「最近お前のスキンシップ減ったよな」
「マスターが嫌がるので、少し趣向を変えたまででございます」
「‥‥?まぁ、ありがたいからその調子で頼む」
「!!か、かしこまりました!!」
「なんなんだ一体」
「‥‥スー」
「起きている間は嫌がられますが、寝ている間は素直でございますね」
「‥‥スー」
「‥‥チュッ」
「‥‥スー」
「‥‥////チュッ」
「‥‥スー」
「♡♡♡////ギュー」
ジブリールにアズリールの処遇を任せてから約一日が経とうとしている。
俺がやったことと言えば、軽く本を読んで、一度寝っ転がって睡眠をとり、起きてまた本を読んだだけ。いや~。ジブリール様々だ。本を読むだけで仕事が終わる。
そうはいってもジブリールが何をしているのか全く分からず、気にはなると言えば気にはなるのだが、それよりも本を読むのに熱中してしまっていた。
知識を尊ぶというだけあって、その知識を得るための書籍は素晴らしい。広く浅い一般教養と言ったものから狭く深い専門知識までありとあらゆる本が置いてある。
とは言っても俺が読めるのは
そんなこんなで探しては読み、探しては読み、を繰り返していくと、いつの間にかゲーム終了時刻となっていた。ゲームに参加しているのに全くと言って手を付けなかったが、終了したことは感覚で分かった。異世界ってすごい。
それからしばらくたっても、ジブリールからもアズリールからも連絡はなかった。ジブリールこそ空間転移なんてものを使って「マスター。ただいまゲームが終了いたしましたので迎えに参りました」とか言ってきそうなものだが。
まぁ来ないなら来ないでいい。せっかくの
「‥‥‥流石に遅い気がしてきた」
ゲーム終了から3時間ほどだろうか。いくらなんでも音沙汰なしというのはおかしい気がする。
しかしだからと言って俺が直接迎えに行くことはできない。ここがアヴァントヘイムのどこかなのはわかるが、そこからアズリールたちがいる場所へどうやって向かうかなんて知らない。
こんなことなら別行動なんてしなきゃよかった…。俺このまま放置されるなんてことないよね?
と、不安感が俺の心を襲い始めたころ、ちょうど空間に亀裂が生じ、ジブリールが中からひょっこりと顔を現す。
「マスター。お待たせいたしました」
「ずいぶん遅かったな」
「ええ。まぁ。少々手間取りまして。こちらへ」
ジブリールに言われるがまま、空間を転移する。その先にはアズリールが席について待っていた。
どうやら、ジブリールが上手くやってくれていたようだ。その顔からは怒りの顔はみて取れず、どちらかというと慈しみの感情と言った感じだろうか。
「待たせたにゃあ比企谷君。気づいてると思うけど、ゲームはウチの勝利で終わったにゃ」
「はい。アズリールお姉ちゃん。俺もこの呼び方は守りますし、一日だけジブリールを好きにしていいですよ」
そういうと、アズリールは軽く首を振る。
「比企谷君。その話はもういいにゃ。色々ジブちゃんから聞いたにゃ。全部聞いて、受け止めて、ウチは変わったにゃ。ウチはまだ何もわかってない。君のことも、ジブちゃんのことも、
アズリールの目は本当に透き通った眼をしている。何か含みを持っていた目から、ここまで変わるようになったなんて、いったい何をしたらこんなことになるのだろうか。
「ウチは改心したにゃ。怒りも苦しみも憎しみも、些末な問題でしかなかったにゃ。今後は比企谷君たちのためにウチも協力するにゃ。そのために、対等な相手として、ウチをそのまま「アズリール」と呼んでほしいにゃ」
そういって、すっと手を差し伸べられる。協力してくれるというのなら、拒む必要もない。俺はその手を受け取り、固い握手をした。しかし…
「いやでもルールはルールなんで、呼び方は変えられませんよ」
「じゃあウチと後でもう一回ゲームをするにゃ。ウチが勝っても、比企谷君が勝っても、呼び方を元に戻すことを賭ける。どうかにゃ?」
