロは解除と同時に射出したゼロスラッガーを両手で握り、構える。
『ウルトラマンゼロ! 我々の邪魔をしおって! そっちこそ覚悟するバロ!』
標的をゼロに変えたバロッサ星人はペダニウムランサーを振り上げて襲い掛かり、振り下ろされた槍をゼロスラッガーを交差させて受け止めると一瞬だけ振り向いた。
「今の内に全速前進! この海域から離脱する!」
船長の指示で操舵士はエンジンを全開、航行速度を上げる。船長と副長は振り返り、ゼロに向けて敬礼した。
『オラァァァァア!』
バロッサ星人を蹴り飛ばし、更に貨物船から距離を離すと前進し、自分とバロッサ星人の距離を詰める。
『バロバロ!』
ペダニウムランサーを振るうバロッサ星人、それを躱したゼロは至近距離からエメリウムスラッシュを発射。咄嗟に武器で防ぎ止めるバロッサ星人だったがゼロの手にゼロスラッガーがなく、ゼロは別の方向に向けてエメリウムスラッシュを放つと後方で待機していたゼロスラッガーが光線を反射してバロッサ星人の背中に命中する。
『小癪な!』
乱雑にペダニウムランサーを振るうバロッサ星人だがそのような攻撃が当たる訳もなく、戻ってきたゼロスラッガーを握り、ゼロツインソードを組み立てる。
『当たるかそんなの!』
受け止めたペダニウムランサーを弾き上げるとバロッサ星人の手から外れ、正面ががら空きとなり、ゼロツインソードを首に突き付けられて身動きが取れなくなり、両手を挙げていた。
『お前、なんであんな一般の貨物船を狙った?海賊宇宙人であるお前が欲しがる代物なんかないはずだが?』
『る、ルヴェラでは漁獲難が起きていてルヴェラ産の魚介類はかなり貴重になってるバロ! そいつを転売すれば大金を稼げると考えたバロ!』
その理由を聞き呆れたゼロは深く溜め息を吐いた、下らなすぎて。だが、ルヴェラは海の幸に恵まれた世界、なぜ漁獲難が起きているのか解らなかった。
『お、案外早かったな』
そこに二機の戦闘機が近付いてくるのが見えた。主翼に炎のエンブレムが描かれた『ガンウインガー』と『ガンローダー』だ。この二機は科特隊やTDFで使用されている戦闘機であり、あの貨物船が呼んだ部隊だと解った。
「ウルトラマンゼロ!?えっ?本物やん!?」
ガンウインガーに短い茶髪に科特隊の制服である青紫のブレザーの内側に更にオレンジのパーカーを着込んだ女性隊員はゼロの存在に驚き声を上げていた。
「マジかよ」
ガンローダーに乗る黒髪のお下げに褐色肌で鼻に絆創膏を貼る女性隊員も驚き過ぎて唖然としていた。
「もしかしてもう終わっとる?」
「みたいだな、レーザーラックで拘束、連行するぞ」
周囲を飛ぶガンウインガーとガンローダーは下部からレーザーを発射、それがバロッサ星人の真上で交差するとゼロは離れた。交差したレーザーは檻の形に形成され、バロッサ星人をその中に閉じ込めた。
「拘束完了! ご苦労様! ウルトラマンゼロ!」
敬礼する二人の隊員達は来た道を戻るように飛ぶ。その経路の先にあるのはルヴェラだ。
『ルヴェラで何が起きてるんだ?』
それが気になったゼロは決心し、イージスを再び纏うと飛び立つ、科特隊を追うように。
「あれ?ゼロが近付いてきてない?」
それに気付くもすぐに横を通り過ぎ、ゼロはイージスの力でワームホールを開いてその中へ飛び込んでいった。
「もしかしてゼロもルヴェラに?」
ガンローダーのパイロットは予想した、無論、その予想は当たりである。
漁業が盛んのルヴェラは港が栄えており、沢山の地元民と観光客で賑わっているはずだった。
「なんでこんな静まってるんだよ?」
