やはり俺の遊戯人生はまちがっている   作:鳴撃ニド

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ある日の二人⑩

「マスターにお尋ねしたいことがございます」

「俺もお前に尋ねたいことがあるんだ」

「では、マスターからどうぞ」

「なんで俺はお前に膝枕されているんだ。普通にベッドで寝たはずだぞ」

「お疲れの様子でしたので。よく眠れないただのベッドに備え付けてある枕よりも、わたくしの膝枕のほうが安眠できると思い気を利かせたのでございます」

「ああそう。ありがとう。じゃあ、その気の利かせ方間違ってるから、次からやめてもらえる?」

「かしこまりました」

「で、尋ねたいことってなんだ」

「私の膝枕はいかがですか?」

「なんて答えるのが正解なの?これ」

「質問を質問で返すなと親に教わらなかったのでしょうか。もう一度聞きます。私の膝枕はいかがですか?」

「…まぁ、あれだ。強いて言えば小町の次くらいにはよかったと思わなくはない」

「…以上ですか?」

「だから言っただろ。なんて答えるのが正解かわからないんだよ。というかなにを聞かれてるんだ俺は」


何もできないのはもどかしい①

記憶。

 

それは人間の能力の中で最も大切な能力だ。

 

確かに他にも大切な能力はあるかもしれない。呼吸をする能力だったり、食事を摂取する能力だったりするかもしれない。

 

だが、それらの能力ももちろん使い方を記憶しているからできるのであって。そのやり方を忘れてしまえばその能力を持っていても何の意味もないといえる。

 

極端な話を例に出したが、何もそれに限った話ではない。

 

アルツハイマー病という認知症の人の話を聞いたことがあるだろうか。

 

彼らは正しく判断しようとしているのに、記憶障害のために社会生活に支障が出るレベルで物事がうまく判断できないといわれている。

 

そして記憶障害はなにも技術的面にとどまらない。大切な記憶。忘れたくない思い出。そういったものでさえ、いつの日か知らぬうちに消えているのだという。

 

ジブリールが前に言っていた。記憶をなくすことは死ぬことと同義だと。

 

なるほど。言いえて妙だ。自分が生きてきた証。それこそが記憶であり、それらを失うことは今まで生きてきた意味を見失うと言い換えて差し支えないだろう。

 

だから、彼らは今死んでいる。

 

唯一生き残った(ひとり)は、とても心を痛めていることだろう。

 

だが、手を貸すことはできない。

 

なぜなら、それが、盟約によって決められたルールだから。

 

そう、話は一日ほど前にさかのぼる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達がいた玉座の間に姿を現したのは、国王選定時、空に負けたというクラミーという女だった。

 

そしてもう一人。白い髪の毛をしており、耳がとんがっている美少女。ついでに言うと胸がでかい。なんとなくおしとやかな雰囲気を醸し出すその女性は、クラミーを心配そうに見つめていた。

 

「お前らは城門の前で騒いでる有象無象の国民と違って、俺らに挑んでくると思ってたぜ」

 

玉座から立ち上がってクラミーの前まですたすたと歩いて行った空は、いつも通りの何かを企んでいる眼で彼女を見つめていた。

 

「やたらとうるさいと思ったら、暴動起きてんじゃねぇか。どうすんだこれ」

 

ジブリールに直接王の間に転移してきたから気づいていなかったが、今窓から外を見下ろしてみたらすごい人が城の前に集まってワーワー騒いでいる。

 

やけにうるさいが、祭りでもやっているんだろうかと気にしていなかったけれど。

 

理由はお察しの通りだ。種の駒を賭けたからに決まっている。

 

国民からしたら、「全員死ぬかもよ?」と言われているに等しい。そりゃ、暴動も起きるってもんか。

 

「ほっとけ。俺らにたてつく気力もない無能の集まりだ。相手するだけ無駄」

 

「‥‥そんなに、嫌なら‥‥‥全権代理の座、奪えば‥‥いい」

 

「そうだ。そして、うれしいことに、今目の前にその勇気ある挑戦者(チャレンジャー)が現れたってわけ」

 

空と白は、この暴動をどうにかするつもりはなさそうだ。

 

