「じゃ、行ってくるわ」
「うん、いってらー」
「帰りにお土産買ってきてやるよ」
「ほんと!?でも~お土産はお兄ちゃんの思い出話でもいいよ?あ、今の小町的にポイントたっかい~」
「はいはい。高い高い」
「んも~つれないなぁ」
お兄ちゃんが奉仕部の皆さんと旅行に行く当日の朝のこと。
お兄ちゃんを見送った後、家でのんびりテレビを見ていたら。
ピンポーン。
およ?こんな早い時間にお客さん?もしやあのごみぃちゃんは大事な旅行だってのに忘れ物したな~?小町的に超ポイント低~い。
小町は忘れ物をしたであろうお兄ちゃんのために、急いで扉を開けたのでした。のぞき穴から相手がだれかを確認することもなく。
「も~お兄ちゃん?忘れ物しないように昨日のうちに確認しといてってあれほど…」
扉を開けたとき、目の前に立っているのはお兄ちゃんではありませんでした。
赤い帽子に、ほっぺたに赤いハートのタトゥー。目にはクローバーのマークが映っている男の子でした。この年からカラコン入れてるって、小町的にはこの子の将来が心配。
「え~っと、どちらさまでしょう?」
「はじめまして☆比企谷小町さんっ!僕の名前はテト。よろしくね。気軽にテトって呼んでよ」
「あ、どもども~。こちらも小町って呼んでください」
屈託のない明るい笑顔で自己紹介とは、やりますな~この子。これがもし相手がお兄ちゃんでこの子が女の子だったらすっごいキョドってそう。
あと、ちょっと失礼だけど、名前がテトって。親は何を考えてこの名前にしたんだろう。
「唐突で悪いんだけど、君のお兄さん…比企谷八幡のことどう思ってるかな?」
「え、お兄ちゃんのこと?うーん。そうですね~。性格もひねくれてるし、いろいろと考えすぎて面倒くさいし、たまに小町のこと適当にあしらってくるし、困った兄だと思ってますよ?」
でも。
「でも、小町にとってはたった一人のお兄ちゃんですから。それなりには愛着もあるというか。まぁそんな感じですかね」
「…うん!よかったよかった。こっちの世界の小町ちゃんも八幡のことを大切に思ってるみたいで」
腕を組んでうんうんとうなずくテトさん。その顔は本当にうれしそうに感じている顔でした。
「…あの~。一つ質問なんですが兄とはどういったご関係で…?」
「僕と八幡の関係?…うーん。それは結構難しいかなぁ。なんて言えばいいんだろう。知り合いってくらい浅い仲じゃないし、かといってそこまで深い関係でもないし…まぁ、友達かな?」
「お、お兄ちゃんを友達と思ってくれている人が、戸塚さん以外にもいたなんて…!これは帰ってきたらお赤飯たかなきゃ!」
お兄ちゃんたら、もうそろそろボッチとか言えなくなっちゃうんじゃない?でも、もう少しボッチでいてほしいかも。だって小町とのスキンシップが減っちゃうかもだし?あ、今のポイント高い。
およ?ちょっと待って。今、こっちの世界の小町って聞こえた気がするんですが?