ルヴェラの港町は閑古鳥が鳴いており、漁に出ていないのか、港には沢山の漁船が停泊していた。零夢はその光景を目の当たりにして唖然としていた、あの活気があった港町はどこへ行ったのだろうかと。
「おい! 何があったんだよこの町?」
そこにたまたま通り掛かった空っぽのバケツを持つゴムの長靴を履いたエプロンを掛けた老夫に声を掛けて尋ねてみる。
「観光客か?こりゃ悪いタイミングで来たねぇ………」
罰が悪そうな老夫。格好からして漁師なのは解る、そしてこの年齢だ、かなりのベテランで職人気質のはず、そんな人物がそんな反応を見せるとなるとよほとの事のはずだ。
「今のルヴェラは漁獲難が起きていてね、まったく魚が取れなくなってるんだ。そのせいであんなに活気付いてたこの町もこんなになっちまってね、他の世界へ輸出してるのもこれまで貯めてきた物の冷凍物なんだ、まぁそれもそろそろ底が尽きそうでね」
乾いた笑いを見せる老夫になんとも言えない気持ちとなる。きっとこんな事は初めてなのだろうと。
「せっかく観光に来てくれて悪いけどなんもない所に居ても時間の無駄だから早くこの世界を出なさい。科特隊とどこかの研究所の魔導師が調査してくれてるけどいつ解決するのか……そもそも解決できる問題なのかねぇ?ラゴン様の怒りを買ってたら尚更だよ」
溜め息を吐き漁師の老夫は去っていた。手に持つ空のバケツが余計に虚しさを引き立てていた。
「ルヴェラでそんな………それにラゴン様って………」
その話を聞いてはいそうですかと旅立つ零夢ではない、なぜなら彼はウルトラマンだからだ。
「………よし、この世界で起きてる事件を調べていこう」
港に人影が見える、そこで情報を収集しようと駆け出した。
「え?ウルトラマンゼロが!?」
「ああ、あのルートならルヴェラのはずだからきっともうそっちに来てるはずだぜ」
港に白衣を着た金髪の女性がトリガーが付いた小型通信機『メモリーディスプレイ』を片手に持ち、あのガンローダーのパイロットと会話をしていた。その白衣の襟には流星を模したマークのバッジが付いており、その顔付きもフェイトと瓜二つで、ぶら下げているネームプレートには『アリシア・T・ハラオウン』と書かれており、科学特捜隊の文字が入っている事から彼女もまた科特隊のメンバーの一人であるのが解る。
「てことはこの異常事態を察知してきたのかな?」
「そうかもな。それとしばらく取り調べに時間掛かりそうだから、あの転売宇宙人、バロバロしか言わなくなって何も聞けてないんだよ」
「あーバロッサ星人って無駄にプライド高いから………解った、こっちの調査は任せて」
「おう、頼んだぜ。まぁ心配要らねーか、そっちには心強い助っ人居るしな」
「まーねーじゃあまた後ねでベニオ」
そこで通信を終えて
「ウルトラマンゼロがこの世界に………どんな姿してるんだろ?」
脳裏に過るのは茶色いレザージャケットを羽織った青年と黒いスーツを着た優男の姿。
「さて、あの人達も今頃どこかで人助けしてるんだろうし私も頑張らなくちゃ!」
気合いを入れるアリシア、するとそこにメモリーディスプレイにまた着信が入り、ポケットから取り出して通信に出る。
「こちらアリシア……あ、シュテル、どう調子は?」
画面に映るのはなのはと瓜二つの顔付きをした赤いメガネを掛けた女性だった。
「あまりよろしくないですね、収穫がない訳ではありませんが」
答える『シュテル』は表情は変わらないが雰囲気だけで深刻な状況だと解る。
「レーダーで魚群の反応が確認できません。過去のデータと照合してもそのような記録、確認できませんでした」
