「一つマスターにお尋ねしたいことがあるのですが」
「なんだよ」
「なぜ
「それはまぁ、ある程度の流れは予想してたしな。完ぺきではなかったにしろ、おおむね想定通りではあったし。さすがに種の駒賭けるとは思わんかったけど」
「そういえば、種の駒を賭けたとき、マスターの胸には駒のマークは現れませんでしたね」
「そりゃそうだろ。俺は人間であって
「布石、というやつでしょうか」
「そうだな。どのタイミングでうまく使えるかはわからんが、ある意味切り札になるかもしれないな」
東部連合との会談が終わり、エルキアの図書館に戻ってきた俺達。
ひと段落着いたと思い、机の上に置いておいた読みかけの小説を取ろうとすると、空がそれを制する。
なんだよ。まだ何かあるのか?
そう思って空の目を見ると、空は笑って仕事を追加してきた。
「悪いが、八幡にはこれから俺達とは別行動でやってもらいたいことがある。それが終わるまでこいつはおあずけだ」
「なぁ、一応それ俺の本なんだけど。なんでお前が俺の行動勝手に決めてんの?」
「白を厄災から守るためだ。お前が言ったことだろ?」
奪った小説をフリフリ振りながら、俺が前に言ったセリフを一言一句たがわず繰り返す空。
確かに、それを言われると弱い。空と白、強いて言えば白に協力するといった手前、いまさら協力しないわけにもいかない。
はぁ、とため息をついて空から小説を奪い返し、机の上に元に戻す。
「で、何すりゃいいんだよ。言っとくが、ゲーム関連に関して手伝えることは少ないぞ」
「安心しろ。お前にゲームの強さでは期待してない。今回任せたいのは裏工作だ」
「余計に無理だろ。こっちの世界の知り合いなんていないんだぞ俺」
裏工作できるのは、多数のコネクション、信頼関係、そしてリスクに見合うメリットがなければ成立しない。
空や白はコミュ障だから当然にしろ、俺だってこっちの世界で有名だったりするわけではない。むしろ、国王であるという箔もあるこいつらがやったほうがいい。
「いやいや。いるだろそこに。知識の塊、長寿の具現。顔の広さといえば随一の第六位様が」
空がそういってジブリールを指さす。
きょとんとしてジブリールは俺と空を交互に見比べる。
「だったらジブリールに頼めよ。俺に頼むのは筋違いだろ」
「そうしたいのは山々なんだが、ジブリールは俺の命令は聞かないだろ?だったらご主人様であるお前に頼むしかない。忠義にあつい臣下でうらやましいこった」
「お前強制命令権一回分もってんだろ。それ使え」
前回の空白対俺とジブリール戦で、空と白はここの図書館の使用許可に加え、命令を何でも一つ聞くという権利を手に入れた。
それを使わずに温存して、俺を経由してジブリールに命令聞かせようなんて虫のいい話が通るわけがない。
「あいにくと、そいつはもう使っちまった。ついさっきな」
空は白を連れて椅子に深く腰掛けて、机の上に肘をつく。
「嘘だろそれ。じゃあ何を命令したのか言ってみろ」
「悪いがそれは言えない。言っちまえばそれは布石だ。まだ誰にも明かせない。だが、嘘だと思うならジブリールに聞いてみりゃいい。それなら信じられるだろ?」
空はちらっとジブリールの方に視線を向ける。
おとなしく話を聞いていたジブリールに体を向け、俺は空の言ったことが本当かを確かめた。
「ジブリール。今の話本当?」
「はい、空様のおっしゃったとおりにございます。私の口からも内容については言及できませんが、命令権一回分を使用すると、前もっての発言でしたので間違いございません」
なるほど。これなら確かに、疑いようもない。
「まぁいい。どっちにしろ協力しなきゃ終わらんみたいだし。で、なにすんだ」
「お前にはアヴァントヘイムに向かってもらいたい」
アヴァントヘイム。位階序列第二位、
「具体的に何をするかは、わかるだろ?」
「いや分かんねぇよ。なんでわかってる前提なんだよ。まあなんとなくわかるけど?もし俺が読み間違えてたら大変なことになるぞ」
「確かに。他人に任せる以上すり合わせはしておかないとな」
空は机の上に残っていたチェス盤からキング、ビショップ、ポーン、ルークを一つづつ取り出した。そして、ポーンを真ん中に置く。
「今、俺達は
ポーンの前にキングを置いて、空が話を続ける。
「となれば、取れる行動は二つ。一つは、一度攻め込んだ後、やり返してくるタイミングでもう一度叩く。ただ、どのタイミングで向こうがやり返してくるのかがわからないし、向こうに万全の体制を準備する期間を与えることになる」
その後、ポーンの周りにビショップ、ルークを置く。
「二つ。俺達が攻め込んだあと、別の勢力に攻め込ませる」
空は人差し指でピンと弾いて、コトンとポーンを倒す。
「俺らがとるべきはこっちだ。他種族と手を組まなければならないという性質上、コネクションがなけりゃ不可能だったが、少なくとも第六位は味方につけられるし、さらにはアヴァントヘイムまでついてくる。いかに
「まぁ、理屈はわかる。それで俺にその第六位様とアヴァントヘイムを説得してこいっていうつもりだろうが、俺にできると思ってんの?」
コネクションがあるのはジブリールだけ。俺は全くと言っていいほど知らない。
しかも、言ってしまえば、
信用もへったくれもない。俺だって乗らねぇよ。
「できるさ。そもそもこの話、
「は?なにそれ横暴すぎだろ」
どんな暴君だよ。
「一応、俺は、いや、俺達はお前を買ってるんだぜ?