「あのー。今、こっちの世界の小町って言いました?それってどういう…」
「ああ、ごめんね。今から説明するよ。さっきも言ったけど、僕の名前はテト。端的に言うと、僕の正体は神様だよ」
…お兄ちゃんもそうだったみたいだけど、男の子ってどうしてこうなのかなー。自分が神様とか勘違いしてる。どうしよう。朝からちょっと面倒なのに絡まれちゃったかも。
「むー。その顔は信じてないね?」
「い、いえいえ、小町はそういうのにはちゃーんと理解があるほうなんで」
信じていないわけではないというニュアンスをだしつつ、言明はしない。こういうのはお兄ちゃんから得た対人スキルなんだけど、まさか役に立つとは思わなかった。
「まぁいいや。信じても信じていなくとも、僕のやることは変わらないからね。君のお兄さんは一年前の入学式に事故にあったよね?」
「え?まぁ、はい」
「ここから少し話が難しくなるけど、そこから世界が分岐したんだ。こっちの世界の比企谷八幡は、事故にあっても命を取り留め、普通に学校に行って生活している。一方で、別の世界の比企谷八幡は事故の影響で意識不明の重体で、今もなお目を覚ましていない。そんな彼を救うために僕はやってきたんだよ」
「はぁ」
信じてるわけじゃないけど、ちょっと気になる内容だったので、小町は少しばかりお話を聞くことにしました。
「一応、僕の力で意識と彼のコピーである仮の肉体を別世界に移動し、そこで受けられる刺激で脳に影響を与え、改善を試みてるんだけど…あんまり芳しくなくてね。君と接触を図ればなにかしらいい反応が得られるんじゃないかと思って」
「…それだったらそちらの世界の小町にお願いしたらよいのでは?そちらの世界の小町も多分心配してると思うし、そっちのほうがいいと思うんですが…」
そういったら、テトさんはふふっと苦笑いして答えてくれました。
「そうできたらよかったんだけどね。あの世界の小町ちゃんを連れて行ってもよかったんだけど、あいにくと接触できる期間は一日だけ。僕はそんなに力ある神じゃないから、そう何人もずっと別世界に置き続けられないんだ。あの世界の小町ちゃんを連れて行ったら、まず間違いなく元の世界に帰ろうとはしないだろうから。君なら、そんなことはないだろう?」
「まぁ、こっちの世界にもお兄ちゃんいますし、多分そうはならないと思いますが…」
まず、行くとは言ってませんよ?
「お願い!どちらにせよ一日だけなんだ。この通り!別の世界の兄を助けると思って!」
テトさんは両手を合わせてお願いのポーズ。何だか怪しいなぁ。でも…
「うーん。まぁ、分かりました。一日だけですし、異世界に行けるっていうのはちょっと興味はありますし。あと、お兄ちゃんが困ってるっていうなら、まぁ放置するのも目覚めが悪いので」
「本当かい!助かるよ!じゃ、僕の手を握って」
テトさんが手を差し出してきたので、その手を握りました。
「次は目をつぶってくれるかい?大丈夫、3秒くらいだから」
いわれるがまま、目をつぶりました。1…2…3…
「目をあけていいよ」
パッと目を開いたとき、そこはもう玄関ではなく、見知らぬ街の一角でした。
「えーっと、ここは?」
「ここはエルキア王国。端的に言えば異世界の国のなかの人類の国さ。こっちの世界には人間以外にもケモミミっ子とかいるからね」
「なーるほどなるほど。では、さっそく兄のところに連れて行ってもらってもいいですかね?一日しかいられないならそんなに時間も無駄にできませんし」
「もちろんだよ!さぁ、こっちへおいで」
そういうとテトさんは無邪気に走り始めました。本当に神様なのか、いまだに信じ切れていません。
「ここだよ」
「…は~。こっちの世界のお兄ちゃんはなかなかいいところに住んでるな~」
連れてこられたところは少し街並みとは離れたところにある建物。ここらへんでは一番大きい建物だと思います。
「ここにお兄ちゃんが?」
「うん!扉をあければ、すぐにでも会えるよ。でも、僕はここまで。今彼と会うわけにはいかないからね。ちょっとした諸事情ってやつさ」
「わっかりました!じゃ、お兄ちゃんと感動のご対面といきますかね」
「マスター。なにやら来客でございます」
ジブリールが俺に来客だと伝えてくる。気配も何も感じられないが、ジブリールの感知網には引っかかったのだろう。
「だから言ってるだろ。ここにやってくるやつの理由はお前。だからお前の来客だって」
「俺らの目的はジブリールじゃなくて八幡、お前だったけど?」
「お前ら以外は俺誰も知らないんだからお前らがいる時点でほぼ確定だろ。第一、お前らだって元々の目的は俺じゃなくてジブリールだっただろ」
「むしろあの時点で俺ら以外にも異世界人がいるとは思わねぇだろ」
「…思ってたら、それこそ…神様」
「あーっ!!!そのクイーンは反則ですのぉおおおお!!!やり直し!やり直しですわ!」
俺とジブリールが本を読み、空と白とステファニーがチェスで対局中。そんな安息ともいえる空間に乱入者が来たらしいが、いったい誰なんだろうか。
まぁ、可能性としてあるのは
そう思っていると、図書館の扉がバーンと勢いよく開いて、あほな挨拶してきた。
「やっはろー!お兄ちゃん!小町遊びに来たよ!」
俺はそのセリフを聞いた途端、持っていた本を落としてしまった。
その声、その顔、そのアホ毛。長らく見ていなかった、いや、実際はそこまで長い間見ていなかったわけではないが、その姿かたちを見て、俺はフリーズしてしまった。
なぜ小町がここに?小町も死んだの?遊びにって何?ゲーム吹っ掛けに来たの?いやそれよりもそのあほな挨拶はやってんの?