投影型のモニターが浮かび、ここ数ヵ月の漁獲量が棒グラフで表示されるとそのグラフの差が激しく、今月の数値はゼロの位置にあった。それを見たアリシアも状況を理解した。
「ここまで落差が激しいなんて………これ、シーウインガーで潜った方がいいかな?」
「そうですね、海底の本格的な調査は行うべきかと」
「解った、本部に推進してみる」
「お願いします」
「あ、それとシュテル、このルヴェラにウルトラマンゼロが来てるみたい」
その話を聞いたシュテルの表情に微かに変化が現れた。
「貨物船の救助に向かったベニオが見たらしいんだ、それでルヴェラに来てるんじゃないかって」
「なるほど………ゼロが」
反応からして嬉しそうだった。
「そこもなのはにそっくりだな~シュテルは。ウルトラマンで好きなのがゼロってとこが」
「ゼロはカッコいいですからね」
当たり前だと言わんばかりに言い切るシュテル。
「あ、それと気を付けてね、ここ最近ルヴェラで赤い竜の目撃証言もあるから。もしかしたら怪獣かもしれないから」
「了解、そちらの方も対象として調査しておきますね」
ただの注意だったのだが話が早くて助かると思ったアリシアは通信を切った。
「さて、もっと詳しく町の人から話を聞かないと、ラゴン様って言葉も気になるし………」
思考するアリシア、あの漁師も口にしていた『ラゴン様』。アリシアの脳裏にはアーカイブに記録がある怪獣を思い出していた。
「アリシア?」
すると、そこに声を掛けてくる人物が現れた。その声の主が誰なのかすぐに解ったがまさかという感情もあり、おそるおそる振り向いてみると予想通りの相手がそこに居て笑顔を浮かべた。
「零夢! 零夢じゃん!」
「よう、アリシア」
そこに現れたのは零夢だった。二人は知り合いなのも当然、アリシアはフェイトの姉のため関係があった。
「まさかルヴェラに来てるなんて!」
「まさかは俺の方だよ、アリシアが来てるなんてな……もしかして漁獲難について?」
ゆっくりと頷くアリシア。
「それで科特隊が調査してるんだけど手掛かりが掴めなくて、それで調査中に隊員が町の人から聞いたラゴン様って言葉が歴史に関係してる可能性があるから私が派遣されたの」
「アリシアは考古学者だからな………もしかして一人?」
「そんなわけないでしょ?もちろん他の隊員もね、いろいろあって今は別件に出動しちゃって」
その別件がバロッサ星人の事であるのはすぐに解った。本当に余計な事しかしないと呆れてしまった。
「だけどね、たまたまシュテルとレヴィがエルトリアから来ててね、一緒に調査してるんだ」
「テル姉来てるの!?」
「うん! それでね、ウルトラマンゼロが来てるかもって伝えたらすごく喜んでたんだ~シュテルもなのはと一緒でゼロが大好きだから」
照れそうになる零夢だが堪えた、いつかは明かす時が来るだろうが今ではないと本能に制止された。
「シュテルとレヴィもエルトリアに帰れなくて大変だから私の部隊の協力者になってくれてね」
「え?なんでエルトリアに帰れないんだよ?」
「知らなかったの?今、エルトリアは原因不明の電磁波で通信が遮断されてて船の運行が停止してるんだよ?」
初耳だった、次元船で移動してれば解っただろうがイージスの力で移動しているためそういう情報には疎かった。現にルヴェラの漁獲難の事は知らなかったのだから。
「きっとウルトラマンゼロもこの世界の異常事態に気付いて寄ってくれたんだろうな」
伝説のヒーローなためそう思われても無理はないのだが実際は。
(魚食いたいから立ち寄ろうとしただけなんだよなぁ)
が本当の答えである。ルヴェラの新鮮な海の幸で一人バーベキューでもしようと考えていたのだ。
