「」
「愛してるぜジブリール」
「」
「なぁ、何とか言ってくれよ」
「」
「俺が悪かった。いままで、散々こき使ってきたけど。お前に感謝を伝えたかった」
「」
「だから、なあ、目を覚ましてくれよ」
「」
「なんで、なんでなんだよ!?なんでジブリールが…くそ、戦争なんて、戦争なんて…ぐぅうわああぁあああああああ!!!!!!」
「という夢を見ました」
「めっちゃ恥ずかしいんだけど。というかお前死んでるじゃん」
「なぁ、お前なんでまだいんの?」
「あなたの知恵を借りたくて残っておりましたの…」
俺とジブリールはいつものように図書館で本を読もうと部屋を出ると、いまだに机に突っ伏して絶望している女がいた。
その女性とは、彼らの傍らにいた赤髪の女性こと、ステファニー・ドーラ。この国、エルキア王国の先代王の孫娘であり、現国王
なお、その
その彼女がなぜ今だにここに残っているかというと、曰く、知恵を借りたいとのことだった。貸せる知恵なんてねぇよ。
「
「まぁ、いろいろ言いたいことはあるが、とりあえず要求を聞こう。何すりゃいいんだ」
俺がこの世界で学んだこと。その2。断るよりさっさと要求を呑んでおかえりいただいたほうが手っ取り早い。
断るほうが余計に時間がかかって、コミュニケーションを取らなきゃならない分面倒ごとが増えるだけだった。
今回は知恵を貸すだけとのことだったので、とっとと貸して帰ってもらおう。なんなら借りパクしてもらってもいい。
「空と白にどうやって勝つか、知恵を貸してほしいんですの」
「なんだ、そんなことでいいのか」
「そんなことって…あなたもあの二人の強さはわかっているでしょう?あの二人、ゲームとなったらとことん本気出すもんですから全くと言って歯が立たないんですのよ?」
「だから、勝つ方法ならあるって。というか、空と白に限らず、誰にでも、どんな奴でも勝てる方法はある」
「そ、そんな方法あるんですの?出まかせ言ってるわけじゃないんですの?」
全然信じてもらえない。まぁそうだよな。
俺はステファニーの座る席の前に座って、昨日読みかけていた本を手に取って読み始める。続き気になってたんだよ。
「なんで急に本を読み始めるんですのよ!?」
「だってお前信じてねぇじゃん。というより、ここ俺の図書館だし。もともとここで本読む予定だったんだよ」
「マスター、厳密には私の図書館でございます」
「なんでこういう時に限って揚げ足取るかな?いつものお前なら、「私のものはマスターのものでございます」くらい言うくせに」
それに、このくらいの話なら、別に本読みながらでもできるしね。
「分かりました」
ステファニーは背筋を伸ばして俺のほうに視線を向ける。その目には疑いの色はなかった。
「信じますわ。だから、教えてほしいですの。誰にでもできる、誰にでも勝てる必勝法を」
「は?そんなのねぇけど」
ヒュー―。と風が吹いたような気がした。
ステファニーは顔を真っ赤にして俺に向かって暴言を吐きかける。
「や、やっぱり嘘だったんですのね!?嘘つき!腐り目!人でなし!いえ、
「いや、嘘ついてねぇし。というかなんだよ
「さっき誰にでも勝てる方法があるって言ったじゃないですの!!」
「いや、そうはいったけど、誰も
「マスター、それはどういう意味でございましょう」
ジブリールが俺の読んでいた本の続編を持ってくる。ナイスタイミング。ちょうど読み終わったんだよ。
「だから、誰にでも勝てるが必勝ではないゲーム。知ってるだろ?俗に運ゲーと呼ばれるものだ。それをひたすら吹っ掛け続けりゃいい。そのうち勝てる」
コイントスの表裏、サイコロ、じゃんけん。そこら辺のやつを何回もけしかけりゃ絶対勝てる。というか、勝つまで続けりゃいいって話だけど。
俺がそういうと、ステファニーはフルフルと首を横に振る。
「甘いですわね。空は他人の心理を読むことに長けていますし、白は物理演算が得意。じゃんけんなら空が、コイントスなら白が必勝ですわ」
「お前なぁ、そりゃタイマンでやろうとするからだ。白はまだしも空の心理予測なら工夫次第で勝てるだろ」
例えば。
「道行く人の中から、ジブリールが適当に選んだ人に、「21と爪切りどっちが好き?」って質問をして、当てた人の勝利っていうゲームならどうだ?その際、話しかけるのはジブリールのみ。どちらが好きかを先に宣言しておけば、予測も何もあったもんじゃないだろ」
りんごとみかんとかいう好みが分かれるものでなく、21と爪切りみたいな全くと言って関係性がなく、好きとかいう概念があるのかすら不明なものを羅列するのがミソ。
仮にジブリールがどんな人に聞くかを予測するにしても、顔とか見た目で判断も出来ん。しいて言うなら雰囲気くらい?
