やはり俺の遊戯人生はまちがっている   作:鳴撃ニド

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ある日の二人⑬

「マスターにお願いしたい議がございます」

「なんだ」

「一緒にお風呂に入りましょう」

「却下」

「な、なぜでございましょう!?」

「いや、なんで俺がOKだすと思ったの?ダメに決まってるだろ。つーか、お前は見られてもいいのか?前にそういう目線で見られるのは虫唾が走るとか言ってたろ」

「はて?記憶にございませんね。今は未知を探求することが最優先ですので」

「俺の体は前に調べただろうが。もう既知だろ」

「いえ、調べたいのは異世界人の体の洗い方や、風呂での様子を、できれば模写させていただきたいのですが」

「ぜっっっっっったいにだめ」


お風呂回①

フィールとジブリールの確執が一段落したところで。

 

クラミーとフィールの関係性についての説明を受けた。

 

「フィーは幼馴染。正確には私の主人、だけどね」

 

「エルヴンガルドは民主国家ですが、位階序列で自分たち以下の種族を盟約で縛ることを推奨しておりまして。端的に申せば、奴隷制度を採用しているのです」

 

空や白、ステファニーは初耳だったらしいが、俺は違う。

 

前にジブリールに教えてもらったことがあるし、なんなら自分で調べたことがある。

 

森精種(エルフ)についての情報が欲しくて、図書館の中を何度も歩き回ったこともあるくらいだ。

 

なんでそんなことしたかって?そりゃあ、気になったからだ。自分が想像していた、アニメや小説でしか出てこないような、妖精みたいな見た目をしている生き物かどうかを確かめたかった。

 

確かめたから何、というわけではないが、やはりイメージと実物が似通っているほうが好ましくはあるし、固定観念と同じであったほうがこの世界で生きていくうえでもベターではある。

 

調べていくうちに、イメージよりも残虐な種族だということがわかり、図書館の一室で肩を落としたのは記憶に新しい。

 

「じゃあ、お前、奴隷なのか」

 

「ええ。曾祖父の代から、ニルヴァレン家の奴隷。生まれも育ちもエルヴンガルド。ニルヴァレン家は、エルヴンガルドでも名のある家で、代々上院議員を務めてきている。…それなのに、奴隷の私をフィーだけは、友達として扱ってくれた」

 

クラミーは視線と声のトーンを少し落とし、昔の思い出を懐かしむように少し微笑んだ。

 

どんな会話があって、どんな感情が交錯して、どんなことを知ったのか、それは当人たちしか知らない。

 

しかし、彼女の顔を見ただけで、それは幸せな思い出だったのだろうと推察できる。

 

‥‥そういえば、空も記憶全部持ってるんだっけか。

 

「当然、表向きにはそんなそぶり見せられないけどね」

 

「わたしはぁ~それがすごぉく気に入らないのですよ」

 

ぷく―とほほを膨らませながら、フィールは文句を垂れる。だから可愛いって。やめろ。

 

「で、昨年先代当主が鬼籍に入ってからは、フィーが事実上の家長。だから私たちの関係は、世間からしたらさらに複雑なわけ」

 

「え!?じゃあフィールさん、今は上院議員代行!?上院議員が奴隷解放運動を企てるって…国家反逆じゃないですの!!」

 

「「「「えええええーーーーー!!!!????」」」」

 

空、白、そしてジブリールも含め、俺達は驚きの声を上げた。

 

「流石にみんな驚きますわよね!?」

 

「ああ、…ステフ、今の話ついてこれたのか…!?」

 

「驚くとこそこですのぉ!?」

 

「驚くとこそこかい」

 

俺以外はステファニーの理解力に驚いていたようだ。

 

ていうか待って。だったら普通に驚いた俺だけ、なにもわかってませんでした感でるからいやだなそれ。

 

「…フィールさんはいいんですの?わたくしたちに協力するのは、エルヴンガルドの破滅につながるかもしれないんですのよ?」

 

「わたしはぁ~クラミーが傷つけられなければ、なんでもいいのですよぉ」

 

にっこりとほほ笑む彼女の姿は、まるでクラミーを保護する親のような顔だった。

 

