陰のボスになりたくて!   作:若林布吉

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なんか、ミスって新しい小説として投稿していたので、投稿し直しました。


敗者の再起

「ほらポチ、こっちよ!」

 

 アレクシアが何やらメモを見ながら、分かれ道の右ルートを指差した。

 現在、騎士団インターンシップの集合場所を目指して、王都の中をうろちょろしていた。何故、うろちょろしているのかと言えば、最初僕を呼びに来たアレクシアが集合場所を勘違いしていたようで、『紅の騎士団』の本部に行ってしまったのだ。そこで、集合場所が違うことを聞き、僕たちは慌てて移動しているのだが、中々目的地には着かない。

 本当にこの道で合っているのか、とは今のアレクシア相手には言えない。触らぬ神に祟りなしだろう。

 結局、僕は考えのまとまらないままに、今日を迎えていた。あれから何日たったかはあんまり覚えていない。いつも通り、鍛錬をしていたら一日が終わっていたのだ。春休みだからね。

 それに、体を動かすことは脳を活性化させるので、思考するのにぴったりだ。もっとも、脳が活性化したところで考えはまとまらなかったんだけど。

 アルファたちはずっと、どうやら僕のために『ディアボロス教団』なる組織と戦っていたという。僕がその場のノリで言ったことを信じて、ずっと頑張ってきたのだ。

 いつもの僕なら、「そっか。なんかごめんね」くらいで済ませていたと思う。『陰の実力者』に関係ないことなら、大体全部どうでもいいからだ。

 でも、今僕はそんな感じで軽く流す気分にはなれなかった。

 その原因には心当たりがある——シータの死だ。

 彼女たちとの付き合いはそれなりにある。逆に言えば、それだけの時間、僕の言葉が彼女たちを縛っていたともいえる。そして挙句の果てに、その命も失ってしまった。

 僕はどうすべきなのか。そんな言葉が、僕の頭の中をぐるぐると回っていた。

 

「ポチ、浮かない顔ね。何かあったのかしら?」

「朝から誰かさんに連れ回されて、もう疲れただけだよ。そういえば、そのポチってなに?」

「昔飼っていた犬の名前よ。あなた、なんか犬みたいじゃない?」

「人を犬の名前で呼ぶのは失礼じゃない? 前は訂正してたのに」

「あら、明日出せって言ったのに、一週間以上出さなかったあなたが悪いでしょう……ほら、着いたわよ」

 

 そう言って、アレクシアが指さしたのは、ただの広い空き地だった。土地代だけで家が建つような金額がするこの王都の中で、端の端とは言えどよくこれだけの何もない土地を確保しているなぁと僕は思った。ここに使うお金の半分、いや三分の一でいいから分けてくれないだろうか。

既にほかの参加者たちはだいぶそろっており、見たことのあるネームドキャラもちらほらいた。そして、そんな彼らの顔には同じ言葉が書かれていた。

アレクシア王女の隣にいるあいつは誰だ? と。

 

「ちょっと遅れたかしら?」

「いえいえ、他の方々も丁度来たところですよ」

 

 ピカピカの鎧のお兄さんが明らかに作った笑顔でそう言った。どう考えても嘘だろうが、王女相手なら致し方なし。それにしても彼の顔、どこかで見たことがある気がする。

 

「シド君も来ていたんですね」

「お前も来ていたとはな、シド」

 

 ピカピカの人と話し始めたアレクシアの後ろでぼーっとしていると、ヒョロとジャガが僕に話しかけてきた。

 うん、この場にいたのは最初から気付いていたけど、面倒そうだから放っておいたのだ。

 

「それでシド君、王女様とはどんな関係で?」

 

 案の定、声を落としたジャガが興味津々の顔で聞いてきた。僕の背後にはいつのまにか移動していたヒョロが退路を断つように立っている。まぁ、逃げるつもりなんてないけども。

 

「別に、どんな関係でもないよ。たまたまそこで会ったのさ」

 

