束さんがやっつけちゃうぜ! 作:かきごおり
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年齢の計算間違ってたので束が年を取りました。冒頭の年齢も差し替えました
世界初のISの大会「モンド・グロッソ」発表は瞬く間に世間を震撼させた。
開発者である篠ノ之束は自身を「天才・クールビューティー」「世紀の大発明家」「妹大好き束ちゃん」などを自称する奇人ではあるもののその才覚は折り紙付き。ISを発表する以前でも現在実写ドラマ版が人気を博している「インフィニット・ストラトス」シリーズの原案や自身がプロデュースする独創的な服装のブランドやグッズ展開などIS以外の業界の貢献に事欠かない女性だ。
弱冠18歳の彼女の動向には世界の全てが注目せざるを得ない。
今回は独占インタビューで彼女の素顔について迫りつつも、この秋に公開が決定した実写映画「インフィニット・ストラトス」最新情報についても紹介していく。
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記事にとやかく書かれたりもしたりしつつ、現状「モンド・グロッソ」の計画進行は順調だ。国にも連携してもらって予選を現在進行してもらっている。各国で実用的な第一世代も仕上がっているので子供のお遊戯会にはならないことだけは確定している。
『私』は広告塔として世界各地に飛び回っていろんな記者や番組に出ている。ついでにグッズの布教、スポンサーの協力もお願いする。国家予算もタダじゃないからね。大会するのに食事処とか宿泊施設とかないと困るし。
ちーちゃんはお休みだ。『私』と違って勉学にも頑張ってもらわないと。箒ちゃんといっくんも剣道や学業で大忙しだ。
ISも会社で独自開発しているところもちらほらと出つつある。
国との顔繋ぎや同業者の顔を直接見るってのもいい刺激になるはずだ。想像力を掻き立てる起爆剤になってくれることを期待しよう。
やっぱり、アニメの文化ってすごいね。ドイツとか『俺』のサインもらって号泣している人もいたし、久しぶりに笑顔になった。
ファングッズも軒並み揃えていると聞いてちょっと引いたけど。
最初の方は管理していたけど今のISグッズの監修は7割くらいは色々会社を買収して合併して総合商社となっているウチの会社が勝手に出しているから相当数あったはず。
下手したら日本円にして4桁万円は掛かってそう。ファンの熱意ってすごい。
唯一の楽しみは土産屋で買うお土産を家族やちーちゃんのところに輸送するところだ。この鰻ゼリー羊羹*1とか、エスカルゴパンケーキ*2とか、錠剤カレー*3とか。世界の食文化は広いぞ。
『私』は食べる暇ないので、適当に大体なんでも食べてるけど。
海外旅行と言えるほどお気楽なものじゃないのだけが残念だ。他に色々やることあるしね。
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大会の目的は主に二つ。
一つ目はさっきも言った企業と政府の顔繋ぎ。それによる技術力強化。『俺』は宇宙のことしか考えていないから開発方面も実直なものも多い。飛行能力や装甲関連とかね。
時々、プライベートロケットとかふざけているけども。あれも必要に駆られてだ。デザインはかなり趣味だけど。
企業連中には突飛な発想に期待している。使えるかどうかはともかく。
二つ目はISの搭乗者人口を増やそうってこと。現状、女性しか乗れないし、空を飛ぶということしか分からない曖昧なイメージ、あと普通に操作難易度の高さからなかなか搭乗者希望という女性は揃わない。
ここでオリンピック的な祭典をやることで知名度を上げるし、こういった活躍の場もあるんだぞってアピールできる。あと、あんまり言いたくないけど男性の出資も見込める。ISスーツはね、結構スタイルはっきりわかっちゃうからね。うん。
三つ目は、って二つしか目的ないって言ったって?それはそうなんだけど、あくまでそれは『俺』のIS発展のために重要な目的なんだ。最後の三つ目は『私』の個人的な感想。
『俺』の友人が活躍するところを見たいじゃないか。
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やっと返却された「白騎士」だったが、コア以外は一旦廃棄、新規造形する。最初はこれが『私』のベストだったと思っていたけど、構造材やハイパーセンサーとの連携に使用していたバイザーも省略できるようになったし、いくつか改良点が見つかった。スラスターの配置なんかもそうだ。ちーちゃんの開発したテクニック、瞬時加速に対応した新型のスラスターに変更も必要だし。あれってスラスターの負荷大きいんだよね。
せっかく大会もするんだからニューモデルお披露目したい。ド派手にいこう。
けど、結構イジるから開発時間が結構掛かる見込みだ。大体三ヶ月?あと、人工島でやっている作業の監修もしなくちゃいけないから意外と時間はぎりぎりになるかもしれない。後は取材*4とか取材*5とか取材*6とか。人気者は辛いね、全く。
ひとまず、ちーちゃんの現在の肉体スペックも測り直して万全と行こう。ちーちゃんの意見も聞きたいから、早速これから会議だ。
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「姉さん、一体何をしているんだ」
おっ、箒ちゃんじゃん、久しぶり。定期的にビデオメッセージを送ってるけど生で会うのは本当に久しぶりだ。
今は夏休みだから『私』の家に来てもらっている。大会を間近で見てもらおうと関係者席で用意している。いっくんももうじき来るんじゃないかな。一緒にちーちゃんの勇姿を見てもらおうって魂胆だ。
成長期ってやつだろうか、身長も伸びてきている。荷物はドローンに預けてもらって勝手に運んでおくから。売店も最近できているから荷物に不備があってもなんとかなるけどね。刺激的なラインナップじゃないのが不満だけど。
「姉さんが押し付けてくる食品や、シャツやなんやらなんやらで私は常にいたような気がすらするぞ」
美味しいものを厳選して送っているからね。『俺』の慧眼に狂いはなかった。今、食べているカップヌードル*7もそうだ。
「後で送ってきたカップヌードルの箱は姉さんのとこに送り返しておくぞ」
箒ちゃんの目は険しかった。あれぇ?
