ようこそホグワーツ卒業生の居る教室へ 作:貴方のはレビオサー
ロンドン・キングスクロス駅にて
「寂しくなりますね……」
一人の老婆が惜しむ様に口を開く。その姿はローブに鍔の大きな帽子、まるで絵本に出て来る魔女の様であり、その口調は穏やかで、優し気で、何処か少し哀愁が漂っていた。
「いえ、マクゴナガル先生。俺は生まれ育った場所であり、自分の道の世界であるマグルの世界で見聞を広めたいと決めました。もう悔いはありません。」
その場には老婆以外に、もう一人の少年が存在していた。少年もスーツを纏っており艶の有る黒髪や整った顔立ちから清潔感のある好青年に見える。その少年は老婆の言葉に気丈に返すと、しっかりと真っ直ぐな目で老婆の瞳を見据えている。すると老婆は静かに少年の頭を撫で、子供を愛でる様に頬に手を添えた。
「1年生の頃の事を覚えていますか? あの時の貴方には本当に手を焼いた物です。まさか貴方がホグワーツ4000年の歴史で前代未聞の飛び級を果たすとは、正直驚いたものです。」
老婆が過去の思い出話をすれば、少年は気恥ずかしそうに目線を逸らす。少年は血気盛んであり、最初に会ったばかりの頃は中々懐く事も無く、非常に苦労したが、随分変わったものだ。
「その際は、大変ご迷惑をお掛けしました。ですがこうして真人間になれたのはマクゴナガル先生のお陰です。」
「ええ、立派になりましたね……ミスターソウマ……貴方のこれからの行く末を見守れないと思うと、とても残念です。」
「マクゴナガル先生……」
少年は込上げる感情が抑えられないのか、老婆に抱き着く。老婆も少年の想いに応えて背中をポンポンと優しく叩く。抱擁を交わす老婆と少年。しかし線路の奥から列車の音が聞こえ、二人は別れの時が近い事を悟り、体を離し互いに向き合う。少年の瞼には涙が溢れており、本気で別れを惜しむ気持ちを表していたが、涙をぐっと堪え、別れの言葉を交わす。
「お元気で……日本のハイスクールを卒業してから、再開を楽しみにしています。」
「それでは……先生、壮健で。」
そして列車が駅のホームに停車し、扉が開く。少年はキャリアケースを引き摺りながら男性を一瞥すると列車に乗り始め、列車は車内放送を流すと線路の道へ進み始める。
「ミスターソウマ! 毎月手紙を送る約束を忘れてはいけませんよ!」
直後聞える恩師の声。二人は列車が発車しても、互いの姿が見えなくなるまで手を振り続けた。そして遠く離れ、互いの姿が見えなくなるのと同時に、これまで堪えていた何かが噴き出すように少年は涙を流し、お互いに別れを惜しむのだった。
◇
数日後、某バス停にて。
「えーっと……バスの時刻表の見方ってこれで合っているのかな?」
ホグワーツを首席で卒業し、日本に来てから数日、俺は恐る恐るバスの時刻表に目を凝らしていた。バス自体は魔法界でも珍しくないが、こうして乗るのは久しぶりだし、どうにも緊張感がある。
そしてバスが此方に停車すれば、俺は意を決して乗車する。思えばバスなんて何年ぶりだ? 下手したら2年生の夏休み以降に来て以降じゃないのか? もしそうなら随分俗世から離れた生活をしていた物だ。
そう言えばあの頃以降、飛び級する為に基本的に魔法の勉強漬けだったっけ、論文を発表したり新しい魔法道具やら魔法薬を開発していれば、周りから『ダンブルドアの再来』とか呼ばれる様になっていたけど、これでは端から見ればただの箱入り坊ちゃんだな。
たかがバス如きにこんな事を考える世間知らずな自分に自嘲しながら、俺は適当な席を探して腰を下ろす。思えば、周りの乗客はこれから俺が通うだろう学校の制服を身に付けており、皆同じ目的である事と察する事が出来た。
バスが発車すれば、ガタンゴトンと揺られ始め、俺は窓から外の景色を眺める。日本の景色は新鮮だ。最初はとそれ程変わりないと思っていたが、実は意外に違う。まず魔法界に比べてマグルの世界は非常に文明が発達している。最近は魔法省のハーマイオニーさんがマグルの技術を見習って少しづつ魔法界も発達してきているが、この世界は大違いだ。何より建物もそうだけど設備や施設の数が違う。
だがその後暫く、見慣れない日本とロンドンの光景の違いを楽しんでいたら、今度は一人の老婆がバスに乗車して来た。だが酷く腰が曲がっている。様子からして相当痛めている様だ、正直見るに堪えない、それほど乗車して来た老婆は痛々しく見えた。このまま放っておけない。
俺はポケットからホグワーツから持って来たお手製の香水を取り出すと、首元に2.3回吹きかける。この香水は魔法省の目を欺くために俺が調合した物。未成年者特有の『におい』を消す効果がある。これを付ければ魔法界にバレる事は無いだろう。因みにこれを取り出したポケットにも多く物が入る様に『検知不能拡大呪文』が掛けられている。
ここは人が多い、杖は使えない。仕方ないが杖無しで魔法を使う他無いだろう。まったく『未成年者はマグルの世界で魔法を使ってはいけない』など魔法省も面倒な法律を考えたものだ。まぁ俺はそんな頭の固い法律なんて無視するけど。
そして俺は周りの人にバレない様に指をパチンと鳴らすと、老婆の曲がっていた腰が真っ直ぐ綺麗に矯正された。
「あ、あら? 急に楽に……」