 色々聞かれるのが面倒だったので、そういうことにしておく。ヒョロもジャガもこの説明で一応は納得してくれた。

 

「逆に、ヒョロとジャガはどうしてここにいるの?」

「ふっ、それを聞いちまうか?」

 

 ヒョロがさっと前髪をかき上げる。その際なんか鼻の香りが漂ってきた。これは、香水だろうか。

 

「とある極秘ルートでな、このインターンにアレクシア王女が参加すると聞いたんだ」

「ほう」

「騎士団のインターンだからな。当然、魔獣との戦闘もあるだろう。そこで、華麗に魔獣たちを倒せば、『まぁ! ヒョロさんってかっこいい!』ってなるかもしれないだろ? そこから始まる熱い恋愛劇。ふふ、今から胸焼けしそうだぜ」

「なるほど」

 

 彼らは今日も平常運転のようだ。

 

「それに、ですよ。シド君」

 

 頬を紅潮させ、夢の世界にトリップしてしまったヒョロの代わりに、今度はジャガがずいっと顔を近づけてきた。

 

「自分たちがこの学園に入って、一番最初に告白した相手は誰でしたか?」

「えー、誰だっけ?」

 

 もう一年も前のことだ。さすがに覚えていない。

 

「アレクシア王女ですよ」

「そうだったっけ?」

「はい。自分たちはここまで数々の女の子に浮気をしてきましたが、新年度は心機一転、アレクシア王女一筋で行こうと思います」

「へー、頑張ってね」

「あれでもジャガ、お前さっき『かわいい女の子を沢山引っ掛けましょう』とか言ってなかったか?」

「それとこれとは話が別ですよ! やっぱり男たるもの、多くの女性から好かれなければ! ……あれ、シド君?」

「ったく、どこ行ったんだあいつは」

 

 気付いたら、僕たちは周囲から変な目で見られていたので、とりあえず気配を消してその場から離れた。悪目立ちはよくない。僕はモブ騎士だ。僕が目立つのは、強者にやられる時だけで十分なのだ。

 

「あら、こんなところにいたの」

 

 中心から離れて、集団の外側に移動しているとアレクシアに声をかけられた。

 

「もう金ぴかさんとは話さなくていいの?」

 

 正直に言うと、僕は驚いていた。僕はそれなりに気配を消して移動していた。もちろん、姿は消せないので普通に目視はできる。たまたま見つけられたのかな? 『シャドーガーデン』でも、人混みの中じゃ、アルファやデルタくらいしか見つけられないんだけど。

 

「金ぴかさん? あぁ、彼のことね。えぇ、別にいいわ。それより、どうしてこんな端の方にいるのよ」

「人混みが嫌いでね」

「ローズ先輩の結婚式ではそんな様子はなかったけど」

「じゃあ、端っこが好きだから」

「じゃあって何よ、じゃあって。とりあえず、もっと前の方に行くわよ」

 

 アレクシアは僕の手を引っ張って、人混みの中を掻き進んでいく。やがて、一番前まで来たときに、悪役プロレスラーのような大男が前に出てきていた。

 

「俺が『紅の騎士団』のクイントンだ。そしてこっちが——」

「同じく『紅の騎士団』のゴルドー・キンメッキだ。よろしく」

 

 二人の名前を聞いた周囲の人々から「おぉ」という感嘆の声が漏れる。そんなに有名人なのか。

 

「今回のインターンでは、学生の皆さんには、オレたち二人と一緒に街道警備をしてもらう。まぁ、俺たちが行くのはベガルタへと続く街道だから、魔獣や盗賊もあまり出ない比較的安全な場所だ」

「だからと言って、油断するなよ。俺たちが危ないと思ったら、すぐにリタイアしてもらうからな」

 

 その言葉を聞いた面々の顔が引き締まる。それを見たクイントンは頷いて

 

「それじゃあ、出発するぞ」

 

 こうして、僕のインターンが始まった。

 

 

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