やはり俺の遊戯人生はまちがっている   作:鳴撃ニド

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今日は前書きでなくあとがきに二人のコミュニケーションがあります。

今回は八幡視点でなく、空の視点でのストーリーとなっています。


戦いとは、止めるものであって終わるものではない

東部連合とのゲームに勝利した、俺達「 」(くうはく)は、クールダウンを兼ねて巫女さんのところにお泊りをしていた。

 

そしてそのある日の夜のこと。

 

そーっと布団を抜け出し、小さな声で隣に寝っ転がっている妹に声をかけた。

 

「…白?…起きてるか?」

 

「………」

 

よし。返事はない。次はいづなだ。

 

「…いづなたーん?起きてたら耳ピクピクさせて~」

 

「…うみゅう……?…すー」

 

いづなは俺の声には反応したが、ゴロンと寝返りを打つだけで、可愛らしい寝息を立てていた。おそらく獣人種(ワービースト)の聴覚がいいから反応しただけで、意識はないだろう。

 

いづなも白も意識はない。つまり、今この瞬間だけは、何をしてもお咎めはない。

 

そう!ナニをしてもお咎めはない!!!

 

俺はすぐさま枕元に置いてあったうっすい白い紙きれをシュッシュッと何枚か取り出し、タブレットの電源を入れる。タッチID、パスワードを乗り越え、厳重にロックされているマル秘ファイルまでたどり着く。

 

長かった…この日までずいぶんと時間を要した…。

 

思えばこっちの世界に来てからか。一度も致していないのは。昼間は白の視線があるからできないし、夜もあのクソ天使がいつ現れるかわからないからできないし、そのくせそのクソ天使も耳長エルフも巫女さんも性癖に刺さるようなエロい格好してやがるし、あげくの果てにはモブとはいえギャルゲーのNPCのもろパンを散々見せられたんだぞ!?

 

こっちは健全な男の子なんだぞてめぇらのせいで暴発寸前だコラその体○○○いて○○○○まくって○○○○の○○○で○○○○してやろうかああん!!!????

 

っとあぶねぇ。流石に白がいる前で、寝ているとはいえ18禁以上のレギュレーションを口に出すのは不味い。

 

ま、まぁいい。心の中でぶちぎれちまったがその我慢も今日で終わりだ。

 

俺はこれから、扉を開き、使命を果たすのだから。

 

タブレットのマル秘ファイルをタップし、画像が表示され、だんだんと俺の中の使命感が湧き上がってくる。

 

さぁ行くぞ。ついに我が使命を果たすとき。

 

少し腰を浮かせベルトに手をかけ、そして一気にしたまで下ろす。見よ。これぞ俺のエクスカリ―

 

「ぁ、あのう…す、すみませぇん…」

 

「バァァアアアアアあああああああああああああああ!!!!」

 

唐突に背後から小さくかけられたその声で、大声を出して床をのたうち回った。

 

そして、当然のごとくそんな声を出せば、周りにも影響を与えるわけであって。

 

「…にぃ…ヤるなら、静かに…」

 

ヤることを知っていた…もとい、最初から寝てなどいなかった、白と。

 

「うるせぇ、です。やかましい声出すんじゃねぇ、です」

 

ごしごしと目をぬぐいながら、きちんと快眠していたいづなが目覚めてしまった。

 

むくり、と布団から上半身をあげる二人の幼子。い、いかん。脳が活性化し、認識する前に、い、いやそもそも視線を向ける前に、この俺の聖剣を鞘にしまわなければ!!!

 

床を転がりつつ、どうにか視線を逃れてズボンをはきなおし、ベルトを締める。そして絶叫する。

 

「てめぇ背後からいきなり現れて人の賢者的行為ピーピングするとはどういう了見してんだコノヤロー!!!」

 

振り返って声をかけたその主に向かって叫ぶも、その視線の先に、()()はいない。

 

既に意識が覚醒した白も、いづなも、そしてこの俺も、その声をかけた主を見つけることができなかった。

 

しかしながら、()()、はいなくとも、()()は存在しているようで。

 

姿かたちは一切見えない―――ただ、その何かの影だけが、部屋の隅にじっとたたずんでいた。

 