またゲームすんのかよ。まぁまだ東部連合との会議までには時間あるし、賭けるものもそれなら俺に取ってデメリットはない、か。
「わかった。それなら受ける」
「ありがとうにゃ」
「マスター。不躾ながら、私も参加してもよろしいでしょうか」
そういって口をはさむジブリール。そしてアズリールの方に視線を向けて、
「私が勝利した暁には、何でも一つ命令を聞いていただきたいのです」
と。
「何要求するつもりだよ」
「マスターの呼び方がチャラになるのなら、私の罰ゲームをチャラにするチャンスがあってもよいかと存じます」
なるほど。一日服従権を破棄しろ、と言いたいわけか。なんでも、というからにはまだなにか企んでそうだが、俺に危害が加わるわけでもない。まぁいいか。
それから、俺達は東部連合に乗り込む際に、アズリールお姉ちゃんを呼び出す合図、時間帯、方法などを細かく決め、今後空と白が行うであろう面倒ごとに巻き込まれた際の対処法などを話し合った。
案外話し合いというものは時間がかかるもので、アズリールお姉ちゃんは俺の要求を全て受け入れ、アズリールお姉ちゃんからの要求は何もなかったというのに軽く二時間はかかってしまった。
「これで、話したいことは大体終わりましたかね」
「了解にゃ。当日はよろしくにゃ?」
「はい。それで、ゲームやるとか言ってましたよね?何にします?」
ここでジブリールが挙手をする。はい。ジブリール君。
「無難にトランプなどいかがでしょう」
「乗ったにゃ。神経衰弱とかどうかにゃ?」
「俺は何でもいいんでそれでいいですよ」
「お前らそれはずるだろ」
「魔法を使ってはいけないとは言われておりませんので」
「ごめんにゃ?せっかくやるなら勝ちたいからにゃあ」
ゲームが始まるなり、じゃんけんで順番を決めよう、となって、俺はグー。二人はパー。その後、二人がじゃんけんしてジブリールがグー。アズリールお姉ちゃんがパーとなり、順番はアズリールお姉ちゃん、ジブリール、そして俺となった。
「フェアになるようにマスターがトランプをシャッフルし、配ればよろしいかと」というジブリールの言葉を鵜呑みにしたのが間違いだった。
配り終わるなり、アズリールお姉ちゃんが「じゃあはじめるにゃ~」とかいって次々とペアを完成させていく。運がいいとかそういうレベルではない。十三回連続で初見のペアを当て続けるとか不可能にもほどがある。
そしてわざとらしく十四回目で適当な二枚をめくり、「あ~外しちゃったにゃ~。じゃ、次はジブちゃんの番にゃ」と言ってめくったカードを回収していく。
その後、ジブリールも同様に連続でカードを当て続け、全ての札を回収。結果、ジブリール、13ペア。アズリールお姉ちゃん、13ペア。俺、一度も番が回ることなく0ペアで敗北。ずるやん。
「別に負けても問題ないからいいんだけどさ」
「負け惜しみとはカッコ悪いにゃ~」
ちがうわい。
「では、勝利報酬をいただきたく存じます」
「そうだな。で、俺は今後アズリールと呼べばいいのか」
「そうにゃ~。これからよろしくにゃ?」
あざとく、こてんと首を横に倒して俺を見つめるアズリール。はいはい。よろしくね。
「で、ジブリールはさっきの罰ゲームの無効を要求するのか?」
「いえ。少しだけ要求を変えさせていただきます。私の勝利報酬は何でも一つ命令をきいてもらう、ですから今変えても問題ございませんね?」
ジブリールはアズリールに確認を取る。
「もちろん、問題ないにゃ。さぁ、何を要求するかにゃ?」
アズリールは文句ひとつ言わず、ジブリールの要求を待つ。
「では、宣言させていただきます」
ジブリールはスゥーと軽く息を吸って…
「マスターは今後、アズリール先輩が愛したいときに、それを拒むことなく受け入れるよう要求いたします」
‥‥‥うん?