「家とか正直どうでもいいですしぃ~いっそ国ごと無くなれば話が早いのにと思ったこともあるのですよぉ~えへへへ」

 

「さらりとえげつないですわね‥‥」

 

「クラミーは目を離すと、すぐこっそり泣いているからそばにいたいのですよぉ」

 

めっちゃ痛いカミングアウト来た。

 

「な、泣いてないわ!泣いたことすらないわ!」

 

「いや国王選定戦で負けたとき、子供みたいに泣きじゃくってただろ」

 

「ち、ちがうの!あれは違うの!」

 

頭を抱えながらうわぁあああ、と半狂乱になってぶんぶんと頭を振り回す。

 

「赤ん坊の頃から知ってるからって、いつまでも子ども扱いしないでくれる!?」

 

顔を真っ赤にしながらフィールに詰め寄るクラミー。

 

「クラミーは気負いすぎなのですよぉ」

 

そういってフィールはクラミーの頭をなでた。

 

うん。やっぱりこれって…

 

「親友っていうより、母親だな」

 

空は俺と同じ感想を言って、母親っぽく膝の上に座っている白の頭をなでる。

 

白はそんな兄の手を握りながら、幸せそうにそのなでなでを堪能していた。

 

「と、とにかく!これから私たちが相手にしなきゃいけないのは東部連合の連中なのよ!巫女という統治者の登場により、わずか半世紀で世界第三位の大国になった連中の脅威は未知数。事実を知る者はいないわ。さらに獣人種(ワービースト)は血壊という能力を兼ね備えている。何か対策でも考えてるわけ?」

 

「考えてるさ。共闘する俺らに必要なのはチームワーク。絆だ。互いの親交を深めなきゃなんねぇ」

 

そう言って空は唐突に立ち上がり、俺たち全員についてくるように命じてきた。

 

まぁここまできて拒否する理由もないので、おとなしく従ってみた。

 

そして、王城のとある一室の前に連れてこられた。

 

まぁまぁ遠かったな。どんだけ広いんだこの王城。

 

「その親交を深めるために…!!!」

 

「お風呂なら一緒に入らないわよ」

 

「えぇ…な、なぜわかったし…」

 

ガックシと部屋のまででうなだれる空。やっぱりこいつ変態なんじゃなかろうか。

 

いや待て待て。女は女で、男は男で別々に、その上で一緒に入る可能性だってあるだろう。混浴を狙っていたと判断するのは早い。

 

そして、そんな風に考えてしまった俺もちょっとまずいかも。恥ずかしー。

 

「自分の記憶全部渡したの忘れてるのかしらこの人。ま、残念でした」

 

「別に女同士ならいいんじゃないの?俺と空は外出てるから、みんなで浸かって来いよ」

 

「いやよ。仲良くもない相手に自分の肌をさらすなんて。八幡って言ったかしら?あなたは空と一緒のお風呂に入りたいと思う?」

 

「すまん。俺が間違ってた」

 

空と一緒の風呂に入るなんて、よくよく考えてみたらいやに決まってる。

 

疲れを落とすどころか、余計に疲れがたまる可能性あるだろ。気まずくなること間違いなしだ。

 

そして、そんなクラミーに鶴の一声が。

 

「クラミー。共闘する相手との親交は、大事なのですよぉ」

 

「えぇ!?」

 

クラミーはフィールを裏切りにあったような顔で見る。

 

まさか自分を援護してくれると思った味方(フィール)から、後ろから刺されるとは思わなかったみたい。

 

「そう、その通りだ。俺らが元居た世界、日本の信仰を深めるための伝統儀式!それが…裸の付き合いだ!」

 

「それ本当?」

 

「まぁ、間違っちゃいない。俺も聞いたことあるし。けど、やってるやつは見たことない。単純に友達いないからかもしんないけど」

 

「黙れ!クラミー達には盟約でなく、信頼関係だけで動いてもらうんだ。ここは伝統文化に頼るしかないのだ!」

 

「アンタが今頼っているのは果てしなき煩悩と下心でしょう」

 

同感だ。

 

「ジブリール君。説明して差し上げたまえ」

 

パチンと指を鳴らす空。

 

そしたらジブリールがタブレット片手に裸の付き合いについての解説を始めた。一つ聞いていいかしら。君、いつタブレット持ってきたの?

