「
「存在しません。いついかなる時でも主のため力をふるうことができるように、常に万全な状態なのでございます」
「ほーん。ちなみに今何歳?」
「レディーに年を聞くのは失礼であると習わなかったのでしょうか」
「残念ながら、お前はレディーではない。エンゼルだ。だからノープロブレム」
「はぁ、今年で6407歳になります」
「結構年いってんのな」
「それ以上はあなたの寿命を縮めることになりますがよろしいのでしょうか」
「こええよ」
アルハレタ日ーのことー魔法以上の愉快がー限りーなくー降り注ぐーまじでーやめーてーねー。
朝、ジブリールが作ってくれたベッドの上で快適に目を覚ました俺は、頭の中で混乱しつつもアニソンを流していた。編曲俺。CV俺。
「おはようございます、マイマスター。昨日はよく眠れましたでしょうか」
「ああ、うん。よく眠れた。ところでこれがどういう状況なのか説明してくれない?」
「申し訳ありません。不詳このジブリール、これ、が指し示すものが何であるかの理解が足りず、その問いにお答えすることができませんで」
「なんで俺たちが一緒に寝てるの?」
俺が起きたとき、隣にジブリールが一緒に寝ていた。わけわからん。
しかも、昨日作ってもらったベッドはシングルサイズのやつだったはず。しかし、今俺が寝ているベッドはキングサイズのベッド。知らんうちにでかくなってる。それとも、俺が寝ているときに誰かさん家のキングサイズのベッドに移動したのか。夢遊病?なにそれこわい。
「私はマスターの矛であり盾でございます。いついかなる時でも御身の周りで危険がないかをいち早く察知し、知らせる義務がございますゆえ、その一環でございます」
「ベッドが大きくなってんのはなんで?」
「わが主が体を休めるには、シングルサイズでは不十分であると判断し、勝手ながらお休みになられている間にサイズを変更したのでございます」
よかった。夢遊病の可能性は消えた。
「なるほど。いろいろと言いたいことはあるが、まずは俺のためを思って行動してくれてありがとう。そして出て行ってもらえる?」
ああ、朝から疲れた。俺の知らないところで勝手にいろいろやりすぎ。
やらかしてくれたことはといえば、料理中に「この料理はいったいどのようなものなのでしょう」「加熱の量はその程度でよろしいのですか?」「調味料を入れるタイミングは何分後になるのでしょう」と、いろいろと聞いてきて邪魔くさかったり。
食事中にはいろいろと俺の元の世界のことを聞いてきて、気が休まらなかったり。
トイレに紙を入れ忘れたからといって空間に穴をあけて個室にわざわざ紙を届けに来たり。
本を読んでいるときにどこからともなくあらわれて、耳の近くで「こちらの書籍で分からない単語はございませんでしょうか」とささやいたり。いやこれ完全にからかってるよね。
ジブリールがいろいろなことをやらかしてくれていたが、何も悪い事ばかりではなかった。
一つは、図書館の中にちゃんとした居住スペースができた。今いる俺の寝室に加えて、俺が一人で本を読むための読書部屋、いわゆる書斎、さらにはゲーム専用のプレイルームまで新しく作ってくれた。
なお、キッチンやトイレ、風呂などという共同スペースももちろんのことある。
それらすべてが広い部屋、かつそれぞれのイメージに合った、ベストな内装。これを寝ている間にすべてこなしてしまうのだからさすがである。
二つ目に、スケジュールである。今までは、一日休憩なしで
また、食事や風呂、トイレや読書の時間なども考えられており、ところどころ空き時間がある。なんだよやりゃできるじゃないかジブリール君。
そういえば、「ご命令とあらば、すべて私が日本語訳いたしますが」と、さっきジブリールが提案してきた。わかってないな、ジブリール。本というのは、自分で読んでこそ楽しみがあるんだよ。
三つ目に、俺が知らないであろうこの世界の知識や、一般常識、これから必要になってくるであろうゲームの勝ち方などが書かれている本をいくつか見繕ってくれた。
まだところどころ読めないところがあるが、ジブリールの手助けもあり、そこそこ身になってきている。