(今正直に話すか?けど戸惑わせるだけだし、状況が状況だから尚更か)
ここは状況を見計らって話すことにしようと考えた。
「そうだ、さっき漁師のオッサンから話聞いたんだけどラゴン様ってさ」
「零夢も気付いたか……多分、これだよね?」
メモリーディスプレイのモニターに緑色の人型怪獣を表示した。
「海底原人ラゴン、地球にも数多くの言い伝えを残している怪獣だね」
「それを連想するよな」
怪獣の扱いは世界によって様々だ。悪魔と恐れられていたり、逆に神様として称えられていたりする。
「まぁ零夢は海以外を楽しんで、ここは私達の仕事だから」
専門家にそう言われてしまったら頷くしかない。無理に協力しても迷惑のはずだ、それならば独自で調査をした方がいい。
「解った、頑張れよな」
「うん。それとシュテルに来てる事伝えていい?」
「いいよ、言わなかったら後が怖いだろ?」
「そうだよ~シュテルからなのはにも伝わって大変なんだから~それで零夢はなのはといつ会うの?」
それを聞かれると困ってしまう。
「ごめんごめん、意地悪だったね」
「謝る事ないさ、じゃあな、なんかあったら連絡する」
「何もない事祈るよ」
零夢はアリシアと別れた。
「さぁて、何から始めようかな……とりあえず拠点を………」
アリシアと別れた零夢。まずは行動範囲の中心となるキャンプをどこかで張ろうと考えた。
「やっぱり通じないなぁ」
すると、そんな会話が耳に入ってきた。なんの変哲もない普通の会話だが零夢にはなぜかそうとは思えなかった。
「ガウマさん、どこかで行き倒れてなければいいんだけど」
振り向くと二人の少年少女が困っている様子だった。少年は青い短髪で右手の甲にSのような傷痕が付いていた。そしてもう一人は赤みが掛かった栗色のセミロングの少女で、スカートの短さからか、左足の太ももに少年と似た形の傷痕が見えていた。
「てか夢芽、携帯の充電大丈夫?」
「ちょっとヤバいかも。蓬は?」
「俺は完全アウト、やっぱり使いすぎてたなぁ」
「彼女とデート中に他の女の子と連絡してるのが悪いと思うんですけど~?」
「女の子ってただのクラスメイトだよ?夢芽だって知ってる」
「私はあんまり話した事ないから他人なんです、蓬がただコミュ力が高いだけなんです」
「もしかして俺責められてる?責められてるの?俺が悪いの?」
険悪な空気になってきてるカップル。夫婦喧嘩は犬も食わないとは言うが目の前でそんな喧嘩を繰り広げられていたら止めに入らない性格ではないため。
「ちょっと待った!」
二人の間に割って入った、突然の事で二人もきょとんとしていた。
「喧嘩できるのは仲がいい証拠かもしれないけど赤の他人の前でやられたら気まずいから! 話は俺が聞くから!」
これを静めるには自分が話を聞かなければならないと考えた零夢。見ず知らずの男の子に止められてしまった事から冷静さを取り戻した二人、せっかくの申し出だからと話す事にした。
「うわぁ~夢芽の気持ち解るわ~」
「そっちの味方なの!?」
話を聞いた零夢はセミロングの少女『南夢芽』に同調していた。
「ほらぁ! やっぱり蓬じゃん!」
「いやいや! そこは男だから俺の味方してくれるんじゃないの!?」
青髪の少年『麻中蓬』はその疑問をぶつける。
「俺の場合は姉ちゃんなんだけどさ。姉ちゃん、コミュ力高くて気付けば沢山友達が居た訳よ。そしたらその友達と多く遊んでるようになってな………スゲーやきもち妬いた」
「そういう事だよ、解った?蓬?」
二対一では敵わないと腑に落ちないが蓬は負けを認める事にした。
「だけどありがとう零夢君、話聞いてくれて」
「そこは蓬に同意見。じゃないと私達、ずっと喧嘩してたと思うし」
