※この作品は、ひたすらプリキュアsideがボロボロになります。
翌日。
「みゆきちゃん達、何があったんだろう? 無事だと良いけど……」
場所は変わり大貝町、洋食屋ぶたのしっぽ亭にて。
一人の少女がテレビを見ながら不安そうな表情を浮かべていた。
彼女の名前は相田マナ。この町を拠点とするドキドキプリキュアのリーダーである。
テレビでは、七色ヶ丘市で発生した女子中学生の行方不明事件を報道している。
そこで読み上げられた行方不明の女子中学生というのが、マナ達の友人でありプリキュアの仲間であるみゆき達なのだ。
「大丈夫よ、きっと。みんなは私達の先輩なのよ?」
そんな彼女を元気づける様に声をかけたのは菱川六花。マナと同じく、この町を守るプリキュアである。
「そうだよね……。うん、ありがとう、六花」
「気にしないで」
六花はニッコリと微笑み、朝食の準備に戻る。
今日は休日という事もあり、いつものメンバーが集まっていた。
「でもさー、やっぱり心配だよね……」
「マナ……」
マナの言葉に、真琴が同意して俯く。
「れいかも、やよいもなおも……、どうなったのかしら……?」
彼女達にとって、みゆき達スマイルプリキュアは直近の先輩である為、加音町のスイートプリキュアに並んで親交が深かった。
その為心配する気持ちもひとしおだ。
すると、亜久里が真剣な面持ちで口を開いた。
「とにかく今は待つしかありませんわ。連絡を待つのです」
「それは分かってるんだけど……」
「何かあったら連絡してくるはずですものね」
「うん……」
「それにしても……この行方不明事件、なんだか妙ですね」
「妙って、何が?」
「これはオフレコなのですが……実はれいかさんの部屋だけ、何か鋭い物を刺した様な覚えの無い傷があったそうです」
ありすが持ち前の四葉家の財力で調べたのか、関係者しか知らない情報を話す。
「えぇッ!?」
「そ、それ本当!?」
「ええ。それと、皆さん外に出た形跡は無いのに、靴が無くなっていたと」
「ちょっと待って、それじゃあ……」
「犯人かみゆきさん達本人かは判りませんが、恐らく不思議図書館で移動したのだと思われます」
「そっか、それなら鍵とか関係無いもんね」
ありすの説明に納得するマナ。
だが、その話を聞いている内に、六花の表情が段々と険しくなっていく。五人の中で最も慎重で思慮深い彼女は、ありすの情報から考えられる悪い結果を想定している様だ。
「……ねぇ、もし本当にそうだったとしたら……まずい事になるんじゃない?」
「え?」
「どういう事ですか、六花?」
「……例えば、れいかさん達がもう既に殺されてる場合。もしくは、監禁されてる可能性」
「ッ!?」
「な……!」
「ちょ、ちょっと!」
あまりにも物騒な言葉に、全員が驚きで目を丸くする。
「あくまで、そういう可能性があるかもしれないっていう話よ。確かに私達プリキュアは強いし、何度も世界を救ったわ。だけど、最強ではないかもしれないし、無敵でもないのよ。だから……もしもや、最悪の場合も考えておかないと……」
「う、嘘だよ!そんな訳……あるわけ……」
マナは否定しようとするものの、語尾が弱くなっていき声が小さくなっていった。
そして、沈黙が流れる。
そんな中、マナは意を決して顔を上げた。
「……行こう!」
「え?」
「今から、スマイルプリキュアの皆を助けに行くんだよ!」
「……正気? 何処にいるか分からないのよ?」
「それでも行くよ。だって、私達は後輩だし……友達だもん。行かなきゃ……ダメだと思うんだ」
マナは決意の眼差しでそう言い切った。
すると、他の四人も彼女に賛同する様に力強く首肯する。
「決まりだね。それじゃあ早速───」
「此方から参りましたから、その必要は無いですよ」
突如、今まで存在しなかった声が響いた。
『ッ──!?』
その声に全員の視線が集中する。
そこには、中高生くらいの少女が立っていた。
「誰!?」
「何時から其処に?」
五人全員が、突如現れた少女に気取られない様に、しかしどんな動きにも対応できる様な自然体で鋭い目付きを向ける。