 

あと、なんで今回はそんなにノリノリで空の味方に付くの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

約三十分ほどが経過しただろうか。

 

まさか裸の付き合いの説明だけでこんなに時間がかかるとは思ってもみなかった。

 

割と序盤の方は、語源というか、豆知識的要素を含んでいたから、俺も新鮮な気持ちで説明を聞いていたが、途中から雲行きが怪しくなり。

 

最後の方はもはやどうでもいい、関係なさそうな話になっていた気がする。

 

「…つまり古代ローマ人と、現代の日本人が共通の銭湯という文化を用いていたからこそ、作品は大ヒットし、時の話題をさらったのである、と」

 

「どうだ、わかったかクラミー?」

 

「‥‥もう、何の話だかわかんない…」

 

クラミーは根は真面目なのだろう。今の説明をちゃんと理解しようとして、きちんと聞いた結果、頭がパンクしそうになっている。

 

両手で抱えている頭から、もうプシューとかいう効果音が聞こえそうなほどだ。

 

「仕方ないですね。私が代わりにお断りするのですよぉ」

 

救いの手を差し伸べたのはフィールだった。

 

「クラミーはこういいたいのですよぉ」

 

フィールは、人差し指を立ててひとこと。

 

「お風呂が嫌なのは、プロポーションに自信がないから」

 

「ちがうわーーーーーー!!!!!!!!」

 

救いじゃなく魔の手だったみたい。

 

「大丈夫なのですよクラミー。女の価値はぁ、胸じゃないのですよぉ」

 

「分かったわよ!!入るわよ!入ればいいんでしょう!???」

 

クラミーが折れた。

 

余談だが、ここにいる女性の胸の大きさと言ったら、とんでもない気がする。

 

白とクラミーは、まぁ成長段階だからいいとして、他の人たちはもう本当にヤバイ。

 

直視するわけにもいかないし、直接その大きさを見たわけではない。ちらりとしか見てないし、服の上からでしかないが、それでもその大きさはわかる。

 

そう言えば、前にジブリールにからかわれて胸を押し当てられたことがあったっけ。

 

‥‥いかんいかん。これ以上は鼻血もんだ。思い出さないことにしよう。

 

‥‥念のために言っておくと、他意はない。もうホント、事実を言っただけです。誰に言い訳してんだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから少しして。

 

俺と空、ジブリールは仕切りの外で待機。

 

他の女性たちは全裸になり、浴場で談笑しながら湯につかっているっぽい。

 

外で待機するのではなく、しきりで遮られているだけなので、しゃべっている声だったり、音だったり、湿度だったり、温かさだって伝わってくる。

 

中途半端にお預けを喰らっている感じがする。

 

「もう!このシャンプーもう少し扱いやすくならないんですの?」

 

ステファニーがこっちの世界のシャンプーに文句を垂れる。というか、ジブリールが持ってきたシャンプーに、が正しいか。

 

なんでも、天翼種(フリューゲル)御用達の素晴らしい一品なんだとか。髪はさらさら、肌はすべすべ。女にとっては喉から手が出るほどの超高級シャンプー。

 

そのかわり、なのかはしらないが、使い勝手が非常に悪いらしい。シャンプーのノズルの部分が馬鹿みたいに長くて、意思を持ったようにうねうね動く。たとえて言うならミミズみたいな感じ。

 

ちなみに俺も使ったことがある。体に巻き付かれたり、使用量以上にバカスカ中身が出たりと散々だったが、風呂から上がったら、そりゃあもう男としてワンランクアップしたくらいの変化があった。

 

「あれ?クラミ―そんなスタイルよかったんですの?」

 

「着やせするタイプなの」

 

なぜだろう。見えるはずもないのに、クラミーがステファニーにどや顔しながら決めポーズをとっていることがわかってしまう。

 

「空様。あれは想定してございましたか?」

 

