やはり俺の遊戯人生はまちがっている   作:鳴撃ニド

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ある日の二人(八幡&ステファニー)

「きぃぃいいいいいいっっっ!!!!!やっっってられませんわぁっ!!!!」

「おいどうした。落ち着け」

「あっ!八幡!何か用ですの?」

「いやお前が根詰めてそうだったから、茶を淹れたんだが…」

「あ、感謝しますの。いただきますわ」

「で、さっきのなに」

「ああ…諸貴族どもの馬鹿さ加減にうんざりしてまして…」

「そうか…まぁ愚痴くらいなら聞いてやるよ。ちょっとだけな」

「本当ですの!?」

「ちょっとだけだぞ」




「だからそんなに土地をねだったところで無能な領主をおけば何の役にも立たないとあれほど‥‥!!!」

「すまん。俺が悪かった。気軽に話聞くっつった俺が悪いから、そろそろ止めてくれ。もう三時間経ってる」


面倒ごとの予感

空と白の仕事を押し付けられてから、おおよそ二週間。

 

当初は緊張感満載で、やらかしたらどうしようとか考えていたが、人間慣れればなんてことなくなるもので、何度も来る貴族たちの相手も適当にあしらうようになってきていた。もはや作業ゲーである。

 

ダンジョンクエストみたいに、倒した相手よりも強い敵が現れるというシステムならやりがいも感じれるのだが、あいにくと同じレベルの相手をひたすら倒し続けるだけ。やるゲームもポーカー一辺倒であるから、変わり映えもなく終わりの見えない地道な努力を積み重ねさせられている気分。もう面倒を通り越して苦痛まである。

 

正式に仕事を託されたステファニーはすでにダウン。仕事をいくつか請け負ったとはいえ、ステファニーのしなければならないタスクは相変わらず多かった。むしろ俺が請け負ったことで、仕事を処理するスピードよりも追加されるスピードのほうが早くなってしまい、余計に忙しくなってしまった。

 

ステファニーは根が真面目だから、割り振られた仕事を馬鹿正直に期限内に終わらせようとかなりの無茶をしていたようだ。最近はほとんど睡眠をとっていなかったようで、昨日の昼には幻覚まで見えていたらしい。

 

流石にそれはまずいと思い、「仕事休んでいいから寝ろ」と強めに忠告したことで、ステファニーは今ぐっすりと睡眠中。その間にたまった仕事は何とか俺が対処している。といっても、俺ができることなんてせいぜい返答期限を延ばしたり、割り振られる量を減らしたりすることくらいだが。

 

ステファニーも俺達と同じくらいの年齢だろう。それであそこまでの仕事を任せるのはどうかと思う。今度空にはもう少しステファニーをいたわるように忠告しておこう。

 

なお、その空と白からは連絡が全くと言ってない。ジブリールも顔を出さないし、難航しているんだろうか。

 

そんなことを考えていると。

 

ドォォオオオオオオオン!!!!

 

「きゃぁぁぁああああああああああっっっっ!!!!!!」

 

と、ステファニーが寝ているはずの寝室から爆音と、叫び声が聞こえる。

 

俺は急いで部屋を飛び出し、走ってステファニーのいる寝室まで向かう。何があったかは知らないが、爆音があったということは、何かしらの事故があったか、もしくは敵が進行してきたかだろう。どっちにしろ事態は一刻を争う。面倒とか言っている場合ではない。

 

寝室の扉を思いっきり開き、ステファニーの容態を確認しようとする。

 

「おい!なにがあっ…」

 

そこで俺が見たものとは。

 

破壊された本棚。散乱する本。吹き抜けになった壁。舞う羽毛。割かれた枕。倒れたベッド。その上に横たわるステファニー。そして確実に実行犯だと思われる天使が一名。その周りを取り囲むようにして見知った人物が二人と三匹。

 

「…何してんの?」

 

とりあえず中央でふよふよと浮いているジブリールに話を聞いてみる。できれば理解できるまともな回答が返ってくると嬉しいが。

 

「マスター。お久しぶりでございます。空様が()()()()エルキアに空間転移せよとのことで。ですが、人数が多かったので、少々大きめに空間に穴を開けました」

 