「こ、小町?小町なのか?俺が疲れすぎてるだけじゃなくて、正真正銘の小町なのか?」
「そうだよー。お兄ちゃん死にかけてから小町と会うの久しぶりだよね?だからお兄ちゃんに会いに来ちゃったー。あ、今の小町的にポイント高い。まぁ小町はそんなに懐かしくないけど」
「最後ので台無しだよ。お兄ちゃん色々聞きたいことあるのにツッコまざるを得なくなって、もうこの後どうすればいいかわかんなくなっちゃってるよ」
「うん、やっぱりこっちもちゃんとゴミいちゃんだー」
「小町ちゃん?その言い方は止めなさい。みっともないわよ」
「まぁまぁ。小町もよくはわからないけど、とりあえずいろいろ説明したいから、中に入れてもらってもいい?」
「なるほど、テトの仕業だということは分かった。そしてなんというめんどくさくて回りくどいことをしてくれたんだと文句を言いたい」
小町からなぜここに来たのかの説明を受けて、全てはテトの仕業だということを理解した俺に、ジブリールが総括の言葉を投げかける。
「つまりは、この女はマスターの妹で、一日だけ再会する機会を得られたということで間違いないでしょうか」
「バカヤロウ。マスターの妹だぞ。小町様、もしくは妹様と言え。次呼び捨てたら本燃やすぞ」
空と白、そしてステファニーまでもがチェスの手を止め、うわー。といった目でこっちを見てくる。
「でたぞシスコン」
「違うな。妹が大事なだけだ。千葉の兄はだいたいそういうもんだろ」
「いやー、でもこっちの世界のお兄ちゃんにもお友達ができたみたいで小町はうれしいよ」
うんうんとうれしそうにうなずく小町。そのしぐさでさえも今は愛しく感じてしまう。昔からだったかも。
「言っておくが、こいつらは友達じゃない。しいて言うならビジネスパートナーだ。勘違いするな」
「…お兄ちゃん、その発言は小町的にポイント低いよ」
「と思ったがよくよく考えてみたら実質友達だったかもしれんな。うん。多分友達だわ」
「鮮やかすぎる手のひら返しだな」
「…やっぱり、シスコン…」
「黙れ空。お前だって妹には逆らえんだろ。同じ穴のむじなだ」
空にだけは言われたくない。
「それに、こんなに可愛い女の人二人とも仲良しなんてね~。ま、小町の方のお兄ちゃんも女の人とは仲良かったけど。それも3人も」
「いろいろ間違ってるな。別に仲良くないし。まず片方人じゃないし。成り行きで一緒なだけだ。というか、その話本当ならそっちの俺やり手過ぎるだろ。俺かそれ」
俺が事故にあうまでは全く同じ人生を歩んできたはず。ということは、中学の頃のアレを忘れているはずがない。それでいったいどうやって距離を縮めることになったのだろうか。
「今までのマスターからの反応を見ると、いささか信じるに値しない話でございます」
「ほらな?ことあるごとにすぐいじめてくるんだこいつ。もはや嫌われてるだろ。まぁ嫌われるようなことしてたけど」
「細かいことは気にしない気にしない!あ、そうだ!小町ちょっとお兄ちゃん以外の人たちとも話したいから、どっか行っててくれる?」
小町からありえないお願いをされた。
ペロッと可愛らしく舌をだして両手を合わせてお願いポーズをする小町。あざとい。
「嘘でしょ?俺のために来てくれたのに俺をないがしろにするって本末転倒じゃん。一日しかないんだよ?お兄ちゃん泣いちゃうよ?」
「大丈夫。すぐに終わるから。ほら、行った行った!」
そういって俺は小町に後ろから手で押され、寝室に追いやられてしまった。悲しい。
「さぁ~って。ゴミいちゃんも追いやったことだし。改めまして、比企谷八幡の妹の、比企谷小町です!気軽に小町って呼んでくださいね!」
「お、おう。俺の名前は空。こっちは妹の白だ」
妹さんの白さんはお兄さんの背中に隠れてすこしお辞儀するだけでした。人見知りなのかな?