ともかく、『私』の今の服装はちょこっとマイナーチェンジした不思議のアリス風コーデに安全防止用のヘルメットからうさ耳型ガジェットが突き抜けている服装だ。工事バージョンの『俺』ってところか。まあ、ISコアのシールドがあるから見た目なんてオマケだけど。気分ってやつだよ。
箒ちゃんが来たのでささっと食べ切る。
ちょっと失礼。
「うおっ」
箒ちゃんの体を抱えて『私』は飛ぶ。
と言っても『俺』もISに抱えられているという入れ子状態だ。試験導入している無人機「ゴーレム」ちゃんだ。
『俺』の個人的な趣味で作られた機体で私が75%程度操作を預からないといけない。人形を全力疾走しつつ両手両足を使って動かしているみたいな理屈だ。
ISネットワークには接続していない。この「ゴーレム」はまだ世界に発表できるほどの性能は獲得していない。『私』以外がこれをやろうとすると「八足」見たくパンクするから。
「八足」達も元気にしているのだろうか。*8「ゴーレム」も見習って腕ももっと増やした方がいいのかも。やることが満載だ。
そうして上空500m程の高さまで飛翔するとスタジアムの全貌が明らかになる。
箒ちゃんは怖がっていないようだ。まあ、このぐらいの高さなら『俺』でも生身で降りられるし、*9いらない心配だったか。
明日には一般観客も入れて行う大規模大会「モンド・グロッソ」いよいよ開幕だ。
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開会宣言も無事終わり、順当に試合に移る。『俺』が主催者なので喋ることもいっぱいだ。
要約すると「『私』と一緒に宇宙を目指そうぜ!けど、こうやってお披露目する場もいるよね!今日は楽しもう!」みたいなことを手短に喋って壇上を去った。こういう儀礼的なやつ面倒だよね。失言してないといいけど。
各国から厳選された21カ国が堂々と飛び回る開会式は圧巻と言えるだろう。余興もここまでだ。5つあるスタジアムで同時並行して大会は行われる。スケジュールの兼ね合いとか同時開催されている技術エキスポ*10が開かれるのもあるから三日間行われる。まさしく祭典だ。
『俺』も解説や挨拶回りで目まぐるしく移動だ。本当に『私』じゃないと無理な過密スケジュールだ。食事を摂る暇もない。
秘書を雇うことも検討しなくちゃいけないかも。耐えられる秘書を探すのは今こうして出てるどの各国の代表選手よりハードル高いだろうけどさ。
落ち着いて見られるのは決勝戦だけ。それも終わったら優勝者発表のセレモニーがあるからそれにも出なくちゃいけない。大立ち回りが必要だ。
「ゴーレム」ちゃんには足として駆け回ってもらわないといけない。
部門はいくつかあって、代表的なのは格闘・射撃・近接・飛行技術。これらの部門で勝ち上がって優勝すると「ヴァルキリー」。順位ごとにポイントが割り振られているのでその総数が最も多い総合優勝者には「ブリュンヒルデ」の座が与えられる。『私』が思いつきで考えている割にはうまいネーミングセンスだと思う。
ちーちゃん用に用意したのは「白騎士」だ。
名前が変わっていないのは「千冬=白騎士」というネームバリューもあったから。けど、中身は割と別物だ。世代で言うと1.5世代か1.7世代相当くらいかな。
機動力は従来比170%向上。武装も二振りのブレードの他にレーザーライフルを搭載。スラスターも新規設計により加速度は瞬間的に2倍以上になる。ハイパーセンサーを始めとした機体の各セッティングもちーちゃん用に合わせた。一般度外視の専用構成だ。『俺』でも乗りこなすにはコツがいる。
時間がなくて練習期間が三日しかなかったけどちーちゃんならやり遂げるだろうという確信がある。
「行ってくる」
ちーちゃんなら問題はないだろう。だって、ちーちゃんだぜ?
