「ふっ…来たぜぬるりと…反撃開始だ。ツモ」
「にぃ‥‥それ、そんな高くない‥‥」
「そうですぞ。たかが2000点ごときでそのようにかっこつけられてもこちらとしては目が痛いばかりで」
「役満狙って死にまくってるジジイに言われたくねぇな。そういうのは一度でも上がってから言えよ。さっさとはらえ」
「来たにゃっ!!
「うふふっ♡それロン。国士無双」
「にゃーーーーーっ!!!???イカサマしたにゃーーーー!!???」
「
「幸せですね」
「まぁ、こういうのをテトは望んでたんだろうな」
「なるほど‥‥確かに、一応筋は通ってる。先代王との考察とも食い違う点はないし、やってみる価値はある」
「つっても、あくまでも仮説だ。ライラとかいう女王の望みが改ざんされてないってことが前提だから、普通に違ってるかもしれん。普通にゲームオーバーになる可能性もある」
「まー俺らにはこれ以上の解決策は思いつかねぇだろうし、勝率は悪くない。これで行こう」
「‥‥八幡、ぐっじょぶ‥‥」
「え、本当にそれでいいんですの?確かに盲点ではありましたけど‥‥」
「そのとおりですよぉ‥‥もしこれでうまくいったら、ボク泣きますぅ‥‥」
ステファニーたちと合流し、再びオーシェンドへ向かった一行。前回と違うのは、俺もついてきているということだけだ。
途中で合流したステファニーたちと情報のすり合わせを行った後、ちゃちゃっと要点だけ抑えて説明して帰ろうと思ったのだが、説明をする前に迎えが着てしまったので、そのまま流れで俺も連れてこられてしまった。
仕方なくオーシェンドにてすべての説明を行い、ようやく再戦、というところである。
「じゃ、説明も終わったし、俺帰るわ」
「は?何言ってんだ。お前もやるんだよ」
「いや、俺要らんだろ」
「確かにお前は必要ない。が、
「‥‥ゲスト、参加‥‥‥よろしく‥‥‥」
「―退屈だわ」
我知らず、吐息が漏れた。
オーシェンドは、全ての
美しき碧を纏い、水精の加護に包まれ、煌びやかな宝物が山と積まれた都。
だが、ここは牢獄だ。
「あ~もう、何か、楽しいことはないのッ!?」
何もかもが苛立たしく、わたしは唇を尖らせた。
オーシェンド。永久の遊郭。美も富も恋も、ここにはすべてがある。
生まれたときから、それはすべて私のもの。
だからこそ、永遠に満たされない。
でも、もし、ここにはなくて、私が欲しいものがあるとするなら?
それは―愛だ!真実の愛!
美しくも素晴らしき、不変の絆。私の心の渇望を満たしてくれる王子様。
そんな『彼』を待って、眠りについたのは、どれほど前だっただろうか。
「
ふと声が響いて、私の意識が鮮明になっていく。
どうやら、また誰か来たらしい。私を求めて押しかける浅ましい男ども。
どうせハズレだろうけど、退屈だから遊んであげる。
今回はうんと優しくしてやろう。そして、こっぴどく振ってやるのだ。
そうすれば、おばかさんにも『真実の愛』が、もしかしたら―
《―愛が、欲しいか?》
「‥‥え?」
天上から、若い男の声が落ちてくる。
《―愛が、欲しいか?》
愛が欲しいか、ですって?もちろん。
「‥‥ええ、欲しいわ。あなたが与えてくださるの?」
《―そうか―ならば、くれてやろうッ!》
「ゆーーーーーーあーーーーーーしょーーーーーーっくッッ!!」
天が割れ、空が砕ける。
ガラスの様に飛び散ったそれが、天と海を血の様に染め上げる。
そんなガラス片に紛れるように、声の主も海に降り落ちてくる。
「はじめまして
「‥‥こん、ちわ‥‥」
‥‥ふうん?今回は、こういう趣向なのね。
多くの男が、様々なシチュエーションで口説きに来たけれど、こんな登場は初めてだ。
でも、違う。私が欲しいのは『真実の愛』。決して、奇をてらったものじゃない。
私は、すぐさま彼らを『魅了』しようとして、口を開こうとすると―
「おっと、先に言っとくぜ。今ここにいる俺らは
「‥‥それだけじゃ、ない‥‥‥」
「そのとーりッ!なんと今回はぁ!?世にも珍しいスペシャルゲストをお呼びしました!はいってきてちょ~だいッ!!」
その声とともに、今度は一人の男が空から降ってくる。濁った眼で、私を見るなり嫌なものを見たかのような反応をするその男は、私の心を刺激した。
「‥‥どうも」
「ッあ本日のスペシャルゲスト、比企谷八幡君です盛大な拍手でお出迎えくださいッ!!!」
「やめろ。ぶん殴るぞお前」
「え~いけず~」
空という男は、にやにやとした表情を崩さず、比企谷とかいう男から私に視線を移して、こう続けた。
「さぁ、ゲームを始めよう‥‥
‥‥‥は?