「空さんと白さんですね!よろしくお願いします!そちらのお姉さんのお名前も聞きたいんですが…」
「わ、わたくしですの?わたくしの名前はステファニー・ドーラ。エルキア前国王の孫娘にして現エルキアの政治経済を…」
「簡単に言えば、俺らの従者だ。ステフって呼んでいいぞ」
「毎回毎回自己紹介を邪魔するのはいじめですの!?嫌いなんですの!?わたくしのこと!?」
ステフさんはいじられキャラっぽいですねー。声も高いしばっちりって感じです。本人は嫌がってるっぽいけど、まぁ仕方ないですよねー。
「そちらの天使さんは、ジブリールさんであってますかね?」
ふよふよ浮いている翼の生えたお姉さん。露出度が高いのが傷だなー。
「ええ。わたくしはジブリールと申します。どうぞお見知りおきを」
…なんかちょっと怒ってらっしゃる?小町何か悪いことしたのかな?
「はい!ジブリールさんはなんでお兄ちゃんのことをマスターって呼んでるんですか?まさかとは思いますけど、お兄ちゃんの趣味だったり…」
ぴしっと右手を大きく上げて質問。ジブリールさんはすこし悩んだ後、答えてくれました。
「いえ、盟約に誓ったゲームにおいてわたくしが負け、従者として生きることになったゆえ、従者らしく忠誠を示す意味でも敬意をこめてマスターと呼ばせていただいているのでございます」
「盟約?ゲームで負けた?」
「…まぁ罰ゲームのようなものでございます。こちらの世界では罰ゲームは絶対順守なのでございます」
へー。お兄ちゃん、こんなきれいな人に従者になれっていう罰ゲーム賭けてゲームして、勝って従者にしたんだ。小町、ちょっと見る目変わっちゃいそう。
「まぁいいや!空さんに白さんにステフさんにジブリールさんですね!これからも兄をよろしくお願いします!」
お兄ちゃんのためにぺこりと頭を下げる小町。ポイント超高ーい。
「小町はこっちのお兄ちゃんの妹じゃないけど、でも、話を聞いてから、心配だったんです。あんな性格してるから、もしかしたら苦労してるんじゃないかって。事故にあってからずっとふさぎ込んでてもおかしくないなーって思ってたんです」
でも、この人たちがいてくれた。
「皆さんのおかげで、お兄ちゃんはこっちの世界でもやっていけてるんだと思います。だから、ありがとうございます。そしてこれからも兄をよろしくお願いします」
そう言って再び頭を下げた小町に、ジブリールさんは声をかけてくれました。
「…無論、感謝されるまでもなく、これまでもこれからも、私はマスター、比企谷八幡の手となり足となり、生涯を共に過ごすと約束いたします」
…それはちょっと重すぎるかも…。
「まぁ安心しろ。比企谷妹。あんな面白れぇやつ俺らは手放す気ねぇから。な?白」
「…それに、まだ……やり返せてない」
「そうだ。俺らはやられたらやり返す。やり返すまではどんだけ拒絶しようが引っ付いてやるぜ。コバンザメみたいにな」
…それもどうかと思うなー。
「…わたくしは、八幡とはいい友達ですの。だから、これからも一緒にいますわ」
いい!この人が一番いい!いじられキャラだけど一番まともだこの人!
おっと。いけないいけない。大事なことを忘れてた。
「ありがとうございます!小町はうれしいですよ!あ、ジブリールさんだけ、ちょっとこっち来てもらっていいですか~?」
「…なぜ私だけそのようなことを?マスターもいない今、別にここで構わないと…」
「いいからいいから!即決しない人はお兄ちゃんに嫌われるよ!」
「…はぁ、わかりました」
「これが終わったら、次に白さんと、ステフさんもそれぞれお願いしますねー!」
コンコン。と俺の部屋の扉がノックされる。どうやら小町のやりたかったことは終わったみたいだ。
「お兄ちゃん!終わったよ!」
「おーう。…なんでみんな顔赤いの?」
俺が部屋を出たとき、ステファニーも、ジブリールも、白も、なぜか空もちょっと顔を赤くしてうつむき気味に地面を見て俺と視線を合わせないようにしていた。
小町、お前はいったい何をした?