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格闘部門優勝。
射撃部門2位。
近接部門優勝。
飛行部門3位タイ。
その他部門いずれもトップ4以上確定。
総合部門優勝『ブリュンヒルデ』
嘘、ちーちゃん強すぎ。『私』の久々の傑作機とはいえ、ここまで活躍するとは。少々ちーちゃんを見誤ってたかもしれない。
これまでの「白騎士」をはじめとする、ISは後の人間に合わせることを考慮している。よって、機体性能は抑えめ、というかそうでもしないと耐えられない設計をしていた。プログラムもそれ基準で構築、反射速度も一般人相応で加味している。
それを解き放ったちーちゃんのIS適性はとんでもないことになっている。銃弾を見てから切り裂いている。*11格ゲーだと小足をしようかなと思ったら昇竜余裕レベルの反射速度なんですけど。ほとんど相手になってなかった。*12
強いて言うなら、準決勝で当たってたアメリカ代表がちょっと粘ってたくらい?*13機体性能差もあるとはいえ中々頑張ったと思う。ちーちゃんが大会荒らししてなければ優勝候補だったと思う。現に射撃部門は一位だったし。
『俺』の幼馴染ヤバくね?
そうして優勝旗を『私』がちーちゃんに手渡す。
結局、身内で渡すのってどうなんだと思わなくもないけど。まあいいか、めでたい事だし。
これも彼女の実力がなければ到達できない領域だ。花吹雪も大量に舞っている。カメラが眩しいのももう慣れたけど。
おめでとう、ちーちゃん。
「私は…お前とも闘いたかったがな。お前が作った舞台、ISでな」
ちーちゃんは『私』にしか聞こえない言葉でつぶやいた。集音カメラもあるからほとんど口も動かしてないし、聞こえない。本当に『俺』だけにしか伝わらないセリフだった。
あの時も聞いた言葉に『私』は考えて、『俺』は悩んで、出そうとしたはずの声は巻き起こる大歓声に消えて誰にも届かなかった。
付けっぱなしにしているうさ耳型のガジェットのログを漁る。
あーあ、そうなるか。仕方ない。
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『あの圧倒的なブリュンヒルデ「織斑千冬」の優勝によって幕を閉じたIS初の世界大会「モンド・グロッソ」ですが、その主催者であり、ISの生みの親でもある「篠ノ之束」は突然の失踪を遂げてから数日、その足取りは掴めません。これを受けて関係各所は対応に追われています。また、この自由奔放さに疑問視する人々も』
テレビを消した。どうせ、どこも同じような話題ばかりだ。あの大会から一ヶ月経つというのに。
部屋の片付けを済ます。
引っ越しの準備は大方終わっている。後は姉が押し付けてきた大量の荷物だが、持ってはいけまい。食料だけは日が長いので冷凍保存できるものは持っていけるとは思うが。今日には発たなければならない。
「姉さん」
政府から通達された「重要人物保護プログラム」。
それに姉からたった一つだけ来たメールには『ちょっと疲れたので消えます。何かあったらここまで』とだけあった。説明もなしだ。姉らしいとも言える。
彼女の部屋と言っても最近はほとんど使われていなかった空間は綺麗さっぱり片付けられている。まるで、最初から何もなかったかのように。
家族は離散し、気軽に会えなくなるというこんな時に。
姉は一体何をしているのかという疑問がある。姉ならあっさりと解決できるのかもしれないという漠然とした期待があった。妹の私の事になれば、すぐに駆けつけるだろう確信も。「天災」とさえ呼ばれた姉ならば。
一夏に聞いてもわからずじまいだった。「千冬姉も分からなくて、各所をしらみ潰ししているらしい」と言うのだけは聞けた。一夏にもしばらく会えなくなるのか。思わず携帯に力が入ってしまう。
姉が本気を出せば、世界を欺くのも造作もないという事なのだろう。傍迷惑な姉だ。
「どこに行ったんだ、姉さん」
私は打ちかけたメールを消した。漠然とただ、空を睨んだ。
窓から見える風景は、星も見えない澱んだ夜空だ。
続きます
誤字報告ありがとうございます