突如自分を苦しめていた痛みが無くなった事で驚いている様だが、これなら大丈夫そうだ。だがこれはあくまで応急処置、また負荷が掛かる様な事が有れば痛む事も有りうる。俺は老婆の様子を見届けると席から立ち上がり、老婆に席を譲る。
「お婆さん、どうぞこっちへ。」
「あら、ありがとねぇ……」
老婆をゆっくりと席まで誘導し、座るサポートをしてやれば老婆はにっこりと和やかな笑顔で礼を言ってくれた。礼を言われる為に腰を治した訳ではないが、こうしてお礼を言われるのは良い気分だ。
『次は高度育成高等学校前。』
その後吊革を持ちながらバスに揺られていると、車内にアナウンスが鳴る、どうやら目的地である学校は近い様だ。
高度育成高等学校―――国が設立した教育機関であり、東京の埋立地にある日本政府が作り上げた、未来を支える人材を育成する全国屈指の名門校。希望する進学、就職先にほぼ100%応える学校。3年間外部との連絡は断たれる上、学校の敷地内から出るのは禁止された寮生活になるが、広大な敷地内は小さな街になっており、不自由なく過ごす事のできる楽園のような学校。
これから自分が過ごすであろう学園に、俺は胸を躍らせながらバスを降りる。思えば俺がマグルの高校に通うなど思いもしなかった。まさかマグルと言う未知だらけの世界に足を踏み入れるなんて、ホグワーツに入学して間もない俺が聞いたら失神ものだろう。誇張抜きで。
「ねぇ、そこの君。」
その後、学校への道を目指して歩ていると、何者かに袖をちょいちょいと引っ張られる。どうやら誰かに呼び止められた様だ。
「―――っ!」
何事かと振り返った先に目に映ったのは、艶の有るストベリーブロンドの髪形をした美少女だった。魅力的なのは髪だけではない、澄んだ宝玉の様な蒼い瞳、そして何よりも思わず目が動いてしまう抜群のプロポーション。こんな綺麗で可愛い子ホグワーツには居なかった。恐るべし、これがマグルなのか。
「そ、その……どうしたんだい?」
マグルとしかもこんな美少女に話し掛けられる経験など無いので、思わず口籠ってしまう。全く口惜しい、魔法の知識は有れど、コミュニケーション能力がコレではこれから先が思いやられる。
「これ、落としていたよ。」
すると話し掛けて来た美少女は両手で持っていた何かを俺の前に差し出す。そこに有ったのは、俺が先程使ったばかりの『におい』を消す香水。
「えっ?! 何処に落としてた?」
「さっきバスから降りる時にポケットからだよ。」
その言葉を聞いて、背中から冷や汗が流れる。この香水は俺が魔法を使うのに必要不可欠な物。コレが無いとマクゴナガル先生にもポッターさんにも迷惑を掛けてしまう。出来るだけそれは避けたい。
「有難う、コレ凄く大切な物なんだ。」
「ううん、気を付けてね。ところで君も私と同じ高度育成の生徒?」
「えっ、そうだけど。」
「よかったらさ、一緒に学校まで行かない?」
彼女の放った言葉に一瞬思考が停止する。えっ、俺誘われた? こんな可愛い子に? 一緒に学校まで行こうって言われたの?
「いいの?」
「勿論! 私は一ノ瀬帆波。君は?」
「俺は、相馬彰人。」
「そっか、宜しくね。相馬君。」
お互い自己紹介を交わし、一之瀬と共に学校へと向かう。ここが高度育成高等学校……これから俺が3年間過ごす場所か‥‥俺は周りの光景を見渡しながら、前を歩く一之瀬についていく。周りには多くの人がクラス分けが張り出させてる屋外提示板に集まっていた。
「これは……クラス分けか。」
「うん、AクラスからDクラスまで有るみたいだね。」
掲示板を見つめる一之瀬を尻目に、俺はAクラスから順に自分の名前を探す。どうやら一之瀬は先に名前を見つけた様であり、俺が自分の名を見つけるより先に声を上げた。
「私はBクラスだって。相馬君は?」
「俺は……Ⅾクラスみたい。」
「そっか……別々みたいだね。残念。」
残念そうに肩を竦める一之瀬。やはり折角知り合った者と別々になると言うのは寂しい。何処か彼女も落胆している様に見えた。でもちょっと残念だな……折角知り合った子なのに。
「まぁクラスは別でもこれから世話になるかもしれないし、宜しくね一之瀬。」
「うん! 勿論!」
俺は自分に言い聞かせる事も兼ねて一之瀬にそう言うが、彼女はそれ程気にしていない様で、すぐに気を取り直していた。
「それじゃ行こうか。相馬君。」
これから俺が体験するだろうマグルの世界という未知の物。それは俺にどのような恩恵を齎してくれるのだろうか。俺は期待に胸を膨らませながら校内へと足を進めるのだった。
旧版はどのパートでも三人称視点ですが、改訂版では書きやすさや、表現のしやすさを重視して基本一人称視点で書いていきたいと思います。戦闘シーンとかなら三人称になるかも。
皆さんがホグワーツに入学するとしたら、何処の寮に組分けされると思いますか?
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グリフィンドール
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レイブンクロー
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ハッフルパフ
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スリザリン