「細かいことを気にすると小町帰りたくなっちゃうかも~」
「まぁそろそろ夕方だし夕日が顔に当たって赤く見えてるだけだな。うん」
そう思うことにした。というより、深く突っ込んで地雷を踏んでもよくない。放置するに限る。
そう思っていると小町がちょんちょんと俺の肩をたたく。
「お兄ちゃんはさー。この中で結婚するなら誰とがいい?」
その発言とともに全員が俺のほうを向く。そんなに同時に視線を向けられると、もはや殺気と勘違いしてしまうほどだ。
ちなみに、答えは決まっている。
「小町」
「はぁ~。どこまでいってもお兄ちゃんはお兄ちゃんなんだね。ちょっとがっかりかも」
そういってやれやれと両手を上に向けて首を振る小町。それに伴って、全員の視線にも呆れの色が見える。
正直に答えたのにこの仕打ち。こっちだって、世界が違っても小町は小町なのだと実感する。
「この流れで言ったら、こっちの世界で出会ったうちの誰かに決まってるでしょ?」
「だったらステファニー一択じゃん」
「およ?珍しく即決だね。その心は?」
「空は男。白はこどもだし。ジブリールやいづなは人間じゃないから、消去法でステファニー以外いないだろ。選択肢なんかない」
「も~。小町が欲しい答えはそういうのじゃないの!めんどくさいなぁ。単純に好きな人答えてくれればいいの!」
「いない」
「強いて言えば!」
「つってもなぁ…好きかどうかなんてわからん。一年一緒にいたとかならまだしも全員と会ってからせいぜい一か月くらいだけだぞ?だがまぁその少ない情報からだったらジブリールじゃね?一番一緒にいるし」
そういって適当に受け答えしていたら、小町がプルプルと震えだす。
どうしたの?スライムに転生しちゃったの?悪いスライムじゃないよ!とか言っちゃうの?
「わっかりましたぁ~~!!」
「うおっ。急に大声出すな」
「こうなったらもう、いっそのこと小町プレゼンツ。嫁度対決をやりたいと思います!」
「なんだそのバカバカしい対決は」
「これは小町の方の世界でもやったんだけど~。みんな圧倒的に嫁度が足りなくて小町的にポイント低かったんだよね~。だからこっちの人たちの嫁度はどうかな~って」
「まず嫁度が何かを説明しろ。やるにしろやらないにしろ、空も白もジブリールも、みんなぽかん顔になっちゃってるだろ」
「後で説明するからとりあえず座って座って。お兄ちゃんは審査員ね。どうせ似たような答え返すだろうし」
「ほっとけ」
「まずはお嫁クイズ!こんなときどうする?です!」
始まってしまった。
「なぁ比企谷妹。なんで俺回答者側なのって聞いてもいい?」
空が小町に意見する。参加者はジブリール、白、空、ステファニー。で、審査員が俺と小町。俺いる?
「空に関しては俺が無理言って入れた。東部連合の件で手を貸すんだから、こんくらいの辱めを受けろ」
「それ、いじめっていうんだぜ」
「…はちまん、ぐっじょぶ」
珍しく兄妹の意見が割れている。白は一緒にクイズしたかったのかな?
「ではでは、第一問。お姑さんに、掃除の仕方で文句を言われた!こんなときどうする!?さぁ、回答をどうぞ!」
ジブリールから順番に回答していく。
「指一つで掃除に限らず何もかもを片づけられる私に意見するなど正気を疑います」
「…ごめん、なさいして…やり直す」
「掃除したって結局汚れるんだから片付けるだけ無駄だと力説する」
「やり方を言うとおりに覚えますわ!」
「空はまぁ百歩譲っていいとして、ジブリールはそれ何もしてないだろ。せめて回答しろよ」
小町はふむふむとうなずいて全員を見渡す。
「こっちのみなさんも個性的な回答ですね~。ジブリールさんと空さんはぺけで。白さんとステフさんに一ポイント差し上げます。とりあえず、小町的な模範解答は「実母に愚痴ってまた明日から頑張る」です!」
「妙にリアルだな」
「空、お前そんなシーン見たことあんの?」
「いいや。ゲームの中ですら見たことない。だがだからこそリアリティがあって信憑性がある」
「ジャンジャン行きますよ!次の問題!明日はクリスマス。でも旦那が解消ナシのろくでなしのせいで今月苦しいかも。子供のプレゼントどうしましょう?お答えをどうぞ!」
「クリスマスとは何でございましょう」
「あれだ。まぁ誕生日みたいなイベントだと思え。実際にあれ俺達の世界の神様の誕生日らしいからな」
今度もジブリールから回答。
「まぁ軽く遊んであげますね」
「…普通に…ゲーム、買ってあげる」
