ここは旧理科準備室…一人分影が見える。
…そこに居るのは部屋の主人、アグネスタキオンだ。
「くくく…ついに完成したぞ。名付けて『めがっさ効く惚れ薬』だ!!」
怪しい笑みを浮かべ、もくもくと煙をたてる試験管を振るアグネスタキオン。
「なにやら怪しげな海外サイトから仕入れたモノが入ってはいるが……めがっさ効く成分だし外せない、よって大丈夫だねぇ」
そろそろ大丈夫じゃなさそうな色に変わってきた煙。
だがそれも、なんとか落ち着いてきたようである。
…液体の色は相変わらずだが。
「さぁて…後はこれを……紅茶に入れてトレーナー君に飲ませるか!!」
コンコン
「お疲れ〜、あれ?タキオン一人??」
哀れトレーナー君。
せめてマンハッタンカフェが一緒に居てくれていたら、惨劇を阻止出来たのかもしれないのだが。
幸か不幸か、予定よりも早く、一人で旧理科準備室に着いてしまった。
「とっトレーナー君!随分と早い到着だねぇ…!」
アグネスタキオンは手元の試験管を見る。
「まぁ、このままでいいかっ…よしっ!これを飲むんだっ!」ズイズイ
予定外にトレーナーを前にして、若干慌ててしまうアグネスタキオン。
「ぐわっ!?ぐぅおぉぉぉ!?なっ何これ何これ!?」ゴボボボ
「確認だが、ちゃんと飲んだねっ!?」
「ああ…口に入っちまったよ…」
アグネスタキオンは内心で成功だ!と小躍りしている。
(ふぅ…急にトレーナー君が入ってくるから紅茶で薄めずぶっかけてしまったよ)
察するところ、
どうやら、紅茶に入れる工程にも意味があったようだが…。
(まぁいいさ…それよりもだ。飲んで最初に見た者に強く惹かれる成分が、仕入れたモノの主成分だったはずだ…)
ババン!とトレーナーの前に立つアグネスタキオン。
「さあ、トレーナー君!準備は整った!!私を見たまえ!!」
「今見れねぇよ!!」
驚愕の事実。
「なっ何故なんだいっ!!?」
「…良いかタキオン。飲ませるんだったら顔面にぶっかけるような真似はやめてくれ…結構、目に入っちまったんだ」ショボショボ
しかし負けじと言う。
「ふぅん…良いから見たまえ!!」
「だから出来ねぇってのっ!!?」
「みーたーまーえーよーー!はーやーくぅーー!!」
もはや駄々っ子である。
ガチャリ
「…あ、トレーナーさん。お疲れ様です……タキオンさんも」
そんなカオスな状況の中…もう一人の部屋の主人が入室してきた。
「あーやっと見えるようになってきた…お、カフェお疲れ…?」ドクン
「あ、あーーー!!」
その悲痛な叫びはアグネスタキオンのものだ。
「うるさいですね…。どうかされたんですか?タキオンさんは??」
「ああ…実はタキオ、ン…が」ドクンドクンドクン
「トレーナーさんまで…様子が…??今度は何をしでかしたんですか、タキオンさん」
マンハッタンカフェに睨まれているアグネスタキオンは考える。
……この場を無事に乗り切る方法を。
アグネスタキオン誇る、天才的な頭脳をもって導き出された答えは…?
「カフェ、後で恨みなら聞くから…作戦は大逃げで…全速力で逃げてくれ。決して振り返らず、全速力で…いいかい?全速力で、全速力でだよ」
大逃げの提案であった。
「…?あの、おっしゃっている意味が良く分からないのですが」
『…カフェ……』
一旦気を失っていたトレーナーだったが、目を覚ましたようだ。
「あ、トレーナーさん…気が付いたんですね。良かったです」
『カフェ…』
だが先程よりも何割り増しかで様子がおかしい。
何が起きても良いように、
念のためアグネスタキオンは距離を取る。
「…なんでしょう?」
そのアグネスタキオンの行動を見て、更に訝しむ様子のマンハッタンカフェ。
『うまぴょいしよう』
「…はい?」
「…あ、あああ…ああぁぁぁ……実験は成功してしまった……」
気力が漲っているトレーナー、反比例のようなアグネスタキオン。
「…あ、あの。目がとても怖いのですが……それに何か変なオーラを纏っているような」
『…な〜に、ガイドラインが怖いのは最初だけさ…これはカフェ、君が始めた物語だろ』
「い、いや…違うんですけども……!?」
その様子をアグネスタキオンは冷静に分析していた。
そして…
「!?いかん!カフェ、避けるんだっ!!」
「は、はい??」
『ぐへへ、くけけけ…頂きますぅ!!』ガバッ
「きゃっ…!」バッ
アグネスタキオンの警告が有ったからか、間一髪で躱すことに成功したマンハッタンカフェ。
『…カフェぇぇ?避けないでくれよぉぉぉ』
「さ、さ、避けますよ!!正気ですか?…やっぱり全然正気じゃないですね??」
『げへへへへ』
怪しく笑い続けるトレーナー。
「仕方ありませんね…タキオンさん、手伝ってください。トレーナーさんも人間…二人のウマ娘の力で無理やり止めましょう…怪我させないように」
「いや…それは得策ではないねぇ…見てみたまえ」
アグネスタキオンが指差した方を、マンハッタンカフェは見る。
「嘘でしょう…」
先程トレーナーがマンハッタンカフェを求めて突っ込んでいった場所。
見ればトレーナーの手や顔の形に壁が抉れている。
「これはウマ娘数人がかりで抑えられるか、といったところだねぇ…」
「なに冷静に分析してるんですか…!」
『か、か、カフェぇぇ、あ、愛してるぞぉぉ』
「ひっ…本当に怨みますよ、タキオンさん!!」
マンハッタンカフェはトレーナーに相対し、考える。
…今ここにいる二人がかりでも、取り押さえられない。
説得は……無駄なようである。
ならば……
「…タキオンさん、本当なんとかしといてくださいよ?……逃げますっ!」ダッ
『待ってくれよぉ〜、カフェぇぇ』バッ
「やめてくださいっ!!」バシン
「ナイスヒットだ!カフェ!!……大丈夫、死んではいないさ」
「あとで、トレーナーさんにも一緒に謝ってくださいね、絶対に……それでは」
走り去っていくマンハッタンカフェ。
その後ろ姿を見て、アグネスタキオンは呟く。
「やれやれ…なんでこうなっちゃうかなぁ」
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