怒りの感情から一気に恐怖へと感情がシフトチェンジし、使命感がグーンと下がっていく。

 

「…なぁ白。兄ちゃんちょっと記憶があやふやなんだけどさ。十六種族(イクシード)の中に幽霊種(ゴースト)とか存在したっけ?」

 

「…そんなの、ない…。一番近いのは…精霊種(エレメンタル)だけど…多分違う…だから…」

 

ふむ。なるほど。白が言うなら違うのだろう。そして、そう言った種族の存在は認められていない、と。

 

ということはつまり、これは何かの聞き間違いや、錯覚といった(たぐい)のもの。光の当たり方で人影のように見えたり、風の音が人の声に聞こえたりすることは、そう珍しいものでもない。

 

第一、幽霊なんてものは非科学的な存在であって前の世界では存在が証明されてなどいなかった。そしてこの世界でも、あの唯一神(テト)が存在を認めていないのだから、ありえるはずが…

 

「…も、もう限界ですぅ…お願いですぅ…た、助けて…くださぁい」

 

「いやぁぁぁああああああああああああああああ!!!!へるぷみージブリーーーーーーーーール!!!!」

 

存在するはずのない幽霊に、たまらず大声をあげ、最も安心感のある人物に救援要請をする。

 

すると間髪入れずに頭上の空間から、亀裂が生じ、幾何学模様の光輪を浮かべた少女が現れた。

 

「こんな夜遅くに人を呼びつけるとは何様のつもりでございましょうか?マスターがすでにお休みになられているからよいものの、そうでなければ逆鱗物でございます」

 

「た、助かったジブリール!あ、あれを見ろ!得体のしれない幽霊的な何かが俺に話しかけてくるんだどうにかしてくれ!!」

 

俺はそういって部屋の隅にたたずむ影を指さす。するとジブリールは少しだけ怪訝な顔をした後、すぐさま不機嫌な顔になった。

 

「これはこれは…この私が存在を少しばかりとはいえ認識できないもの…誰かと思えば吸血種(ダンピール)とは」

 

「だ、吸血種(ダンピール)?」

 

「はい。あれは別に幽霊などではございません。一時的に我々が存在を認識できていないだけ。しかも何やら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()しかできない状態で接触してくるとは、なんともまぁ哀れなものでございますね。知らぬうちにひっそりと滅びたと思っておりましたが、まだ生きていたとは」

 

し、辛辣ぅ…。

 

ジブリールの相変わらずの毒舌に顔を引きつらせながら再び影に目を向ける。

 

すると、影の奥から夜を編んだような、黒装束の少女が姿を現した。認識阻害というものがかかっていると理解したからだろうか。分からないがとにかくそこにはやはり、少女がいた。

 

青い短髪、爛々と妖しく輝く紫の瞳。白い牙、背にはこうもりの用の小さい翼。なるほど。それはまさしく吸血鬼(ドラキュラ)だった。

 

しかし…

 

「なんつーか、幸薄そうな顔してんな。今にも貧血で倒れそうだ」

 

「だ、だから言ってるじゃないですかぁ…た、助けてって…」

 

十六種族(イクシード)位階序列、第十二位…吸血種(ダンピール)…」

 

俺と同様に存在を認識した白が、自分が得た知識から今の状況を把握しようとしている。なぜこのような姿なのか。なぜ俺達に助けを求めているのか。その答えは案外すぐに分かった。

 

「他の…十六種族(イクシード)から、血―すなわち魂を…吸って、生きながらえる…種族。でも…『十の盟約』…」

 

「あ、そっか」

 

十の盟約のその一。この世界における殺傷、戦争、略奪を禁ずる。

 

テトが定めたこのルールは、一見ゲーム以外での平和を保障するものであるが…

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「つまり吸血種(こいつら)()()()()()()()()()()()()ってことか」

 

「付け加えますと、吸血種(かれら)に噛まれると…」

 

吸血鬼(ドラキュラ)化するってか。まぁありがちだな」

 

「いえ、そのようなことは」

 

え、違うの?

