勇者召喚するまで救われまテン   作:埴輪庭

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召喚者ピクセイン・ブルー

 ◆

 

 宮廷絵画師団とは何か?

 

 一般ピープルが想像しているような、お絵かきをしてキャッキャ騒いでいる集団では断じてない。

 

 彼等は創命魔法と言う極めて特殊な魔法の才をもっている。

 この世界にも魔法の種類は沢山あるのだが、創命魔法というのは一風変わっており、その行使に必要なのは才能も勿論だが、なにより重要なものは努力である。

 

 魔力の量などは関係がない。

 大切なのは1に努力、2に努力。

 3にセンスで、4に魔力なのだ。

 

 …というのは団長ピクセイン・ブルーだけには適用されなかった。彼は努力をしないし、才能もない。

 ひたすらバカみたいな魔力量で創命魔法を成立させる。

 

 だが肝心の創命魔法とは何か?という疑問がある。

 それは簡単に言ってしまえば召喚魔法だった。

 しかしただの召喚魔法ではない。

 従来の召喚魔法が、既に存在するモノを呼び出す事に対して、創命魔法はまさにその名の通り…命を作り出すのだ。

 

 ◆

 

 ピクセインの瞳に嘲弄の波が湛えられる。

 それはノウベル王国の重臣達が雁首そろえて無様を晒しているからだ。

 

 ――ふ、やはり女王陛下の力となれるのはこのピクセインのみ、か

 

「ではピクセイン!わたくしに対する…いえ、このノウベル王国に対する衷心をお見せなさい!この国を救う勇者を召喚できれば、あなたの望みがどんなものでも1つだけ叶えて差し上げましょう!」

 

 女王の宣言にピクセインの総身に魔力が漲る。

 神経回路に喜びのスパークが奔り、その余りの魔力量は王国魔法師団長ゲーリックをして及ばぬと歯噛みさせるほどであった。

 

「お任せ下さい!」

 

 叫ぶなり、ピクセインは懐から一枚の羊皮紙を取り出した。

 この羊皮紙を何に使うのか?

 ノウベル王国の人間ならそれを知らない者はいない。

 

 ピクセインは左手の人差し指から数センチの風の刃を顕現させ、右手の人差し指を傷つける。

 そこから溢れる血を絵の具として、ダイナミックに絵を描き始めた。

 

「おおおおー!!!我が渾身の創命をみよ!」

 

「我が情熱の鮮血よー!!こう…!こうだ!どうだ!」

 

 ピクセインが絶叫する。

 そんな彼を一同は冷たい視線で見ていた。

 

「魔力は凄いのだが」

 

 ゲーリックが言うと、傍に立つクラリスも頷いて言った。

 

「魔力は凄いんですけどね」

 

 やがて……

 

 ◆

 

「どうだ!これが勇者の器よ!」

 

 ピクセインは額に汗を浮かべて叫んだ。

 掲げるは羊皮紙…そこに描かれるは…

 

【挿絵表示】

 

「な、なんという酷い…これは芸術を侮辱している!」

 

「舐めているのか!?奴から先に殺せ!ノウベル王国の恥ぞ!」

 

「あんなモノがなぜ王国絵画師団長なのだッ!!」

 

 重臣一同は激怒してブーイングを飛ばす。

 これは当然の怒りだった。

 ピクセインの描いた絵は最早犯罪同然だったからだ。

 しかし、なにより許せないのは…

 

「だまらっしゃい!魔力ならあるんだよ!!ウオオオオ!!」

 

 ピクセインは強引に絵に魔力をこめていった。

 そう、ピクセインは絵を描く才能は0だ。全くない。努力する気すらなかった。

 しかし、そんな酷い業で描かれた絵は、ピクセインの膨大な魔力を喰って形を成すのだ。

 

 召喚の間に閃光が迸る!

 命が誕生したのだ。

 

 やがて光が収まり、現れたのは…

 

【挿絵表示】

 

「……おなかすいたよ…」

 

 1人の少女であった。

 

「彼女が…勇者!?」

 

 女王が息を飲む。

 しかしゲーリックは両手をかざし…

 

「魔力量…3!…操作が優れているということもなさそうです。極普通の幼女ですな…。念の為に彼女の体と精神を走査しましたが、全く普通の幼女です。チワワにも負けます」

 

 そう言った。

 

 アルマドも眼を細め少女を見る。

 歴戦の戦士たるアルマドは、その者の姿から完璧な骨格、筋肉の付き方を見出し、総合的な物理戦闘能力を察知できる。その戦闘眼によれば…

 

「普通の幼女ですな。まあ特に持病なども無さそうです。元気そうで良かったですな…」

 

 ピクセインはその場に崩れ落ちた。

 

 ◆

 

「く!!人としての十全な機能を備えさせるために魔力のほとんどを使用し、他へ回す余力がなかった!考えてみれば胴体もなにもない絵から体の全てを創造したのだ!出来なくて当然だった!!」

 

 そう、ピクセインはその膨大な魔力で人体を創造するほどに強力な魔法使いだった。

 しかし絵心がないので、彼の絵から創造されるモノは全て普通の…といっては語弊があるが、特殊な力などはなにもない存在ばかりだった。

 

 なお、そんな彼がなぜ団長なのかといえば、もし彼の絵がうまくなればそれこそ鬼に金棒だからである。

 ノウベル王国上層部は知能の低い追放などをして将来の禍根をつくったりはしない。

 

 だから日々ピクセインに絵の練習をさせようとあの手この手を弄しているのだが、ピクセインの絵心の無さは常軌を逸していていまだにピクセインは絵が上手くならない。

 

 ◆

 

「ケケケケー!!!愚かですねえ!」

 

 召喚の間に哄笑が響き渡る。

 

 一同はまたかとおもいながらその方向を見ると、一人の白衣の小男が立っていた。

 

 彼の名はノウベル王国戦略技術研究所…略して戦技研、その所長、そして王国機械師団長オッフェンバッハである。

 ノウベル王国機械師団といえば圧倒的火力で有名だが、その兵器群のほとんどは彼が開発、設計したものだ。

 

 だがこれは技術からなるモノではない。

 魔法と科学の合一…魔法科学からなるものだ。

 オッフェンバッハは自身の科学的知識を利用して、巨大兵器のパーツを召喚し、それらを現地で組み立てる。

 

 完成品を召喚する事はさすがに出来ない。

 要求される魔力量が多すぎるし、仮に不具合があったときに修正が難しいからだ。

 

 完成品が巨大であればあるほど、大規模であればあるほど、パーツごとに分けてあとからリンクさせるほうが保守の面でも便利だ。

 

「勇者などと!そんなものは過去の遺物でございます!旧態依然の魔王などおそるるに足らず!女王陛下!どうぞこの私、オッフェンバッハめにお任せ下さい!魔族領をこの地上から消し去ってみせましょう!王国地歴院のしょくぅ~ん!地図の書き換えの準備をしておきなさい!ははは!」

 




幼女はノウベル王国で養われることになりました。
送還はできません。
彼女はどこかからやってきたのではなく、生み出された存在なので。
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