むしろ、これで必敗なら、勝つ方法などない。ラプラスの悪魔を越えている。
「た、確かに…」
「一回目は負けるかもしれんし、引き分けになるかもしれん。ただ、続けてりゃ確実に勝てる」
ステファニーは顎に手を当ててうーんと考える。
「でも、それあの二人は乗らないと思うんですの…」
「そりゃまぁ、乗らないだろうな」
「じゃぁ意味ないじゃないですの!!」
ステファニーは怒りのあまり席を立ち、机をバン!と叩く。ちょっと?人の家だよ?
「俺はあいつらへの勝ち方を聞かれたからな。それを教えたまでだ。これに限らず、どんなゲームだって勝ち方が分かっても、実際に勝てるかは別問題だし。そもそも相手が乗らんという可能性もある」
ステファニーはぐぬぅと言って再び席に座る。
「じゃあ質問を変えますわ。比企谷さんならどのようにしてあの二人に勝ちますの?」
ほう。なかなか鋭い質問をするではないか。
「どうしてもあいつらに勝たなきゃならんってなったら、そうだな。必ず勝てるゲームと必ず負けるゲームを用意して、まず必勝ゲームで俺が勝った場合、「必敗のゲームに俺は参加しなければならない」っていう義務をかけ、必敗のゲームで俺が負けた場合、「勝者の命令をなんでも一つ聞く」っていう義務をかけてゲームしようぜっていう」
「それ、自分が損してるじゃないですの。それにそれじゃあ引き分けですわ」
「いいや違う。それは大きな違いだ。引き分けじゃない。1勝1敗だ。
本を読んでいる俺の横から、スッとお茶を差し出してくれるジブリール。気づかないうちに、気を利かせてお茶を入れてくれたみたい。ありがてぇ。
ちょうど喉が渇いた頃だったのでお茶を手に取りひと啜りする。うむ。うまい。
‥‥ステファニーにも用意してやれよ。めっちゃガン見してんじゃねぇか。
「こほん。ま、言ってしまえば、自分の体を売って勝利を得るみたいなもんだな。ただ単に1勝をもぎ取りたいなら、敗北した回数なんて関係ないし。こういう手も使える」
むー。と頬を膨らませてステファニーはうなる。なんだ。何が不満なんだよ。
「そういうひねくれた回答じゃなくて、もっとこう、明確にわたくしの勝ち!ってなるようなゲームはないんですの?もちろん、必勝の」
「そんなもんがあるなら、みんなやってるだろ」
どんな相手にも必勝のゲーム。それを要求するとは強欲すぎる。
あるわけねぇだろ。逆にあったらパラドックス。
どんな相手にも勝てる必勝ゲーム。裏を返せば、相手に使われれば俺らが負ける。だったら必勝じゃねぇじゃねぇか。
と、このタイミングでジブリールが「どうぞ」とステファニーにお茶を出す。なんでちょっとニヤついてるのジブリール?
ステファニーが「いただきますの」といってお茶をすする。やはり腐っても王族というべきか。ただお茶を飲むだけでも所作が美しい。
と思ったのもつかの間、「ううわあっついですのぉぉぉ!!!」と声を上げ、持っていた湯呑をおもいきりぶちまける。
ちゃんと温度確認してから飲もうね?あと、これ多分ジブリールの仕業だよね?
ジブリールに後片付けを命じた後、俺達は街に出ていた。思いのほかぶちまけたのが広範囲に及んだため、結構しっかりとした掃除用具が必要となったためである。
はぁ、貴重な本を読む時間が消えていく。まぁ明日も明後日もどうせ本読むけど。
別に片付けなど魔法で一瞬なのだが、ステファニーが納得しなかったようで。「自分のミスは自分で片づけますわ」だと。えらい。
「それで、話の続きですが」
「なに、まだなんかあんの?」
「今までの話を要約すると、何かの犠牲なしにはあの二人には勝てないってことでいいんですの?」
「まぁ、凡人が勝とうとするならそうだろ」
「…?では、非凡な人なら犠牲なしに、真っ向勝負で勝てると?」
「まぁ、だろうな。あいつらだってただの人だし。つーか何当たり前のこと言ってんの?」
勉強だろうと、スポーツだろうと、はたまたゲームだろうと関係なく。
天才、努力家、非凡なる人種に、非才の凡人が努力なしで勝とうとするなら、犠牲は必須である。
それは時間か、金か、プライドか、もしくはその全てか。違いはあれど犠牲は払わなければ勝てない。
天才に真っ向から勝てるのは、同じく天才のみ。
「何の犠牲もなく、ただ勝利を欲するのは同じく天才だけが言える特権だ。そういうのは神にでも実力で勝ってから言え」
この世界には神いるみたいだし。ゲームして勝てたなら、多分最強なんじゃなかろうか。
そういうと、ステファニーはあはは、と苦笑いする。
「あの二人、実は唯一神に勝ったらしいんですのよ…」
「マジでか。そりゃすごい」
あいつら、最強だったみたい。そりゃ勝てんわ。
「でもまぁ、ならもう吹っ切れたほうがいいんじゃね?絶対に勝てない相手って決めつけてハナから勝負しないって手もある。そもそもなんで
「それは…」
そういうと、ステファニーはぽつり、ぽつりと話し始める。
「わたしと、あの二人の出会いはなんだったか、ご存じですの?」
「いや、知らんな」
「わたしは、国王選定戦でクラミーとゲームして。私は当時気づいていなかったのですが、ゲーム中にイカサマされていると空が教えてくれましたの」
「へぇ。紳士じゃんか」
ステファニーはフルフルと首を振る。