「俺か、もしくはこっちの男を惚れさせたらアンタの勝ち。ゲーム終了だ」
そういって、空という男はオーシェンドで一番高い塔、女王の間を指さし、
「本物の俺らはあそこにいる。ああ、こいつは違うぞ?こいつは正真正銘本物で、アンタの魅了も通じるただの
と、比企谷という男をポンポンと叩く。確かに、さっきからこちらと視線を合わせてこない。私の魅了から逃れようとしているのね。
「っつーわけで、説明は終わり。安心しろ。うまくいかなくても、
「‥‥ばい、ばい」
そう言い終えると、比企谷という男を残して、泡のようになって消える。
ちらりと女王の間に目を移す。彼らはあそこにいると言った。けれど、あそこまで行くのは面倒ね。
となれば、この目の前にいる男を惚れさせるほかないのだけれど‥‥どうしようかしら?
甘い言葉でささやいてやろうか。それとも、ストレートに好きとでも口にしてやろうか。
告白するにはロマンチックさの欠片もない景色だけど‥‥まぁ、彼にとってみれば私のいるこの場所こそが最も美しいのだから、大して問題ないわよね。
目をそらし続けるだけで、先ほどからピクリとも動かない彼に向かって、ゆっくりと歩みを向ける。
そして、手を伸ばせば触れてしまうほどの距離まで近づいて、男が好きであろう私を演じる。
「ねぇ、こちらを向いて?」
びくっと肩を揺らすも、その男は視線を向けようとはしない。
ふふっ。我慢しているみたいだけれど、隠しきれていないわよ?もっとも、海の中で私に逆らえるものなんていないのだけど。
海は私の味方。私の持つ水精の量の前では、全てが私にひれ伏す。人も、吸血鬼も、魔法だって。
誇張表現?いいえ。ただの事実。自慢でも、自信でもない、確固たる原理でしかない。
私に従えられぬものなどない。この男を惚れさせろですって?息をするよりも簡単で、笑ってしまうわ。
「恥ずかしがっているの?ふふっ、可愛いわね」
そっと、男の頬に手を触れ、ゆっくりと顔を近づける。どう?私がここまでしてあげているのよ?好きになったでしょう?
「‥‥‥」
ようやく視線をこちらに向けるも、その男から一切のアプローチはない。悪あがきを。
仕方がない。惚れさせろ、という内容からして、この男から告白をさせなければならないのでしょう。
「私ね、あなたのことがとっても気になるの。どうか、この気持ちを汲み取ってくれないかしら?」
人差し指で、男の頬をつーっとなぞる。見惚れなさい。ひれ伏しなさい。そして、私の思うがままに、口にしなさい。ほら、愛してるって―
「「「「「我慢の限界だボケナスがぁあああああああッッッ!!!!!!」」」」」
怒号とともに、再び天上から何者かが姿を現す。あれはまさか―
「なっ、なに!?」
「あそこだぁ!!!殺せぇぇぇえええええええッッッ!!!!」
「「「「うぉぉおおおおおおらぁあああああッッッ!!!!」」」」
数十、いや、数百人に上る
おののいて一歩後ろに後ずさるも、それ以上動くことはできなかった。
なぜなら、その時にはもうすでに、私は殺されていたからだ。
先ほどまで魅力的に誘惑していた相手が、跡形もなく消し去られる光景を目の当たりにするのは、おそらく一生に一度、あるかないかだろう。いやねぇわ。あってたまるかそんなもん。
人が一人亡くなっているにも拘らず、冷静でいられるのは死んだ、という感覚がないからだろう。
一瞬にして消し炭となったため、遺体はない。先ほどまで彼女がいた空間に目配せをしつつ、なんとも言えない妙な気持ちに思いをはせていると、
「な‥‥なにするのよいきなり!?」
と、泡とともに形作られ、そっくりそのまま元の姿に戻った女王、ライラが怒りを露わにする。案外、復活するのが早いな。死にゲーをモチーフにしてるらしいし、リスポーンも早いのかもしれない。
ここは夢の中で、しかもゲームの中だ。だから、本当に死にはしない。仮に殺されたとしても蘇る。
それは決して女王のみならず、空も白も、そして俺もだ。加えて、この世界そのものが作られたもの。何度景色が変わるほどの大爆発を起こしても、数秒後には元通りになる。