「だけどそれほど自分の気持ちを言い合える訳だろ?俺としてはかなり羨ましいよ」
自分も蓬と夢芽みたいになのはと気持ちをぶつけ合えていればと思ってしまう。それほど二人は自分達の気持ちを相手に隠していないという事になる。
「えへへ~そうかな~?」
ニヤニヤし始める夢芽、先ほどまで怒っていたのにその怒りはどこへやら。蓬に対しての好きな気持ちはかなり強い方だ。無論、蓬も静かだがその気持ちは強いと感じられた。
「そういえば二人は観光客か?それにしても荷物が少ないようだけど?」
荷物はあるがそれはただ買い物に行くだけの手荷物、二人の関係からしてデートなのは解るがただのデートでこの世界に来るのだろうかと疑問に抱いた。
「やっぱりここ観光地なの?なんかそれっぽい看板あるなぁと思ったけど、それに日本語書いてあるけど聞いた事ない地名だし」
同盟世界の観光地には多くの多言語の看板が置かれている、そのため日本語でもルヴェラの記載はある。だが、その土地の名前が解らないとすると話が変わってくる。
「もしかしてお前ら、この世界とは別の世界の人間か?いや、厳密に言うと俺が知ってる地球とは別の地球か?」
「えっ!?解るのそういう話!?」
「まぁな、ここじゃ当たり前の話だからな」
それから零夢は説明した、この次元の作りを、社会を簡単に。
「すごいSFチック」
「内海君が聞いたら喜びそうだね」
二人は零夢の話を聞いても落ち着いて解釈していた。どうやら似たような体験をしているようだ。
「となると前にも別の世界に行った事あるのか?」
「うん、その時は同じ地球だったけどまさか異世界だなんて思わなかったよ」
このマルチバースは一体どうなっているのだろうかと突っ込みたくなった。蓬や夢芽のようなそういうの関係無さそうな人間が異世界を行き来してる事に。
「それで蓬達の世界はどんなとこなんだ?」
そして次は二人が自分達の世界について説明を始めた。
『グリッドマン』、『ダイナゼノン』、零夢には聞き慣れない言葉だったがそれらはウルトラマンのような存在で蓬と夢芽はそのダイナゼノンに乗り戦っていた事を聞いた。
「グリッドマンにダイナゼノンか………」
「うん、俺達もあまり理解しきれてないけどグリッドマンが創造した世界が幾つものあって俺達はその中にある世界の人間って事みたいなんだ」
大分噛み砕いて説明しているが理解できる範囲だった。創造が世界を作る、あり得ない話ではない、空想の産物だった怪獣が実際に現れた宇宙も幾つも存在しているのだから。
「よく受け止めきれてるな」
「私達もあまり理解してないからピンと来ないというか、まぁそれでも私達生きてるし」
「なるほどな」
深く考えすぎるよりかはいいかもしれない、自分みたいに自棄を起こしたりするかもしれないため。
「それで他にはガウマって奴がこの世界に居るんだな?」
「食料探してくるって出発したんだけど自分がどこかで行き倒れてないか心配で。初めて会った時も行き倒れてたし」
心配そうな蓬、すると、その隣から虫の声が聞こえてきた、腹の虫という名の虫の声だ。その流れてきた方向を見るとそっぽ向いている夢芽が目に入るが蓬からも同じ音が流れる。
「食料探してるって事は何も食べてないって事か」
「持ち合わせてたお菓子も少ししかなくて」
力なく笑う蓬、お腹を空かした人間が目の前に居る時にどうするか、そんなの決まっている。
「高騰してるってのにそこまで減ってねぇ……親父達、幾ら持たせてくれたんだよ」
町で買い物をしてから砂浜に移動した零夢達。そこで火を起こして料理をしていたのだが、零夢の手持ちは減っていなかった。節約すれば数ヵ月は持つ小遣いを持たされていたのだ。