四つ目は…ないわ。
でも、全ては俺のためにやってくれたこと。とてもじゃないが文句なんて言えないし、むしろ感謝をしなければならないのではないか。
あと、思い返してみると、そこまでやらかしてはない。気の持ちようというか、やめろよ!と言うほどのことはしていなかった気がする。
思えば、俺達はあってまだ間もない。いきなり俺の方から現れて、急に俺に仕えることになったのだ。思うところはあるだろうし、俺だったらめちゃくちゃ戸惑う。その表れなのかもしれない。
もしかしたら、いらん気遣いをされている可能性もある。
そう思ったとき、思いっきり寝室の扉が開いた。
「マスター!そういえば私、マスターのボディチェックをまださせていただいておりません!」
右手にスケッチブックを持ちながら、よだれを垂らして俺にじりじりと近づいてくる。
うん。まったく気使ってないな。こいつ。
さて、あれから一週間が経過した。あれってどれだよ。ジブリール君との最終ゲームのことですね。
環境が改善され、休憩をはさむようになったおかげで、俺は
さらに、休憩時間にはジブリールとゲームで遊ぶようになったため、ちょっとゲームの勝ち方を理解することに慣れてきた。知らないゲームを吹っ掛けられることもある。理解力というのは重要だ。
ま、だからといって勝てるわけじゃないけど。
あと、すっごいからかわれる。よくあるのが耳元でささやかれることだ。やられると体がビクッとしてしまうので、ジブリールには面白がられて何回もやられてしまう。しかし、理性で止めることができることでもないのでどうしようもない。ちくしょう。
急に手を握ってきたり、顔を近づけてきたりする。この間は授業中に「ああ、そこは日本語との解釈に差がありまして・・」といいながら、後ろから抱き着いてきやがった。しかも、その、そんときにすっごい胸が当たって気にしないようにするのに大変だった。俺以外には絶対にやらないように。いや、俺にもやらないように。
つまり、文字通りおはようからおやすみまで、俺の周りでぷかぷかと浮かびながら俺のことを観察している。俺がいちいちどんな反応をするのかが気になっているのだろう。それが目的とは言え、頻度を考えてほしい。
具体的にどんな感じなのか。ここで、俺達のいつもの日常をお届けしよう。
朝9時。本当はもっと寝ていたいのだが、隣で寝ているジブリールに起こされる。
「おはようございますマスター。今日も一日よろしくお願いいたします」
と、お決まりのセリフを思いっきりの笑顔でいいはなつ。
息が吹きかかるぐらいの近い距離でそんな顔を見せられたら、寝ぼけた頭が急速に活性化する。
いそいで距離を取るために立ち上がるので、完全に目が覚めてしまう。
なお、一緒の布団に入る必要ないだろといったら、
「私のマスターは従者を寒い部屋の中で放置しておくような卑劣な輩とは違うと存じておりますので」
といって毎回入ってくる。なので諦めることにした。こいつに対しては、諦めるという行為はかなり重要なことだと学んだ。
10時。料理を作って一緒に食べる。食事が必須ではないとはいえ、自分の分だけ作るのは、なんだか心に来るものがあったので、ジブリールの分も毎回作っていた。
食事の時間はたいてい雑談である。元の世界の話をすることが多い。
「マスターに親しい女性はいらっしゃったのですか?」
「いきなり喧嘩売ってんのかお前。中学のときは女子とメール位してたわ」
「いるとはおっしゃらないのですね」
「バッカお前。俺なんてなぁ、クラスがえでみんながアドレス交換しているときに、携帯取り出してきょろきょろしてたら、「あ、じゃ、じゃあ、交換しようか」と声かけられるくらいにはモテてたといっていいな」
「それはモテていたとは言わないのでは?で、結論、いるのですか?いないのですか?」
「安心しろ。ちゃんといた。なにしろ、一番の心の支えといってもいい」
「それは小町さんのことでしょうか。何やら悲しくなってきました」
「おい、小町様といえ。俺がお前の主人なら小町は主人の妹だろ敬意を払え」
「あなたの価値観がどうなっているのか不思議でたまりません」