個人的には俺も叩かれてるみたいな気分になるから、鎮静してほしかったんだが。

 

「クラミー、本当に大丈夫なのですか?」

 

「大丈夫よフィー。正直言って、大丈夫とは言えないけれど、これ以上この男の好きにさせるわけにはいかないわ。人類種(イマニティ)獣人種(ワービースト)に隷属する可能性があるんだもの。なんとしてでも、ええ、何としてでも止めなきゃ」

 

やはり、白髪耳長女はクラミーのことを心配しているようだ。

 

そして、その心配はもっともだと俺も思う。

 

そうやって自分を鼓舞するように言い聞かせるクラミーからは、以前に見たことのある余裕のたたずまいというか、勝者の風格を感じなかった。

 

切羽詰まったとき、後がない、背水の陣を敷かれているときに見せるようなギャンブラーの顔だ。まず間違いなく負けるだろう。

 

まぁ、彼女らにとっては実際そうなっているわけだから、仕方ないといえば仕方がないが。

 

ただ、なんにせよ俺がやるべきことはすでに終わった。ここから先は空に任せるとしよう。

 

「おい空。これもお前の想定内なら、もう俺がここにいる必要ないだろ。ジブリールと一緒に図書館に帰る。獣人種(ワービースト)とのゲームになったらまた呼んでくれ」

 

俺はそう言い残して、玉座の間を退出しようとジブリールに声をかけようとした。

 

そしたら。

 

「待ちなさい」

 

空ではなくクラミーの方から声をかけられた。

 

「なんだよ」

 

「あなた、以前の国王選定戦のときにはいなかったけれど、何者?空の従者?それとも、天翼種(フリューゲル)の間者?」

 

「空の従者とかどんな冗談だよ。どこをどう見たらそうなるんだ」

 

天翼種(フリューゲル)の間者であるかという質問については、あながち間違いではないので話をそらしておこう。

 

「さっきの発言からして、ステファニー・ドーラよりも空はあなたに信頼を置いているようだし。それにその気色悪い反応は何?図星?」

 

うざいなこいつ。本当に図星のときは、言い当てられると相手と距離を取ったりするが、図星でないのにさも言い立てたかのような発言をされると、嫌悪感だけでなく腹立たしさも追加されるようだ。

 

「ちげぇよ。というか俺とそんな話する余裕があるなら、今現在の敵である空の攻略法でも考えておいたほうがいいんじゃねぇの?ノープランで勝てる相手じゃないぞ」

 

「‥‥‥確かにそれもそうね。忠告感謝するわ。今は空を倒すことに専念すべきね」

 

なお、その敵の味方かもしれない俺の忠告を聞いてしまう時点で、空よりも劣っているといわざるを得ない。

 

「それで?私からの挑戦状、受けてくれるの?」

 

「もちろん。ハナからそのつもりだ。あと八幡、お前も勝手に帰るな」

 

「なんでだよ。もう仕事終わっただろ」

 

「残念だが、仕事というのはやめることはあっても終わることはない」

 

そのセリフ、めっちゃ共感できるわ。ただ、本音を言えば共感はできても納得はできない。

 

「はぁ~。わかったよ。乗り掛かった舟だ。今回ばかりはとことん付き合う。ただし、今回だけだからな。マジで。なにすりゃいい」

 

「お前には今回、ゲームの傍観者としてここにいてもらう」

 

「なんだそりゃ。意味が分からん。俺必要なの?それ」

 

「ああ。今回のゲームは俺考案のスーパーエキセントリックエグゼクティブゲームとなっているからな。プレイヤーがゲームの仕様の理解に苦しむ可能性を考慮せざるを得ん。そこで、ノンプレイヤーとして、中立の立ち位置からゲームの進行を補佐してもらいたい」

 

「もう一度言わせてもらうわ。なんだそりゃ」

 

まぁゲーム内容は挑まれた側である空が決めることはできるが、理解に苦しむようなゲームを作るって、何というか、この世界ならではって感じの悪趣味な戦略だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから、半日ほどを有しただろうか。

 