「まぁそのお陰でお腹空かしてる奴らの腹を満たす事ぎできたからいいけどさ」
後ろを向くと零夢が作った料理を美味しそうに食べる蓬と夢芽の姿があった。
「美味しい~零夢君、料理本当に上手いんだね」
「実家が喫茶店でな、料理はできるようにしてたんだ。因みによく作るのはスイーツ、シュークリームだ」
「シュークリーム!?」
食べてみたいと言わんばかりの反応を見せる夢芽。
「まぁさすがに野外じゃ作れないからな………とりあえずさっき言った事でいいか?」
「うん、ここが俺達の知らない世界じゃないんだったらそうするしかないからね」
このまま二人を放っておく訳にはいかない、丁度アリシア達科特隊が来ているためそちらで保護して貰おうと考えた。頼りになる姉も居るためそちらにも協力して貰えるはずだ。それから食料を探して行き倒れている可能性がある蓬達の仲間の『ガウマ』の捜索もすれば完璧だ。
「夢芽もそれでいい?」
「うん」
そのやり取りを見て蓬が保護者のように思えてきた。ああいう風に喧嘩もよくしているだろうが今の二人のスタンスなのだろう。
「それじゃあ連絡を………ん?」
上の方から気配を感じて空を見上げる零夢。すると、自然と笑みを溢していたら傍にびしょ濡れの黒いスーツを着る左の頬に蓬達と同じ傷痕が残るピンク髪の青年に肩を貸した二人の女性が降りてきた。一人は黒いドレスを纏ったなのはと瓜二つの顔をしたシュテルともう一人は体のラインがくっきりと出る黒いボディースーツに白いスカートを付け、背中から青いマントを垂らしたフェイトとアリシアと同じ顔付きをした水色の髪をポニーテールに結んだ女性だった。
「煙が上がってるって思って見に来たら零夢がいた!」
「あ、久しぶりレヴィ、それに」
水色の髪の女性『レヴィ・ラッセル』に挨拶すると零夢はシュテルを見る。
「テル姉も、久しぶり」
「はい、久しぶりですね零夢」
無表情から微笑みを見せるシュテル、彼女がもう一人の姉である『シュテル・スタークス』だった。
「ガウマさん!?」
蓬が驚きの声を上げた、二人が抱えてるこの青年こそがガウマだった。蓬が近付くとシュテルは彼にガウマの腕を預けた。すごい偶然だと思いつつ冷静に零夢はシュテルに尋ねた。
「どこで見付けたんだよ?」
「沖合いで漂っているのを救助したんです。ただ漂流してるだけと思ったら」
シュテルが答えを言う前に本人が答えを言う、腹から鳴る音で。
「やっぱり行き倒れてたんですか!?」
「よ、蓬か………わ、悪い………沖に行っても食える魚が見付からなくて気付いたらこのお二方に助けられてた」
震える声で詫びるガウマは力なく笑っていた。
「ガウマさん、私達は大丈夫だから、はい」
魚の串焼きをガウマの口に突っ込む夢芽、一瞬きょとんとなるがすぐにその口内に広がる風味と味に頭が覚醒し、串を掴んで一気に食べ始めた。
「うめぇー! 焼き加減と塩加減が最高だぜー!」
「まだまだあるから食えー」
零夢の許可を得るとガウマもそのバーベキューに参加、その勢いがある食べっぷりに満足感を得ていた。
「高かったんじゃないですか?今のルヴェラの状況を考えると」
「そうなんだけどさ、親父達がスゲー持たせてくれてまだ余裕あるんだよ。どんだけ持たせたんだか」
「そうでしたか、なら後でレシートを、私が払いますから」
「いや、いいから。料理したかったし、目の前で腹空かしてる奴を満たすのが料理人の役割だし」
「ここはお姉ちゃんである私が持ちます」
「姉ちゃんもだけどテル姉もなんでそこまで甘やかしてくるの?かなり反抗してるよ?」