「俺は旦那側だからあれだが、クリスマスパーティにでも連れて行くな」
「えっと、お菓子を作ってあげたり?」
「まぁ大体予想通りだが、空は意外だな」
「最初の一問はポイント制じゃないって知らずに適当に回答したが、点数が付くなら話は別だ。出題者の意図を読み取って満点回答を狙う」
「いやそう言うゲームじゃないから。まぁ空に関してはあんまりやる意味ないからそれでもいいか」
「空さんに一ポイント差し上げます!模範解答は「祖父母に任せる!」」
「ステファニーもいい線言ってたと思うんだがな」
「この問題の肝は、
そういう頭だけは働くんだから。そしてそういうゲームじゃないから。この人嫌い。
「じゃぁ最終問題!最近、主人の帰りが遅い…。もしかして浮気!?こんな時、どうする?さぁお答えをどうぞ!」
「問い詰めた後、真実であれば容赦なく殺します」
「…とりあえず、調べる」
「信じて待つ」
「こ、困りますわ…」
「いや困るて」
なんもしてないやんか。由比ヶ浜くらいバカだろこいつ。あれ?由比ヶ浜って誰?
「空さん大正解!信じて待ちましょう!」
ちゃっかり空正解してるし。もうなんなんだこれ。
「続きましては、お料理対決で~す!」
「結果わかり切ってるだろ。ステファニーが一位、それ以下は圏外だ」
やる意味なくない?
「いいの!小町がやりたいの!ではでは、さっそく。まずはジブリールさんから!」
厨房から出てきたのはジブリール。なぜか皿ではなくコップを持ってきた。
「マックスコーヒーでございます」
「愛してるわジブリール。お前最高だな」
料理ではないが、確実に俺のことを考えたチョイス。八幡的にポイント超高い。もう結婚しようぜ。
「恐れ多い言葉でございます」
「いきなり好ポイントが入りましたね~。ではでは、次は白さんでーす!」
出てきたのは白だけではなく、空も一緒に出てきた。
「白は料理得意じゃないしな。俺も手伝わせてもらった」
「むしろお前が料理できることのほうが意外なんだが」
「安心しろ、俺も出来ない。だが、そんな俺でもできる料理がこちらだ!」
そういって差し出してきた料理は。
「バタートーストだ」
「……ありがとう。いただきます」
うん。普通にうまいわ。
…これ以上は何もないけど。
「実際、コストパフォーマンス的にもパンが最強だからな」
「それは嫁度が低いんじゃない?」
「甘いな。家計を支えるのもお嫁の仕事だ」
ぐぅの音もでん。
「ま、まぁいいです。それじゃあ最後はステフさんどうぞ!」
最後はステフか。小町のも久しぶりに食いたかったな。
「ドーナツを作ってきましたわ」
綺麗に作られたドーナツ。一つ取ってかじってみたが、特別うまいわけではないが、普通においしい。
店で売れるレベルではあるので、かなりうまいのだろう。
「コメントに困るうまさだ」
「お兄ちゃん、こっちの人たちは捻デレ通用しないんだから」
「変な造語作らないの。おバカさんに見えちゃいますよ」
なんだよ。捻デレって。デレてないし。
「なぁ、小町。お前は作ってくれないの?」
「そういうと思って作っておいたよ。久しぶりに食べたいと思ってるんじゃないかって気を利かせた小町に感謝してよね」
そういって机の上に肉じゃがを置いてくれた。
一口食べてみると、なんだか泣きそうになってしまった。ああ、おふくろの味だな。違うか。違うな。
「あー楽しかった。じゃ、そろそろ小町帰るよ」
「おい、結局優勝誰なんだ。あと種目二つしかないのかよ」
「んー。まぁしいて言えば空さんかな。回答もまともだったし料理はできないけど主婦的発想は持ってたし。本当はウエディングドレス対決もしたかったけど、白さんに着せるわけにはいかないしね」
くるくる―っと回転しながらピースする小町。可愛いなちくしょう。
「残念だけどお迎えも来ちゃったみたいだし」
そう言って小町は図書館の入り口のほうへ向かう。
ドアを開くとそこにはテトが立っていた。
「おう。テト。あとで一発殴らせろ」
「それは遠慮したいなぁ。まぁ今回のはサプライズ。イベントだよ」
悪びれもなくペロッと舌を出すテト。小町の真似すんな。
「あ、そうだ!小町、最後に皆さんとちょっとだけお話してくるね!」
そう言って図書館の中へ戻っていく小町。いや、もっと前にやっておけよ。
「テト」
「なに?」
「俺を救うためって話、本当なのか」
「ああ、あれ?嘘だよ」
そうだったのk…え?マジで?嘘なのアレ?ちょっと感謝した俺の純情返して?