ふむ。つまりは全ての原因は空ということか。であれば、なぜこんなことをしたか、空に聞いたほうが良いだろう。

 

「…怒る前に理由を聞こう。空、なぜこんなことをした」

 

「…あー。俺もこうなるとは思ってなかったんだが…理由としては、ステフに仕事頼もうと思ってな」

 

「却下だ。自分でやれ」

 

俺は空のそのセリフを聞いて、何かを考える間もなく、その言葉を口にした。

 

「ただでさえステファニーに仕事任せっきりなんだから自分でやれよ」

 

「…八幡、怒って、る…?」

 

「ヒッキー、キレてん、です?」

 

白といづなの少女コンビが、俺の顔色を窺っている。いづなにいたってはいのさんの背中に半身を隠してしまっている。自分で怒っていたつもりはないが、二人が言うなら俺は怒っているんだろう。

 

「ああ。怒ってるんじゃね?十中八九、もうほとんど、多分、おそらく、そうかもしれん」

 

「だんだん曖昧になってくな」

 

「まぁな。あんまり怒ってる自覚ないし。どっちかっていうと呆れてる」

 

そう。俺は怒っているのではない。呆れているのだ。

 

空と白が国王の仕事のほとんどをステファニーに任せている理由は、なんとなく理解できる。

 

最強ゲーマー空白。彼らはあくまでゲーマーであって、政治家ではない。

 

適材適所、餅は餅屋という言葉があるように、よく知らないやつが時間をかけてやるよりも、できるやつが早いこと仕事を終わらせたほうが全体としての成果は高い。だからこそ、賢者は仕事をせず、他人にうまく仕事を割り振る。

 

その点において、ステファニーは逸材だ。現在のエルキアの政治的立ち位置、貴族たちの力関係、経済に産業に至るまで、様々なバックグラウンドを考慮に入れたうえで、今やらなければならない最適の仕事をしているとはたから見ていて思った。

 

だが、彼女は俺達と同じ人間だ。そこにいるジブリールと比較してはいけない。疲れもするし、悩むことだってある。つまりは受け入れられるキャパシティーがあるのだ。

 

それを越えて仕事を割り振ることは、賢者はおろか、愚者にすらなりえない。ただの暴君だ。

 

キャパオーバーとなったステファニーを知らないから言えるのだろうが、その上にさらに仕事を託すなんてどうかしてる、と俺は思ってしまった。

 

なんとなく、そこらへん空はわかってるんじゃないかと思っていたから。

 

「少なくとも満身創痍のやつの部屋を荒らした相手を目の前にして、何も思わないほど俺は冷徹じゃない」

 

「だから言ってんだろ。こうなると思わなかったって」

 

「それを反省して仕事は自分でやろうとは思わないのかよ」

 

「俺にできるならな。ステフにしかできないからわざわざ戻ってきたんだ」

 

「ほう。ならその仕事内容とやらを聞こうか」

 

そういうと空はポケットからスマートフォンを取り出す。そしてしばらく操作した後、画面をこっちに向けて差し出す。画面に映っているこいつは…水着姿の女性。なんのアニメキャラ?

 

「こいつを作るのが今回の仕事だ」

 

「ステファニーが新しい生命体なんか作れるわけないだろ。それともなに?新手のセクハラ?」

 

僕と一緒にこれくらい可愛い女の子作りませんかって?キモイ通り越して怖いわ。元の世界で言ったら通報されて即逮捕だわ。イケメンが言ったとしてもギリアウト寄りのOKだもん。OKされちゃうのかよ。

 

「ちっげーよ!!!水着だ水着!こいつが着てる水着を作るのが仕事だ!海底都市のオーシェンドに行くには水着が必要不可欠!なのにエルキアにも、東部連合にも俺達が望む水着はなかった!だったらもうオーダーメイドでステフに頼むしかねぇんだよ!」

 

空はこぶしを握り自らの感情を高ぶらせてそう叫ぶ。

 