11時から15時まで、勉強。ジブリール先生は意外にも教えるのがうまい。ただ、
「なぁ、やっぱ近くないか、距離」
「生徒にモノを教えるには、親身になって積極的に教えたほうが効率が良いのでございます」
「いやそうかもしれんけど」
「どこをどう間違えていて、何が理解できていないか。それを知るためには近くで観察し、訳を見るのが手っ取り早いと考えております」
「うん、それはわかるんだけど、別に近くなくても問題n」
「また、近くにいることによってマスターの意識を問題に集中させ、どんな時でも瞬時にゲームに取り組むことができるよう技術の向上も兼ねているのでございます」
「…俺の意見を無視してくれてありがとう」
「お礼を言われるまでもありません。当然のことでございます」
皮肉が通じなかった。
16時には昼飯を食べる。ちょっと遅いが、朝起きるのが遅めなので問題ない。朝の作り置きなので、温めるだけで食べられる。
17時。風呂に入る。これからゲームの練習もしなければならないので、あまり長々とは入れない。
18時から22時までゲームの練習。正直言ってこれが一番きつい。というか厳しい。
成長している感じが全く分からないし、ジブリールは手加減しないし。
ただ、ゆうてもゲームなので、楽しんでできるのは大きい。メンタル的にもそこまでやられたりしない。
その後、23時くらいに布団に入る。
俺がベッドの中に入ると、さも当たり前のようにジブリールが入ってくる。
「何度も言うようだけど、自分のベッド作ってそこで寝たら?」
「面倒でございます。それとも、マスターが作っていただけるのでしょうか」
「いや、変なこと言ってごめん」
「ふふ。おやすみなさい。マスター」
「ああ、お前のせいで寝れんけどおやすみ」
毎回毎回こいつが眠りにつくまで俺は寝られない。俺じゃなかったら手を出して殺されるまであるな。毎日が死と隣り合わせだこんちくしょう。
24時。
マスターが寝息を立てるまで、私は寝たふりを続けています。
大体このくらいの時間になると、マスターは緊張の糸が解けゆっくりとお休みになるのでございます。
「前にもご自身でおっしゃっていましたが、目以外はかなり整っていますね」
寝ているときは目を閉じるので、マイナス部分が消えて、プラスの部分が浮き彫りになる。
スースーと寝息を立てるマスターに近づいて行って。
「今日も今日とて、面白い反応でしたねマスター」
耳元でささやく。うがっと変な声を上げるマスター。夢の中でも私にからかわれているのでしょうか。
「ああ、明日の反応も非常に楽しみです。こんな日々が毎日続いてほしいと願うばかりでございます」
それからさらに一週間。
ジブリールは今珍しく俺の周りにいない。いわく、「今日は大事な予定がありますので、少しここでお待ちください」とのこと。いや、お前の予定なんだから俺いらないだろ。
ジブリールが再び戻ってくるまで、俺は一人こちらの辞書を読んでいた。
何を隠そう、俺は
とはいえ、すべての語彙を理解しているわけではないので、きちんと一人でも辞書などを読んで勉強しているのである。
「準備が整いました。こちらに来てください。マスター」
ジブリールが俺を呼びに来る。俺は言われるまま後ろについていく。
何やら図書館の中央に、ガラスのようなものが浮いている。なんじゃこれは。
「これは、遠くの景色を映し出す魔法でございます。今現在、エルキアの王城前広場を映し出しています」
なるほどテレビみたいなもんか。
「で、これから何が始まんの?なにすりゃいいの俺?」
「何もしていただく必要はありません。ただ、私と一緒に見ていただきたいのです。これから、エルキア新国王の演説がありますので」
ああ、あったなそんな話。ま、多分あのクラミ―って子だろうな。馬鹿強かったもんなあの子。
「おっと、始まるようでございます」
王城の中から、人影が現れる。
腕と、頭に王冠を付け、手をつなぎながら登場した。
新国王は、一人ではなかった。
黒い髪で、目にクマがある青年と、白い髪で、赤い目が特徴の幼女だった。
ついに空白を登場させました。
次から空白も本編に絡んできます。