だからといって殺されてもいいって訳ではないんだけどね。
「それはこっちのセリフなんですけど」
「
「マジで許さないから。夢の中だから容赦なくぶっ殺す」
いつの間にか俺の背後に陣取っていた
「夢の中だから、『十の盟約』関係ないし‥‥本気出してもいいんだよね?」
「問題ないよ~でも、どうせなら一発大きいのかましたくない?」
「いいねいいね。じゃ、マスターくんの号令でどーんでどう?」
物騒な話をしながら、空から何人も俺の元へと集まってくる。ちょっとまて。そんなにきたら、ライラの顔見れなくなっちゃうでしょうが。一応、ゲーム上は攻略対象なんだよ俺。
「あ…あなたまさか、
「うっさい。死ね」
ライラがすべてを言い終える前に、一人が軽く捻りつぶした。こうも圧倒的な力の差を見せつけられると、位階序列というのは力の指標として正しいものであると認識するいいきっかけになるな。
とはいえ、あまり脈絡もなく目の前で殺されるのを見るのは気分が悪い。なるべくはやめにストップをかけておこう。
「わるい、すこし女王と話したいから、どいてくれ」
「わかりましたっ!みんな!女王を這いつくばらせて!」
「やめてください。恨みは買いたくないし、なによりあんまし気分のいいもんじゃないからそれ」
しぶしぶといった感じで俺から離れていく
ゆっくりと近づいて、這いつくばったままの女王に対して、俺は手を差し伸べる。
「‥‥ほれ」
女王は一瞬躊躇するも、
「‥‥結構よ」
といって、手を取ることなく自力で立ち上がった。行き場をなくした俺の右手を何事もなかったようにひっこめ、そのまま頭を掻く。女王が俺の手をとらなかったのは、俺の手を取るのが嫌だったのか、それとも後ろにいる
「わるい…俺はここまでするつもりはなかったんだが‥‥空が『やるなら徹底的にやりたい』っていうから仕方なく。恨むなら空を恨め。一応チャンスもくれたみたいだが、関係なかったし」
「‥‥どういう意味かしら?」
「惚れさせる相手、空を選んで女王の間に向かってたら何事もなくたどり着けたが、お前は俺を選んだ。恋愛ゲーム風に言うなら、俺は「
と、俺は続ける。
「ロードはできない‥‥つまりこうなった以上、あの
「なっ‥‥ふ、ふざけないでっ‥‥」
「触るな」
女王が俺の胸倉をつかみかかったとたん、またもや一瞬にして吹き飛ばされる。無論、俺は一切ダメージを受けないのだが、ビビるから急にやるのは止めてほしい。
女王が再び蘇生されるよりも早く、空からジブリールが駆け付ける。どうしたのだろうか。ジブリールはゲーム中は空達と行動を共にする予定だったはずだが‥‥
「マスター。伝言でございます。『思う存分、
「やめとく。少なくとも俺は快楽殺人者じゃない。トラウマを植え付けて、それがトラウマになったらたまったもんじゃない。できれば何もせずに耳ふさいでベッドに入りたいくらいだ」
そういうと、ジブリールはにっこりと笑って、
「そうおっしゃられると思い、女王の間の上に、簡素ではございますが『王の間』を作らせていただきました。完全防音の快適空間で、爆発音も、
と話した。なるほど。そこであれば、空達がゲームを終えるまで何もしなくてもいいということか。
そこまで空間転移でつれていくが問題ないか、というジブリールの問に問題ない、と返し、ジブリールと手をつなぐ。
「ではマスター。できる限り大きな声で、『やれ』とお命じください」
「え?なんで?」
「この場にいる
「なにそれ‥‥まぁいいか。『やれ』!」
そういうと、ジブリールの頭の光輪が複雑に形を変え、魔法を編む。
一瞬にして、俺は「王の間」へと転移した。
「みんな…今の聞いたよね?」
「もちろんだよ~。マスターくんやっさしー」
「しょうがないよね。うん。あの人が
「よし。みんなでやろっか。『神撃』」
「あのころと違って、何回撃ってもエネルギー切れにならないし最高かよ!!」
「じゃあ、そこの