なるほど。確かにそうかもしれない。こっちの世界の水着は小さい子が着るアレ…なんつったっけ。なんかふわふわしたスカートとちっちゃいズボンの間みたいなやつ。ドロワーズ?的なやつだからな。そもそもこっちの人類は海に行くことなんてないだろうし、水着なんてそれこそ子供たちが水浴びをするときくらいにしか使わないのだろう。

 

巫女さんしかり、ジブリールしかり、こっちの世界の住人達はやたらと美形が多い。せっかくの海。そんな一大イベントに、俺達の世界のようなきれいで派手で、ちょっとエロティックな水着を着せたいという気持ちはまぁわからんでもない。

 

とりあえず何でもできる有能天使にダメもとで聞いてみよう。

 

「ジブリール作れない?」

 

「魔法でよろしければ。しかし何かのはずみで魔法の効力が切れると、その場で全員全裸になることになりますが」

 

「流石に危険だよなぁ…しょうがない。ステファニーに依頼しよう。ただ水着はステファニーに任せるしかないにしても、その間の仕事は手伝ってもらうぞ。巫女さん貸してくれ」

 

そういって巫女さんの方に視線を向けると、巫女さんだけでなく、その場にいる全員が意外そうな顔をして俺のほうへと視線を向けた。

 

「なんだよ。なんか変なこと言ったか?」

 

「お前が自ら仕事をやるって言いだすのは意外だと思ってな」

 

「どうせ空と白(おまえら)やらないだろ。ステファニーの代わりが俺しかいないから、仕方なくだ」

 

「案外、あんたも頭まわるんやねぇ。ほんで一応聞いとこか。なんであてに白羽の矢が立ったんや?」

 

「政治のことはからっきしですし、俺一人で回せる仕事量じゃないから誰かには手伝ってもらいたい。空と白は俺と同じように政治には詳しくないだろうし、ジブリールと違って、巫女さんには実績ありますから。いのさんでもいいけど、その場合いづなを放置することになるんで。変態の中に孫を残させて仕事をさせるのはちょっと…」

 

「ほう。なかなか良い心遣いですな。感謝いたしますぞ。そこらの禿猿とは大違いのようで」

 

いのさんは眉をピクリとゆるめて、感謝の意を示すとともに、いづなを片手で抱き寄せ、空と白に鋭い視線を向けている。当の本人たちは全く意に介していないが。

 

「そういうわけで、手伝ってくれませんかね」

 

「…ええよ。どっちにしろ、そこの子が水着を作らん限り、あてらも動けへんし。なかようしようや」

 

そう言って投げかけた妖艶な微笑みに、俺はちょっとどきっとして、視線を逸らす。そしてそのまま、誰とも目を合わせることなく、巫女さんとともに部屋を後にした。

 

その際、ジブリールがこちらをじっと見つめていたことに、俺は気づく由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ステファニーが空達の要求を引き受け、水着を作り上げるのにさほど時間はかからなかった。

 

元王女様だというのに、いや、元王女様だからだろうか。裁縫の腕前もかなりのもので、空達のお眼鏡にかなうほどの素晴らしい水着を仕立て上げた。俺は直接見てはいないが、逐一横から指示を出した空が言うのだから間違いないだろう。

 

その間に行われた仕事に関しても、自分で言うのもなんだが文句ひとつない素晴らしい出来であった。巫女さんの手腕は流石というほかなく、人類種(イマニティ)獣人種(ワービースト)で生活形式や文化だったりするものが違うのも関わらず、そこのところを踏まえてきちんとしたプランを練りこんである。つまり巫女さんを起用した俺の手腕がいい。

 

元の目的であるオーシェンドに向かうにはだいぶ遠回りをしつつも、何とか行く準備を整えた。まぁ俺行かないんだけどね。

 

オーシェンドからの迎えが来ると言われた前日に、書斎で残った仕事を片付けていると、空が突然やってきて、

 

「留守番よろしく。ああ、仕事はお前ひとりじゃ無理だろうから、城門は閉めてていいぞ」

 

といって帰ってった。何様のつもりなんだろうか。

 

特別人魚たちに興味はなかったので別に構わないが、一人で留守番をするとなると少しさびしさを感じるなぁ…と考えていたところに、空間転移の穴が開いて、アズリールがひょっこりと姿を現した。