「買いかぶりすぎだろ‥‥」
いったい、その信用はどこから得られたのだろうか。八幡的にポイント低めのはずなんだが。
「‥‥だいじょうぶ、はちまん…なら、できる」
「まぁ約束だしな。やるだけやってくるわ」
俺はそう言ってジブリールにアヴァントヘイムに空間転移するように命じた。
「‥‥‥なぁ、ここに飛ばすように命令したのは俺だけどさ。あれ、大丈夫なの?」
命令通り、かどうかは俺はここに来たのは初めてだからわからないが。
アヴァントヘイム内部に到着したらしい。
そしてその際、空間転移で大きな衝撃が発生し、目の前にあるいくつもの本棚の本が散乱し、とんでもないことになってしまっている。
「ご安心くださいマスター。ここの所有者は、
何かちょっと怒ってるっぽいが、何で怒っているかは見当もつかない。
だがしかし、さすがは知識を尊ぶ種族
軽く見渡してみても周りは本棚だけ。もちろん生活しているのだろう。家具のような雑貨、絵画やオブジェなどもあるが、やはりメインは本棚だ。
幻想的な空間であることは間違いないが、本を読むのに最適かと言われれば、エルキアの図書館のほうがいいような気もする。
ジブリールは本に関してはとても興味や関心を持つし、大事に扱うからな。もしかしたら、この空間そのものが中途半端にいい環境のせいでやるせない気持ちになっているのかもしれない。しらんけど。
そんなことを考えていると、大量の本の山に埋まっている何物かが、急に飛び出してジブリールに抱き着いてきた。
そしてそれを華麗にスルー。
うにゃ!?という声を上げて地面に激突する誰か。というか、うにゃって。今時そんな反応するやついんの?
「ううう~。ジブちゃんってばひどいにゃ~」
と悲しげな顔を浮かべた後、一瞬で笑顔にその顔を変えると、
「あれかにゃ!?好きな子にいたずらしちゃうって噂のやつかにゃ?も~ジブちゃんってばい・け・ず♡」
「マスター。ご紹介します。アヴァントヘイム「
ジブリールははぁとため息を一つ。
まぁ確かに残念な頭であることは認めざるを得ないようだ。
「今の説明の半分はわからなかったが、とにかく今回の交渉相手ってことでいいの?」
「はい。さようでございます」
「ジブちゃん放置しないでほしいにゃ~。それと、先輩じゃなくてお・ね・え・ちゃ・んって呼ぶにゃ!!」
アズリールは飛び起きてぺしぺしとジブリールの肩をたたく。え?さんを付けないのかって?あほの子につける理由はないですね。
それにちょっとあざといし。
「アズリール先輩。今日は頼みがあってまいりました。今度、マスターのご友人…同盟相手?いえ、ただの顔見知りの方たちがゲームを行うのですが、それに協力していただければと」
「間違いじゃないし、文句を言うのもおかしいんだけど、そう言われるとなんか悪意を感じるんだが」
暗にお前友達いないだろって言われてる気分。
「断るにゃ~。お姉ちゃんって呼ぶまで要求はすべて断るにゃ~」
心底煩わし気にジブリールは告げる。
「‥‥ずっと肩をたたき続けている理由と、協力許可をいただけるのなら、考慮いたします」
「ジブちゃんが可愛いからにゃっ!それと許可もあげるにゃ!はいお姉ちゃん♡って呼ぶぐふぇ」
アズリールが肩たたきをやめて抱き着きに移行しようとしたとき、ジブリールは見事それを躱した。
アズリールはまたもや勢い余って地面に衝突し、今度はみっともないうめきを上げる。
「ではマスター。許可が出たので詳細の詰め合わせを行いたいと思います。アズリール
「お、おう」
「ひどいにゃ!?ジブちゃん嘘ついたにゃ!?」
「いえ。嘘は申しておりません。お姉ちゃんと呼ぶか
確かに、嘘は言ってない。だが、騙してはいるだろ。
「ううう。ジブちゃんは昔はこんな子じゃなかったのに。だぁれの影響かにゃあ?」
そう言って俺のほうを見るアズリール。
それはとても鋭く、ともすれば恐怖で腰が抜けてしまうほどの殺気をはらんでいた。
「い、いっとくが、それは俺の影響じゃない。あれだ。さっきの顔見知りの方たちの影響だ。だからそんな目で見ないで。怖いから」
「ふーん。まぁいいにゃ」
アズリールはそういうと申し訳程度に端っこにおいてある椅子を二つ持ってきて、対面となるように俺たちの目の前に置く。
「それじゃ、すり合わせを行うにゃ」
「いいのか?半分騙したみたいなもんだが」
「こっちの世界では日常茶飯事。