空考案のスーパーなんたらかんたらゲームを、この世界で実装するべく、ジブリールとフィー?って呼ばれてた森精種(エルフ)の子が協力して魔法で作り上げるのに、結構時間がかかってしまった。

 

なお、その際にジブリールが死ぬほど文句を垂れていたのは言うまでもない。

 

「なぜマスター以外の命令を聞かなければならないのでしょうか」

 

「そも、私に頼らなければいけない時点で欠陥ゲームと言わざるを得ません」

 

「とくに、この森の田舎者と協力するなどまっぴらごめんでございます」

 

エトセトラエトセトラ。

 

ちなみに天翼種(フリューゲル)森精種(エルフ)は仲が悪いらしい。大戦時にいろいろあったみたい。

 

‥‥‥逆に仲がいい種族同士とかあんだろうか。

 

ただ、合作ともあって、仕上がりは十分なものになっているんだとか。魔法は使えないのでわからんけど。

 

「さて、それじゃ、ルールの説明を行う」

 

空と白、そしてステファニー属する白駒の陣営。

 

クラミー、フィーの属する黒駒の陣営。

 

それぞれがオセロ盤に向かい合うように対峙し、俺とジブリールはその横で座ってみている形となる。

 

「このゲームは、簡単に言っちまえば「存在を奪い合うゲーム」だ」

 

「存在を、奪い合う?」

 

挑戦者であるクラミーが疑問を投げかける。

 

「そうだ。基本的にはオセロを行う。ただし、自分の存在を構成する32の石、つまり持ち駒は、深層心理における優先順位を反映し、重要な順に1番から振り分けられる。ただ、どの駒に自分を構成するどの部分が入っているかは、相手にとられ、実際に失うまでわからない。例えば、その隣にいる森精種(エルフ)の存在や、腕や足、神経や記憶。そしてついには存在そのものが奪われ、まったく認識されなくなる。つまり()()()()()

 

「‥‥あなた、本気?」

 

なにをいまさら。本気も本気だろう。冗談でこんなに手間暇かけてこんなクソゲー作るかよ。まぁ、正気ではないだろうけど。

 

「ああ、盟約その5。「ゲーム内容は挑まれたほうが決定権を有する」いやなら勝負不成立だ」

 

「‥‥彼の立ち位置は?」

 

そう言って俺のほうを見てくるクラミー。たしかに、今のところ俺が必要な要素が全くない。

 

「基本的には無視してかまわない。ただ、ゲームを進めていけばいずれ、どちらかがゲーム続行不可能になる可能性が非常に高い。その際にこいつの指示を仰げ。こいつがゲーム続行不可と認めれば、その時点でもゲームは終了だ」

 

「彼は一応、あなたたちのお仲間でしょう?公平な判断をしてくれるのかしら」

 

「安心しろ。ジャッジには私的判断、およびひいきはしないと盟約に誓ってもらうし、ゲームの内容や進行において、どちらにも助言などを行わないっていうのも追加する」

 

なるほどね。確かに、基本ルールがオセロである以上、駒を打てなきゃゲームは続けられない。両腕失ったときみたいに、打つことができなければ事実上ゲーム続行不可。その判断をしろということか。

 

「‥‥いいわ。彼については納得した。けれど、このゲームそのものが狂っていることに変わりはないわね」

 

「‥‥クラミー‥‥」

 

フィーが心配そうにクラミ―の顔を覗き込む。今日だけで何回見ただろうか。多分10回は越すと思う。

 

「フィー。さっきも言ったけど、この男は人類種(イマニティ)の駒を賭けると宣言しているの。放っておくわけにはいかないわ」

 

クラミーは空の怪しげに笑う顔を睨みつけながら、苦々しげにフィーに話しかける。

 

「‥‥まったく。和解できるんじゃないかって、すこし期待していたのに」

 

「和解なら応じるぜ。俺を信じ、その森精種(エルフ)をこっちによこしてくれるならな」

 

「できるわけないでしょう!!?」

 

「だろうな~」

 

でしょうね。つーか、そんなことできるなら最初からゲームなんて挑みに来ないだろ。余計な条件なんて提示して、無駄な時間をかけるなよ空。早く帰りたいんだよ俺は。

 