 

なんでも、今回は俺の知り合いが誰もいなくなってしまうので、致し方なく、断腸の思いで、苦渋の決断で俺のことを任せる、とジブリールから伝言を受け取ったそうだ。なので、あいつらがいないうちはアヴァントヘイムでお世話になるらしい。

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで当日、いろいろとまどろっこしい事にはなったが、先ほど空と白(あいつら)はジブリールの空間転移でオーシェンドへと旅立ち、俺はアズリールに引っ張られてアヴァントヘイムのベッドに押し倒されている。

 

「‥‥‥‥」

 

「‥‥‥‥♡」

 

アヴァントヘイムにベッドなんてあったんだ…と的外れなことを考えつつ、アズリールの温もりを肌で感じる。

 

今俺の右腕はアズリールに抱きしめられて身動きが取れず、体の上には毛布代わりにアズリールの翼がかぶさっている。

 

うさぎの耳とか猫のしっぽとか、動物の特徴的な部分には触ってみたくなるのが人の性。空いている左手で、少し興味本位で翼を軽く撫でたところ、「ひゃあんっ♡」と危なげな声がしたので今は止めているが、今なおすりすりとこすりつけられ形を変える翼に意識が奪われる。

 

「‥‥‥‥」

 

「‥‥‥‥♡」

 

怖い。さっきからずっと何もしゃべらない。俺は今、基本上を向いて創造的な天井に目線をやっているが、アズリールは俺の顔を瞬き一つせず、じーっと微笑みながら、穴が開くほど見つめている。もう顔が貫通するんじゃないかってレベル。

 

数分ならまだしも、二十分もこの姿勢から変わらず見つめられ続けると身の危険を感じる。軽く視線を合わせてぎこちなく笑みを返しても、ただただにっこりと笑い返すだけで、ピクリとも姿勢を変えず、何も声を発しない。

 

マジで怖いんだけど。本当にどうにかなりそう。助けて!ジブえもん!

 

「‥‥‥いま、他の女の事考えてたかにゃあ?」

 

「ひっ…」

 

「誰のことかにゃあ…人類種(イマニティ)のあの子かにゃ?巫女とかいうやつかにゃ?それとも…ジブちゃんかにゃあ?」

 

やばいやばいやばいやばい。終わったかもしれない。何かやらかしたわけでもないのに人生が詰んだ気がする。さーよーならーありーがとーこえーのかぎりー。

 

あれだな。俗にいう地雷系彼女とかいうやつだな。なんもしてなくてもどっかにあるスイッチ踏んじゃうと人生終了(ゲームオーバー)っていうやつか。ちがうか。ちがうな。

 

「安心するにゃ?今はウチのことを考えられなくても…ジブちゃんたちが帰ってくるまでには、ウチのことしか考えられないようにしてあげるにゃ?」

 

「安心できないんで止めてください。それとそろそろ離して?」

 

「こないだのゲームのこと忘れてるのかにゃ?ウチが愛したいときに比企谷君はそれを拒めない。盟約は絶対にゃ~」

 

「拒んでません。適切な距離で愛してほしいだけです」

 

「ウチにとっては適切だにゃ?」

 

「恋愛って自分の意見の押し付けじゃなくて、いかに相手に譲歩できるかってことだと思うんですよね」

 

「じゃあ比企谷君が譲歩するにゃ」

 

「こういうときに譲歩できる人間こそ器が大きくて、惚れるに値する存在だと思うんですが」

 

「なおさら比企谷君が譲るべきにゃ」

 

「俺は器が小さくて、度胸がなくて、ゲームも弱くて、惚れる要素ないんで譲れません。そっちが譲ってください」

 

「いーやーだーにゃーっ!!!!」

 

「わがままかよ‥‥」

 

このような話し合いを約一時間にわたり続けた結果、バックハグからのなでなでを条件にようやく離してくれた。

 

なお、そのバックハグとなでなでをしている間にもメンタルがすり減り、それをやめるのにもまた一時間かかってしまったことは想像に難くないだろう。

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