「初めまして。私、円霧ヒナタって言います」
少女はまるで、そんな五人の視線を意にも介さない様に豊かな胸を隠しながら名乗った。
「しがない宮仕えですので、そう身構えないで下さい。私は皆さんの御友人の居場所を知っている、という事を伝えに来ただけです」
「本当……?」
「はい。今どこにいるのかも、犯人が誰かも」
「教えてくれる?」
「勿論。すぐにでも連れて行きますよ」
そう言って、ヒナタはニコッと微笑んで手を伸ばす。握手の姿勢だった。
マナがそれに応えて握手を返そうとして……
「煌めきなさい、トゥインクルダイヤモンド!」
「閃け、ホーリーソード!」
「エースショット! ばきゅーん!」
それより先に、変身した六花達の攻撃がヒナタに直撃した。
「ちょっ……六花!? まこぴー!? 亜久里ちゃん!?」
「マナちゃん、此方へ!」
驚愕するマナを他所に、ヒナタはそのまま吹き飛ばされ壁に激突する。その間に変身したありすがマナの手を引き、ヒナタから遠ざける。
「皆、何してるの!?」
「マナこそ無用心過ぎよ! 状況から考えて、明らかにあの子が犯人か、犯人の仲間でしょう!?」
マナの非難に、六花は叱責する様に怒鳴り返す。
「それに、この子……全然気配を感じなかった……。敵よ!」
真琴も警戒心を露にして睨みつける。
「……そうですわね、只者ではありません」
「ええ。油断しない方が宜しいですわ」
ありすと亜久里も同意し、戦闘態勢を取る。
するとその視線の先で、ヒナタはゆっくりと立ち上がりながら着衣の埃を払う。
「警戒を解かなかったのは良かったですよ。……実力差を理解出来ずに、立ち向かおうとしているのは減点ですが」
「ッ……」
「大人しく、お友達の所へ逝って下さい」
「それって……まさかッ!?」
「えぇ、お察しの通り死んでますよ。五人共、私の仲間の手で送らせて貰いました」
『ッ──!?』
その言葉を聞いた瞬間、マナ達の顔色が青ざめる。
「そ、そんな……どうして……?」
「どうしてと言われても……主の意向としか。それが平和に繋がるんだから、従ってほしいな」
困惑する六花達に、ヒナタは口元に手を当てて考える素振りを見せる。
「心配しなくとも、貴女達の持つ力を我々に還して頂ければ直ぐにでも逢わせてあげますよ?」
「それってつまり、私達も殺すって言ってるのかしら?」
「理解の速い人は嫌いじゃないですよ」
ヒナタは肯定を示す様に笑いかけた。
「ふざけないで! そんな事させる訳無いでしょ!」
「マナ!」
激昂したマナが素早く変身し、ヒナタに向かって飛びかかる。
だが次の瞬間、空中に躍り出たマナの右腕があらぬ方向へ折れ曲がり、捻れ畳まれていった。
「ひ、ぁ──あぁぁぁああぁあああぁぁぁぁああっ!!?!?!!!??」
突如ミンチ肉の様に原形が分からない程グチャグチャになった自分の腕を見て、混乱と恐怖で絶叫するマナ。
「マナちゃん!」
「マナッ!」
「マナさん!」
「マナ!」
他の四人が慌てて駆け寄ろうとして──その両足が同じ様にグチャグチャと不快音をあげながら折り畳まれていった。
「あぎゃあああァッ!?」
「うぐぅうううッ!?」
「あがあアアッ!?」
「ひ、ぁッ!?」
悲鳴を上げ、倒れ込む五人。
ヒナタは口を手で隠す上品な笑いを浮かべながら、倒れるマナの顔を爪先で上げる。
「相田マナちゃん、だったかな? 敵の能力も分からないのに、突っ込んじゃ駄目だよ」
痛みに顔を歪めるマナを見ながら、ニコニコと笑みを向けるヒナタ。
その笑顔は愛らしいものなのに、背筋を凍らせる様な冷たさを感じる。
「な……何で、こんな事を……ッ!?」
「あれ~? 話を聞いてなかったのかな? 私は、私達の主が貴女達に貸していた力を返してもらいに来たの」
「ちか、ら……?」
「うん、プリキュアの力の事。貴女達のその力はね、元々私達の主が数万年前に気紛れで貸し与えたものなの。で、力の整理にあたって貴女達プリキュアの力は返還してもらう事になったから、私達が回収に来た訳。理解してもらえた?」
「そん、な……勝手なこと……!」