「賭けるものは?」

 

「勝ったほうは、相手に二つ要求できることとしよう。例えば、ゲーム結果を恒久的に確定し、相手の存在を永久に葬り去ったり、それぞれのパートナーの記憶を一つ改ざんし味方にしたりな」

 

おっと。めずらしいな。空がぼろを出すとは。

 

「…つまり、お互いの存在と、相方の生殺与奪を賭けた奪い合いってわけ?」

 

「そうだ」

 

「‥‥狂ってるわ、あなた」

 

「言わせてもらうが、いまさらじゃね?そこそここいつに付き合ってるが、こいつがまともだったためしがないぞ」

 

「狂ってるついでにもうひとつ、大切なルールを提案する。互いのパートナーはゲームに参加、プレイヤーが続行不能になった場合、代打ちが可能となる」

 

「おいまて。じゃあ俺の役割どうなんだよ。その言葉一つで存在意義無くなったよ俺」

 

俺の役割は続行不能時の審判役。続行不能になってもパートナーが代打ちできるなら、俺が必要になる状況が一切思い浮かばない。

 

「忘れたか?駒にはそれぞれプレイヤーの大切なものが割り当てられている。その中にたとえば、「パートナーとの絆」なんてものが入っていて、それが奪われてしまった場合、代打ちは事実上不可能。その上でプレイヤー自身もゲームが続行できなくなる可能性もある」

 

「…まぁ、なくはないか。深層心理の優先順位を反映してるって言ってたし、パートナーを大切に思う気持ちがあれば、そうなる可能性もある、か」

 

「ルールについては以上だ。そろそろ返答を聞かせてくれ。クラミー・ツェル」

 

「‥‥いいわ。この勝負、受けさせてもらうわ」

 

そうして、ゲームが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲームが始まってから数十分が経過した。

 

最初の方こそ互角、というか、駒の数的には似たようなもんだったが、中盤あたりからクラミーのほうが優勢になってきた。

 

「‥‥‥あなた、わざと負けるように打っているわね」

 

「いいや?ちゃんとこれで勝てるようになってる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらにその数分後。

 

形勢はクラミーが一気に持ち込み、ほぼすべての駒をクラミ―が支配する。

 

そしてその中で、

 

「…!?なにこれ!?あなたの記憶!?まさか…こうして自分の記憶を奪わせて、背後にどの種族もいないことを証明しようとしているの…!?」

 

ほぼすべての駒が一気にクラミーの元へと渡ったことで、その中のどれかに含まれていたであろう「自分の記憶の一部」が奪われ、記憶が流れ込んだようだ。

 

「‥‥‥わるくない、こたえだ」

 

なお、記憶のみならず、空自身の体の支配権もほぼ向こうにわたっているっぽい。

 

言葉はカタコトだし、両腕はプラプラとして力が入っていないし。

 

本来ならここで代打ちを使うのだろうが、空は自分の口で駒を咥えることによってゲームを続行していた。

 

ここで白を出さないってことは、やはりあの代打ちシステムに布石が仕込んであるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ついに。

 

クラミーが奪った駒が、空の体の全ての支配権と、存在そのものを保有していたため、空は消滅し、白、ステファニーはともにその場から離れてしまった。

 

「‥‥‥これで、ゲーム続行不可能、私の勝ち、でいいわよね?」

 

空が消えたとたん、クラミ―が俺に確認を取る。クラミ―は一刻も早く奪った記憶や、胸糞悪い気分から解放されたいのだろう。

 

「ああ、誰がどう見てもゲームは続けられないし、ゲーム続行不可能とみなして、クラミーの勝ちだ」

 

「‥‥そう。じゃあ、このゲームを早く終わらせて‥‥」

 

「‥‥といいたいところだが、あいにくとそういうわけにもいかんらしい」

 

そういうと、クラミーは一瞬呆れた顔になる。そしてすぐに、キッとした目つきで俺をにらむ。

 

やめろよ。俺だってやりたくてやってるわけじゃないんだから。なんなら早く勝ってもらいたいまである。

 

「どういうこと?この状況、誰がどう見てもゲーム続行不可能でしょう?空をひいきしないという言葉忘れたの?」

 