「イカサマは、内容まで説明しなければ、ゲーム中の不正として扱えませんの。イカサマされているという事実だけで、内容までは教えてもらってなかったんですのよ。だから、結局負けてしまいました。それで私は直接空のところに出向いて、イカサマの内容を教えてもらいに行ったのですわ」
「ほう。それで?」
そういうと、ステファニーはぐぬぬという効果音が適切な感じの表情を浮かべ、怒って俺の胸倉をつかんできやがった。
「そうしたら、空ったら、八つ当たりだのなんだのと散々私を煽ったあげく、その後のゲームでも不正まがいの賭けの内容で私に「惚れろ」と命じたりとやりたい放題だったのですわ!!?こんなことが許されると思ってるんですの!!?」
「やめろ、おい、俺の、胸倉掴んで、ぐいぐい振り回すな。俺悪くねぇ」
「その後も、まったく仕事をしないから、リア充化を賭けてゲームするにも、毎回毎回負け続け、鬱憤がたまりにたまっているのですわ!!?勝ちたいと思うのは自然なことじゃないですの!!!やり返して何が悪いんですのぉ!!!?」
「だから、おい、やめろ、人が、めっちゃ、見てるだろうが」
そういうと、ステファニーはここが街中であったことに今気づいたのだろうか。視線を感じてハッとわれに返り、俺の服から手を放して、あははーを愛想笑いをする。てめぇ。恥かかすな。
あと、理由が思ったよりチープ。なんか、最初ちょっとしんみりしてたから、まじめな話かと思ってた。
「ま、まぁつまり、あいつらをぎゃふんと言わせたいってことか」
俺はよれよれになった服の首元を直しながら、要約する。
「その通りですわ」
「じゃあ、まぁ、少し考えてみるか。それなら、なにも勝つ必要もないしな」
復讐する。痛い目を見せる。そのためには勝つ必要はない。
いじめっこに力で勝つ必要はない。夏休みの間に日サロに行って、タトゥー入れて学校行ってみろ。まちがいなくいじめられなくなるぞ。先生には大目玉喰らうだろうけど。
「本当ですの!?」
「うおっ」
ステファニーは俺の手を両手で包み込んでキラキラとした目で見つめてくる。希望のまなざしとでもいうべきか。
「本当にあの二人をぎゃふんと言わせる方法を考えてくれるんですの!?」
「あ、ああ、乗り掛かった舟だし、まぁ、やぶさかではない。おい、なんで泣く。なんか悪いことした?」
「ち、ちがうんですのぉ‥。最近周りの人が冷たいから、うう、ひっく。うれしくてぇ…」
「ああうん。つらかったな。ほら、もっと優しくしてやるから、泣き止め。今すぐに。不審者扱いされちゃうから。まだここ外だから。あれだ。あそこだ。目的地。掃除用具買うためにここまで来たんだから買わないとな?そうだろそうだなよしいくぞ」
「どうしよう」
あれから、ステファニーと一緒に掃除用品を購入し、図書館に戻って一緒に掃除した。
その間、今までの愚痴と文句を散々聞かされた。もちろん半泣き状態で。
道行く人に不審者に思われないように、できる限り優しく、小さい頃の小町に接するように懇切丁寧にふるまった。
ジブリールにジト目で見られながら、泣いている
その結果。
「八幡!そこはポーンでなくビショップを前に出すべきですわ!」
「なつかれた」
俺とステファニーは、ジブリール相手にチェスしていた。理由は聞くな。忘れたよこんちくしょう。
「おい、
そういうと、ステファニーは、ビショップを持つ手をぴたりと止めた。
「わ、忘れてましたの‥」
おい。
「はあ、今日は解散な。もう夜も遅いし」
掃除だのなんだのいろいろしていたら、もう夜も7時。よい子は寝る時間ですよ。
「確かにそうですわね。また明日伺いますわ」
そういって椅子から立ち上がるステファニー。よかった。なつきすぎて「今日は泊まる!」とか言いださなくて。
「では、また明日ですの」
「おう。もう来なくてもいいぞ」
「ま、た、あ、し、た、ですの」
「お、おう。また明日」
バタン。
やれやれ。嵐が吹いたような一日だった。今日は何にも進まなかった気がする。
「マスター。お話があります。少しこちらへ来ていただけますか」
「なんだよジブリール。別に話はここでいいだろ」
「いえ、こちらへ来てください」
「だからなんで…まって。その目はナニ?おい、なんとかいえ…ちょ、くるな、こわいこわい、人の話きk」
今回はあとがきは特にありません。
「いや、書いてるじゃん」
「まったくでございます」
この後の展開で、俺ガイルのキャラクターを登場させるのはアリ?ナシ?
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絶対ナシ
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どちらかといえば要らない
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どっちでもいいよ
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いたほうがおもろいんじゃね?
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入れろ