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっとまて。ジブリール。お前何言ってんの?は?どうなってんの?」
そういうと、ジブリールは思いっきり頭を地面にたたきつけ‥‥
「申し訳ありませんっっっ!!!!マスター!!!!このジブリール、死んでお詫び申し上げますっっっ!!!!」
「にゃははははははあああああああっっっ!!!!!!比企谷君、我が手中に得たりぃぃいいいいいいいい!!!!!!!!」
二人の
カオスだ。何がどうなってるかもわからん。頭がパンクしそうだ。
「お、落ち着け。何がどうなってんのかわからんがとりあえず説明を頼む」
ジブリールにそういうと、ジブリールは土下座の姿勢のまま、答えてくれた。
「私がやりすぎてしまった結果にございますっ‥‥!!!!」
「何をだよ」
「ゲーム中、アズリール先輩をいじめすぎてしまいましたっ‥‥!!!」
「それで何がどうなったらこうなるんだよ。一から説明しろ」
「ゲーム中、マスターの偉大さ、寛大さ、経験則、価値観、およびその他もろもろの素晴らしさを懇切丁寧に、先輩が間違えるたびに制裁を加えることで教育していたのでございますがっ…」
そんなことやってたの?
「途中から先輩の様子がおかしくなりはじめ…気づいたときにはもはや手遅れに‥‥」
「何がどう変わったってんだ。そこが知りたいんだよ」
「私もよくはわかりませんがおそらくは‥‥マスターを崇拝することで、私からの制裁を回避することが可能であるがゆえ、自身の身の保身のため、心の底からマスターを崇拝するように変わり‥‥疲労と感情の崩壊と記憶の齟齬が発生した結果、敬意と崇拝が愛情へ。苦しみや辛さが幸せへと変わったと思われます」
「‥‥‥ってことはまとめるとあれか。ジブリールがアズリールの調教に大成功しすぎて、ぶっ壊れたドМになったってことか」
「簡潔にまとめるとそうなります」
「いろいろ言いたいことはあるが後に取っておくとして、なんでそれでお前がアズリールに協力してんだよ。さっきの要求ってつまり、俺をはめたってことだろ?」
「さようでございます。しかしながら抗うことができなかったのです。一日服従という罰からっ‥‥!!!!」
そうか。もうすでにその権利は使用されていて。ジブリールは最初からアズリールの手のひらで踊らされていたというわけか。俺を迎えに来るのが遅かったのも、全ては俺をはめるための裏工作をしたいたから。
「なんてことしてくれたんだよっ…!!」
「申し訳ございませんっ‥‥!!!」
「ということがございまして」
「事の顛末はわかった。その上で八幡、お前にこの言葉を贈ろう。死ね」
「俺は被害者だぞ‥‥誰でもいいからこいつを止めろっ…!!!!盟約で俺は逆らえないんだ」
「にゃあああ♡♡♡可愛いにゃあ♡♡♡ほら聞こえるにゃ?ウチの鼓動が?わかるかにゃ?生きてウチと比企谷君が今抱き合ってるっていう現実が!?」
そういいながら俺の顔を胸にギューッと押し当ててくる。ドクン、ドクンという心臓の拍動が聞こえるとともに、ムニュムニュとした柔らかい感触が顔全体を覆う。
うれしいかと聞かれればうれしいが、幸せかと言われれば幸せではない。
「ほらほらウチを堪能するにゃ?見て?聞いて?触って?嗅いで?舐めまわして?君の心の済むままに蹂躙して、ウチに愛を教えるにゃ?」
「これドМっていうよりかはヤンデレとかメンヘラに近くないか?」
「…愛情が、闇属性‥‥?」
どっちでもいいわそんなこと。早く何とかしろ。
そう思っていると、思いがけないところから助けの船が来た。
パンパン、と二回大きな拍手をし、全員の注目を集める。巫女さんだ。
「そこまでにおし。そこんとこの
そうだ。その通りだ。いけ巫女さん。俺を助けろ。
「
「悪いな巫女さん。ウチのスケコマシが迷惑かけて」
「だから俺のせいじゃねぇって言ってんだろ」
くっそ。巫女さんが声をかけてもマジでアズリールが動かねぇ。このままじゃ話し合いにならねぇだろうが。かくなる上は…
「アズリールどけ。会議が終わったら好きなだけ愛してやるから胸を押し付けるのをやめろ。そして帰れ」
「本当にゃ!?約束にゃ!?嘘ついたら天撃撃つにゃ!?」
「わかったわかった」
そういうと、ようやくアズリールは俺から体を離し、窓から飛び立ち、
「じゃあ帰るにゃ~♡♡♡またにゃ?比企谷君」
といって、アヴァントヘイムへ帰っていった。
それから数秒の沈黙ののち、床に横たわる俺に向かって、白が一言。
「‥‥‥ドン、マイ‥‥」
泣きそう。
後後半(?)へ続く
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