こっちの世界はやっぱり俺の肌には合わなさそうな気がする。
そう思って、持ってきてくれた椅子の一つに俺は腰掛ける。
「…なぁジブリール。それお前用じゃなくて、アズリールのじゃね?」
俺が座った直後、もうひとつ用意されていた、俺の前に置かれている椅子に即座にジブリールが座ってきた。
「はて、普通は客に椅子を用意するものでは?アズリール先輩が椅子を三つ用意していなかった以上、こうなるのは明白だったかと」
どうにもアズリールのことを嫌っているらしい。
「‥‥姉妹だったら仲よくしろよ」
「いいえ。姉妹ではありません。
「俺達人間もそうだ。早く生まれたか遅く生まれたかの違いでしかねーよ。繁殖の有無は特別重要じゃない。年功序列、亀の甲より年の劫という言葉があるだろ?年上を敬い年下に甘くするのは世の必定だ。しょせん兄妹なんてそれくらいの違いしかないし。でもだからこそそういう関係性っていうのは、切れないようでいて簡単に切れてしまう。大切にしておけよ」
兄妹という関係性は、子供のころはとても重要に思うのだろうが、大きくなったらそれほどまでに重要視はされない。
実際兄妹が重要だと思うのは、子供のころは親身になってくれる相手がいないからであって、大きくなったらいくらでもそんな存在はできる。
そう、人間でさえも、時間がたつにつれて兄妹という関係性は希薄になっていく。
であれば、無限に等しい命を持つこいつらはそれが顕著に表れるはずだ。
でも、いざというときに頼れる存在であり、愛しいと思える人物を築いておくこと。それはとても大切だと思う。
「いいこというにゃ~。目は腐ってるけどお姉ちゃん好きになっちゃいそうにゃ♡」
「やめてくださいよ。色々あざといんで」
アズリールの言葉は今のところ、本心と呼べるものは一切ない。俺に対しては。
だからちょっと苦手だ。
「アズリール先輩。早くしていただいてよろしいでしょうか。マスターがお待ちですので」
「そんなこと言っても座ってるのジブちゃんにゃ。うちは悪くないにゃ」
「であれば椅子を持ってくればよろしいのでは?もしくは今ここで作ればよろしいかと」
「ひ~ん。比企谷君、ジブちゃんが怖いにゃ~」
ジブリールがアズリールをものすごい勢いで睨みつけている。
そんなアズリールが俺に抱き着いたことで、ますますその目が勢いを増す。やめて。俺のせいじゃないから。巻き込まないで。
「‥‥ジブリール、退く気はない?」
「そうですね。アズリール先輩が土下座してもうしないと足をなめるなら考慮します」
「それやらせて退かないパターンだろ」
はぁと俺はため息をつく。
「わかったよ。じゃぁ俺が退く。アズリールが座れ。俺は立ってるから、早く擦り合わせしようぜ」
そういって抱き着いているアズリールを椅子に座らせる。
「なっ!?マ、マスターが立たれるのであれば私は…」
「いやいいよ。それじゃあ俺が退く意味ないし」
ぐぬぬとジブリールが悔しそうな顔をする。
ふとアズリールのほうを見てみると、ぼーっとした顔で俺のほうを見ていた。
「‥‥‥なに?」
「い、いや!なんでもないにゃ!‥‥比企谷君、女たらしって言われないかにゃ?今のは結構お姉ちゃん的にぐっときたにゃ」
「残念だが言われたことはないな。むしろ男ですらすり寄ってこない。八幡的にはかなりがっかりだ」
投稿が遅くなってしまい申し訳ありません。
イベントの方の書き込みが非常に多くなっているので
同時並行で進めているとかなり時間がかかってしまいました。
イベントの方ももう少しだけお待ちください。
この後の展開で、俺ガイルのキャラクターを登場させるのはアリ?ナシ?
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絶対ナシ
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どちらかといえば要らない
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どっちでもいいよ
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いたほうがおもろいんじゃね?
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入れろ