「あれって言われても分かんな‥‥お前何してんの?」

 

「皆さんの様子を観察しているだけでございますが」

 

「じゃあ普通に見りゃよくない?俺らと違ってお前女だろ。なんで仕切りを転移魔法で貫通した状態で観察してんの?」

 

びっくりしたわ、もう。ふと右見たら下半身しかなかったんだから。

 

「で、あれって何のこと?」

 

「クラミーの胸が非常に大きい件についてでございます」

 

「マジ?そんなでかいの?」

 

「マスター。その反応はいささか女性に対して失礼かと」

 

「いやお前が話題に出したんじゃん。言うまで考えてもなかったし、お前が言うほどでかいってどんだけなんだっていう、そう、興味だ。人体模型見てんのと同じ」

 

流石にこの言い訳は苦しいか。

 

しかし、すごく気になる。あれだぞ?見たいとか言っているわけじゃないぞ?

 

さっき服越しでパッと見た感じ、ジブリールのほうがもう圧倒的にデカかった。そして、そのジブリールが大きいというサイズ。

 

着やせとはいえそんなサイズのものを服の中にしまえるのか?という疑問があるだけです。本当です。

 

「クラミーの胸がでかいことも想定済みだ。フィー。あ、いや、フィールさま。クラミーのおっぱい偽装してる魔法、あれは幻惑?それとも変質させてる?」

 

仕切り越しからふぇっ!?というクラミ―の声がする。なんだ。偽乳か。

 

「クラミー。ばれてるし、やっぱり裸の付き合いで偽装は失礼だと思うのですよぉ」

 

「あと、なんで空は偽装だって気づいたの?見たの?」

 

「俺はあいつの記憶をすべて知った。それは人の人格、思考パターン、癖なんかを構成する重要なファクターだ。今の俺は、あいつがやりそうなことをすべて読むことができるし、偽装するだろうって考えた。加えて、スリーサイズを記憶してるからデカいなんてことは絶対ない」

 

そういやさっきスリーサイズを全員の前で言おうとしてたっけ。

 

「それでどのような魔法がご所望ですかぁ?」

 

「話が速くていい」

 

ウォッホンと、咳払いをして、空の煩悩が垂れ流された。

 

「俺を女性化できないですかねぇ!?そうすりゃ俺は背後に広がる楽園を見ることができるのです!!」

 

「お前…」

 

気持ちはわからなくもない。俺もそんな欲求がさらさらないかと言われれば、めっちゃある。

 

だが、ここにいる女性全員に聞こえる声でそんな願望伝えるとか、変態を通り越してもはや勇者だよ。英雄だよ。オールマイトくらいのスーパーヒーローだよ。

 

「できるのですよぉ」

 

「「マジで!?」すかぁ!?」

 

俺と空は同時に驚きの声を上げた。

 

やっぱチートだよ魔法。こうなってくるともう本当に何でもありだよ。ずるくない?

 

「ただし、元にも戻せませんがいいですかぁ?」

 

「な、なん、だと…」

 

「…きゃっか」

 

泣き崩れる空と、容赦なくそれを否定する白。

 

よかった。さすがにデメリットはあるみたい。そうだよな。最強魔法連発してMP切れ起こさないとかそんなゲームないもんな。

 

「ところでジブリールはなんで一緒に入ってないの?」

 

「それが、空様からNGをいただきまして」

 

なんでだろう。何か悪い事でもしたのかしら。

 

「おい、なんでだ」

 

「お前に与える情報は三つ。白はまだ11才で異世界人。前にジブリールと白は風呂に入った経験がある。ジブリールは変態」

 

「理解した」

 

空の体は無理だからって、白に襲い掛かったのかこいつ。おおかた、未知を調べたいのどうのこうのとかいうつもりだったんだろう。

 

「俺が言うのも変なんだけど、なんか悪いな」

 

「そう思うなら、ちゃんと手綱を握っておいてくれ。盟約で縛れない俺らじゃ、流石に手に余る」

 

「善処する」




ちなみに、次回はお風呂回②ではありません。

原作の方にて、またお風呂に入るシーンがあるので一応①にしています。
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