やはり俺の遊戯人生はまちがっている   作:鳴撃ニド

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ある日の二人⑨

「マスター。お茶を淹れました」

「おう、気が利くな。ありがとう」



「マスター。口元に汚れがございます」

「お、おう。悪い」



「マスター。お疲れでしょう。肩を揉んで差し上げます」

「いやいいよ。そんな疲れてないし」

「肩を揉んで差し上げます」

「‥‥わかったよ」



「マスター。耳掃除をいたします」

「‥‥‥‥‥‥はい」



「マスター。夜伽の相手を…」

「待て待て待て待て待て」


妹ってかわいいよね

「で、うちらは何に協力すればいいにゃ?」

 

アズリールと、獣人種(ワービースト)のゲームについてのすり合わせが始まり、俺は単刀直入に切り出す。

 

「基本的には何もする必要はない。ただ、俺が呼んだら指定した場所までアヴァントヘイムまるごと移動してきてほしいんだ」

 

「マスター。それは今までの話とは違うのでは?」

 

ジブリールが俺の発言に異を唱える。

 

「どう違うってんだよ」

 

「空様の話では、天翼種(フリューゲル)、そしてアヴァントヘイムが人類種(イマニティ)の勝利の後、獣人種(ワービースト)に攻め込むことが必要だと」

 

「ああ、そういってたな」

 

「でしたら、獣人種(ワービースト)に勝利するための情報共有や、戦略を練る必要があると…」

 

確かに、言葉面だけを見たらそう勘違いしてもおかしくないな。

 

そもそも、空が分かりやすいように全部説明しないのが悪い。

 

「今回に限っては、そんなことする必要ないだろ。それに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が、実際はそうはならない」

 

「…それはどういった意味でございましょう」

 

「簡単な話だ。もし仮に天翼種(フリューゲル)獣人種(ワービースト)に攻め込むことになったとして、獣人種(ワービースト)が受けると思うか?」

 

まずこの話の前提は、空白が勝利していること。

 

つまりは、獣人種(ワービースト)の必勝のタネが割れてしまったことを意味しており、そんな状態でゲームを受けるわけがないのは明白。

 

どんなに魅力的なエサで釣ったとしても、絶対に受けないだろう。

 

「確かにその通りでございます。しかし、それではそもそもの話が破綻するのでは?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()という事実が重要なんだよ。位階序列第十四位のあいつらからしたら、格上の奴らからいつゲームを受けざるを得ない状況に追いやられるかわからないという恐怖を植え付けることが今回の目的だ」

 

実際に天翼種(こいつら)が攻める攻めないはどっちでもいい。

 

攻める姿勢を見せていれば、勝手に向こうが降伏してくれる。

 

なぜなら、複数の国に攻められて領土を分割支配されるよりかは、一つの国に降伏して自治や統治を認めてもらうほうがはるかにいいからだ。

 

「加えて、仮に天翼種(フリューゲル)獣人種(ワービースト)に攻め込むことになったとしてって話をしたが、それは絶対にない」

 

俺はアズリールを見る。その顔は笑っているが、内心はどうなんだろうか。

 

「それは、どうしてそう思うにゃ?」

 

「だって、普通そんな話のらないでしょ。知らないやつが急にきて、「お前になんもメリットないけどリスク背負って戦ってくんない?」って言ってきてるんですよ?ふざけてんの?ってなるじゃないすか」

 

ごく自然で当たり前のことだとは思うが、それを言うとアズリールは大きな声で笑った。

 

「にゃっははは~~~♡面白いこと言うにゃ~~。いや、馬鹿にしてるわけじゃないにゃ?ただ、言い回しがひねくれてて面白かっただけにゃ~。いや~もう、比企谷君のことますます好きになってきちゃったにゃ♡」

 

椅子に座りながら翼をフリフリと動かし、ふんふ~んと鼻歌を歌いながらそんなことを言うアズリール。

 

もう片方の天翼種(フリューゲル)からの視線が痛い。

 

ただまぁ、俺は天翼種(フリューゲル)とアヴァントヘイムを味方につけるという役割を担っている。

 

その点においてはメリットかもな。

 

「そうっすか。まぁ、そういうわけなんで、ゲームに参加しろとか、直接的に何かしろっていうわけじゃないんで安心してください」

 

「了解にゃ。で、呼び出したらどうのとか言ってたかにゃ?」

 

「はい。要は勘違いしてもらえればいいんで。ゲーム終了後、多分俺達は獣人種(ワービースト)の全権代理と会うと思います。そん時に連絡入れるんで、そうしたら姿を見せてくれるだけで十分です」

 

「わかったにゃ。こちらとしては何のリスクもないし、受けてもいいにゃ」

 

「ありがとうございます」

 

そう言って話を終わらせようとしたとき、アズリールがそれを手で制してきた。

 

「でも、メリットもないにゃ。大したことじゃないけど、それをするだけのメリットがなければ、いくら何でも受けるわけにはいかないにゃ。それは言ってしまえばただ働きにゃ」

 

ちっ。やっぱりそう来るか。

 

でも、アズリールは受けてもいいといった。ということは、メリットさえあれば乗ってくるということ。

 

だったら、何かしらのメリットを考えなきゃいけないが、そう簡単に思いつくわけない。

 

‥‥‥。

 

まてよ?