「ああでも言わないと小町ちゃん来てくれないかなーと思って。まぁつじつま合わせってやつだよ」
「小町に嘘をついた罪は万死に値すると知れ」
「あはは。ごめんって。ちゃんと元の世界には安全に返すから」
「当たり前だ。むしろ俺のことはいいから絶対に安全に返せ」
「やっぱりシスコンだなぁ」
「違う。妹がとてつもなく大切なだけだ」
はは、と軽く苦笑いをするテト。
そして、小町に向かってテトは声をかける。
「おーい!そろそろいくよー!」
「あ、はーい!じゃ、またね!お兄ちゃん!」
そういって、最後に俺に抱き着いてくる小町。
「…お兄ちゃんの方の小町もきっと心配してるから、ちゃんと、帰るんだよ?」
「……任せておけ。お兄ちゃんに二言はない」
「…ありがと」
そういって俺から離れて、テトと手をつなぐ。
「おい、小町」
「なに?」
「…車には気をつけろよ」
「……うん!わかった!」
「…それじゃあ、ここに来た時みたいに目をつぶって…」
「いったな」
「いきましたね」
いつの間にかジブリールが隣にいた。
「マスター。いつかマスターの世界へ行ってみたいです」
「そうか」
「未知の探求という目的もありますが、小町さんともう一度会いたいです」
「…そうか」
「ですから、もしマスターが元の世界に戻るときには、私も連れて行ってくださいね?」
「……善処する」
「……はい♡」
「これで、今回のイベントはおしまい。どうだったかな?楽しんでくれた?」
「小町ちゃんいい子だったね。また登場させたいくらいだよ」
「え?小町ちゃんとそれぞれが何を話していたか知りたいって?」
「安心してよ。ちゃーんとあとがきに書くから」
「じゃ、次にまた会える日を楽しみにしているよ」
「今度はチェス盤の上で、ね」
《ステフ》
「なんですの?」
「小町、お姉ちゃん枠が欲しかったんですよ~」
「…はい?」
「というわけで、ステフお姉ちゃんとお呼びしても?できればお義姉ちゃんとおよびしても?」
「い、意味は分かりませんが、それくらいなら…」
「ありがとー!ステフお義姉ちゃん!」
「はうわっ!?な、なんですのこのよくわからないこの高揚感と幸福感は!?」
《白》
「…なに?」
「お兄ちゃんってほら、妹に甘いじゃない?」
「…?」
「だから、困ったときには、小町の名前を出していいよ」
「!!……いいの?」
「もちろん!ほら、小町もちょっとお姉さん気どりしてみたいの。だから、お兄ちゃんをこき使ってあげてね」
「…わかった」
「空さんを落としたくなった時にも、お兄ちゃんを使ってあげてね」
「…!!!!いつから?」
「そりゃ小町ともなれば一目見た瞬間にビビビーンと来るもんですよ。よかったら、小町直伝の妹流お兄ちゃん落としの術教えてあげようか?」
「……おねがい、します」
「よろしい。じゃあまずは…」
《ジブリール》
「ジブリールさんって、お兄ちゃんのこと好きでしょ?」
「…はて、何のことかさっぱりでございます」
「安心してください。小町は味方ですよ!お兄ちゃんのことは小町が一番よく知ってるんですから!とりあえず、お兄ちゃんを落としたいならまずはあんまりしつこくしなこと。それと、案外ボディータッチは効いてないように見えて効いてますから、ちょいちょい混ぜるのがいいと思いますあと、喧嘩をしたときには必ずマックスコーヒーを…」
「メモ帳を取ってくるので少々お待ちいただいても?」
「はい!いや~小町はこっちの世界のお兄ちゃんに春が来たことがすっごくうれしいよ」
「勘違いなさいませんよう。あくまで知識の一環でございます」
「んふふ~。そういうことにしといてあげる」