「その程度で反抗ですか?お可愛いですね」
ふふっと微笑むシュテル、クールそうな雰囲気なのに零夢が絡むとこうも表情を崩してくるのはどこか蓬とやり取りしてる夢芽を思い出す。
「そういえばエルトリア帰れないってアリシアから聞いてたけど大丈夫なのか?」
「私達もですが、ディアーチェ達も大丈夫のはずです。最近ちょっとした出会いがありましたので」
その出会いとはなんだろうか、師匠との話を思い出していた。
「もしかしてリクか?」
「よくお分かりですね」
すると、シュテルは耳元まで近付き、小さく口を開いた。
「さすがウルトラマンゼロですね」
「はっ!?」
これには冷静さを保てず、驚きの声を上げてしまった。
「なんで解ったんだよ!?」
「解りますよ、私もお姉ちゃんですし」
理由になっていない気がしたが何か引っ掛かる。
「私もお姉ちゃん?まさかな~」
おそるおそる聞く零夢だが予想は的中していた。
「ナノハも気付いていますよ?青い髪のお兄ちゃん」
「やっぱりかー!」
頭を抱えた、なぜか自分の秘密は二人の姉にバレバレな事に。
「何々?どしたの?」
何事かとレヴィは首を傾げて近付いてきた。
「あ、零夢に全部知ってると話しただけです」
「あーそれは驚くから、僕達とナノハは知ってる側だからね」
「レヴィも!?」
士郎しか知らないと思っていたらこんなにも知る人物が居るとは思わず困惑してしまった。
「僕達は闇の書の中から感じた力を零夢から感じてたからね、それでガイさんに聞いた」
「ナノハは最初からのようでした、成長すればするほど青い髪のお兄ちゃんにそっくりだって」
「んだよ………姉ちゃん、最初から知ってたんだ」
少し項垂れる零夢。
「ナノハの事を怒らないであげて下さい、彼女もかなり悩んでましたから、あの事もありましたし」
「あ、ああ………全部引っ括めて弟にしてくれたんだもんな姉ちゃん」
更に感謝する事になるとは思ってもみなかった。もっと感謝するつもりではいたが。
「まぁ話は戻すけどリクは、ジードはエルトリアに来てるんだな?」
「はい、ウルトラセブンの軌跡を追っているんですよね?」
「ああ、テル姉達は何か知らないか?」
「すみません、そちらに関しては何も………」
自分の実の父親が行方不明なのだ、何も情報を持っていない事に申し訳なさを覚えるシュテル。
「謝らないでよテル姉、親父の事だから多分大丈夫のはずだから」
何度か生死不明で行方不明になった事もあり、そこから生還しているためどんな状況だろうと無事であるはずだと。
「まぁ何となく予想はしてたけどリクの奴、テル姉達と合流してたんだな」
「宇宙甲殻怪獣バザンガの飛来の際に。それからも大変でしたが」
「なんで?」
「バザンガ飛来の影響か、エルトリア各地に生息する怪獣や魔導生物達が活発となってしまったんです、まるで外敵がテリトリーに侵入したかのように」
一体の宇宙怪獣の飛来により地球怪獣の活動が活発になった事例は幾つもある。そのバザンガもその一例となってしまったのだろうが大体は何者かの意図が隠されている場合がある。
「そのバザンガってさ、兵器っぽさあったりしないか?」
「さすがですね、DPUや博士の見解では生体兵器である事が推測されています。なので」
「何者かが送り込んだ、か」
同じ予想を考えていた、例の調査対象である時空波といい、蓬達の事といい、多くの問題が発生している。零夢はギャラクシークライシスのような事態にならなければいいと願った。
久しぶり過ぎて驚かれてる気もするけど今更どの面下げて投稿してるんだという声もあるかも…まぁ詰まらない文ですが細々と続けていきます。では。