 

「アズリール。メリットがあれば、受けてくれるのか?」

 

「もちろんにゃ」

 

「それがどんな内容であってもか?」

 

「さすがにそれはyesとは言えないにゃ。メリットと言い張ってデメリットを押し付けてくるかもしれないにゃ」

 

「そっかー。じゃぁ諦めようかな。ジブリールのお姉ちゃん呼びを報酬としてあげようかと思ったけど、天翼種(フリューゲル)全員にはメリットないし」

 

そう言った途端、アズリールは椅子から立って俺の服の首元まで飛びついてきた。

 

「いま、なんて言ったにゃ!!!!????」

 

「い、いやだから、もし受けてくれるなら、ジブリールにアズリールをお姉ちゃんと呼ぶように命令を下そうかと」

 

「受けるにゃあっ!!!!!」

 

即答かよ。

 

そう思ったらアズリールの後ろからジブリールがパァンとアズリールの頬をぶっ叩いた。

 

「冷静になってくださいアホリールさん。あなたはあくまで全翼代理であって全権代理でないことをお忘れなきよう」

 

「いま、あほっていったにゃあ!?」

 

「それ何が違うの?」

 

「アズリール先輩は全翼代理、あくまで「十八翼議会」の議長であり、有事の際の優先決定権と、もう一つ、別の特権を有してはおりますが、一人で何かを決めることができるほどえらいわけではございません」

 

「なるほど。よくわからないということがよくわかった」

 

おなじだろそれ。

 

「大丈夫にゃ!「十八翼議会」のみんなに土下座でもして今回の件は受けるようにしておくにゃ!」

 

「マスター。後生でございます。その命令だけはご容赦くださいますよう心よりお願い申し上げます」

 

アズリールの本気度が伝わって、ジブリールも本気になってやめてくれと頼んでくる。

 

そんなに嫌なのかよ。

 

「ジブちゃんが嫌なら、比企谷君でもいいにゃ?比企谷君がアズリールお姉ちゃんって呼んでくれるならそれはそれでいいにゃ」

 

「なんでだよ。ていうかアンタそんなに俺のこと好きじゃないだろ」

 

「あった最初はそうだったにゃ。ジブちゃんをこんな奴がたぶらかしやがってぶっ殺してやるにゃと思ってたにゃ」

 

そんなに?

 

「でも、話をしているうちになんとなくわかったにゃ。ジブちゃんが仲よくしている理由が、少しだけ分かったにゃ。それに、うちの内面も見破ってるようだし、いまさらにゃ」

 

そういって俺のほっぺたをつんつんとつつく。

 

「それともあれかにゃ?うちと大人のお付き合いでもしてみるかにゃ?」

 

「冗談でもそういうこと言うのは止めてください。うっかり惚れそうになる」

 

「にゃはは~。連れないにゃ~」

 

そう言って俺から距離を取るアズリール。そうしたら今度はジブリールが寄ってきた。

 

「マスター。あの不届き者に裁きを降したいと思います。どうかご命令くださいますよう」

 

「いや落ち着け。ただの悪ふざけだろ」

 

はぁと再びため息をつく。まぁ、ジブリールが嫌なら俺がやるしかないか。そのほうが手っ取り早いし。

 

ああ、くそ。超恥ずかしいなこれ。

 

「じゃあ、よろしくお願いしますよ。ア、アズリール()()()()()

 

そういうと、二人の天翼種(フリューゲル)が同時に俺のほうを見てくる。やめてやめて。多分俺今めっちゃ顔赤いから。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおやる気がみなぎってきたにゃぁああああああああああああああ!!!!!!!!!」

 

「‥‥くっ。マスターにこのような呼び方を許すわけには‥‥しかし、そうなればわたしが‥‥‥これがジレンマというやつですか」

 

ジブリールもなんか言ってたみたいだが、あまりにもアズリールが‥‥お姉ちゃんがうるさくてなんて言ってるか聞き取れなかった。くっそ、これじゃあ難聴系ラブコメ主人公みたいではないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戻ったぞ」

 

「おうお疲れ」

 

アヴァントヘイムから王城まで空間転移で戻ってきた俺とジブリール。

 

なんだかんだ言って、アズリールお姉ちゃんが「もっと比企谷君とお話ししたいにゃ!」というもんだから一週間も滞在してしまった。

 

‥‥‥いまだにジブリールぶつぶつなんか言ってんな。もう一週間だぞ?いい加減区切りつけろよ。

 

「で、どうだった?」

 

「普通にOKもらった」

 

「よし、じゃあ、最後の仕込みといきますか」

 

そう言った空のセリフの後に、コンコンと王の間の扉が叩かれる。

 

「やっと来たか。待たせすぎじゃね?」

 

王の間の扉を開き、その姿を現す。

 

俺達の目の前に現れたのは、かつての王候補の一人。

 

クラミーだった。

 

「ああ、何も言う必要はない。要件はわかってる。いつでもいいぜ」

 

そう言って玉座から腰を上げる空。そして白にこう言った。

 

「白、よく聞いてくれ。俺は白を信じてる」

 

「しろ、も、にぃをしんじてる」

 

「白、俺らはいつも二人で一人だ。白、俺らは約束で結ばれている。白、俺らは少年漫画の主人公じゃない。白、俺らは常にゲームを始める前に勝ってる」

 

「‥‥にぃ?」

 

「東部連合を飲み込む最後のピース、手に入れるぞ」

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