「そう言われても……もう決まったことだから。というか抑、この世界もその住人も、私達の主が大昔に暇潰しで作った物なんだよ。勿論、貴女達が今まで戦ってきた敵もね」
「そんな……嘘でしょ……?」
「本当。つまり貴女達が必死に守った世界も、貴女達のドラマチックな戦いも、人生や存在そのものも、主の退屈を紛らわす為だけに作られた消耗品なの」
「…………」
ヒナタの告げる残酷過ぎる真実に、マナ達は愕然とする。
自分達の戦いが、守ってきた世界が──全てが無意味だと聞かされれば、当然だろう。
「ま、そういう事で……大人しく力も命も返してくれる?」
「嫌……だ……」
「……ふーん、そう……じゃあ仕方ない」
残念そうにそう呟いたヒナタは、途端その身体中から無数の触手を伸ばした。
「何を──」
「貴女達が『はい』って答えるまで、色々追い詰めてみようかなって」
そう答えたヒナタの触手の先には、マナ達の家族や友人知人の姿があった。
「やめ──」
「スタート」
ヒナタが合図をした途端、人々の体が捻れ折り畳まれていく。
まるで雑巾でも絞るかの様に、人々は醜く捻じられていった。
「あ……ああぁ……ッ」
その光景を見たマナの顔色が、真っ青に染まっていく。
さっきまで確かに生きていた人達が、バキボキと不快な音をたてながら『醜悪な肉塊』に変わっていく。潰れて流れる血や臓物が、雨の様にマナ達に降り注ぐ。
「どうしたんですか? 早くしないと、大切な人達がどんどん壊れちゃいますよ?」
ヒナタはクスリと笑いながら、愉し気にマナ達を見つめる。
「止めてぇええええええええええええっ!!!!」
マナは叫びながら、ヒナタにすがろうとする。
だがそれより先に、マナの左腕と両足、六花達の臓器が捻り折り畳まれた。
「が、あァッ……!?」
「う、ごぉおおおッ!?」
「あがァッ!?」
「ひぎぃいいいっ!?」
「うわぁああああっ!?」
悲鳴を上げるマナ達の体が、更に捻じり折れて行く。
「はい、これで全員。結局貴女達が最後まで首を縦に振らないから、この町の人達全員死んじゃいましたね。つまり、これは貴女達が殺した様なものですね」
「ッ────!」
その言葉を聞いた瞬間──マナの中で何かが崩れ落ちた。
それは怒りでも悲しみでも憎しみでもない。ただただ虚無感と喪失感が心を満たしていき、やがて絶望が胸を埋め尽くしていく。
「…………殺して、下さい」
「へぇ?」
マナは掠れた声で、ヒナタに懇願する。
「殺して、ください……。あたしはもう、生きてても意味がないですから……」
生きる事に執着する意志は、とうに消え失せていた。
自分は誰かを守る為にヒナタに抗ったのだ。なのに、その自分が守るべき者を殺してしまえば、一体何の為に抗ったのだろうか。
それならいっそ、死んだ方がマシだ。
「やっと理解してもらえた様で。それじゃ、取り立ての時間です」
そう言ってヒナタ──
「──聖隸」
ヒナタがパチン、と指を鳴らす。
すると何処からともなく、巨大な黄金の十字架が出現した。
「あ、あぁ……ぁああぁぁ……っ!」
「マナ……ッ!」
「くぅ……ッ!」
それを見たマナは、まるで心臓を鷲掴みにされた様に胸を押さえて苦しみ出す。
六花達も同じく、呼吸する事すら困難になり、悶え苦しむ。
「それじゃあ、今度こそさよならね」
「い、ゃ……ぁ……ッ」
「マナ……ッ!」
力も命も削ぎ落とされていく中で、互いの存在を確かめ合う様に手を伸ばすマナと六花。
ヒナタはそれを微笑ましい物を見る様な顔を向けながら、より徴収する力を高めていった。
「あ、あ……ッ! あ……──」
そして遂に限界を迎え、その生命活動が停止する。
そして後に残ったのは、五人分の人骨のみ。五人が生きていた痕跡は、全て消え去っていた。
「キュアハート、キュアダイヤモンド、キュアロゼッタ、キュアソード、キュアエース。五人分の力と命、確かに返していただきました」
──ドキドキプリキュア 全滅
今回登場した能力は何でしょう?(キャラは難しいと思うので問いません。でも分かった人は挙手)