「ちげぇよ。別にひいきなんかしてねぇ。確かにこの状況、一見すればどう見てもクラミーの勝ちだが、よくよく考えてみればまだ勝敗はついてない」

 

「マスター。それはどういったことでございましょう」

 

おお。おとなしかったのに急にしゃべりかけてくるなジブリール。少しビビっちゃったじゃんか。

 

「このゲームで勝敗が付く要因は二つ。一つは元ネタであるオセロのルールに基づくもの。もう一つは空が追加したルールによるものだ。それはわかるだろ?」

 

「はい。そして、今回は空様のルールに基づいて勝敗が決したものと判断されますが」

 

ジブリールが直接俺に聞いてくるおかげで、クラミーやフィーも今はおとなしく話を聞いてくれる。

 

「まぁそう判断するだろうな。順番に確認していくぞ。空はオセロ以外での勝敗が付く要因として、なんて言ってた?」

 

「たしか‥‥マスターがゲーム続行不可と認めれば、ゲームを終了すると」

 

「じゃ、ゲーム続行不可とはどうやって決める?」

 

「プレイヤー、およびそのパートナーがオセロ盤に駒を打つことができなければ、ゲーム続行不可と認識しておりますが」

 

「そうだ。現時点では空は存在そのものが消滅し、白はすでにここからいなくなってる。ゲーム続行不可と判断するには十分かもしれない」

 

「であれば、なにも問題なく勝敗が決すると…」

 

「ただ、()()()()()()()()()()()()()()()。空は駒を打つことはできないが、白が駒を打てないと断定できないんだよ」

 

俺はジブリールの言葉を遮って、この話の核心を口に出す。

 

「俺は盟約によって、互いにメリットになることは言えないし、どちらかをひいきすることも禁じられている。だから、俺がゲームを終了させたくても、屁理屈の一つも言えないくらいに絶対でなければゲームを終了させられん。白が代打ち不可能と判断する材料が今のところない」

 

「何を言っているの?ここからいなくなった時点で、代打ち不可能と判断できるはずだわ」

 

「あいにくと、このゲームには持ち時間という概念はない。であれば、トイレに立ったり、食事を取ったりすることが暗黙のうちに可能であることも示唆している。白が一時的に離脱することもルール上禁止されていない。もっといえば、この場を離れたからといってゲームに参加しなくなったとは判断できない」

 

それに、と俺は付け加える。

 

「空の残りの駒の数字をよく見てみろ」

 

俺の言葉で全員が、空の残した白色の駒の数字を確認する。

 

「壱と、弐と、参‥‥」

 

「そうだ。ありえるか?空の深層心理の中で、自分の存在以上に大切だと思っていること。そんなもの、白以外にいないだろ」

 

「っ!そ、そんなのただの憶測でしか…!!」

 

「じゃあ、お前が奪った記憶やら知識の中で、白に対する愛情だったり、白に対する信頼だったりが存在したのか?」

 

「それは‥‥」

 

「ないだろ?よって、多分、このゲームは続行できる、と俺は判断した」

 

クラミーは悔しそうにオセロ盤を見つめている。フィーはそんなクラミーの肩に手を置き、大丈夫なのですよ、と励ましていた。

 

「俺を言い負かすことができなければ、俺は白が代打ち可能であると判断し、ゲームの終了を宣言できない。ていうか早く終わってほしいから、個人的には言い負かしてほしいまである」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁそんなこんながありまして。

 

ただ、結局白はその当日にはゲームに帰ってこなかった。

 

審判役も兼ねているので、ジブリールの力を借りて一度ゲームから退出して白の様子を確認したら、王の寝室で寝息を立てていた。

 

白一人にするのもなんだか忍びないので、俺とジブリールは図書館には帰らずに王城の一室で一日を過ごしてみたのだが。

 

「久しぶりに二人きりですので」といってジブリールがやたらとお世話をやきたがるので、今後は別室で過ごそうと決めた。




お待たせして申し訳ありません。

一度フルで書いてみたんですがあまりにも本文が長くなりすぎたので

今回は全編後編みたいな感じで。
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