 

吸血種(ダンピール)は血を吸うことで魂を混合させ、成長します。しかしながら血を吸われた側も、魂の混合が行われるのでございます。それにより、魂が少し混ざってしまうという特殊な病気にかかります。つまりは、()()()()()()()()()の欠陥種族でございます」

 

「なにその絶望的に哀れな種族」

 

つまり、助けたければ病気にかかれ、ということになる。

 

ふらふらとおぼつかない足取りでこっちにやってくる吸血種(ダンピール)の少女。

 

俺はそれからゆっくりと距離を取った。非情だと思うかもしれないが、助ける気はない。いや、助ける気だけはある。ただ、目の前の少女を助けたいのは山々だが、いくらなんでも流石に…

 

()()()()()()はちょっと無理があるわ。助けてやりたいが、俺には無理だ。他当たれ」

 

「ただ、成長を伴わないのであれば、必ずしも血を必要とするわけではございません。成長するには、直接牙から血を吸う必要がありますが、生命を維持する程度であれば、血を直接経口摂取すれば可能でございます」

 

「…うん?」

 

俺が無理だと諦めておかえり願おうと口を開いたのと同時に、ジブリールがなにやら風向きの変わるような発言をした。

 

「加えて…血を吸うのはあくまでそれが最も効率が良いから、すなわち液体に占める魂の含有量が最も多いから必要とするのであって、魂を摂取することができるなら別に血でなくともよいのでございます」

 

「…?つまり?」

 

「体液の中で血に次いで魂の割合が高く、かつ簡単に噛まずとも摂取することのできるもの、それは…」

 

「それは?」

 

「精えk

 

「大丈夫かお嬢さぁん!!今すぐ助けるぞ死なせるものかぁ!!」

 

急ぎ吸血種(ダンピール)の少女を抱え、俺が元居たベッドへと横たえる。

 

なるほど!?だとするなら滅びるはずがないだろう。つまりは男の理想の淫魔(インキュバス)!そりゃあ死なないだろう。いや死なせないだろう。こんな種族は滅びてはならない!!!!

 

再び使命感を高ぶらせ、ベルトに手をかけようとしたその時。

 

「にぃ…18禁」

 

白が待ったをかける。そうだった。ここにはお子様二人の視線がある。18禁展開は、NG。

 

またか。またなのか。またこの世界は、俺を苦しめようというのか。

 

いやまて、考えろ。童貞十八歳無職ヒキニートの空白の片割れよ。まだ、まだ舞える。そうだ。別にこれは18禁ではない。なぜなら!

 

「救命行為にそういった煩悩的思考をすることこそ愚考!尊ぶべき美しきその崇高なる行為を褒められこそすれ止める必要などないはずだ!確かにそれ自体は18禁かもしれんがあくまでこれは救命行為…命を救うための一手段にすぎん!ならば俺は非常識と言われようとも彼女を救うために鬼畜になろう…というわけでちょっといづなたんの耳ふさいで後ろ向いててくれんかね白!?」

 

勝った!!これなら反論できまい!?完璧な俺の論理武装を敗れる理屈なんて…!!

 

「…命を、救うだけなら…他の体液、でいい…汗とか、唾液とか…涙とか…」

 

「確かに、魂の含有量は微量ですが、救命には十分かと」

 

わずか3秒にして、完璧な俺の論理武装が完全大破する。終わった…もう俺は一生ナニできないかもしれん。

 

「…じゃあ、白が…唾液を」

 

白が吸血種(ダンピール)の少女とキスをしようとする。

 

百合プレイはいけない口ではないが、それをするのはなんか不味い。

 

何故だかはわからない。ただ、どうしてか、いやだ、と思ってしまった。

 

「だ、ダメだ!情操教育的にアウトだ!ええ~っと、じ、ジブリール!お前の体液!」

 

「拒否させていただきます。それに、私の体液を与えた場合、おそらく魂の密度が濃すぎて爆死するでしょう」

 

「なんだそれは!?じ、じゃあ八幡のだ!ジブリール!八幡呼んで来い!あいつの唾液をこいつに飲ませる!!!」

 

「ダメです。マスターが許可するはずもございませんし、仮に許可したとしても私が許しません」

 

「っっっ~~~~~~!!!!!だ、だったら妥協案で汗しかあるまい!?俺…は白が許さんだろうし、白のも俺が許さん!!ジブリール!八幡の寝汗を採取してこい!」

 

「…まぁそれなら私は構いませんが。本当に微量しか取れないので、救命に足りるかどうか…」

 

よし。もうこれしかない。あとは何とかごり押しでこの案を採用させるっ!!!

 

「だったらジブリール!!お前があいつに汗をかかせろ!!体をくっつけようが抱き着こうが何してもいまなら救命行為という免罪符つきだっ!!」

 

そうするとジブリールはハッとした顔つきになり、すぐさま、

 

「!か、かしこまりましたっ!!!」

 

と、一瞬で図書室へと戻っていった。

 

 

 

 

そして、十分後。

 

再び空間に亀裂が走り、満面の笑みを浮かべたジブリールがグラスに汗をためて持ってきた。

 

「こちら、マスターの汗を採取したものになります」

 

「なにしたのかって聞いたら怒る?」

 

「秘密でございます。確認なさいますか?」

 

「いやなんかグラスごしでも触りたくはないわ。とりあえず吸血種(そいつ)に飲ませてやれ」

 

ジブリールは吸血種(ダンピール)の少女の口を開け、グラスを傾け八幡の汗を口に入れる。…なんか他人の汗を口に流し込んでるって考えたら気分悪くなってきた。

 

吸血種(ダンピール)の少女はこくり、と一口喉を鳴らすと、カッと目を見開いてグラスを手に取り、ごくごくと喉を鳴らして汗を完飲する。

 

「な、なんですかコレぇ!?美味しいですぅ!美味しすぎますぅ!!」

 

…なんだこれ。

 

恍惚とした表情で八幡の汗を飲み干した少女に、俺はドン引きしていた。

 

吸血種(ダンピール)って変態なのか?」

 

「マスターの汗だからでしょう。吸血種(ダンピール)の味覚は魂の味を判別するためにあります。したがって、マスターのような癖が強く、高潔で、珍しい魂は彼らにとって美味として評価されるのかと」

 

「だとしても気色悪い」

 

 

 

 

 

 

 

それから数分の間、飲み干したグラス片手にトリップしていた吸血種(ダンピール)の少女が正気に戻ると、ぴしっと姿勢を正して自己紹介をしてきた。

 

「あっ!!も、申し遅れました!ボク、プラムっていいますぅ。お察しの通り、吸血種(ダンピール)ですぅ」

 

「ふむ。で、なんか助けてくれとか言ってたけど」

 

「そ、そうなんですぅ!東部連合を降した人類種(イマニティ)、エルキアの王のお二人にお願いがあってきたんですぅ。ボクたちの種族を助けてくださぁい!!」

 

この状況。この種族。この発言。

 

全てを総合的に考えた結果、俺は全てを理解した。

 

なるほど。そういうことか。じゃあ仕方ないな。

 

ならばこそ、こう答えよう。

 

エロゲ(よそ)でやれ。じゃあな」

 

「そ、そんなぁああああ!!!!ま、待ってくださいよぉおおおお!!!!」

 

18禁展開はNGだ、と。




後日談

「なぁ、なんか昨日すっごい変な夢見たんだけど」

「どのような夢でございますか?」

「最初は普通に学校に行く夢だったんだが、満員電車で息ができなくなるくらい前の女の人にむ…胸を押し当てられて、そのままその胸が太陽に変わって、世界が灼熱に包まれて終わるっていう打ち切り漫画でもしないような展開の夢」

「そうですか。それを私に言ってどうするおつもりで?」

「…昨日俺が寝てる間なんかした?」

「…いえ?」

「朝起きたら寝汗でパジャマはびっしょりだったのに、体は超綺麗だったんだよ。風呂入った後みたいに」

「変わったこともあるみたいですね」

「もう一度聞く。何した」

「救命行為でございます」

「なんだそりゃ」

「黙秘権を行使する、ということではいけませんか?」

「…はぁ…あんまり変なことはするなよ」

「ご安心ください。誓って変なことはしておりませんので」

「安心できないんだよなぁ…」
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